第65回臨床検査技師国家試験(PM21~40)の解説です。
第65回臨技国試のPM問21~40の解説です。
難易度は主観で1~10の10段階でつけています。
1:超簡単
2~3:簡単
4~5:普通
6~7:やや難問
8~9:難問
10:超難問
第65回臨技国試についてをまとめたページもありますので,まだ見ていない方はぜひそちらもご参照ください。
問題の出典:厚生労働省ホームページ 第65回臨床検査技師国家試験の問題および正答について 午後問題(https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/topics/dl/tp190415-07b_01.pdf)
臨床生理学(PM16~28)
PM 問21
解答:3
フローボリューム曲線の形はよく出題されます。
健常人の形と,特に形が特徴的な3種類を必ず覚えておきましょう。
呼出から立ち上がりまでが急峻で,きれいな曲線を描きます。
ピークフローが極端に低下し,曲線自体が下に凸の形を呈します。全体的に縦に縮こまった曲線となります。
※下に凸:ピークフローと最大呼気位を直線で結び,これよりも青色で示す線が下側に来ている状態。
気管支喘息では,ここまでの下に凸の曲線を描かないものの,下に凸の形を呈する点は同じです。
肺気量が極端に低下します。全体的に横に縮こまった曲線となります。
曲線の一部に平坦(プラトー)な部分が出現します。
1.誤り。きれいな曲線を描いており,健常人のフローボリューム曲線です。
2.誤り。やや下に凸の形を呈しており,気管支喘息が考えられます。
3.正しい。肺気量が低下しており,拘束性換気障害が考えられます。肺線維症は拘束性換気障害なので,これが正解です。
4.誤り。典型的な下に凸のフローボリューム曲線であり,COPDなどが考えられます。
5.誤り。形はやや異なりますが,平坦な部分が出現していることから,上気道閉塞が考えられます。
PM 問22
解答:2
空気の音速は約340m/s,水の音速はその約4.5倍の約1500m/sです。
そして,生体内の臓器の音速は,水とほぼ同じといわれています。
したがって,2が正解となります。(簡単な問題ですが,私は勘違いして間違えました。切腹ものです)
なお,臓器によって伝播速度は異なりますが,超音波診断装置の音速は1530m/sに統一されています。骨は最も音速が速く,平均速度の約2倍です。
さらに,音速と音響インピーダンスは比例し,音響インピーダンスの差が大きいほど,より強い反射が起こります。超音波で骨や結石,肺が観察できないのは,臓器の音速(音響インピーダンス)の差が大きく,超音波が反射してしまうからです。(音響陰影の原因でもあります)
- 臓器名 :音速 音響インピーダンス
- 肺(空気):340m/s 約0.00004
- 臓器平均 :1530m/s 約1.5
- 骨 :3360m/s 約7.8
1・3・4・5.誤り。
2.正しい。
PM 問23
解答:1
実習で超音波装置を使っていれば簡単ですね。腎臓です。
なお,腎臓の左にあるものは肝臓です。
この右肋間走査は肝臓と腎臓を同時に観察できるので,肝腎コントラストを観察するのに用いられます。肝腎コントラストが増強していれば脂肪肝が疑われます。
PM 問24
解答:3
難問。
(腹側)膀胱→子宮・膣・卵巣→直腸(背側)なので,3が正解です。
PM 問25
解答:2
62/am22のプール問題です。過去問を対策していれば余裕です。
この問題に限らず,国家試験は過去問とほぼ同じような問題が出題されやすいので,過去問対策は手を抜かずに行いましょう。最低でも5年分は必須。
<探触子(プローブ)の種類>
名称 | 周波数 | 対象臓器・組織 |
リニア | 7.0~10.0MHz | ・血管(頸動脈や下肢静脈など) ・~~腺(乳腺や甲状腺など) ※前立腺を除く |
コンベックス | 3.5~5.0MHz | ・腹部全般 (肝臓,胆嚢,膵臓,脾臓,腎臓,副腎) ・骨盤 (膀胱,前立腺,子宮,卵巣) |
セクタ | 2.5~3.5MHz | ・心臓 (上行大動脈と大動脈弓を含む) ・頭部(脳内血管など) |
リニア:「リニア」から線路をイメージして,「血管」「~~腺」(どちらも線のイメージ)を覚える。
コンベックス:「腹と腰」と覚える。
セクタ:接地面が小さいので,生命の維持に重要な「心臓」「頭」を撃ち抜けると覚える。
1.誤り。リニアプローブを用いるため,最も周波数が高いです。
2.正しい。心臓はセクタプローブを用い,最も周波数が低いです。
3~5.誤り。いずれもコンベックスプローブを用いるため,周波数はセクタよりも高いです。
PM 問26
解答:1
対策がしづらいため難問です。取り敢えずBasedow病と橋本病だけ覚えておきましょう。
- 橋本病
甲状腺のびまん性腫大
低エコー - Basedow病
甲状腺のびまん性腫大
血流増加(カラードプラやパワードプラで鑑別可能)
本問ではBモードにて甲状腺の腫大を認め,パワードプラで血流増加を認めるため,Basedow病が考えられます。
1.正しい。
2~5.誤り。
PM 問27
解答:2
眼底検査の勉強をしていれば簡単なのでしょうが,眼底検査の問題自体出題が稀で,なかなかそこまで手が回らないという人も多いのではないのでしょうか。
出題率の低い問題よりも,出題率の高い問題を先に対策したいところなので,ここは余裕があれば勉強しましょう。
<単純糖尿病網膜症>
小さな点状出血,それよりやや大きめの斑状出血,毛細血管が膨らんでできる毛細血管瘤,脂肪やたんぱく質が沈着してできた白斑(硬性白斑),血管がつまってできた白斑(軟性白斑)などが眼底所見として認められます。
1・3~5.正しい。いずれも単純糖尿病網膜症に認められます。
2.誤り。血管新生は網膜症がかなり進行しないと起こりません。
PM 問28
解答:5
こちらも難問中の難問。解けなくても問題ありません。
筋電図検査のうち,針筋電図検査は,脊髄にある前角細胞と呼ばれる運動神経以下の運動神経と筋肉の異常を検出するために行われます。
一方,表面筋電図検査は四肢や顔面などに不随意に起こる運動がみられる場合に有用です。この検査の利点は,針電極や電気刺激を用いないので,それほどの疼痛を伴わないことです。
1~4.正しい。針筋電図検査が有用。
3.誤り。ミオクローヌスとは自分の意志とは無関係な運動を起こす不随意運動の1つであり,これは表面筋電図検査が用いられます。他に表面筋電図検査対象として,振戦を起こす病気やチック,舞踏病などがあります。…が,難しいので,余裕があれば覚える程度で十分でしょう。
臨床化学(PM29~44)
PM 問29
解答:4
遊離脂肪酸は食後低下する検査項目としてよく出題されます。
- トリグリセリド(中性脂肪・TG)
- インスリン
- 血糖
- C-ペプチド
- 胆汁酸
<食後低下する主な検査項目>
- 遊離脂肪酸
- 無機リン
- カリウム
そして,食後低下する理由を考えれば答えにたどり着きます。
遊離脂肪酸は空腹時などの血糖が低い状態で増加し,血糖が高い状態では減少します。
また,血糖を増やす作用のあるホルモン(GHやコルチゾール,アドレナリンなど)で増加し,血糖を減らす作用のあるホルモン(インスリン)で低下します。
これは,血糖を増やすホルモンは基本的に血糖が低い状態で分泌され,血糖を減らすホルモンは基本的に血糖が高い状態で分泌されるからと考えるとわかりやすいはずです。
以上より,4が正解です。
1~3・5.誤り。
4.正しい。
PM 問30
解答:4
リン脂質にはホスファチジン酸を骨格としたグリセロリン脂質と,セラミドを骨格としたスフィンゴリン脂質が存在します。
スフィンゴリン脂質はその名の通り,「スフィンゴ」が名称につきます。
1~3・5.誤り。いずれもグリセロリン脂質です。
4.正しい。スフィンゴミエリンはグリセロリン脂質ではなく,スフィンゴリン脂質です。
PM 問31
解答:3
超難問。実力で解ければ相当レベルが高いです。恐らく上位1%に入れるレベルだと思います。
なので,解けなくても問題ありません。
1.誤り。LPL・アポC2が原因です。
2.誤り。LDL受容体が原因です。
3.正しい。アポEが原因です。
4.誤り。IRI(インスリン)が原因です。
5.誤り。LPL・アポC2が原因です。
PM 問32
解答:-(不適問題)
残念ながら正答なし不適問題になってしまいましたが,この計算問題自体は過去にも出題されています。
臨床化学ではほぼ毎年計算問題が1題出題されるので,対策しておくと心強いです。(計算が苦手な文系脳の人は捨てても構いませんが,計算式自体は数学よりもだいぶん少ないので,公式さえ覚えてしまえば簡単です)
$$x=\frac{c}{V \times t}$$
x:酵素活性[U/L]
c:基質変化量[μmol]
V:全溶液量[L]
t:時間[min]
※単位に注意!特にc(基質変化量)の単位はμが付くので十分注意しましょう。
後は,問題文から必要な数値を回収し,計算式に当てはめるだけです。
問題文に時間は書いてないので,今回は1分と仮定します。
すると,
V=10+290=300μL=300×10-6 L=3.0×10-4 L
t=1min
となります。
問題はcです。公式には「基質変化量」と書いてありますが,CK測定の基質にはグルコースが用いられます。したがって,グルコースの量0.9mg,分子量180を使って求めましょう。
モル濃度は,質量を分子量で割ればよいので
となります。
公式ではcはμmolなので,必ず単位をμmolに合わせておきましょう。
最後に,それぞれを公式に代入します。
$$x=\frac{5}{3.0\times 10^{-4}\times 1}=1.67\times 10^{4}$$
よって,答えは16700U/L(!?)となります。
PM 問33
解答:4
まずは総蛋白(TP)とアルブミン(Alb),そして尿蛋白の基準値を確認しましょう。
- 総蛋白:6.7~8.3g/dL
約8.0と覚えましょう。
増加:多発性骨髄腫,慢性炎症など
減少:肝硬変,ネフローゼ症候群,低栄養など - アルブミン:3.7~4.9g/dL
総蛋白の半分と覚えましょう。
増加:なし
減少:肝硬変,ネフローゼ症候群,低栄養など - 尿蛋白:30mg/dL(1+)以上で陽性
陽性:ネフローゼ症候群,腎不全,腎炎など
蛋白↓,アルブミン↓と尿蛋白陽性から,すぐにネフローゼ症候群を疑うことができます。
1.誤り。尿蛋白は陽性とはなりません。
2.誤り。アルブミンは低下しますが,グロブリンや急性相反応蛋白産生亢進により,総蛋白は増加します。また,尿蛋白に異常は見られません。
3.誤り。アルブミンは低下しますが,グロブリン増加により,総蛋白は増加します。また,尿蛋白に異常は見られません。
4.正しい。
5.誤り。アルブミンや尿蛋白に異常は見られません。
PM 問34
解答:3
こちらも過去問では計算問題として出題されました。今回は公式についてを問う問題です。
x:酵素活性[U/L]
ΔA:吸光度変化
t:時間[min]
ε:モル吸光係数[L/mol・cm]
l:光路長[cm]
VR:試薬量(Reagent)[μL]
VS:試料量(Sample)[μL]
※単位に注意!試薬量・試料量がmLの場合は106ではなく,103を掛ける。
1.誤り。血清量=試料量はVSに相当し,酵素活性算出に必要です。
2.誤り。最終液量はVR+VSに相当し,酵素活性算出に必要です。
3.正しい。波長は必要ありません。
4.誤り。モル吸光係数はεに相当し,酵素活性算出に必要です。
5.誤り。1分間の吸光度変化量は$\frac{\Delta A}{t}$に相当し,酵素活性算出に必要です。
PM 問35
解答:2・3
試料中に存在し,目的成分以外の物質かつ測定値を変化させる可能性のある物質を共存物質(干渉物質)と言います。干渉物質にはビリルビン,ヘモグロビン,乳び,アスコルビン酸等があります。
1・4・5.誤り。
2・3.正しい
PM 問36
解答:1・5
尿酸の反応経路については簡単でいいので勉強しておきましょう。
なお,反応系の最初の式は覚えておきましょう。
尿酸 + 2H2O + O2 → CO2 + H2O2 + アラントイン
2H2O2 + 4-アミノアンチピリン + フェノール → 赤色キノン色素 + 4H2O
反応経路中の黄色蛍光色で示した部分が,試薬に含まれているものになります。
1.正しい。ウリカ=uric=尿酸(uric acid)
2.誤り。ウレアーゼは尿素窒素の測定に用います。(ウレア=urea=尿素)
3.誤り。
4.誤り。アラントインは尿酸代謝産物であり,試薬には含まれていません。
5.正しい。
PM 問37
解答:3・5
<吸光度変化をとらえる測定法の吸光度測定波長と吸光度の変化>
名称 | 波長 (380~780nm=可視部) (~380nm=紫外部) | 吸光度変化 |
・血糖(グルコースオキシダーゼ法) ・TG(グリセロール消去法) ・T-cho(コレステロールオキシダーゼ法) ・クレアチン,クレアチニン ・尿酸(ウリカーゼ・ペルオキシダーゼ法) | 505nm(赤色キノン色素) ※過酸化水素 ・ペルオキシダーゼ系 (生じたH2O2をPODで 反応させて呈色) | ↑ |
・総蛋白(Biuret法) | 545nm | ↑ |
・尿素窒素 (ウレアーゼ・グルタミン酸脱水素酵素法) ・AST(JSCC勧告法) ・ALT(JSCC勧告法) ・ChE(JSCC勧告法) | 340nm(NADH) | ↓ |
・尿酸(ウリカーゼ・紫外部吸収法) | 293nm | ↑ |
・ALP(4-ニトロフェニルリン酸基質法) | 405nm(可視部) | ↑ |
・γ-GT(JSCC勧告法) | 410nm(可視部) | ↑ |
・ビリルビン (ビリルビンオキシダーゼ法) (バナジン酸酸化法) | 450nm | ↓ |
上表に示すもの以外は大体340nm・吸光度↑となります。
PM 問38
解答:4
ビタミンの問題はそこそこ出題されます。
出題される問題は欠乏症・水溶性/脂溶性・抗酸化作用の3つがほとんどなので,最低でもこれらは押さえておきましょう。
なお,今回はビタミン~~ではなく,別名での出題です。別名もしっかり覚えておきましょう。
脂溶性ビタミンは過剰摂取で中毒を起こします。
脂溶性ビタミンを覚えておけば水溶性は消去法で行けます。
「ビタミンだけ(DAKE)」と覚えておきましょう!
1.誤り。ビタミンDの別名です。ビタミンDは脂溶性です。
2.誤り。ビタミンEの別名です。ビタミンEは脂溶性です。
3.誤り。ビタミンKの別名です。ビタミンKは脂溶性です。
4.正しい。ビタミンB2の別名です。ビタミンB群は水溶性です。
5.誤り。ビタミンAの別名です。ビタミンAは脂溶性です。
PM 問39
解答:3
超難問。解けなくても全く問題ありません。
1・2・4・5.誤り。
3.正しい。アンモニアの除去系としては肝臓の尿素回路以外に,酸アミド生成と呼ばれる経路もあります。酸アミド生成は全組織に存在し,主としてアンモニアからグルタミン(Gln)を生成します。
PM 問40
解答:1・3
近年頻出の問題。今後も出題が予想されるので必ず押さえておきましょう。
- オステオカルシン(OC)
- ALP3(骨型ALP,BAP)
- Ⅰ型プロコラーゲンN末端プロペプチド(PINP)
- Ⅰ型プロコラーゲンC末端プロペプチド(PICP)
<骨形成マーカーのゴロ>
「形成外科のプロ,末端にある骨を押す」
形成:形成マーカー
プロ末端:プロコラーゲン末端プロペプチド
ある骨:骨型ALP
押す:オステオカルシン
※骨形成マーカーを覚えておけば骨吸収マーカーは消去法で行ける!
<骨吸収マーカー>
- デオキシピリジノリン(DPD)
- Ⅰ型コラーゲン架橋N-テロペプチド(NTx)
- Ⅰ型コラーゲン架橋C-テロペプチド(CTx)
- 酒石酸抵抗性酸性ホスファターゼ(TRACP-5b)
1・3.正しい。骨形成マーカーです。
2・4・5.誤り。いずれも骨吸収マーカーです。
コメント