第65回臨床検査技師国家試験(AM61~80)の解説です。
【更新履歴】
2023.1.10
・問65の解説(ATL)を更新しました。
第65回臨技国試のAM問61~80の解説です。
難易度は主観で1~10の10段階でつけています。
1:超簡単
2~3:簡単
4~5:普通
6~7:やや難問
8~9:難問
10:超難問
第65回臨技国試についてをまとめたページもありますので,まだ見ていない方はぜひそちらもご参照ください。
問題の出典:厚生労働省ホームページ 第65回臨床検査技師国家試験の問題および正答について 午前問題(https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/topics/dl/tp190415-07a_01.pdf)
臨床血液学(AM59~67)
AM 問61
解答:5
ビタミンB12欠乏性貧血だからといって悪性貧血とは限りません。
悪性貧血は抗内因子抗体や抗胃壁細胞抗体などの自己抗体によって内因子が低下することが認められて初めて診断されることを覚えておきましょう。
1.誤り。出血性貧血の原因です。
2.誤り。内因子産生が途絶えることにより巨赤芽球性貧血(ビタミンB12欠乏性貧血)の原因となります。悪性貧血と似ていますが,自己抗体が出現しないため悪性貧血とは言いません。
3.誤り。腎性貧血の原因です。
4.誤り。慢性疾患に伴う貧血(ACD)の原因です。
5.正しい。これが悪性貧血の原因です。自己抗体陽性という点に注意しましょう。
AM 問62
解答:1
血小板にはα顆粒と濃染顆粒の2種類の顆粒があり,それぞれに様々な物質が含まれています。
特に,濃染顆粒に含まれる物質は必ず覚えておきたいところです。
- ADP
- ATP
- セロトニン
- カルシウムイオン
<α顆粒に含まれる物質(代表的なもの)>
- von Willebrand因子
- 血小板由来成長因子(PDGF)
- 血小板第4因子(PF4)
- フィブリノゲン
AM 問63
解答:4
鉄の体内分布は,ヘモグロビン鉄が体内鉄の約2/3,貯蔵鉄(フェリチンやヘモジデリンなど)が約1/4,その他の鉄(組織鉄・ミオグロビン鉄・血清鉄など)が約1/12と言われています。
1・2・5.誤り。全て合わせて約1/12です。
3.誤り。約1/4です。
4.正しい。約2/3であり,体内鉄の中で最も多いです。
AM 問64
解答:5
球状赤血球が出現する疾患では抵抗性が減弱し,逆に菲薄赤血球や標的赤血球が出現する疾患では抵抗性が増強します。
(1)検査法
・Giffin-Sanford法
・Parpart法
(2)浸透圧抵抗性が減弱する疾患
・遺伝性球状赤血球症(HS)
・自己免疫性溶血性貧血(AIHA)
※球状赤血球が出現する疾患
(3)浸透圧抵抗性が増強する疾患
・鉄芽球性貧血
・サラセミア
※菲薄赤血球や標的赤血球が出現する疾患
1.誤り。抵抗性が増強するらしいですが,覚える必要はありません。
2・3.誤り。これらの疾患では抵抗性が増強します。
4.誤り。浸透圧抵抗試験に異常は見られません。
5.正しい。抵抗性が減弱します。HSだけでなく,自己免疫性溶血性貧血(AIHA)でも抵抗性が減弱します。
AM 問65
解答:3
画像では典型的なflower cell(核が花びらのようになったもの)が出現しているため,成人T細胞白血病(ATL)が正解となります。
AM 問66
解答:3
JAK2遺伝子のV617F(バリンからフェニルアラニンへの変異)は真性赤血球増加症のほとんどの症例で認められます。また,真性赤血球増加症ほどではありませんが,本態性血小板減少や原発性骨髄線維症(いずれもおよそ半数の症例)でも認められます。
62pm66の類似問題であるため,過去問を復習していれば難なく解けたはずです。
1・3・4・5.誤り。
2.正しい。他に本態性血小板減少や原発性骨髄線維症でも認められることがあります。
AM 問67
解答:1・3
血小板数・PT・APTTの関係の問題は頻出なので必ず覚えておきましょう!
以下の図を頭に入れておけば覚えやすいです。
1.正しい。APTTも延長します。
2.誤り。どちらも異常は見られません。APTTは延長します。
3.正しい。APTTも延長します。
4.誤り。どちらも異常は見られません。出血時間の延長やAPTTの延長は見られます。
5.誤り。PT延長は見られません。
臨床微生物学(AM68~78)
AM 問68
解答:1
通性嫌気性菌・偏性嫌気性菌・微好気性菌の代表例は必ず覚えておきましょう!
(偏性好気性菌は覚えずとも消去法で行けます)
(1)通性嫌気性菌
酸素の有無にかかわらず発育可能。
・coccus系
(Staphylococcus・Streptococcus・Enterococcus)
・腸内細菌科細菌
・Vibrio spp.
・Haemophilus spp.
・Aeromonas spp.
・Pasteurella spp.
・Listeria spp.
(2)偏性嫌気性菌
酸素がない環境で発育可能。
・Peptostreptococcus spp.
・Propionibacterium spp.
・Bacteroides spp.
・Veillonella spp.
・Prevotella spp.
・Porphyromonas spp.
・Fusobacterium spp.
・Clostridium/Clostridioides spp.
(3)微好気性菌
3~15%程度の,通常の空気よりも酸素が少ない条件下で発育可能。
・Campylobacter spp.
・Helicobacter spp.
1.正しい。微好気性菌です。
2.誤り。偏性嫌気性菌です。
3.誤り。偏性好気性菌です。
4.誤り。偏性好気性菌です。
5.誤り。通性嫌気性菌です。
AM 問69
解答:3
消毒薬の勉強をしていれば常識問題といってもいいでしょう。
1.誤り。中水準です。
2.誤り。中水準です。
3.正しい。高水準です。
4.誤り。低水準です。
5.誤り。中水準です。
AM 問70
解答:5
この問題のキーワードはオプトヒン感性。これだけで答えが出せます。
それ以外にも,髄膜炎・Gram陽性球菌・BTB乳糖寒天で発育しない・カタラーゼ陰性・血寒でα溶血などヒント多彩ですので,この問題から学べることは多いですね。
(1)新生児
・Streptococcus agalactiae
・Escherichia coli
(2)成人
・Streptococcus pneumoniae
・Haemophilus influenzae
・Neisseria meningitidis
<試験でよく出るStreptococcus spp.の性状比較>
菌名 | S. pyogenes | S. agalactiae | S. pneumoniae |
Streptococcus共通 | Gram陽性球菌・カタラーゼ[-]・オキシダーゼ[-] 普通寒天やBTB乳糖寒天に発育× | ||
溶血性 | β溶血 | β溶血 | α溶血 |
莢膜 | × | × | ○ |
Lancefield分類 | A | B | - |
バシトラシン感受性 | ○ | × | × |
オプトヒン感受性 | × | × | ○ |
胆汁溶解試験 | - | - | + |
CAMP試験 | - | + | - |
馬尿酸加水分解試験 | - | + | - |
DNase | + | - | - |
1.誤り。Gram陽性桿菌です。
2.誤り。Gram陰性球菌です。
3.誤り。カタラーゼ陽性です。
4.誤り。オプトヒン耐性です。
5.正しい。上記の通りです。
AM 問71
解答:3
覚えるのが鬼畜といわれている腸内細菌の性状ですが,いりゅくりじんVを覚えていれば超簡単に解けます。(難易度1でもいいくらい)
各性状の+・-は「い(インドール)・りゅ(硫化水素)・く(クエン酸塩利用能)・りじん(リジン脱炭酸酵素)・V(VP試験)」の並びになっています。黄色が今回の問題で問われているリジン脱炭酸の部分です。
1.誤り。「しとろばくたー-とろ」→「-・+・+・-・-」。リジン脱炭酸酵素[-]なので×。
2.誤り。Proteus spp.はリジン脱炭酸酵素[-]なので×。
3.正しい。「さるもねら-チるね」→「-・+・-・+・-」。リジン脱炭酸酵素[+]なので○。
4.誤り。「all[-]」→「-・-・-・-・-」。リジン脱炭酸酵素[-]なので×。
5.誤り。「all[-]」→「-・-・-・-・-」。リジン脱炭酸酵素[-]なので×。
AM 問72
解答:5
微生物は覚えることが多くて大変ですが,この問題もそうであるように,各微生物のGram染色と,酸素要求性,オキシダーゼ陽性菌といった基本を覚えておけばそこまで苦戦することなく得点できます。(問題はそこを覚えるところですが……)
画像では,Gram陰性の細長い形状の菌が観察でき,嫌気ボトルに培養陰性であったことから,偏性好気性Gram陰性桿菌が予想されます。
後は,オキシダーゼ陽性であることから答えを絞ります。
ゴロは意味不明だが,これで国家試験に出てくるオキシダーゼ陽性菌の99%に対応できる。
「沖で100日以内に会える緑のヘビを使ったパスタを缶でプレゼントしてもらって,ヘリで爆死」
沖:オキシダーゼ
100:Bordetella pertussis(百日咳菌)
内:Neisseria spp.
会える:Aeromonas spp.
緑:Pseudomonas aeruginosa(緑膿菌)
ヘ:Haemophilus spp.
ビ:Vibrio spp.
パスタ:Pasteurella spp.
缶:Campylobacter spp.
プレゼント:Plesiomonas shigelloides
もらって:Moraxella spp.
ヘリ:Helicobacter spp.
爆死:Burkholderia cepacia
1.誤り。偏性好気性Gram陰性桿菌ですが,オキシダーゼ陰性です。
2・4.誤り。腸内細菌であるため通性嫌気性Gram陰性桿菌です。また,オキシダーゼは陰性です。
3.誤り。通性嫌気性Gram陰性桿菌です。
5.正しい。偏性好気性Gram陰性桿菌であり,オキシダーゼ陽性であるため,今回の問題の特徴に最も合致します。
AM 問73
解答:3・5
培地の滅菌法は,微生物系の培地の滅菌に用いられるオートクレーブ(高圧蒸気滅菌)と,細胞培養系の培地の滅菌に用いられるフィルター滅菌(濾過滅菌)があります。
細胞培養系培地は,高圧蒸気滅菌をすると,増殖因子等が変性・失活してしまうため濾過滅菌を用います。
1・2・4.誤り。これらの滅菌法は培地には用いられません。
3・5.正しい。上記の通り。
AM 問74
解答:1
真菌の問題は問われることが限られているので,きちんと対策できていれば確実に正解できます。
本問はその1つ,輸入真菌症についてです。
ゴロで対処可能。特に上4種類は必ず覚えること!
なお,輸入真菌はいずれも二形性真菌である。
「輸入ブラシは国試に必須!」
輸入:輸入真菌
ブラシ:Blastomyces dermatitidis
国試:Coccidioides immitis
Paracoccidioides brasiliensis
必須:Histoplasma capsulatum
+Penicillium marneffei
1.正しい。輸入真菌症の原因菌です。
2.誤り。黒色真菌の1種で,クロモミコーシスの原因菌です
3.誤り。癜風の原因菌です
4.誤り。ムコール症の原因菌です。
5.誤り。二形性真菌の代表例です。
AM 問75
解答:1
マイコプラズマ・リケッチア・クラミジア・ウイルスの特徴を問う問題も高頻度で出題されます。それぞれの特徴をきっちり抑えておきたいところです。
<マイコプラズマ・リケッチア・クラミジア・ウイルスの特徴>
特徴 | マイコプラズマ | リケッチア | クラミジア | ウイルス |
生きた細胞の必要性 (偏性細胞内寄生) | × | ○ | ○ | ○ |
二分裂増殖 | ○ | ○ | ○ | × |
光学顕微鏡観察 細胞壁の有無 濾過滅菌での滅菌 | × | ○ | ○ | × |
核酸の構成 | DNA+RNA | DNA+RNA | DNA+RNA | DNA or RNA |
リボソームの有無 | ○ | ○ | × | × |
抗生物質感受性 | ○ | ○ | ○ | × |
インターフェロン感受性 | × | × | ○ | ○ |
1.正しい。ウイルス○/マイコ○。
2.誤り。ウイルス×/マイコ○。
3.誤り。ウイルス○/マイコ×。
4.誤り。ウイルス○/マイコ×。
5.誤り。ウイルス○/マイコ×。
AM 問76
解答:5
培地の問題もほぼ毎年出題されます。対策はほぼ必須でしょう。
1.誤り。BBE寒天培地はBacteroides fragilis groupの選択培地です。
2.誤り。Skirrow寒天培地はCampylobacter spp.・Helicobacter spp.の選択培地です。
3.誤り。Legionella pneumophilaは血液寒天培地に発育できません。
4.誤り。GC寒天培地はNeisseria gonorrhoeaeの分離用培地です。
5.正しい。
AM 問77
解答:2
メチシリンはペニシリン系抗菌薬の1つで,ペニシリナーゼ(ペニシリン分解酵素)に対して分解されにくい性質を持ちます。
このメチシリンに耐性を示す黄色ブドウ球菌のことをMRSA(methicillin resistant Staphylococcus aureus)といいます。
しかしながら安定性の問題で,現在はメチシリンの代わりに,メチシリンと類似の抗菌・耐性菌活性を持つオキサシリン:MPIPC + セフォキシチン:CFXをMRSA検査用に用います。
1.誤り。
2.正しい。
3~5.誤り。
AM 問78
解答:1・2
TCBS寒天培地で黄色コロニーを形成するということは,つまり白糖を分解するということ。
それさえわかれば,後は白糖分解能を有するVibrio spp.を押さえておけば簡単です。
Vibrio spp.の白糖分解能・TCBS寒天培地の見方は,こちらの記事を参考にしてください。
1・2.正しい。白糖分解能(+)なので,黄色コロニーを形成します。
3~5.誤り。白糖分解能(-)なので,青緑色コロニーを形成します。
臨床免疫学(AM79~89)
AM 問79
解答:2
パッと問題を見ただけでは意味が分かりにくいですが,要は,「外から抗体を入れること(=受動免疫)で感染を防ぐことができる(=感染防止対策)ものはどれか」ということです。つまり,中和抗体のある疾患を選べばいいということになります。
感染力や毒性といった活性を持つ抗原の活性を減退させる抗体。
中和抗体陽性=感染既往・感染治癒・ワクチン接種済みを表す。
国試では以下の2つを覚えておけばOK!
・IgG-HA抗体(HAV抗体)
・HBs抗体
1・3・4.誤り。ワクチン(能動免疫)による予防はありますが,有効な抗体はないため,受動免疫は意味がありません。
2.正しい。HBs Abは中和抗体であり,これを投与することでHBVの感染を防止することができます。もちろん,ワクチン(能動免疫)による予防も可能です。
5.誤り。2019年現在では,ワクチンも有効な抗体もありません。唯一の対応は進行を防ぐことです。
AM 問80
解答:5
白血球分画の基準値を知っておかなければ解けない問題です。
CBC・白血球分画の基準値は血液分野でも頻出なので絶対に覚えましょう!
<CBC・白血球分画基準値>
※基準値は各施設ごとによって異なります。ここでは国家試験に対応できる基準値を掲載しています。
項目 | 基準値 | パニック値 | ||
赤血球数(RBC)[104/μL] | M:400~550 F:350~500 | |||
ヘモグロビン(Hb)[g/dL] | M:13.5~18.0 F:12.0~15.0 | <6.0 | ||
ヘマトクリット(Ht)[%] | M:40~50 F:35~45 | <20 | ||
平均赤血球容積(MCV)[fL] | 81.0~100.0 | |||
平均赤血球ヘモグロビン濃度(MCHC)[% or g/dL] | 31.0~35.0 | |||
平均赤血球ヘモグロビン量(MCH)[pg] | 28.0~32.0 | |||
白血球数(WBC)[/μL] | 4000~9000 | <2000 | ||
白血球分画 | 好中球 | 百分率[%] | 40~70 | |
絶対数[/μL] | 1600~6300 | |||
好酸球 | 百分率[%] | 1~5 | ||
絶対数[/μL] | 40~450 | |||
好塩基球 | 百分率[%] | 0~1 | ||
絶対数[/μL] | 0~90 | |||
単球 | 百分率[%] | 2~6 | ||
絶対数[/μL] | 80~540 | |||
リンパ球 | 百分率[%] | 25~50 | ||
絶対数[/μL] | 1000~4500 | |||
血小板数[104/μL] | 15~35 | <5 | ||
網赤血球数 | 百分率[%] | 0.8~2.2 | ||
絶対数[104/μL] | 3.0~9.0 |
1.誤り。2~6%なので,白血球の中で4番目に多いです。
2.誤り。1~5%なので,白血球の中で5番目に多いです。
3.誤り。40~70%なので,白血球の中で最も多いです。
4.誤り。リンパ球のうち約20%を占めるため,25×0.2~50×0.2=5~10%となります。白血球の中で3番目に多いです。
5.正しい。リンパ球のうち約70%を占めるため,25×0.7~50×0.7=17.5~35%となります。白血球の中で2番目に多いです。
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