第66回臨床検査技師国家試験(AM41~60)の解説です。
【更新履歴】
2022.12.20
・問47の解説(電子顕微鏡)を更新しました。
2024.1.6
・問45の解答番号が間違っていたので修正しました。
第66回臨技国試のAM問41~60の解説です。
難易度は主観で1~10の10段階でつけています。
1:超簡単
2~3:簡単
4~5:普通
6~7:やや難問
8~9:難問
10:超難問
第66回臨技国試についてをまとめたページもありますので,まだ見ていない方はぜひそちらもご参照ください。
問題の出典:厚生労働省ホームページ 第66回臨床検査技師国家試験の問題および正答について 午前問題(https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/topics/dl/tp200414-07a_01.pdf)
臨床化学(AM29~44)
AM 問41
解答:2・5
やや難問。せっかくなのでこの機会にLCATとLPL,およびアポ蛋白を一緒に覚えてしまいましょう。
【LCAT(lecithin-cholesterol acyltransferase)】
遊離型コレステロールをエステル化する役割を担う。
レシチン+遊離型コレステロール → リゾレシチン+エステル型コレステロール
【LPL(lipoprotein lipase)】
トリグリセライドを加水分解してグリセロールと遊離脂肪酸に分解する役割を担う。
トリグリセライド → グリセロール+遊離脂肪酸
AM 問42
解答:3
臨床化学の中でもかなり易しい問題。この問題は確実に正解しておきたいです。
AM 問43
解答:1
65am44ではTDMの条件が出題されましたが,今回は対象薬物の問題です。
- ジゴキシン(強心薬)
- テオフィリン(気管支喘息治療薬)
- リドカイン(抗不整脈薬)
- フェニトイン(抗てんかん薬)
- フェノバルビタール(抗てんかん薬)
- GM・AMK・ABK(アミノグリコシド(配糖体)系抗菌薬)
- VCM・TEIC(グリコペプチド系抗菌薬)
- タクロリムス(免疫抑制薬)
- シクロスポリン(免疫抑制薬)
- メトトレキサート(抗癌剤)
※免疫抑制薬のTDMに用いる検体は全血!
1.正しい。抗凝固薬はTDM対象外です。
2~5.誤り。
AM 問44
解答:4・5
難問。
最低でもデオキシピリジノリン(DPD)=骨吸収マーカーということは覚えておきましょう。
骨吸収マーカーとは,骨が破壊されるときに出るマーカーのことで,実はこれを知っているだけでもなんとか答えは導き出せます。(逆はもちろん骨形成マーカー=骨が形成されるときに出るマーカー)
1.誤り。骨粗鬆症では骨が少しずつもろくなって骨密度が低下する病気です。このときは骨吸収マーカーが生成されるため高値を示します。
2.誤り。女性のほうが高値を示します。
3.誤り。悪性腫瘍の骨転移では骨が破壊されるため高値を示します。
4.正しい。成長期では骨代謝が高い(骨形成→骨破壊のサイクルが多い)ため,高値を示します。
5.正しい。副甲状腺からのPTH(血中Ca↑・骨Ca↓)産生量が増加するため,骨破壊が亢進し,高値を示します。
病理組織細胞学(AM45~58)
AM 問45
解答:1・5
国家試験で出てくる病理の染色は以下の記事でまとめて解説しています。
弾性線維の染色法は以下の記事を参考にしてください。
1・5.正しい。
2.誤り。3価鉄を対象とする染色法です。
3.誤り。酸性粘液多糖類やメタクロマジーを起こす物質を対象とする染色法です。
4.誤り。膠原線維を対象とする染色です。
AM 問46
解答:2
Klüver-Barrera染色に関しては以下の記事でまとめてありますので,「まだ覚えてないよー」って方は参考にしてください。
Klüver-Barrera染色の対象は髄鞘とNissl小体ですので,2が正解です。
AM 問47
解答:5
やや発展的な問題ですが,上のことをきっちり覚えておけば問題ありません。
1~4.使用する。
5.使用しない。用いるミクロトームはウルトラミクロトームです。
AM 問48
解答:1・5
細胞診の画像問題を解くうえでも,Papanicolaou染色の基本はマスターしておく必要があるため,以下のことはきっちり覚えておきましょう。
(1)染色液と染色工程
- 湿固定:95%エタノール
- 核染色:Gillのhematoxylin
- 分別:0.5%塩酸/70%エタノール
- 染色1:OG-6(orange G)
- 染色2:EA-50(eosin+light green+ビスマルクブラウン)
- 脱水透徹封入
(2)染色結果
- 核:青紫色
- 扁平上皮:橙色~ピンク色(表層細胞)
緑色(中層細胞) - 腺上皮:淡青色~緑色
AM 問49
解答:4
心筋で褐色顆粒といえばリポフスチン以外ありえません。
主に萎縮によってリポフスチンが沈着し,これを褐色萎縮といいます。
リポフスチンの染色法も以下の記事で同時に押さえておきましょう!
1.誤り。出題されるとすれば皮膚でしょう。メラニンの特殊染色も漏れなく覚えておくように。(Masson-Fontana染色・Schmorl反応)
2.誤り。アミロイドの画像が国家試験で出たことはありませんが,もし出るとしても基本的には肝臓か腎臓です。アミロイドの特殊染色も忘れずに復習しておきましょう。
AM 問50
解答:2
【壊死】
主に4つある。
・凝固壊死
・融解壊死
・乾酪壊死(凝固壊死の1種)
・脂肪壊死(融解壊死の1種)
(1)凝固壊死
大部分の組織の壊死はこの形をとる。よって,それ以外の壊死を覚えておきたい。
(2)融解壊死
脳梗塞による壊死はこの形をとる。
(3)乾酪壊死
肺結核による壊死はこの形をとる。
乾酪壊死周囲には類上皮細胞やLanghans巨細胞が存在する。
(4)脂肪壊死
急性膵炎による壊死はこの形をとる。
膵臓の産生するリパーゼによって付近の脂肪組織が壊死に陥る。
【梗塞】
動脈の内腔が閉塞し,壊死に至ること。
貧血性梗塞と出血性梗塞の2つがあり,一般的には貧血性梗塞の形をとる。
出血性梗塞は血管の二重支配を受ける臓器・組織で起こりやすい。
・肺
・肝臓
・小腸・大腸
「ハイ!長官の出血サービス」
ハイ:肺
長:腸(小腸+大腸)
官:肝臓
1・3~5.誤り。
2.正しい。
AM 問51
解答:2
心筋梗塞といえば,膠原線維が増生する,つまり,膠原線維を対象とした染色を選べばOKです。もちろん,それを知っておかなくとも,各染色の目的を覚えておけば簡単に正解できます。
1.誤り。酸性粘液多糖類や酸性粘液を対象とした染色法です。
2.正しい。膠原線維を対象とした染色法です。以下の記事も参考にしてください。
3.誤り。神経内分泌細胞やメラニン,リポフスチンを対象とした染色法です。
4.誤り。酸性粘液やCryptococcusを対象とした染色法です。
5.誤り。脂肪を対象とした染色法です。
AM 問52
解答:5
高校で生物を取っていた人はもちろん,そうでなくとも過去問を対策した人にとっては常識問題でしょう。
1~4.誤り。
5.正しい。酸化的リン酸化によりATPを産生します。
AM 問53
解答:5
65am50でも三胚葉の問題が出題されていたので,ここで対策していれば超簡単。
1.誤り。心臓は中胚葉由来です。
2.誤り。皮膚は外胚葉由来です。
3.誤り。膵臓は内胚葉由来です。
4.誤り。腸管は内胚葉由来です。
5.正しい。
AM 問54
解答:1
病理の染色は頻出。特にこういった問題は各染色の目的を覚えておけば簡単に解けるので絶対に覚えておきましょう!
1.正しい。Alcian blue染色は酸性粘液多糖類と酸性粘液の染色法です。故にこれが正解です。
2.誤り。elastica van Gieson染色は弾性線維の染色法です。
3.誤り。Giemsa染色は血液細胞やHelicobacter pyloriの染色法です。
4.誤り。Masson trichrome染色は膠原線維の染色法です。
5.誤り。PAM染色は糸球体基底膜の染色法です。
AM 問55
解答:4
なかなかの難問。それぞれの固定液の特徴を押さえておかないと難しいです。
1.誤り。アルコール系固定液は組織や細胞に強い収縮をもたらすため,固定時間は短いほうが好ましいです。
2.誤り。アルデヒド系(ホルム~・グルタル~)とオスミウム酸は架橋固定を原理とします。架橋固定剤はホルマリン+電顕固定液と覚えておきましょう。
3.誤り。
4.正しい。Bouin液はグリコーゲンや内分泌細胞を対象とする固定液です。
5.誤り。固定液の浸透力が弱いため,組織片は1mm角に細切します。
AM 問56
解答:1
(1)ミクロトームの種類と特徴
・Jung型(滑走式)
・Minot型(回転式)
・Schanze型
・Tetrander型
・Sartrius型
※Schanze・Tetrander・Sartriusは覚える必要なし。
(2)刃角・逃げ角・引き角
・刃角:刃の先端の角度
刃角が小さいほど切れ味↑・刃の耐久性↓
・逃げ角:組織薄切面と刃面がなす角度
・引き角:ミクロトーム滑走路に対して刃が交わる角度
引き角が小さいほど刃先の鋭さ↑(薄切しやすい)・薄切切片のゆがみ↑
1.正しい。上記の通りです。
2.誤り。刃の先端の角度は刃角といいます。
3.誤り。引き角が小さいほどゆがみが強くなります。
4.誤り。チャターが生じる原因は
①ミクロトーム刃やパラフィンブロックの固定が緩い
②ミクロトーム刃の滑走速度が速すぎる
③パラフィンブロックの過冷却(特に凍結切片作製時に生じやすい)
があります。
↑チャター
5.誤り。薄切切片の乾燥は37℃で行います。
AM 問57
解答:1
PAS染色陽性ということで,選択肢は赤痢アメーバと真菌(Aspergillus・Cryptococcus)の3択に絞れます。後は,画像の形態から選択肢を絞ります。
62回の過去問を解いていれば見たことある病原体が写っているので簡単でしたでしょう。
↑は赤痢アメーバのPAS染色画像です。赤痢アメーバはPAS染色でこのように染まることを覚えておきましょう。
1.正しい。
2~5.誤り。
AM 問58
解答:2
病理解剖において,血液等の採取,摘出した臓器からの肉眼標本の作成や縫合等の医学的行為については,臨床検査技師が行うことができます。ただし,死体の切開及び臓器の摘出に関しては,病理解剖医しか行えません。また,承諾の取得や遺族への説明は病理解剖医が行います。
1・3・5.誤り。これらは病理解剖医が行います。
2.正しい。
4.誤り。検査技師単独での執刀は行えません。
臨床血液学(AM59~67)
AM 問59
解答:3
画像からは球状赤血球が確認できます。
直接Coombs試験をしないと何とも言えませんが,少なくとも自己免疫性溶血性貧血(AIHA)か球状赤血球症(HS)が考えられます。この2つに共通する検査結果に,赤血球浸透圧抵抗が減弱するというものがあります。
1.誤り。発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)で認められる所見です。
2.誤り。血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)で認められる所見です。この疾患では末梢血に破砕赤血球が観察されます。(他にはDICとHUS)
3.正しい。AIHAやHSで認められる所見です。
4.誤り。無β-リポ蛋白血症で認められる所見です。この疾患では末梢血に有棘赤血球が観察されます。
5.誤り。鎌状赤血球症で認められる所見です。
AM 問60
解答:5
トロンボモジュリンは凝固抑制因子の1つです。
主に8つあります。
①一酸化窒素
②プロスタサイクリン(PGI2)
これらは血小板の凝集を抑制する。
③アンチトロンビン(ATⅢ)
活性化凝固第Ⅸ因子と第Ⅹ因子,およびトロンビンを不活化する。
④組織因子経路インヒビター(TFPI)
活性化凝固第Ⅹ因子及び組織因子(TF)を不活化する。
⑤トロンボモジュリン
⑥プロテインC
⑦プロテインS
トロンボモジュリンはトロンビンと結合して複合体となり,プロテインCを活性化する。活性化されたプロテインC(APC)はプロテインSを補酵素として,活性化凝固第Ⅴ因子と第Ⅷ因子を不活化する。
⑧ヘパリンコファクターⅡ
ヘパリン存在下でトロンビンを特異的に不活化する。
1~4.誤り。
5.正しい。
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コメント
いつも拝見させております。
『弾性線維の染色法はどれか。2つ選べ。』の解答で
1と5のはずなのに、1だけになっています。
朝からさん
コメントありがとうございます。該当箇所を修正しました。