国家試験で出題される特殊染色のうち,「膠原線維」と「弾性線維」を対象とする染色について解説します!染色は覚えることが多いから大変(^-^;)
各見出しの重要度は,過去の臨床検査技師国家試験(第52回~最新回まで)の出題率や覚えやすさなどを考慮して主観で表記しています。国家試験を受ける学生以外の方は無視してかまいません。
このページで紹介する染色法
- azan染色
- Masson trichrome染色
- elastica van Gieson染色
- orcein染色
- Victoria blue染色
azan染色(重要度:★★★★☆)
基本事項
用いる染色液(azocarmin・aniline blue)の頭文字をazan染色と名付けられました。
主に膠原線維や糸球体基底膜を観察するために用いられます。
azan染色が有用な疾患は主に以下の4つです。
- 肝臓:肝硬変(膠原線維の増生)
- 心臓:心筋梗塞(膠原線維の増生)
- 肺:間質性肺炎(膠原線維の増生)
- 腎臓:糸球体腎炎(糸球体基底膜の変化)
- azan染色(青色)
- Masson trichrome染色(青色)
- PAS染色(赤紫色)
- PAM染色(黒色)
染色液と染色結果
染色液
- azocarmin G液
- aniline blue・orange G混合液
染色結果
- 膠原線維・糸球体基底膜=青色(aniline blue)
- 筋線維・核=赤色(azocarmin G)
↑azan染色(肺)
Masson trichrome染色(重要度:★★★★★)
基本事項
3つの色素を用いるため,trichrome(3色)と名付けられました。
azan染色と同様,主に膠原線維や糸球体基底膜を観察するために用いられます。
azan染色=Masson trichrome染色と覚えてOK!
Masson trichrome染色が有用な疾患は主に以下の4つです。
- 肝臓:肝硬変(膠原線維の増生)
- 心臓:心筋梗塞(膠原線維の増生)
- 肺:間質性肺炎(膠原線維の増生)
- 腎臓:糸球体腎炎(糸球体基底膜の変化)
- azan染色(青色)
- Masson trichrome染色(青色)
- PAS染色(赤紫色)
- PAM染色(黒色)
染色液と染色結果
染色液
- Weigertの鉄hematoxylin液
- ポンソー・キシリジン/酸性フクシン/アゾフロキシン混合液
- aniline blue液
<酸性フクシン>
- Masson trichrome染色
- elastica van Gieson染色
<塩基性フクシン>
- PAS染色
- Feulgen反応
- Ziehl-Neelsen染色
染色結果
- 膠原線維・糸球体基底膜=青色(aniline blue)
- 筋線維=赤色(ポンソー・キシリジン/酸性フクシン/アゾフロキシン)
- 核=黒褐色(Weigertの鉄hematoxylin)
↑Masson trichrome染色(腎臓)
elastica van Gieson染色(重要度:★★★★★)
基本事項
弾性線維を対象とするWeigert染色と,膠原線維・筋線維を対象とするvan Gieson染色をハイブリッドさせた染色法です。
主に弾性線維の染色法として用いられます。
elastica van Gieson染色が有用なものは主に以下の3つです。
- 動脈:弾性線維からなる血管壁の障害を見る。
- 肺胞:弾性線維からなる肺胞壁の障害を見る。
- 悪性腫瘍:脈管浸潤の程度を見る。
染色液と染色結果
染色液
- Weigertのレゾルシン・フクシン液
- Weigertの鉄hematoxylin液
- van Gieson液
(ピクリン酸+酸性フクシン)
<酸性フクシン>
- Masson trichrome染色
- elastica van Gieson染色
<塩基性フクシン>
- PAS染色
- Feulgen反応
- Ziehl-Neelsen染色
染色結果
- 弾性線維=黒紫色(Weigertのレゾルシン・フクシン)
- 膠原線維=赤色(酸性フクシン)
- 筋線維=黄色(ピクリン酸)
- 核=黒褐色(Weigertの鉄hematoxylin)
↑elastica van Gieson染色
orcein染色(重要度:★★☆☆☆)
基本事項
弾性線維とHBs抗原を対象とした染色法です。
染色液と染色結果
染色液
- orcein液
- Mayerのhematoxylin液
染色結果
- 弾性線維=茶褐色(orcein)
- 核=青紫色(Mayerのhematoxylin)
Victoria blue染色(重要度:★★★☆☆)
基本事項
orcein染色と同様,弾性線維とHBs抗原を対象とした染色法です。
染色液と染色結果
染色液
- Victoria blue液
- ケルンエヒトロート
染色結果
- 弾性線維=青色(Victoria blue)
- 核=ピンク色(ケルンエヒトロート)
練習問題
問1 膠原線維の染色で正しい組み合わせはどれか。2つ選べ。(第54回臨床検査技師国家試験am55)
1.azan染色=黄色
2.orcein染色=緑色
3.Masson trichrome染色=青色
4.mucicarmine染色=黒色
5.van Gieson染色=赤色
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解答:3・5
1.誤り。azan染色もMasson trichrome染色と同様,膠原線維は青色です。
2.誤り。
3.正しい。
4.誤り。
5.正しい。van Gieson染色はelastica van Gieson染色とほとんど同じと考えてOKです。elastica van Gieson染色では膠原線維は赤色です。
問2 腎生検の特殊染色標本を示す。染色法はどれか。(第55回臨床検査技師国家試験am56)
1.PAM染色
2.PAS染色
3.toluidine blue染色
4.Masson trichrome染色
5.elastica van Gieson染色
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解答:4
腎糸球体基底膜を見たら,取り敢えず4つの染色法を思い出しましょう。
→azan染色・Masson trichrome染色・PAS染色・PAM染色
後は,基底膜の色で判断しましょう。
1.誤り。PAM染色では糸球体基底膜は黒色を呈します。
2.誤り。PAS染色では糸球体基底膜は赤紫色を呈します。
3.誤り。toluidine blue染色は用いられません。
4.正しい。
5.誤り。elastica van Gieson染色は用いられません。
問3 弾性線維が豊富なのはどれか。(第55回臨床検査技師国家試験pm46)
1.気管
2.大動脈
3.心筋
4.横隔膜
5.尿管
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解答:2
EVG染色が有用なのが血管・肺胞・悪性腫瘍と覚えておけば簡単です。
問4 組織のH-E染色標本を示す。この組織に特殊染色を行った。組み合わせで正しいのはどれか。2つ選べ。(第56回臨床検査技師国家試験pm46)
1.PTAH染色=青色
2.mucicarmine染色=赤色
3.Masson-Fontana染色=黒色
4.Masson trichrome染色=赤色
5.elastica van Gieson染色=赤色
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解答:1・4
画像は横紋が見えること・リポフスチン顆粒が見えることから心筋が考えられます。
1.正しい。PTAH染色では横紋は青色を呈します。
2.誤り。
3.誤り。Masson-Fontana染色で黒色に染まるのは心筋ではなくリポフスチン顆粒です。
4.正しい。
5.誤り。elastica van Gieson染色では筋線維は黄色を呈します。
問5 肺組織の特殊染色標本を示す。染色法はどれか。(第56回臨床検査技師国家試験am52)
1.Berlin blue染色
2.azan染色
3.Klüver-Barrera染色
4.elastica van Gieson染色
5.direct fast scarlet染色
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解答:2
肺が対象・色が青色ということから,染まっているのは膠原線維と考えられます。膠原線維の染色はazan染色しかありませんので,2が正解です。
1.誤り。Berlin blue染色も肺の染色で用いられますが,その目的は心臓病細胞やアスベスト小体の検出であり,これらは画像からは確認できませんので誤りといえます。
2.正しい。
3.誤り。肺の染色には用いられません。
4.誤り。肺胞壁の状態を見るのに用いられますが,色合いが全く違うことから否定できます。
5.誤り。
問6 問5の染色の目的とする対象はどれか。(第56回臨床検査技師国家試験am53)
1.筋線維
2.膠原線維
3.細網線維
4.神経線維
5.弾性線維
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解答:2
1.誤り。
2.正しい。問5の解説通りです。
3.誤り。
4.誤り。
5.誤り。
問7 染色法について正しい組み合わせはどれか。2つ選べ。(第57回臨床検査技師国家試験am53)
1.核酸=Masson trichrome染色
2.脂質=Feulgen反応
3.膠原線維=azan染色
4.細網線維=toluidine blue染色
5.弾性線維=Victoria blue染色
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解答:3・5
1.誤り。Masson trichrome染色は膠原線維や糸球体基底膜の染色法です。
2.誤り。Feulgen反応は核酸(DNA)の染色法です。
3.正しい。
4.誤り。toluidine blue染色は多糖類(酸性粘液多糖類)の染色法です。
5.正しい。
問8 特殊染色標本を示す。染色法はどれか。(第58回臨床検査技師国家試験am52)
1.azan染色
2.elastica van Gieson染色
3.PAM染色
4.PAS染色
5.PTAH染色
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解答:2
色合いから染色法を判断する問題です。用いられている色は黒紫色や赤色,褐色(黒褐色)などから,elastica van Gieson染色が妥当と考えられます。
1.誤り。azan染色であれば青色があるはずです。
2.正しい。
3.誤り。PAM染色は褐色に染まるものがありません。
4.誤り。PAS染色であれば赤紫色があるはずです。
5.誤り。PTAH染色であれば青色があるはずです。
問9 腎組織標本を示す。染色法はどれか。(第59回臨床検査技師国家試験am53)
1.elastica van Gieson染色
2.Masson trichrome染色
3.PAM染色
4.PAS染色
5.PTAH染色
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解答:2
腎糸球体基底膜を見たら,取り敢えず4つの染色法を思い出しましょう。
→azan染色・Masson trichrome染色・PAS染色・PAM染色
後は,基底膜の色で判断しましょう。
1.誤り。elastica van Gieson染色は用いられません。
2.正しい。
3.誤り。PAM染色では糸球体基底膜は黒色を呈します。
4.誤り。PAS染色では糸球体基底膜は赤紫色を呈します。
5.誤り。PTAH染色は微小血栓の探索に用いられますが,糸球体基底膜の観察には用いられません。
問10 腎組織の特殊染色標本を示す。使用する染色液はどれか。2つ選べ。(第60回臨床検査技師国家試験am55)
1.Masson液
2.van Gieson液
3.azocarmine G液
4.鉄hematoxylin液
5.aniline blue / orange G液
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解答:3・5
腎糸球体基底膜を対象としていること,糸球体基底膜が青色であること,核が赤色であることから,azan染色が考えられます。後は,azan染色で用いられる染色液を選べばOKです。
1.誤り。
2.誤り。
3.正しい。
4.誤り。azan染色では核の染色もazocarmine Gで行います。(Masson trichrome染色では核の染色に鉄hematoxylinが用いられる)
5.正しい。
問11 elastica van Gieson染色標本を示す。矢印部分を染色している色素はどれか。(第61回臨床検査技師国家試験pm52)
1.orcein液
2.メセナミン銀液
3.Sudan black B液
4.アルデヒド・フクシン液
5.Weigertのレゾルシン・フクシン液
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解答:5
elastica van Gieson染色に用いられる染色液は以下の3つです。
・Weigertのレゾルシン・フクシン液
・Weigertの鉄hematoxylin液
・van Gieson液(酸性フクシン+ピクリン酸)
選択肢中,elastica van Gieson染色用の染色液は5しかありませんので,5が正解です。
1.誤り。
2.誤り。
3.誤り。
4.誤り。
5.正しい。
問12 大腸癌の特殊染色標本を示す。この染色法が目的とする対象はどれか。(第63回臨床検査技師国家試験am52)
1.筋線維
2.弾性線維
3.細網線維
4.膠原線維
5.神経線維
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解答:2
大腸癌ということで,考えるのは悪性腫瘍の脈管浸潤です。脈管浸潤では弾性線維が増生するため,正解は2となります。なお,この染色法はVictoria blue染色です。
1.誤り。
2.正しい。
3.誤り。
4.誤り。
5.誤り。
問13 Masson trichrome染色が診断に適さないのはどれか。(第63回臨床検査技師国家試験pm51)
1.肝硬変
2.間質性肺炎
3.糸球体腎炎
4.神経内分泌腫瘍
5.陳旧性心筋梗塞
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解答:4
Masson trichrome染色が有用なのは以下の4つです。
・肝臓:肝硬変(膠原線維の増生)
・心臓:心筋梗塞(膠原線維の増生)
・肺:間質性肺炎(膠原線維の増生)
・腎臓:糸球体腎炎(糸球体基底膜の変化)
1.誤り。
2.誤り。
3.誤り。
4.正しい。神経内分泌腫瘍の染色法にはMasson-Fontana染色やGrimelius染色があります。
5.誤り。
問14 腎臓の特殊染色標本を示す。染色法はどれか。(第64回臨床検査技師国家試験am51)
1.PAS染色
2.PAM染色
3.PTAH染色
4.toluidine blue染色
5.Masson trichrome染色
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解答:5
本当にこの問題はよく出題されますね。ここまで解いてきたあなたにとってはもうサービス問題といってもいいでしょう。
腎糸球体基底膜を見たら,取り敢えず4つの染色法を思い出しましょう。
→azan染色・Masson trichrome染色・PAS染色・PAM染色
後は,基底膜の色で判断しましょう。
1.誤り。PAS染色では糸球体基底膜は赤紫色を呈します。
2.誤り。PAM染色では糸球体基底膜は黒色を呈します。
3.誤り。PTAH染色は微小血栓の探索に用いられますが,糸球体基底膜の観察には用いられません。
4.誤り。toluidine blue染色は用いられません。
5.正しい。
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