病理解説-固定液(ホルマリン)

国家試験で出題される固定液の1つ,「ホルマリン」について解説します!ホルマリンの問題は定期的に出題されているため,対策は半ば必須!?

【更新履歴】
2022.12.22 
一部解説を更新しました。

各見出しの重要度は,過去の臨床検査技師国家試験(第52回~最新回まで)の出題率や覚えやすさなどを考慮して主観で表記しています。国家試験を受ける学生以外の方は無視してかまいません。

ホルマリンの基礎的事項(重要度:★★★★★)

ペンギンくん
ペンギンくん
  ホルマリンって聞いたことあるけど,国家試験ではどんなことが聞かれるの?

大体はホルマリンの基本的な事柄だから,ここに書いてあることをきちんと頭に入れておけば大丈夫!
おるてぃ
おるてぃ

ペンギンくん
ペンギンくん
  ふーん。でも,勉強する必要ってある?

ホルマリンは2~3年に1度は出題されているから絶対に勉強しよう!!
おるてぃ
おるてぃ

ペンギンくん
ペンギンくん
  りょ,了解……(やけに気合が入ってるなぁ)

基本事項 

ホルマリンは,ホルムアルデヒド(HCOH)約37%含む溶液のことを指します。
外観は無色透明です。

HCOH=30であり,空気の平均分子量28.8よりも大きいため,ホルマリン蒸気は空気よりも重いです。

ホルマリン中のホルムアルデヒドは重合しやすいため,重合防止にメタノールが加えられています。

  

毒性について 

毒劇法(毒物および劇物取締法)で医薬用外劇物に指定されており,人体に有害です。
そのため,取り扱いには強制排気装置が必要となります。なお,作業管理中の管理濃度は0.1ppm以下となるように定められています。
また,特定化学物質等障害予防規則では特定第2類に指定されています。

ホルマリンを吸うと,気道粘膜等を傷害します。また,発癌性があります。
シックハウス症候群の原因でもあります。

  

固定原理 

架橋固定(アルデヒド系)

  

  

10~20%ホルマリン(重要度:★★★★★)

基本事項 

もっとも一般的なホルマリンです。
ホルムアルデヒドの濃度は37%の10~20%なので,およそ3.7~7.4%のホルムアルデヒドが含まれていることになります。

  

pH 

約3.2(酸性)

  

ホルムアルデヒドの酸化 

ホルムアルデヒドは空気中に放置すると,酸化してギ酸(HCOOH)となります。
(HCOH→HCOOH)

この酸化は,日光によって促進するため,褐色ビンに入れて暗所で保管します(遮光)。

formaldehyde

  

  

ホルマリン固定の弊害 

ホルマリンに臓器を長時間浸漬させると,核の染色性が低下します。

また,ビリルビンを含む臓器(肝臓など)では,ホルマリンによってビリルビンが酸化されてビリベルジンとなるため,緑色を呈します。

  

  

その他のホルマリン(重要度:★★★★☆)

ここも固定液の問題で出題されやすいので,各ホルマリンを作成するのに必要な試薬を確認しておこう!
おるてぃ
おるてぃ

10%中性ホルマリン 

ホルマリンに炭酸カルシウム炭酸マグネシウムを加えて,pHを7付近にしたものです。
ただし,緩衝作用がなく,容易にpHが変動するため,現在ではほとんど用いられていません。

<メリット>
ホルマリン色素沈着を防止できる。
核の染色性低下を防止できる。
<デメリット>
浸透圧による障害は抑制できない。
pHが変動しやすい。

  

10%等張ホルマリン 

ホルマリンに塩化ナトリウムを加えて,浸透圧を調整したものです。ただし,こちらも緩衝作用がなく,容易にpHが変動するため,現在ではほとんど用いられていません。

<メリット>
浸透圧変化による臓器障害を抑制できる。
ホルマリン色素沈着を防止できる。
核の染色性低下を防止できる。
<デメリット>
pHが変動しやすい。

  

10%中性緩衝ホルマリン 

ホルマリンにリン酸緩衝液(リン酸ナトリウム)を加えて,緩衝作用を持たせたものです。

中性ホルマリンの完全上位互換であり,さらに抗原や酵素が失活しにくいため,免疫組織化学でも用いられます。
そのため,日常の病理検査で最も推奨される固定液とされています。

<メリット>
浸透圧変化による臓器障害を抑制できる。
ホルマリン色素沈着を防止できる。
核の染色性低下を防止できる。
緩衝作用によりpHが変動しにくい。
<デメリット>
なし!

  

  

ホルマリン色素(重要度:★★★☆☆)

基本事項 

ホルマリンに長時間浸漬した結果生じるアーチファクトの1つです。

ヘモグロビンギ酸によって酸化されるために生じます。
そのため,赤血球が存在する臓器に多数沈着します。
脾臓骨髄など)

  

除去法 

2つの方法があります。

カルダセウィッチ法

  • 70%エタノール+アンモニア水
    (アンモニアアルコール)

ベロケイ法

  • 80%エタノール+水酸化カリウム

  

  

練習問題

このページの復習だよ。解けるかな?
おるてぃ
おるてぃ

問1 ホルマリン固定後に緑色調を呈するのはどれか。(第52回臨床検査技師国家試験pm24)

1.乳管癌
2.肺小細胞癌
3.肝細胞癌
4.大腸腺癌
5.前立腺癌

解答を見る

解答:3
肝臓などのビリルビンを含む臓器は,ホルマリンの作用によってビリルビンが酸化され,緑色のビリベルジンに変化するため,緑色調を呈することがあります。

  

問2 ホルマリンで正しいのはどれか。2つ選べ。(第55回臨床検査技師国家試験am53)

1.黄色透明である。
2.発癌性がある。
3.蛋白質を凝固させる。
4.蒸気は空気よりも軽い。
5.95%ホルムアルデヒド溶液である。

解答を見る

解答:2・3
1.無色透明です。
2.正しい。
3.正しい。架橋固定を原理とする固定液です。
4.HCOH=30であり,空気の平均分子量の28.8より大きいため,空気よりも重いです。
5.ホルマリンは37%ホルムアルデヒドのことを指します。

  

問3 ホルマリン色素の除去に用いる溶液はどれか。(第60回臨床検査技師国家試験am54)

1.塩酸アルコール
2.シュウ酸水溶液
3.過ヨウ素酸水溶液
4.アンモニアアルコール
5.イソプロピルアルコール

解答を見る

解答:4
ホルマリン色素の除去法は,70%エタノール+アンモニア水を用いるカルダセウィッチ法と,80%エタノール+KOHを用いるベロケイ法があります。

  

問4 ホルムアルデヒドについて正しいのはどれか。(第62回臨床検査技師国家試験pm58)

1.発癌性がある。
2.分子式はCH3OHである。
3.酸化されるとクエン酸になる。
4.医薬用外毒物に指定されている。
5.組織の固定には15%水溶液が用いられる。

解答を見る

解答:1
1.正しい。
2.ホルムアルデヒドはHCOHです。CH3OHはメタノールです。
なお,メタノールが酸化するとホルムアルデヒドに,ホルムアルデヒドが酸化するとギ酸になります。(CH3OH→HCOH→HCOOH)
3.ホルムアルデヒドが酸化するとギ酸になります。(HCOH→HCOOH)
4.劇物(医薬用外劇物)です。
5.組織の固定には10~20%ホルマリン,ホルムアルデヒドの濃度にして3.7~7.4%のものが用いられます。
※この問題はホルマリンの濃度ではなく,“ホルムアルデヒド”の濃度を聞いている点に注意!

  

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