病理解説-染色全般

国家試験で出題される染色について解説します!確定で出題されるため,対策は必須!!なお,特殊染色の詳細はそれぞれ別記事にて解説予定!

各見出しの重要度は,過去の臨床検査技師国家試験(第52回~最新回まで)の出題率や覚えやすさなどを考慮して主観で表記しています。国家試験を受ける学生以外の方は無視してかまいません。

ヘマトキシリン・エオジン染色(H-E染色)(重要度:★★★★★)

H-E染色は病理の基本中の基本の染色だから,必ず押さえておこう!
おるてぃ
おるてぃ

ペンギンくん
ペンギンくん
  た,大変だ……。

基本事項 

最も基本的な染色法です。
核をhematoxylin青紫色に,細胞質や線維をeosinピンク色に染色します。

59pm50

出典:厚生労働省ホームページ 第59回臨床検査技師国家試験の問題および正答について 午後問題別冊(https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/topics/dl/tp130422-05d.pdf)

↑H-E染色像(膵臓)

  

hematoxylinの特徴 

アカミノキから抽出される天然色素です。
塩基性の色素であり,水溶液中では正(+)に荷電しています。

水には溶けにくく,逆にアルコールには溶けやすい性質を持っています。

hematoxylin自体には染色性がなく,色素として染色能力を発揮するためには酸化媒染が必要となります。

  

hematoxylinの種類 

hematoxylin染色液は進行性のものと退行性のものの2種類があります。

進行性染色液

染色後の分別(後述)が不要なhematoxylinです。
Mayerマイヤーのhematoxylinがこれに該当します。

退行性染色液

染色後の分別が必要なhematoxylinです。
CarazziカラッチGillギルHarrisハリスDelafieldデラフィールドのhematoxylinがこれに該当します。

hematoxylin染色液の組成

hematoxylin

  

分別と色だし 

分別

退行液染色液を用いた時に行う工程で,余分に着色してしまった部分を脱色して,核の染色性のみを残すことです。

0.5%塩酸/70%エタノール混合液を用います。

色だし

pHを上げることで,核の色を鮮やかな青色に変化させる操作です。

水,温水,炭酸リチウム溶液,アンモニア水などを用います。

  

hematoxylin好性/eosin好性物質 

主なhematoxylin好性物質(核を除く)

  1. 胃主細胞
  2. 形質細胞
  3. 軟骨基質
  4. 石灰化小体(Ca)
  5. 膵腺房細胞
  6. Langerhansランゲルハンス島B細胞
  7. 細菌・真菌

主なeosin好性物質(細胞質や線維を除く)

  1. 胃壁細胞
  2. 小腸Panethパネート細胞
  3. 好酸球
  4. 赤血球
  5. 角化細胞
  6. 膵Langerhans島A細胞
  7. 腎近位尿細管

  

H-E染色の重染色 

H-E染色の重染色にVictoria blueビクトリアブルー染色が用いられます。

H-E・Victoria blue二重染色は主として悪性腫瘍による脈管侵襲の程度を評価するために用いられます。

53pm90

出典:厚生労働省ホームページ 第53回臨床検査技師国家試験の問題および正答について 午後問題別冊(https://www.mhlw.go.jp/topics/2007/04/dl/tp0427-1d.pdf)

↑H-E・Victoria blue二重染色像

  

  

膠原線維・弾性線維を対象とした染色(重要度:★★★★★)

膠原線維対象染色 

  • azanアザン染色(膠原線維)
  • Masson trichromeマッソントリクローム染色(膠原線維)

  

弾性線維対象染色 

  • elastica van Giesonエラスチカ ワンギーソン(EVG)染色(弾性線維)
  • orceinオルセイン染色(弾性線維・HBs抗原)
  • Victoria blueビクトリアブルー染色(弾性線維・HBs抗原)

  

  

銀を用いた染色(重要度:★★★★★)

  • 渡辺の鍍銀法(細網線維)
  • PAMパム染色(糸球体基底膜)
  • Grocottグロコット染色(真菌)
  • Bodianボディアン染色(神経原線維)
  • Masson-Fontanaマッソン・フォンタナ染色(神経内分泌細胞・メラニン・リポフスチン)
  • Grimeliusグリメリウス染色(神経内分泌細胞)
  • Kossaコッサ反応(石灰化物質(Ca))

  

  

多糖類を対象とする染色(重要度:★★★★★)

  • PASパス染色(多糖類・粘液・真菌・赤痢アメーバ・アミロイド・リポフスチン・糸球体基底膜)
  • Alcian blueアルシアンブルー染色(酸性粘液多糖類・酸性粘液)
  • toluidine blueトルイジンブルー染色(酸性粘液多糖類・Nisslニッスル小体・Pneumocystis jiroveciiニューモシスチス  イロベチィ・メタクロマジーを示す物質)
  • mucicarmineムチカルミン染色(粘液・Cryptococcusクリプトコッカス

※メタクロマジー:異染性。通常青色に染まるものが赤紫色に染まる現象。軟骨基質・マスト細胞・アミロイドが主なメタクロマジーを示す物質である。

  

  

脂肪を対象とする染色(重要度:★★★★★)

  • SudanⅢズダンスリー染色(中性脂肪)
  • oil red Oオイルレッドオー染色(中性脂肪)
  • Sudan black Bズダンブラックビー染色(中性脂肪)
  • Nile blueナイルブルー染色(中性脂肪)

  

  

その他の染色(重要度:★★★★★)

  • Feulgenフォイルゲン反応(DNA)
  • methyl green-pyronineメチルグリーン・ピロニン染色(DNA+RNA)
  • Congo redコンゴーレッド染色(アミロイド)
  • thioflavine Tチオフラビン ティー染色(アミロイド)
  • PTAH(リンタングステン酸鉄ヘマトキシリン)染色(フィブリン・神経膠線維・横紋など)
  • Berlin blueベルリンブルー染色(3価鉄)
  • Schmorlシュモール反応(メラニン・リポフスチン)
  • rhodanineロダニン染色(銅)
  • Klüver-Barreraクリューバー・バレラ染色(Nissl小体・髄鞘)
  • Giemsaギムザ染色(Helicobacter pyloriヘリコバクター ピロリ・血液細胞)
  • Ziehl-Neelsenチール・ネルゼン染色(抗酸菌)
  • Warthin-Starryワルチン・スタリー染色(SpirochaetaスピロヘータHelicobacter pylori

  

  

染色まとめ(重要度:★★★★★)

ここに示す染色はすべて覚えよう!
おるてぃ
おるてぃ

ペンギンくん
ペンギンくん
  う,嘘でしょ!?多すぎない……?

これだけ覚えておかないと国試には太刀打ちできないからねぇ。
おるてぃ
おるてぃ

染色1

染色2

  

  

練習問題

このページの復習だよ。解けるかな?
おるてぃ
おるてぃ

問1 hematoxylinで誤っているのはどれか。2つ選べ。(第52回臨床検査技師国家試験pm28)

1.酸化されやすい。
2.アルコールに溶けやすい。
3.Mayerの染色液では分別は不要である。
4.Mayerの処方で抱水クロラールは酸化剤として使う。
5.ヘマテインに陽イオンが結合して酸性色素になる。

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解答:4・5
1.正しい。
2.正しい。
3.正しい。
4.誤り。抱水クロラールは防腐剤として用います。酸化剤はヨウ素酸Naです。
5.誤り。hematoxylinは塩基性色素です。

  

問2 H-E染色との重染色が有用なのはどれか。(第52回臨床検査技師国家試験pm29)

1.Alcian blue染色
2.Nile blue染色
3.Victoria blue染色
4.Berlin blue染色
5.methylene blue染色

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解答:3
1.誤り。
2.誤り。
3.正しい。H-E染色の重染色にはVictoria blue染色を用います。
4.誤り。
5.誤り。

  

問3 胃癌静脈浸潤部の顕微鏡写真を示す。矢印で示される部位を青く染色している色素は何か。(第53回臨床検査技師国家試験pm90)

53pm90

出典:厚生労働省ホームページ 第53回臨床検査技師国家試験の問題および正答について 午後問題別冊(https://www.mhlw.go.jp/topics/2007/04/dl/tp0427-1d.pdf)

1.Alcian blue
2.Victoria blue
3.hematoxylin
4.Berlin blue
5.resorcin(resorcinol)

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解答:2
癌の脈管侵襲と染色性から判断して,この染色はH-E・Victoria blue二重染色が妥当でしょう。青色はVictoria blueによって染まった弾性線維です。
1.誤り。
2.正しい。
3.誤り。
4.誤り。
5.誤り。

  

問4 Mayerのhematoxylin液の作製に用いないのはどれか。(第53回臨床検査技師国家試験pm88)

1.カリウムミョウバン
2.結晶性クエン酸
3.氷酢酸
4.抱水クロラール
5.ヨウ素酸ナトリウム

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解答:3
Mayerのhematoxylinに含まれているのはヨウ素酸Na(酸化)・カリウムミョウバン(媒染)・抱水クロラール(防腐)・結晶性クエン酸(酸性化)の4つです。
1.誤り。
2.誤り。
3.正しい。
4.誤り。
5.誤り。

  

問5 Mayerのhematoxylin液作製で使用しないのはどれか。(第54回臨床検査技師国家試験am66)

1.氷酢酸
2.カリウムミョウバン
3.結晶性クエン酸
4.抱水クロラール
5.ヨウ素酸ナトリウム

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解答:1
53回での同一問題が翌年出るのは珍しいですが,どちらにせよ正解するのは簡単ですね。
1.正しい。
2.誤り。
3.誤り。
4.誤り。
5.誤り。

  

問6 進行性のhematoxylinはどれか。(第57回臨床検査技師国家試験pm52)

1.Gill
2.Harris
3.Carazzi
4.Mayer
5.Delafield

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解答:4
1.誤り。
2.誤り。
3.誤り。
4.正しい。
5.誤り。

  

問7 toluidine blue染色で異染性を示すのはどれか。(第60回臨床検査技師国家試験pm55)

1.脂肪
2.メラニン
3.軟骨基質
4.胆汁色素
5.ヘモジデリン

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解答:3
メタクロマジーを示す主な物質はアミロイド・軟骨基質・マスト細胞です。
1.誤り。
2.誤り。
3.正しい。
4.誤り。
5.誤り。

  

問8 Mayerのhematoxylin液の調製に用いないのはどれか。(第60回臨床検査技師国家試験pm54)

1.グリセリン
2.結晶クエン酸
3.抱水クロラール
4.カリウムミョウバン
5.ヨウ素酸ナトリウム

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解答:1
Mayerのhematoxylinに含まれているのはヨウ素酸Na(酸化)・カリウムミョウバン(媒染)・抱水クロラール(防腐)・結晶性クエン酸(酸性化)の4つです。
1.正しい。
2.誤り。
3.誤り。
4.誤り。
5.誤り。

  

問9 toluidine blue染色で異染性を示すのはどれか。(第62回臨床検査技師国家試験am53)

1.好中球
2.赤血球
3.組織球
4.形質細胞
5.肥満細胞

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解答:5
メタクロマジーを示す主な物質はアミロイド・軟骨基質・マスト細胞です。
1.誤り。
2.誤り。
3.誤り。
4.誤り。
5.正しい。

  

問10 動脈のH-E染色標本を示す。矢印で示すのはどれか。(第64回臨床検査技師国家試験am47)

64am47

出典:厚生労働省ホームページ 第59回臨床検査技師国家試験の問題および正答について 午後問題別冊(https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/topics/dl/tp180511-07a_02.pdf)

1.石灰
2.ムコイド
3.類線維素
4.アミロイド
5.硝子様物質

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解答:1
動脈+hematoxylin好性という情報から石灰を選ぶのは比較的容易。
1.正しい。
2.誤り。
3.誤り。
4.誤り。
5.誤り。

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