国家試験で出題される特殊染色のうち,染色1~4に掲載しなかった染色について解説します!かなり大量にあるから覚悟しよう(^▽^;)
各見出しの重要度は,過去の臨床検査技師国家試験(第52回~最新回まで)の出題率や覚えやすさなどを考慮して主観で表記しています。国家試験を受ける学生以外の方は無視してかまいません。
このページで紹介する染色法
- Feulgen反応
- methyl green-pyronine染色
- Congo red染色
- thioflavine T染色
- PTAH(リンタングステン酸鉄ヘマトキシリン)染色
- Berlin blue染色
- Schmorl反応
- rhodanine染色
- Klüver-Barrera染色
- Giemsa染色
- Ziehl-Neelsen染色
- Warthin-Starry染色
核酸の染色(重要度:★★☆☆☆)
Feulgen反応
基本事項
DNAの観察・証明に用いられます。
染色液・染色結果
染色液
- Schiff試薬
<酸性フクシン>
- Masson trichrome染色
- elastica van Gieson染色
<塩基性フクシン>
- PAS染色
- Feulgen反応
- Ziehl-Neelsen染色
染色結果
- DNA=赤紫色(Schiff試薬)
methylgreen‐pyronine染色
基本事項
別名,Unna-Pappenheim染色とも呼ばれ,DNAとRNAを対象とする染色法です。
特に,形質細胞は細胞質内にリボソームRNAを多く有するため,この染色によって形質細胞の同定が可能となります。
そのため,多発性骨髄腫などの補助診断に用いられることがあります。
染色液・染色結果
染色液
- methyl green / pyronin染色液
染色結果
- DNA=青緑色(methyl green)
- RNA=赤色(pyronin)
アミロイドの染色(重要度:★★★★☆)
アミロイドの基本事項
アミロイドって?
細胞外に沈着する多糖類と結合した異常蛋白です。
でんぷんと同じようにヨウ素に反応することから,でんぷん(amylum)に似ている(~oid)という意味(amyloid)で付けられました。
観察法
光学顕微鏡だけでなく,偏光顕微鏡や電子顕微鏡でも観察できるのが特徴です。
- 光学顕微鏡
- 偏光顕微鏡
- 蛍光顕微鏡
- 電子顕微鏡
沈着しやすい臓器
以下の臓器以外にも沈着することはありますが,最低でも以下の2つを覚えておけばOKです。
- 肝臓
- 腎臓
沈着する代表的な疾患
- 多発性骨髄腫
- 甲状腺髄様癌
- Alzheimer型認知症
- 慢性感染症や炎症
アミロイドの染色法
種類
- Congo red染色
- direct fast scarlet(DFS)染色
- Dylon染色
- toluidine blue染色
- thionin染色
- thioflavine T染色
染色結果
PTAH染色(重要度:★★★☆☆)
基本事項
PTAHはphosphotungstic acid hematoxylinの略で,正式名称はリンタングステン酸ヘマトキシリン染色です。
主にフィブリン(線維素)やフィブリノイド(類線維素)の証明を目的とした染色です。
他に神経膠線維や横紋の染色にも用いられます。
国家試験的には以下のことを覚えておきたいところです。
- DICにおける微小血栓形成の検索
- 神経膠線維と膠原線維の鑑別
- 横紋の証明による横紋筋肉腫の補助診断
染色結果
- 線維素・類線維素・神経膠線維・横紋・核=青色
- 膠原線維・神経細胞・軸索=赤褐色
↑PTAH染色
Berlin blue染色(重要度:★★★★★)
基本事項
染色対象
3価の鉄イオンを対象とした染色法です。
3価鉄は生体内ではヘモジデリンとして沈着しているため,これも染まります。
なお,ヘモジデリンが臓器に沈着した状態をヘモジデローシスといい,この状態でさらに組織の損傷を起こした状態をヘモクロマトーシスといいます。
ヘモジデリンが沈着する原因
主な原因はうっ血であり,うっ血によって赤血球が溶血した時に沈着しやすいです。うっ血が長期間続くとヘモジデリンが沈着します。
うっ血臓器 | 原因 | 備考 |
肺 | 左心不全 | 心臓病細胞の出現 (ヘモジデリン貪食Mφ) |
肝臓 | 右心不全 | 長期間うっ血で肝硬変 |
脾臓 | 肝硬変 |
覚えておきたいBerlin blue陽性物質
- ヘモジデリン
- アスベスト小体
- 心臓病細胞
染色液・染色結果
染色液
- フェロシアン化カリウム・塩酸混合液
染色結果
- ヘモジデリン・アスベスト小体・心臓病細胞=青色(Berlin blue)
- 核=ピンク色(ケルンエヒトロート)
↑アスベスト小体(H-E染色)
↑アスベスト小体(Berlin blue染色)
↑心臓病細胞(Berlin blue染色)
Klüver-Barrera染色(重要度:★★★☆☆)
基本事項
髄鞘(ミエリン鞘)とNissl小体を染め分ける染色法です。
髄鞘を染色する目的は,多発性硬化症などの脱髄疾患に認められる髄鞘の障害の有無や程度を調べるためです。
パラフィン切片は厚いほうが好ましいです。
また,加温が必要です。
※通常のパラフィン切片の厚さは3~4μm
<厚め(通常の2~3倍程度:6~12μm)>
- 渡辺の鍍銀法(6~8μm)
- Grocott染色(4~6μm)
- Bodian染色(8~12μm)
- Klüver-Barrera染色(5~10μm)
<薄め(通常の1/3~1/2程度:1~2μm)>
- PAM染色
- PAM染色
- Grocott染色
- Bodian染色
- Grimelius染色
- SudanⅢ染色
- Klüver-Barrera染色
- Feulgen反応
- Warthin-Starry染色
「ぼくのパパ,ふぐ好きな悪い顔」と覚えましょう。
ぼ:Bodian染色
く:Klüver-Barrera染色
パパ:PAM染色
ふ:Feulgen反応
ぐ:Grimelius染色・Grocott染色
好:SudanⅢ染色
悪い:Warthin-Starry染色
顔:加温
染色液・染色結果
染色液
- ルクソール・ファスト青液:56℃
- cresyl violet液:37℃
染色結果
- 髄鞘・赤血球=青色(ルクソール・ファスト青)
- Nissl小体,神経細胞,グリア細胞=紫色(cresyl violet)
↑Klüver-Barrera染色
その他国家試験で問われる染色(重要度:★★★★☆)
Schmorl反応
リポフスチンやメラニンを対象とする染色法です。
リポフスチン顆粒は心筋・神経細胞・副腎皮質などに存在しますが,心筋だけを全力で覚えておけば問題ありません。
- Masson-Fontana染色
- PAS染色
- Schmorl反応
rhodanine染色
銅を対象とする染色法です。
銅が肝臓に沈着するWilson病の診断に有用とされています。
・肝臓や脳など全身の臓器に銅が蓄積して障害をきたす常染色体劣性遺伝疾患。
・銅はセルロプラスミンと結合するが,過剰な銅はセルロプラスミンと結合できず,全身に沈着する。
・セルロプラスミンを消費するため,血中セルロプラスミン濃度が低下する。
Giemsa染色
血液細胞や胃生検組織におけるHelicobacter pyloriを対象とする染色法です。
↑Helicobacter pylori(Giemsa染色)
Ziehl-Neelsen染色
Mycobacterium tuberculosisをはじめとする抗酸菌を対象とした染色法です。
石炭酸フクシンには塩基性フクシンが用いられています。
<酸性フクシン>
- Masson trichrome染色
- elastica van Gieson染色
<塩基性フクシン>
- PAS染色
- Feulgen反応
- Ziehl-Neelsen染色
Warthin-Starry染色
スピロヘータやHelicobacter pyloriを対象とする染色法です。
スピロヘータには梅毒トレポネーマ(Treponema pallidum)やBorrelia,Leptospiraなどがあります。
練習問題
問1 正しいのはどれか。(第52回臨床検査技師国家試験pm23)
1.Bodian染色で神経膠線維は黒紫色に染まる。
2.Grocott染色で真菌は紫色に染まる。
3.PTAH染色でフィブリンは青藍色に染まる。
4.Feulgen反応でDNAは緑色に染まる。
5.van Gieson染色で弾性線維は黄色に染まる。
- 解答を見る
解答:3
1.誤り。Bodian染色で黒色に染まるのは神経”原”線維です。
2.誤り。真菌は黒色に染まります。
3.正しい。
4.誤り。DNAは赤紫色に染まります。
5.誤り。van Gieson染色≒elastica van Gieson染色と考えてよく,EVG染色では弾性線維は黒紫色に染まります。
問2 胸膜中皮腫の特殊染色標本を示す。染色法はどれか。(第52回臨床検査技師国家試験pm32)
1.Nile blue染色
2.Berlin blue染色
3.methylene blue染色
4.Victoria blue染色
5.Alcian blue染色
- 解答を見る
解答:2
画像ではアスベスト小体が認められます。アスベスト小体の染色といえばBerlin blue染色ですので,2が正解です。
1.誤り。
2.正しい。
3.誤り。
4.誤り。
5.誤り。
問3 ルクソール・ファスト青(LFB)に青く染まるのはどれか。2つ選べ。(第52回臨床検査技師国家試験pm33,一部改変)
1.赤血球
2.好中球
3.神経膠細胞
4.弾性線維
5.髄鞘
- 解答を見る
解答:1・5
Klüver-Barrera染色において,青色に染まるのは赤血球と髄鞘です。
1.正しい。
2.誤り。
3.誤り。
4.誤り。
5.正しい。
問4 喀痰細胞診標本で細胞質内にヘモジデリンを有するのはどれか。(第52回臨床検査技師国家試験pm36)
1.基底細胞
2.心臓病細胞
3.塵埃細胞
4.線毛上皮細胞
5.杯細胞
- 解答を見る
解答:2
ヘモジデリンを有する=Berlin blue染色陽性となるのは選択肢中心臓病細胞だけです。
1.誤り。
2.正しい。
3.誤り。
4.誤り。
5.誤り。
問5 難治性胃潰瘍患者の胃生検標本を示す。染色法はどれか。(第54回臨床検査技師国家試験am53)
1.azan染色
2.Giemsa染色
3.Klüver-Barrera染色
4.Victoria blue染色
5.Berlin blue染色
- 解答を見る
解答:2
難治性胃潰瘍の胃生検標本ということで,Helicobacter pyloriを考えたいところ。Helicobacter pyloriの染色法はGiemsa染色とWarthin-Starry染色です。
1.誤り。
2.正しい。
3.誤り。
4.誤り。
5.誤り。
問6 組織標本でHelicobacter pyloriの検出に有用なのはどれか。2つ選べ。(第55回臨床検査技師国家試験am57)
1.Giemsa染色
2.Grocott染色
3.orcein染色
4.Ziehl-Neelsen染色
5.Warthin-Starry染色
- 解答を見る
解答:1・5
Helicobacter pyloriの染色法はGiemsa染色とWarthin-Starry染色です。
1.正しい。
2.誤り。
3.誤り。
4.誤り。
5.正しい。
問7 病理組織標本の観察で偏光顕微鏡が有用なのはどれか。2つ選べ。(第55回臨床検査技師国家試験pm56)
1.メラニン
2.アミロイド
3.ケイ酸結晶
4.ビリルビン
5.ヘモジデリン
- 解答を見る
解答:2・3
結晶やアミロイド(Congo red染色)などは偏光顕微鏡が有用です。
1.誤り。
2.正しい。
3.正しい。
4.誤り。
5.誤り。
問8 疾患と染色法の組み合わせで誤っているのはどれか。(第56回臨床検査技師国家試験pm52)
1.膜性腎症=PAM染色
2.C型肝炎=orcein染色
3.Wilson病=rhodanine染色
4.アミロイドーシス=Congo red染色
5.ヘモジデローシス=Berlin blue染色
- 解答を見る
解答:2
1.正しい。
2.誤り。orcein染色の対象は弾性線維とHBs抗原であるため,疾患の対象はB型肝炎です。
3.正しい。
4.正しい。
5.正しい。
問9 肺組織のH-E染色標本を示す。矢印の構造物を同定するのに有用なのはどれか。(第56回臨床検査技師国家試験pm54)
1.PAS染色
2.Gram染色
3.Berlin blue染色
4.azan染色
5.Masson-Fontana染色
- 解答を見る
解答:3
矢印の構造物はアスベスト小体です。アスベスト小体の染色といえばBerlin blue染色ですので,3が正解です。
1.誤り。
2.誤り。
3.正しい。
4.誤り。
5.誤り。
問10 生体内色素・顆粒と染色法の組み合わせで誤っているのはどれか。(第57回臨床検査技師国家試験am55)
1.メラニン=Masson-Fontana染色
2.胆汁色素=Gmelin染色
3.Nissl顆粒=orcein染色
4.リポフスチン=Schmorl反応
5.神経内分泌顆粒=Grimelius染色
- 解答を見る
解答:3
1.正しい。
2.正しい。
3.誤り。Nissl顆粒(Nissl小体)の染色法はKlüver-Barrera染色です。orcein染色の対象は弾性線維とHBs抗原です。
4.正しい。
5.正しい。
問11 肺のホルマリン固定後の肉眼像とH-E染色標本とを示す。病原体の検出に有効な染色はどれか。(第58回臨床検査技師国家試験am54)
1.Gram染色
2.mucicarmine染色
3.Victoria blue染色
4.Warthin-Starry染色
5.Ziehl-Neelsen染色
- 解答を見る
解答:5
画像右のH-E染色では乾酪壊死やLanghans型巨細胞などが認められ,肺結核が疑われます。故に,抗酸菌染色である5が正解です。
1.誤り。
2.誤り。
3.誤り。
4.誤り。
5.正しい。
問12 神経組織の染色法はどれか。2つ選べ。(第58回臨床検査技師国家試験pm54)
1.Alcian blue染色
2.azan染色
3.Berlin blue染色
4.Bodian染色
5.Holzer染色
- 解答を見る
解答:4・5
消去法で解けば問題ありません。
1.誤り。酸性粘液多糖類や酸性粘液を対象とした染色です。
2.誤り。膠原線維を対象とした染色です。
3.誤り。3価鉄を対象とした染色です。
4.正しい。
5.正しい。
問13 病原微生物と特殊染色との組み合わせで正しいのはどれか。2つ選べ。(第60回臨床検査技師国家試験am56)
1.Aspergillus fumigatus=Ziehl-Neelsen染色
2.Helicobacter pylori=Giemsa染色
3.Mycobacterium tuberculosis=Warthin-Starry染色
4.Pneumocystis jirovecii=Grocott染色
5.Treponema pallidum=Alcian blue染色
- 解答を見る
解答:2・4
消去法で解けば問題ありません。
1.誤り。PAS染色やGrocott染色です。
2.正しい。
3.誤り。Ziehl-Neelsen染色です。
4.正しい。
5.誤り。Warthin-Starry染色です。
問14 肺に沈着したアスベスト小体の染色標本を示す。染色法はどれか。(第61回臨床検査技師国家試験am54)
1.Alcian blue染色
2.Berlin blue染色
3.methylene blue染色
4.Nile blue染色
5.Victoria blue染色
- 解答を見る
解答:2
ご丁寧に「アスベスト小体」と書かれているので,Berlin blue染色を選ぶのはいたって容易です。
1.誤り。
2.正しい。
3.誤り。
4.誤り。
5.誤り。
問15 組織内構造物と染色法の組み合わせで誤っているのはどれか。(第61回臨床検査技師国家試験pm53)
1.神経内分泌顆粒=Grimelius染色
2.胆汁色素=Gmelin法
3.ヘモジデリン=Congo red染色
4.メラニン=Masson-Fontana染色
5.リポフスチン=Schmorl反応
- 解答を見る
解答:3
57am55のプール問題。選択肢の組み合わせが変わったのは3のみで,この組み合わせが誤っています。
1.正しい。
2.正しい。
3.誤り。ヘモジデリンの染色法はBerlin blue染色です。Congo red染色はアミロイドの染色法です。
4.正しい。
5.正しい。
問16 疾患と染色法の組み合わせで誤っているのはどれか。(第62回臨床検査技師国家試験am51)
1.梅毒=Warthin-Starry染色
2.カルチノイド=Grimelius染色
3.アスペルギルス症=mucicarmine染色
4.アミロイドーシス=Congo red染色
5.ヘモジデローシス=Berlin blue染色
- 解答を見る
解答:3
1.正しい。
2.正しい。カルチノイドは神経内分泌腫瘍の1つです。
3.誤り。mucicarmine染色は酸性粘液とCryptococcusが対象です。Aspergillus(真菌)の染色法はGrocott染色やPAS染色です。
4.正しい。
5.正しい。
問17 舌組織の染色標本を示す。染色法はどれか。(第62回臨床検査技師国家試験am54)
1.azan染色
2.PTAH染色
3.Giemsa染色
4.Masson trichrome染色
5.elastica van Gieson染色
- 解答を見る
解答:2
染色対象組織が舌であることと,横紋が見えていることから,横紋を対象とするPTAH染色が考えられます。
1.誤り。
2.正しい。
3.誤り。
4.誤り。
5.誤り。
コメント
いつも参考にさせてもらってます!
染色法とてもわかりやすいです!
66回の解説も待ってます!
コメントありがとうございます!
参考にしていただいて光栄です。取り敢えず病理の染色をまとめ終わりましたので,66回の解説の続きをまとめようと思っています!
解説記事完成楽しみにしていてください!