第70回臨床検査技師国家試験解説(AM41~60)

第70回臨床検査技師国家試験(AM41~60)の解説です。

第70回臨技国試のAM問41~60の解説です。
難易度は主観で1~10の10段階でつけています。
1:超簡単
2~3:簡単
4~5:普通
6~7:やや難問
8~9:難問
10:超難問

第70回臨技国試についてをまとめたページもありますので,まだ見ていない方はぜひそちらもご参照ください。

では,解説をどうぞ!
おるてぃ
おるてぃ

問題の出典:厚生労働省ホームページ 第70回臨床検査技師国家試験の問題および正答について 午前問題(https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/topics/dl/tp240424-07a_01.pdf)

 

臨床化学(AM29~44)

臨床化学の問29~40は第69回臨床検査技師国家試験解説(AM21~40)を参照してね!
おるてぃ
おるてぃ

AM 問41 

解糖系の律速酵素はどれか。(難易度:9/10)
1.エノラーゼ
2.アルドラーゼ
3.イソメラーゼ
4.ヘキソキナーゼ
5.ホスホグリセリン酸キナーゼ

解答:4

難問。

4.正しい。
1~3・5.誤り。

 

AM 問42 

構造蛋白質はどれか。(難易度:10/10)
1.アルブミン
2.コラーゲン
3.フィブリノゲン
4.セルロプラスミン
5.α1-リポプロテイン

解答:2

難問。蛋白質の種類を覚えていなければ勘で解くしかないです。
構造蛋白とは結合組織や細胞の運動に関わる蛋白のことを指します。
例)コラーゲンやエラスチンなど。

1.誤り。貯蔵蛋白です。
2.正しい。
3.誤り。
4・5.誤り。輸送蛋白です。

 

AM 問43 

半減期3日の放射性同位元素の放射能が1/8になるのはどれか。(難易度:1/10)
1.6日後
2.9日後
3.12日後
4.24日後
5.48日後

解答:2

一応計算式もありますが,半減期自体が何かを覚えておけば特に計算するまででもない問題です。

半減期は,その時間が経過すると1/2になるというものです。
よって,本問では3日経つごとに放射能が1/2になるとわかればOKです。

3日:1/2 → 6日:1/4 → 9日:1/8

となるので,1/8になるのは9日後となります。よって2が正解です。

計算式も掲載しておきます。

<半減期の計算>
半減期計算

この計算式を用いて計算すると,放射能減衰割合が1/8,半減期が3日なので

$$\frac{1}{8}=(\frac{1}{2})^{\frac{n}{3}}$$

$$(\frac{1}{2})^3=(\frac{1}{2})^{\frac{n}{3}}$$

$$n=9$$

となります。

1・3~5.誤り。
2.正しい。

 

AM 問44 

血中カルシウムで正しいのはどれか。(難易度:4/10)
1.約30%がイオン型で存在する。
2.基準範囲は3.6~4.4mg/dLである。
3.低アルブミン血症では偽高値を示す。
4.アルカローシスではイオン型が低下する。
5.副甲状腺ホルモン(PTH)の作用で低下する。

解答:4

69pm34でカルシウムについて解説しています。

1.誤り。約50%です。
2.誤り。施設によっても設定が異なりますが,大体8.5~10.0mg/dLです。(歯ご(=8.5)と(=10)カルシウムと覚えておけばOKです)
3.誤り。偽低値を示します。
4.正しい。
5.誤り。PTHで増加します。

 

 

病理組織細胞学(AM45~58)

AM 問45 

組織の固定原理がメチレン架橋によるのはどれか。(難易度:4/10)
1.酢酸
2.アセトン
3.エタノール
4.ピクリン酸
5.ホルマリン

解答:5

<固定の概要と固定液>
固定1固定2

ホルマリン=約37%ホルムアルデヒドなので5が正解です。以下の記事も参考に。

1~4.誤り。
5.正しい。

 

AM 問46 

リンパ節の術中迅速組織標本の弱拡大写真と強拡大写真を示す。標本に見られる不良の原因はどれか。(難易度:6/10)
70am46

出典:厚生労働省ホームページ 第70回臨床検査技師国家試験の問題および正答について 午前問題別冊(https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/topics/dl/tp240424-07a_02.pdf)

1.切り出し
2.凍結
3.薄切
4.固定
5.染色

解答:3

画像では一部が白く抜けています。これは薄切時にブロック温度が低すぎるために生じます。

1・2・4・5.誤り。
3.正しい。

 

AM 問47 

ヘマトキシリンの分別に用いるのはどれか。(難易度:4/10)
1.アンモニア水
2.炭酸リチウム
3.塩酸アルコール
4.カリウムミョウバン
5.ヨウ素酸ナトリウム

解答:3

個別記事がありますので,そちらを参照してください。

https://oltyblog.com/byouri-staining-all

1・2・4・5.誤り。
3.正しい。

 

AM 問48 

弾性線維と膠原線維を染め分けるのはどれか。(難易度:4/10)
1.PAM染色
2.渡辺の鍍銀法
3.Victoria blue染色
4.Masson trichrome染色
5.elastica van Gieson染色

解答:5

膠原線維染色・弾性線維染色は以下の記事を参考に。

1~4.誤り。
5.正しい。

 

AM 問49 

食道のPAS染色標本とα-アミラーゼ消化後のPAS染色標本を示す。消化試験で同定されるのはどれか。(難易度:1/10)
70am49

出典:厚生労働省ホームページ 第70回臨床検査技師国家試験の問題および正答について 午前問題別冊(https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/topics/dl/tp240424-07a_02.pdf)

1.線維素
2.中性粘液
3.アミロイド
4.グリコーゲン
5.リポフスチン

解答:4

α-アミラーゼ消化=ジアスターゼ消化試験のことです。詳細は以下の記事を参照。

1~3・5.誤り。
4.正しい。

 

AM 問50 

腹水のPapanicolaou染色標本を示す。矢印で示す細胞はどれか。(難易度:6/10)
70am50

出典:厚生労働省ホームページ 第70回臨床検査技師国家試験の問題および正答について 午前問題別冊(https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/topics/dl/tp240424-07a_02.pdf)

1.組織球
2.中皮細胞
3.印環細胞癌
4.扁平上皮癌
5.悪性リンパ腫

解答:3

なかなか難しい問題。

画像に写っている細胞は核が辺縁に押しやられており,細胞質に粘液成分を含むため,印環細胞癌が正解となります。

1・2・4・5.誤り。
3.正しい。

 

AM 問51 

腎近位尿細管の刷子縁に一致する電子顕微鏡像はどれか。(難易度:10/10)
1.線毛
2.微絨毛
3.ゴルジ装置
4.粗面小胞体
5.ミトコンドリア

解答:2

超難問。解けなくても問題ありません。

1・3~5.誤り。
2.正しい。

 

AM 問52 

神経組織で正しいのはどれか。(難易度:5/10)
1.稀突起膠細胞をニューロンと呼ぶ。
2.小膠細胞は末梢神経系に存在する。
3.星状膠細胞は末梢神経系に存在する。
4.樹状突起は受容した興奮を神経細胞体に伝える。
5.ランヴィエ(Ranvier)の絞輪はシナプス間隙に存在する。

解答:4

1.誤り。神経細胞のことです。
2・3.誤り。これらはいずれも中枢神経系に存在します。
4.正しい。
5.誤り。シュワン細胞間隙にあります。

 

AM 問53 

腹水の原因で誤っているのはどれか。(難易度:3/10)
1.腹膜炎
2.高蛋白血症
3.門脈圧亢進症
4.リンパ管閉塞
5.うっ血性心不全

解答:2

2.誤り。低蛋白血症(≒低アルブミン血症)によって,浸透圧(膠質浸透圧)が低下することで,血管から水分が漏れ出し腹水を生じます。
1・3~5.正しい。

 

AM 問54 

細胞死で正しいのはどれか。(難易度:4/10)
1.壊疽は可逆的である。
2.乾酪壊死は脳梗塞で起こる。
3.融解壊死は心筋梗塞で起こる。
4.凝固壊死は脂質に富んだ臓器に多い。
5.アポトーシスは発生過程で生理的に見られる。

解答:5

<壊死>
壊死

壊死とアポトーシスの違いは以下の記事を参照。

また,乾酪壊死像に関しては以下の記事を参照。

5.正しい。
1~4.誤り。

 

AM 問55 

石灰沈着を伴いやすい腫瘍はどれか。(難易度:8/10)
1.脂肪腫
2.髄膜腫
3.肝細胞癌
4.子宮頸癌
5.悪性黒色腫

解答:2

難問。

2.正しい。
1・3~5.誤り。

 

AM 問56 

化膿性炎で多数認められる細胞はどれか。(難易度:3/10)
1.形質細胞
2.好酸球
3.好中球
4.組織球
5.リンパ球

解答:3

炎症の種類はできれば覚えておきたいですが,この問題に限って言えば,化膿=膿が出る=好中球とわかれば特に難しくはありません。

<炎症の種類>
炎症の種類

1・2・4・5.誤り。
3.正しい。

 

AM 問57 

内分泌機能を有するのはどれか。(難易度:1/10)
1.肺
2.子宮
3.膵臓
4.脾臓
5.膀胱

解答:3

内分泌機能を有する=ホルモンを産生する臓器とわかれば簡単。

3.正しい。
1・2・4・5.誤り

 

AM 問58 

FISH法で正しいのはどれか。2つ選べ。(難易度:6/10)
1.標本は永久標本となる。
2.遺伝子増幅の検出に用いられる。
3.染色体転座の検出に用いられる。
4.観察には偏光顕微鏡を用いる。
5.核はフルオレセインイソチオシアネート(FITC)で染色する。

解答:2・3

FISH法については以下の記事を参照。

FISH法は蛍光物質を使用するため,蛍光抗体法に似た内容となります。酵素抗体法と蛍光抗体法の違いについては68am47を参照。

2・3.正しい。
1・4・5.誤り。

 

 

臨床血液学(AM59~67)

AM 問59 

播種性血管内凝固(DIC)で上昇するのはどれか。(難易度:4/10)
1.PIVKA-Ⅱ
2.D-ダイマー
3.プロテインC
4.アンチトロンビン
5.プラスミンインヒビター

解答:2

DICについては66pm63でまとめてありますので,内容を覚えていない方は確実に覚えましょう!

1.誤り。DICとビタミンK欠乏には関連がありません。
2.正しい。
3~5.誤り。これらはいずれも消費されて低下します。(プラスミンインヒビターはプラスミンと結合し,PICが産生されるためです)

 

AM 問60 

末梢血の好中球数が増加するのはどれか。(難易度:10/10)
1.アルコール中毒
2.伝染性単核球症
3.アレルギー性鼻炎
4.急性骨髄性白血病
5.副腎皮質ステロイド薬投与

解答:5

超難問。解けなくても問題はありません。

副腎皮質ステロイドは免疫抑制作用がありますが,好中球については次の作用によって末梢血好中球数が増加するとされています。

  • 血管内皮に接着・ローリングしている好中球の表面接着力の低下→血中循環への移行
  • 骨髄中の成熟好中球を血中に動員する作用
  • 好中球のアポトーシス抑制

しかしながら,好中球の数が増えたとしても,その機能はステロイドによって抑制されるため,結果的に免疫抑制状態となります。

1~4.誤り。
5.正しい。

 

 

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