第65回臨床検査技師国家試験(AM41~60)の解説です。
第65回臨技国試のAM問41~60の解説です。
難易度は主観で1~10の10段階でつけています。
1:超簡単
2~3:簡単
4~5:普通
6~7:やや難問
8~9:難問
10:超難問
第65回臨技国試についてをまとめたページもありますので,まだ見ていない方はぜひそちらもご参照ください。
問題の出典:厚生労働省ホームページ 第65回臨床検査技師国家試験の問題および正答について 午前問題(https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/topics/dl/tp190415-07a_01.pdf)
臨床化学(AM29~44)
AM 問41
解答:2・5
グルコースをグリコーゲンとして蓄えられる臓器は肝臓と骨格筋の2つです。これは必ず覚えておきましょう。
AM 問42
解答:1
アルブミンは様々なものを運搬しますが,以下の3つは必ず覚えておきましょう。
- ビリルビン
- 遊離脂肪酸
- カルシウム
1.正しい。
2~5.誤り。これらはリポ蛋白によって運搬されます。
AM 問43
解答:5
血糖指標項目の問題はよく出るので必ず覚えておきましょう!
1.誤り。糖尿病では乳酸増加により,ときに乳酸アシドーシスを起こすことがあります。
2.誤り。糖尿病コントロールができていないとHbA1c↑となります。
3.誤り。糖尿病コントロールができていないとグリコアルブミン↑となります。
4.誤り。血糖をエネルギー源として利用できなくなるため,代わりに脂肪酸β酸化によってエネルギーを得ようとします。この際,ケトン体(アセト酢酸・アセトン・β-ヒドロキシ酪酸)が増加します。
5.正しい。血糖値が高いと1,5-AGの尿細管での再吸収が阻害されるため,血中1,5-AGは低下します。
AM 問44
解答:4・5
血中薬物濃度モニタリング(TDM)の条件はたまに出るので覚えておきたいです。
- 治療の血中濃度範囲(=治療域)が狭く,副作用発現域(=中毒域)と近接している。
- 薬物の体内動態に個人差が大きい。
- 血中濃度と薬効および副作用の発現に相関がある。
- 血中濃度依存性に生じる副作用が重篤である。
- 投与量と血中濃度が比例関係にない。(=非線形)
この他,医師が患者に対して,処方された薬剤を規定通りに服用しているかどうか(=服薬コンプライアンス)の確認にもTDMが用いられる。
1.誤り。至適濃度範囲が広ければわざわざ濃度を測定する必要がないはずです。
2.誤り。薬物アレルギーの発生の有無を知ることはできません。
3.誤り。個人差が小さい=誰でもほぼ同じような投与量で薬効を期待できるため,わざわざ濃度を測定する必要がありません。
4.正しい。薬効が血中濃度と相関しないものは濃度を測定しても意味がない=薬効が血中濃度と相関するものは濃度を測定する意義があります。
5.正しい。過剰投与による副作用を防止するため,濃度測定が有用です。
病理組織細胞学(AM45~58)
AM 問45
解答:1・5
硫酸Naが脱灰後の中和剤として定番ですが,他に硫酸リチウムやミョウバンが使われることもあります。覚えられる人は覚えておきましょう。(以前の国家試験では硫酸Naのみ覚えておけば点数を取れたのですが,この問題はそれだけでは解けません。この点から少し難化したと考えていいでしょう)
- 塩酸(無機酸)
- 硝酸(無機酸)
- Plank-Rychlo液(迅速脱灰法)
1.正しい。他に硫酸リチウムがあります。
2~4.誤り。これらは脱灰後の中和には用いられません。
5.正しい。定番の脱灰中和剤です。
AM 問46
解答:5
術中迅速凍結切片作製は頻出です。以下の項目は漏れなく覚えておきましょう!
(1)作製手順
切り出し→凍結包埋→薄切→固定→染色→脱水透徹封入
※固定前薄切なので感染防止に十分に注意を払う。
(2)凍結包埋
水溶性包埋剤(OCTコンパウンドなど)を用いる。
凍結は急速に!(緩徐だと組織へのダメージが大きくなる)
(3)薄切
温度は-25~-20℃。(脂肪が多い場合は-35℃程度に)
クリオスタット(Minot型ミクロトーム)を用いる。
(4)固定
アルコールを主体としたものを用いる。
1.誤り。用いる包埋剤は水溶性包埋剤です。パラフィンは非水溶性包埋剤なので使用できません。
2.誤り。凍結→薄切の後に固定を行います。そのため,感染(特に結核)には十分注意しなければなりません。
3.誤り。脱脂は行いません。
4.誤り。息をかけて薄切はしません。
5.正しい。薄切温度を覚えることはマストです。必ず覚えておきましょう!
AM 問47
解答:3・5
ご丁寧に皮膚と書かれているので,褐色顆粒はメラニンしか考えられません。(皮膚での顆粒はメラニン以外はほぼ出ないと考えていいです)
後は,各選択肢の染色法が何を対象としているのかを覚えていれば簡単に正解できます。
1.誤り。Kossa反応は石灰化物質(Ca)の染色法です。
2.誤り。SudanⅢ染色は脂肪の染色法です。
3.正しい。Schmorl反応はリポフスチンとメラニンの染色法です。
4.誤り。Berlin blue染色は3価鉄(ヘモジデリン)・アスベスト小体の染色法です。
5.正しい。Masson-Fontana染色はメラニンや神経内分泌細胞,リポフスチンの染色法です。
AM 問48
解答:2・3
過酸化水素や過酸化水素加メタノールが内因性ペルオキシダーゼの失活に用いられるものの定番ですが,他に過ヨウ素酸が使われることもあります。覚えられる人は覚えておきましょう。(この問題もAM45と同様,以前の国家試験では過酸化水素(過酸化水素加メタノール)のみ覚えておけば点数を取れたのですが,この問題もそれだけでは解けません。)
1.誤り。トリプシンは細胞剥離に用いられます。
2.正しい。
3.正しい。
4.誤り。正常動物血清は非特異反応のブロッキングに用いられます。
5.誤り。プロテイナーゼは蛋白分解酵素で,抗原賦活化に用いられます。
AM 問49
解答:1
国家試験の細胞診問題は出てくる細胞像が限られているので,それらを覚えておけば簡単です。
よく出題 | まれに出題 | |
子宮頸部 | トリコモナス ヘルペスウイルス HPV(軽度異形成) 扁平上皮癌 | 中等度~高度異形成 上皮内癌 腺癌 |
呼吸器 (喀痰・気管支擦過・気管支洗浄) | 腺癌 扁平上皮癌 小細胞癌 | なし |
体腔液(胸水・腹水) | 腺癌 扁平上皮癌 | 反応性中皮細胞 |
この表で示した以外は国家試験ではほぼ出題されないと考えていいです。
1.正しい。核小体が明瞭で扁平上皮癌・小細胞癌のいずれの特徴も有さないので,腺癌が正解です。
2.誤り。小細胞癌であれば細胞質(緑色の部分)がほとんどなく(=N/C比[大]),また細胞同士が押し合う格好(相互圧排像)がみられます。
3.誤り。扁平上皮癌であればオレンジ色の異常細胞が認められます。(厳密には非角化型扁平上皮癌であれば色がオレンジ色にならないのですが,国家試験において,呼吸器系細胞診でそれが出題されることはまずないといっていいので,扁平上皮癌=オレンジと考えて問題ないです)
4・5.誤り。これらが国家試験の細胞診分野で出題されることはまずありません。出題された場合は潔くあきらめましょう。
AM 問50
解答:2
語呂合わせで覚えておきましょう。
主なものを覚えておけば国家試験には対応できる。普通に覚えるのはかなりきついので語呂が有効。
特に,中胚葉と内胚葉はこれを覚えておけばほぼ100%カバーできる。
(1)外胚葉
「凱旋門で感じる神秘」
凱:外胚葉
旋:~腺(唾液腺・乳腺・汗腺)※甲状腺は違うので注意!
感じる:感覚器(目・耳・鼻・舌・口腔・咽頭など)
神:神経系(大脳・小脳・脊髄など)
秘:皮膚
+副腎髄質
(2)中胚葉
「新人聖子金欠中」
新:心臓
人:腎
聖:生殖器(精巣・卵巣など)
子:骨
金:筋肉
欠:血液・血管・結合組織
中:中胚葉
+副腎皮質
(3)内胚葉
「うちの翔子は人気向上」
うちの:内胚葉
翔:消化器系(消化管(食道~大腸)・肝臓・膵臓)
子:呼吸器系(肺・気管・気管支)
人気:尿路系(膀胱・尿道の大部分・尿管の一部)
向上:甲状腺・副甲状腺(上皮小体)
1.誤り。外胚葉由来です。
2.正しい。内胚葉由来です。
3.誤り。中胚葉由来です。
4.誤り。中胚葉由来です。
5.誤り。外胚葉由来です。
AM 問51
解答:1・3
難しく考えず,身体の外からの原因であれば外因,そうでなければ内因と考えればOKです。
1.正しい。遺伝は外からの原因ではないため内因です。
2.誤り。化学的因子とは例えばヒ素や鉛といったものがあります。これらに曝露されると病気となりますが,これは外から取り入れるものであるため外因です。
3.正しい。加齢は外からの原因ではないため内因です。
4.誤り。感染性因子とは例えば細菌があります。細菌に感染すると病気となりますが,これは外からであるため外因です。
5.誤り。物理的因子とは例えば紫外線や高温といったものがあります。これらが原因で病気となるりますが,これは外からであるため外因です。
AM 問52
解答:1
Down症候群の症状や疫学まで知っていないと解けない問題です。余裕のある人は染色体異常だけでなく,症状等も覚えておくといいでしょう。
1.正しい。他に吊り上がった目・猿線・耳介低位・翼状頚などが症状としてあります。
2.誤り。常染色体(21番染色体)の数的異常(トリソミー)です。
3.誤り。47,+21です。(21番染色体が3本(トリソミー)あるため,合計で染色体数は47本となります)
4.誤り。ほぼ100%精神発達遅滞が発生します。
5.誤り。約1000人に1人の発生頻度です。
AM 問53
解答:4
1.誤り。虚血です。
2.誤り。うっ血で見られます。
3.誤り。虚血とうっ血で見られます。
4.正しい。
5.誤り。うっ血で見られます。
AM 問54
解答:2
なかなか難しいので余裕のある人以外は解けなくても問題ありません。
1.誤り。大腸は円柱上皮細胞主体なので,発生する癌は腺癌が最も多いです。
2.正しい。他に肺,骨髄,脳などにも血行性転移を起こします。
3.誤り。直腸とS状結腸に多いです。
4.誤り。1型は腫瘤型。潰瘍形性は2型や3型です。
5.誤り。粘膜下層までの浸潤にとどまるものと定義されています。
AM 問55
解答:1
もはや解説不要とも言えるほど超基本問題です。覚えてない人は全力で覚えましょう。
乾酪壊死像と,特異性炎を起こす疾患も追加で覚えておきましょう。
特異性炎とは,肉芽腫性疾患のうち,特徴ある肉芽腫を形成するものをいいます。
よく出題されるので,必ず覚えておきたいところ。
「(得意げに)猿の家来を販売」
得意げに:特異性炎
猿:サルコイドーシス
家:結核
販:Hansen病
売:梅毒
結核では,上図のような病理像が認められます。
こちらも国家試験で出題されたことがあるので必ず覚えておきましょう。
AM 問56
解答:3
この問題も結構出題頻度が高いので覚えておきましょう。
1.誤り。円柱上皮細胞です。
2.誤り。扁平上皮細胞です。
3.正しい。
4.誤り。扁平上皮細胞です。
5.誤り。線毛上皮細胞(単層)です。
AM 問57
解答:4
病理というよりは免疫の問題ですが,免疫の分野でもアレルギーは頻出なので,そこを勉強していれば問題なく得点できます。
分類 | 発症 | 補体の関与 | 表現 | 原因抗体 細胞 | 疾患 |
Ⅰ型 | 即時 | × | アレルギー性 アナフィラキシー性 | IgE | ・気管支喘息 ・花粉症 ・蕁麻疹 ・食物アレルギー ・アレルギー性鼻炎 ・アトピー性皮膚炎 ・アナフィラキシーショック |
Ⅱ型 | △ (疾患による) | 抗体依存細胞障害性 補体依存細胞障害性 | IgG・IgM | ・自己免疫性溶血性貧血 (AIHA) ・特発性血小板減少性紫斑病 (ITP) ・Goodpasture症候群 ・Rh不適合妊娠 ・Basedow病 (Ⅴ型でもある) | |
Ⅲ型 | 〇 | 免疫複合体性 | IgG・IgM | ・全身性エリテマトーデス (SLE) +ループス腎炎 ・血清病 ・急性糸球体腎炎 ・関節リウマチ | |
Ⅳ型 | 遅延 | × | T細胞媒介細胞免疫性 | T細胞・Mφ | ・接触性皮膚炎 ・拒絶反応 ・移植片対宿主病(GVHD) |
Ⅴ型 | 即時 | × | 細胞受容体障害性 (Ⅱ型の亜型) | IgG | ・Basedow病 |
※表はスクロールできます。
1.誤り。Ⅰ型です。
2.誤り。Ⅲ+Ⅳ型です。
3.誤り。Ⅰ型です。
4.正しい。Ⅱ型です。
5.誤り。Ⅲ型です。
AM 問58
解答:5
有名なゴロがあるのでそれを覚えていれば解けます。後腹膜臓器について詳しく知りたい方は各自で調べてください。
1.誤り。
2.誤り。
3.誤り。横行結腸は後腹膜臓器ではないのでこの選択肢は誤りとなります。
4.誤り。
5.正しい。
臨床血液学(AM59~67)
AM 問59
解答:3
1.誤り。好塩基球の分化を誘導するサイトカインは特にありません。
2.誤り。好酸球の分化増殖を誘導するサイトカインはIL-5です。IL-4はB細胞の増殖やマスト細胞の分化促進に関与します。
3.正しい。CSFはcolony stimulating factorの略で,増殖に関与する因子です。その前についているGはgranulocyte,顆粒球の意味です。
4.誤り。単球はM-CSF(macrophage colony stimulating factor)によって増殖・分化が誘導されます。
5.誤り。リンパ球を分化増殖させるサイトカインはIL-1・IL-2・IFN-γなどがあります。M-CSFは4の選択肢で述べたとおり,単球・マクロファージの分化増殖因子です。
AM 問60
解答:1
65回の国家試験の血液分野で唯一悩むとすればこの問題でしょう。
ただ,類似問題は過去にも数問出題されていますので,考え方を頭に入れておけば簡単です。
もちろん,細胞表面抗原(CD)については確実に覚えておく必要があります。
(1)T細胞
CD2・CD3・CD5・CD7・CD4(ヘルパーT)・CD8(細胞障害性T)
(2)B細胞
CD19・CD20・CD22
(3)NK細胞
CD16・CD56
(4)赤血球
CD235a
(5)白血球
CD13・CD33(骨髄系)
CD14(骨髄単球系)
CD45(全般)
(6)血小板・巨核球
CD41・CD61
(7)造血幹細胞
CD34
(1)T-ALL(T細胞性の急性リンパ性白血病)
CD2・cyCD3(細胞質内CD3)・CD5・CD7(+)
※これについては覚える必要はなく,参考程度でよい。
(2)成人T細胞白血病(ATL)
CD3・CD4・CD25(+)
CD7・CD8(-)
(3)後天性免疫不全症候群(AIDS)
CD4・CD8
CD4/CD8比↓
(4)B-ALL(B細胞性の急性リンパ性白血病)
CD10・CD19・CD20(+)
CD5(-)
(5)慢性リンパ性白血病(CLL)
CD5・CD19・CD20(+)
CD10(-)
(6)発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)
CD55・CD59(-)
(7)多発性骨髄腫
CD38(+)
(8)古典的Hodgkinリンパ腫
CD15・CD30(+)
FCM解析結果を見ると,CD3(-)であることから,Tリンパ球系(選択肢の2と5)は除外できます。後は,上記の所見を知っておけば解けます。
1.正しい。消去法で解けます
2.誤り。CD3(-)の所見からT細胞は除外できます。
3.誤り。B-ALLであればCD10(+),T-ALLであればCD3(+)の所見が得られるはずです。
4.誤り。正常B細胞にはCD5はほとんど発現しません。
5.誤り。CD3(-)の所見からT細胞は除外できます。
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