国家試験で出題される細菌各論問題のうち,腸内細菌目細菌について解説します!腸内細菌が嫌いで嫌いでどうしようもない人でも,この記事を見れば見方が180度変わるかも!?
【更新履歴】
2021.7.11
・CLSI M100の表記に合わせて,腸内細菌科細菌(Enterobacteriaceae)を腸内細菌目細菌(Enterobacterales)に変更しました。
・Enterobacter aerogenesを現在の正式名称であるKlebsiella aerogenesに変更しました。
各見出しの重要度は,過去の臨床検査技師国家試験(第52回~最新回まで)の出題率や覚えやすさなどを考慮して主観で表記しています。国家試験を受ける学生以外の方は無視してかまいません。
このページで紹介する菌種(重要度:★★★★★)
- Escherichia spp.
- Escherichia coli
- Shigella spp.
- Shigella dysenteriae
- Shigella flexneri
- Shigella boydii
- Shigella sonnei
- Shigella dysenteriae
- Salmonella spp.
- Salmonella enterica subsp. enterica serovar Enteritidis
(Salmonella Enteritidis) - Salmonella enterica subsp. enterica serovar Typhi
(Salmonella Typhi) - Salmonella enterica subsp. enterica serovar Paratyphi A
(Salmonella Paratyphi A)
- Salmonella enterica subsp. enterica serovar Enteritidis
- Yersinia spp.
- Yersinia pestis
- Yersinia enterocolitica
- Yersinia pestis
- Klebsiella spp.
- Klebsiella pneumoniae
- Klebsiella oxytoca
- Klebsiella aerogenes(=Enterobacter aerogenes)
- Klebsiella pneumoniae
- Enterobacter spp.
- Enterobacter cloacae
- Enterobacter cloacae
- Citrobacter spp.
- Citrobacter freundii
- Serratia spp.
- Serratia marcescens
- Proteus spp.
- Proteus mirabilis
- Proteus vulgaris
- Proteus mirabilis
- Morganella spp.
- Morganella morganii
- Providencia spp.
- Providencia rettgeri
- Providencia stuartii
- Providencia rettgeri
- Plesiomonas spp.
- Plesiomonas shigelloides
腸内細菌の基本(重要度:★★★★★)
腸内細菌の定義
腸内細菌目に属する細菌の基本的共通性状は以下の5項目です。
- 通性嫌気性Gram陰性桿菌
- 普通寒天培地によく発育
- ブドウ糖を発酵して酸または酸とガスを産生
※ブドウ糖発酵=ブドウ糖嫌気的分解 - 硝酸塩還元試験陽性(硝酸塩→亜硝酸塩)
- オキシダーゼ陰性(Plesiomonas spp.は例外!)
この定義に追加して,運動性を持つ腸内細菌は周毛であることも共通性状です。
※Plesiomonas shigelloidesは極単毛
乳糖・白糖分解菌
何故覚える必要があるの?
乳糖・白糖を分解する菌は鑑別に有用であり,国家試験でも頻出であるためです。
なお,腸内細菌を分離・確認する培地のうち,乳糖・白糖分解能を鑑別できる培地は以下の5つです。
- BTB乳糖加寒天培地
乳糖分解○→黄色 - マッコンキー寒天培地
乳糖分解○→紅色(赤色) - SS寒天培地
乳糖分解○→紅色(赤色) - DHL寒天培地
乳糖 or/and 白糖分解○→紅色(赤色) - TSI寒天培地
乳糖 or/and 白糖分解○→斜面部黄色
乳糖分解菌
乳糖を分解する主な腸内細菌は以下の4つです。
なお,乳糖分解菌は白糖も分解します。ただし,E.coliは白糖を分解しないものも多いです。
- Escherichia coli
- Citrobacter freundii
- Klebsiella pneumoniae
- Klebsiella oxytoca
- Klebsiella aerogenes
- Enterobacter cloacae
「いい子にしてくれぇ~」
いい子に:Escherichia coli
して:Citrobacter freundii
くれ:Klebsiella
ぇ~:Enterobacter
白糖分解菌
乳糖は分解しないものの,白糖を分解する主な腸内細菌は以下の3つです。
- Serratia marcescens
- Yersinia enterocolitica
- Proteus vulgaris
「プロがブルガリアのセール(セエル)にエントリー」
プロがブルガリア:Proteus vulgaris
セ:Serratia marcescens
ール(エル)にエントリー:Yersinia enterocolitica
腸内細菌の性状(重要度:★★★★★)
腸内細菌の性状表
腸内細菌科細菌は種類が多いため,鑑別には生化学的性状が有用となります。
この生化学的性状は国家試験で頻出であるため,必ず覚えておかなければなりません。
まずはそれをまとめた表を見てみましょう。この表を丸ごと覚えられる人はそれでOKです。
ただ,これを暗記するのは普通の人には無理があります。
私も大学2~3年生の頃はこれを必死に覚えてましたが,人の記憶はあいまいで大体覚えたつもりでも次の日は忘れます。次の日が試験の日だとしてもです(笑)
特に大体の人は横(行)で覚えようとします。
ただ,この方法は記憶があいまいになってしまうとたちまち使えなくなる覚え方といっても過言ではありません。
と,完璧に覚えていないと試験当日にこうなること間違いなしです。こうなると中途半端な知識はむしろ邪魔になります。
なので,横(行)で覚えるのではなく,縦(列)で小分けにして覚えていきましょう。
乳糖・白糖分解
先程示したゴロで対処可能です。
運動性
陽性菌のほうが多いです。
なので,運動性陰性菌をゴリ押しで覚えましょう。
- Shigella
- Yersinia
- Klebsiella
「動けなくても食えるし」
動けなくても:運動性陰性
食:Klebsiella(Klebsiella aerogenesは例外)
える:Yersinia
し:Shigella(Citrobacterと混同しないように!)
※注:Klebsiella aerogenes(以前のEnterobacter aerogenes)は運動性があるので注意!
オキシダーゼ
原則陰性です。陽性なのはPlesiomonas shigelloidesだけなので覚えやすいはず。
DNase
Serratia marcescensだけ覚えておけばOKです。
IPA・PPA
陽性菌をゴリ押しで覚えましょう。
- Proteus
- Morganella
- Providencia
尿素分解
Klebsiella+IPA・PPA陽性菌と覚えましょう。
インドール・硫化水素・VP・クエン酸塩利用・リジン脱炭酸(いりゅくりじんV)
取り敢えず乳糖・白糖分解~尿素分解までを頑張って覚えてしまえばほぼ勝ちです。
残りの性状はいりゅくりじんVを使って覚えます。
なお,これらの陽性・陰性の鑑別法は以下の記事でまとめてあります。
「知らなかった!」という人は一度見ておきましょう。
いりゅくりじんV
いりゅくりじんVとは,インドール産生(い),硫化水素産生(りゅ),クエン酸塩利用能(く),リジン脱炭酸(りじん),VP試験(V)の5項目を各腸内細菌ごとに覚える方法です。
以下のサイトを参考にさせていただきました。
http://quny.boo.jp/scmbpdf/scmb2007-1-40_irikurijin.pdf
まずはインドール産生(い),硫化水素産生(りゅ),クエン酸塩利用能(く),リジン脱炭酸(りじん),VP試験(V)の並び順を覚えましょう。
次に,腸内細菌を名字+名前の要領で,以下の表のように覚えます。
腸内細菌の名字に対する腸内細菌の名前が,「い・りゅ・く・りじん・V 」の5性状に当てはめるべき文字順列であり,腸内細菌の名前に対応する性状が陽性になります。
例えば,E. coliであれば,「えしぇりきあ(名字)-えき(名前)」と覚えておきます。
そして,名字の最初5文字を書きだします。
え しぇ り き あ
このうち,名前の部分だけをマークします。
え しぇ り き あ
あとは「い りゅ く りじん V」の並びを確認し,マークをした部分が陽性の性状となります。
え しぇ り き あ
→インドール・リジン脱炭酸陽性
これで簡単に性状を覚えられます。
なお,以下の菌種はとある理由のため,いりゅくりじんV からは省きました。all[-]の菌種については覚えておきましょう。
- Shigella・Yersinia・Salmonella Paratyphi A
いりゅくりじん V が all[-] - Proteus mirabilis
VP・クエン酸が[±] - Morganella morganii
インドールのみ[+]
腸内細菌各論(重要度:★★★★★)
Eschelichia spp.
各種性状(Escherichia coli)
基礎編
- Gram染色・形態:Gram陰性桿菌
- 酸素要求性:通性嫌気性
- 莢膜:[-]
- 芽胞:[-]
- 鞭毛(運動性):[+]
- 普通寒天培地発育:[+]
- オキシダーゼ:[-]
応用編
- 乳糖分解:[+]
- 白糖分解:[±]
- IPA・PPA試験:[-]
- DNase産生:[-]
- 尿素分解:[-]
- いりゅくりじんV
→えしぇりきあ-えき- (え)インドール産生:[+]
- (しぇ)硫化水素産生:[-]
- (り)クエン酸塩利用能:[-]
- (き)リジン脱炭酸酵素:[+]
- (あ)VP試験:[-]
Escherichia coli(エシェリキア コリ)
基本事項
大腸菌とも呼ばれます。
ヒトの腸管内に常在する代表的な菌種です。
抗原構造
O抗原(耐熱性菌体抗原)とH抗原(易熱性鞭毛抗原)の特異性によって表現され,両抗原を組み合わせたものが血清型となります。
病原性
腸管感染症と腸管外感染症に大別されます。
腸管感染症は,特定の血清型との関連が知られています。また,腸管外感染症として主に尿路感染症や新生児髄膜炎があります。
- 腸管毒素原性大腸菌(ETEC)
- 易熱性腸管毒素(LT)と耐熱性腸管毒素(ST)を産生します。
- LTはコレラ毒素にきわめて類似します。
- 腸管組織侵入性大腸菌(EIEC)
- 腸管病原性大腸菌(EPEC)
- 腸管出血性大腸菌(EHEC)
- ベロ毒素(志賀毒素)を産生します。
- 代表的な血清型はO157:H7です。
O157はソルビトール非分解あるいは遅分解です。 - 感染症法で3類感染症に分類されます。
- 一部の患者(主に小児)では溶血性尿毒症症候群(HUS)を合併します。
- 腸管凝集付着性大腸菌(EAggEC)
Shigella spp.
各種性状
基礎編
- Gram染色・形態:Gram陰性桿菌
- 酸素要求性:通性嫌気性
- 莢膜:[-]
- 芽胞:[-]
- 鞭毛(運動性):[-]
- 普通寒天培地発育:[+]
- オキシダーゼ:[-]
応用編(S. sonnei以外・S. sonnei)
- 乳糖分解:[-]・[-→+(培養3day以降)]
- 白糖分解:[-]・[-→+(培養3day以降)]
- IPA・PPA試験:[-]
- DNase産生:[-]
- 尿素分解:[-]
- いりゅくりじんV
→all[-]- インドール産生:[-]
- 硫化水素産生:[-]
- クエン酸塩利用能:[-]
- リジン脱炭酸酵素:[-]
- VP試験:[-]
Shigella spp.(シゲラ)
基本事項
3類感染症である細菌性赤痢の原因菌です。
赤痢菌と総称されます。
選択分離培地はSS(Salmonella Shigella)寒天培地です。
亜群(血清型)
- Shigella dysenteriae
- A群に該当
- 腸管出血性大腸菌(EHEC)の産生するベロ毒素(志賀毒素)と同じ毒素を産生します。
- Shigella flexneri
- B群に該当
- Shigella boydii
- C群に該当
- Shigella sonnei
- D群に該当
- 乳糖・白糖を培養3日以降に遅れて分解します。
Salmonella spp.
各種性状
基礎編
- Gram染色・形態:Gram陰性桿菌
- 酸素要求性:通性嫌気性
- 莢膜:[-]
- 芽胞:[-]
- 鞭毛(運動性):[+]
- 普通寒天培地発育:[+]
- オキシダーゼ:[-]
応用編(S. Enteritidis・S. Typhi・S. Paratyphi A)
- 乳糖分解:[-]
- 白糖分解:[-]
- IPA・PPA試験:[-]
- DNase産生:[-]
- 尿素分解:[-]
- いりゅくりじんV
→さるもねら-るもね(S. Enteritidis)- (さ)インドール産生:[-]
- (る)硫化水素産生:[+]
- (も)クエン酸塩利用能:[+]
- (ね)リジン脱炭酸酵素:[+]
- (ら)VP試験:[-]
- いりゅくりじんV
→さるもねら-チるね(S. Typhi)- (さ)インドール産生:[-]
- (る)硫化水素産生:[+]
- (も)クエン酸塩利用能:[-]
- (ね)リジン脱炭酸酵素:[+]
- (ら)VP試験:[-]
- いりゅくりじんV
→all[-](S. Paratyphi A)- インドール産生:[-]
- 硫化水素産生:[-]
- クエン酸塩利用能:[-]
- リジン脱炭酸酵素:[-]
- VP試験:[-]
Salmonella spp.(サルモネラ)
基本事項
選択分離培地はSS(Salmonella Shigella)寒天培地です。
また,増菌培養されることもあり,その時に用いられる培地はセレナイト培地やラパポート培地があります。
Salmonella Enteritidis
正式名称はSalmonella enterica subsp. enterica serovar Enteritidis
です。
一般的なサルモネラ食中毒の原因菌です。
加熱不十分の肉や卵を使った料理の接種で感染します。
Salmonella Typhi
正式名称はSalmonella enterica subsp. enterica serovar Typhi
です。
3類感染症である腸チフスの原因菌です。
Vi抗原と呼ばれる莢膜様抗原を有します。Vi抗原はO凝集反応の発現抑制・食細胞による食菌阻止に関与します。Vi抗原は100℃・30min以上の加熱で消失します。
感染2~3週目に,血清学的診断に用いられる凝集反応であるWidal反応が陽性を示します。
Salmonella Paratyphi A
正式名称はSalmonella enterica subsp. enterica serovar Paratyphi A
です。
3類感染症であるパラチフスの原因菌です。
感染2~3週目に,血清学的診断に用いられる凝集反応であるWidal反応が陽性を示します。
Yersinia spp.
各種性状
基礎編
- Gram染色・形態:Gram陰性桿菌
- 酸素要求性:通性嫌気性
- 莢膜:[-]
- 芽胞:[-]
- 鞭毛(運動性):[-]
- 普通寒天培地発育:[+]
- オキシダーゼ:[-]
応用編(Y. pestis・Y. enterocolitica)
- 乳糖分解:[-]・[-]
- 白糖分解:[-]・[+]
- IPA・PPA試験:[-]
- DNase産生:[-]
- 尿素分解:[-]・[±]
- いりゅくりじんV
→all[-](Y. pestis)- インドール産生:[-]
- 硫化水素産生:[-]
- クエン酸塩利用能:[-]
- リジン脱炭酸酵素:[-]
- VP試験:[-]
- いりゅくりじんV
→覚えなくてよい(Y. enterocolitica)- インドール産生:[±]
- 硫化水素産生:[-]
- クエン酸塩利用能:[-]
- リジン脱炭酸酵素:[-]
- VP試験:[-]
Yersinia spp.(エルシニア)
基本事項
低温条件下でも発育・増殖できる菌種です。
- Yersinia spp.
- Listeria spp.
Yersinia pestis
1類感染症であるペストの原因菌です。
Klebsiella spp.
※K. aerogenesは都合上,Enterobacter spp.で紹介。
各種性状
基礎編(K. pneumoniae・K. oxytoca)
- Gram染色・形態:Gram陰性桿菌
- 酸素要求性:通性嫌気性
- 莢膜:[+]・[-]
- 芽胞:[-]
- 鞭毛(運動性):[-]
- 普通寒天培地発育:[+]
- オキシダーゼ:[-]
応用編(K. pneumoniae・K. oxytoca)
- 乳糖分解:[+]
- 白糖分解:[+]
- IPA・PPA試験:[-]
- DNase産生:[-]
- 尿素分解:[+]
- いりゅくりじんV
→くれぶしえら-ぶしえ(K. pneumoniae)- (く)インドール産生:[-]
- (れ)硫化水素産生:[-]
- (ぶ)クエン酸塩利用能:[+]
- (し)リジン脱炭酸酵素:[+]
- (え)VP試験:[+]
- いりゅくりじんV
→くれぶしえら-オキくぶしえ(K. oxytoca)- (く)インドール産生:[+]
- (れ)硫化水素産生:[-]
- (ぶ)クエン酸塩利用能:[+]
- (し)リジン脱炭酸酵素:[+]
- (え)VP試験:[+]
Enterobacter spp.
※K. aerogenesは都合上,Enterobacter spp.で紹介。
各種性状
基礎編
- Gram染色・形態:Gram陰性桿菌
- 酸素要求性:通性嫌気性
- 莢膜:[-]
- 芽胞:[-]
- 鞭毛(運動性):[+]
- 普通寒天培地発育:[+]
- オキシダーゼ:[-]
応用編(E. cloacae・K. aerogenes)
- 乳糖分解:[+]
- 白糖分解:[+]
- IPA・PPA試験:[-]
- DNase産生:[-]
- 尿素分解:[±]・[-]
- いりゅくりじんV
→えんてろばくたー-クロてば(E. cloacae)- (え)インドール産生:[-]
- (ん)硫化水素産生:[-]
- (て)クエン酸塩利用能:[+]
- (ろ)リジン脱炭酸酵素:[-]
- (ば)VP試験:[+]
- いりゅくりじんV
→くれぶしえら-ぶしえ(K. aerogenes)- (く)インドール産生:[-]
- (れ)硫化水素産生:[-]
- (ぶ)クエン酸塩利用能:[+]
- (し)リジン脱炭酸酵素:[+]
- (え)VP試験:[+]
Klebsiella aerogenes
以前はEnterobacter aerogenesの名称でしたが,2018年に改名されました。国家試験ではどちらで出題されてもいいようにしておきましょう。
Citrobacter spp.・Serratia spp.
各種性状
基礎編(C. freundii・S. marcescens)
- Gram染色・形態:Gram陰性桿菌
- 酸素要求性:通性嫌気性
- 莢膜:[-]
- 芽胞:[-]
- 鞭毛(運動性):[+]
- 普通寒天培地発育:[+]
- オキシダーゼ:[-]
応用編(C. freundii・S. marcescens)
- 乳糖分解:[+]・[-]
- 白糖分解:[+]・[+]
- IPA・PPA試験:[-]
- DNase産生:[-]・[+]
- 尿素分解:[±]・[-]
- いりゅくりじんV
→しとろばくたー-とろ(C. freundii)- (し)インドール産生:[-]
- (と)硫化水素産生:[+]
- (ろ)クエン酸塩利用能:[+]
- (ば)リジン脱炭酸酵素:[-]
- (く)VP試験:[-]
- いりゅくりじんV
→せらちあま-ちあま(S. marcescens)- (せ)インドール産生:[-]
- (ら)硫化水素産生:[-]
- (ち)クエン酸塩利用能:[+]
- (あ)リジン脱炭酸酵素:[+]
- (ま)VP試験:[+]
Serratia spp.(セラチア)
Serratia marcescens
腸内細菌科の中でDNaseを産生する代表的な菌種です。
- Staphylococcus aureus
- Streptococcus pyogenes
- Moraxella catarrhalis
- Serratia marcescens
- Stenotrophomonas maltophilia
Proteus spp.
各種性状
基礎編
- Gram染色・形態:Gram陰性桿菌
- 酸素要求性:通性嫌気性
- 莢膜:[-]
- 芽胞:[-]
- 鞭毛(運動性):[+]
- 普通寒天培地発育:[+]
- オキシダーゼ:[-]
応用編(P. mirabilis・P. vulgaris)
- 乳糖分解:[-]
- 白糖分解:[-]・[+]
- IPA・PPA試験:[+]
- DNase産生:[±]
- 尿素分解:[+]
- いりゅくりじんV
→覚えなくてよいが,インドール[-]と硫化水素[+]だけは知っておこう
(P. mirabilis)- インドール産生:[-]
- 硫化水素産生:[+]
- クエン酸塩利用能:[±]
- リジン脱炭酸酵素:[-]
- VP試験:[±]
- いりゅくりじんV
→ぷろてうす-ブルぷろ(P. vulgaris)- (ぷ)インドール産生:[+]
- (ろ)硫化水素産生:[+]
- (て)クエン酸塩利用能:[-]
- (う)リジン脱炭酸酵素:[-]
- (す)VP試験:[-]
Proteus spp.(プロテウス)
基本事項
湿った寒天培地上でスウォーミング(遊走)するのが最大の特徴です。
↑スウォーミング
なお,スウォーミングは胆汁酸塩によって抑制されるため,多くの腸内細菌分離用培地には胆汁酸塩が添加されています。
Morganella spp.・Providencia spp.・Plesiomonas spp.
各種性状
基礎編(Morganella・Providencia・Plesiomonas)
- Gram染色・形態:Gram陰性桿菌
- 酸素要求性:通性嫌気性
- 莢膜:[-]
- 芽胞:[-]
- 鞭毛(運動性):[+]
- 普通寒天培地発育:[+]
- オキシダーゼ:[-]・[-]・[+]
応用編(Morganella・Providencia・Plesiomonas)
- 乳糖分解:[-]
- 白糖分解:[-]
- IPA・PPA試験:[+]・[+]・[-]
- DNase産生:[-]
- 尿素分解:[+]・[+]・[-]
- いりゅくりじんV
→覚えなくてよい(M. morganii)- インドール産生:[+]
- 硫化水素産生:[-]
- クエン酸塩利用能:[-]
- リジン脱炭酸酵素:[-]
- VP試験:[-]
- いりゅくりじんV
→ぷろびでんしあ-ぷび(P. rettgeri・P. stuartii)- (ぷ)インドール産生:[+]
- (ろ)硫化水素産生:[-]
- (び)クエン酸塩利用能:[+]
- (で)リジン脱炭酸酵素:[-]
- (ん)VP試験:[-]
- いりゅくりじんV
→ぷれじおもなす-ぷお(P. shigelloides)- (ぷ)インドール産生:[+]
- (れ)硫化水素産生:[-]
- (じ)クエン酸塩利用能:[-]
- (お)リジン脱炭酸酵素:[+]
- (も)VP試験:[-]
練習問題
問1 マッコンキー寒天培地でピンク色の集落を呈し,VP試験陽性であった。考えられるのはどれか。2つ選べ。(第53回臨床検査技師国家試験pm39)
1.Proteus mirabilis
2.Serratia marcescens
3.Enterobacter cloacae
4.Klebsiella pneumoniae
5.Plesiomonas shigelloides
- 解答を見る
解答:3・4
マッコンキー寒天培地でピンク色=乳糖分解[+]ということです。
乳糖分解菌は「いい子にしてくれぇ~」なので,EnterobacterとKlebsiellaが正解です。VP試験の性状を知らなくても解けます。
1.誤り。
2.誤り。
3.正しい。
4.正しい。
5.誤り。
問2 腸内細菌科で正しいのはどれか。2つ選べ。(第53回臨床検査技師国家試験pm49)
1.芽胞を作る。
2.偏性嫌気性菌である。
3.ブドウ糖非発酵である。
4.硝酸塩を亜硝酸塩へ還元する。
5.オキシダーゼ試験陰性である。
- 解答を見る
解答:4・5
腸内細菌科細菌の定義は以下の5つです。
・通性嫌気性Gram陰性桿菌である。
・普通寒天培地によく発育する。
・ブドウ糖を発酵して酸or酸とガスを産生する。
・硝酸塩還元試験陽性である。(硝酸塩→亜硝酸塩)
・オキシダーゼ陰性である。
1.誤り。
2.誤り。
3.誤り。
4.正しい。
5.正しい。
問3 分離菌の確認培地を示す。考えられるのはどれか。(第54回臨床検査技師国家試験am72)
1.Escherichia coli
2.Klebsiella pneumoniae
3.Proteus vulgaris
4.Salmonella Enteritidis
5.Shigella dysenteriae
- 解答を見る
解答:4
確認培地の見方を知っておかないと解けない問題です。
(1)TSI
高層部黒=硫化水素[+]
斜面部赤=乳糖and白糖分解[-]
(2)LIM
全面紫=リジン脱炭酸酵素[+]
上面色変化なし=インドール[-]
(3)SIM
黒=硫化水素[+]
上面色変化なし=インドール[-]
(4)シモンズクエン酸
青=クエン酸塩利用能[+]
(5)VP
色変化なし=VP試験[-]
「いりゅくりじんV」でまとめると,[-・+・+・+・-]となります。
以下は黄色背景が上の性状とあっている部分です。
1.誤り。「えしぇりきあ-えき」
→[+・-・-・+・-]
2.誤り。「くれぶしえら-ぶしえ」
→[-・-・+・+・+]
3.誤り。「ぷろてうす-ブルぷろ」
→[+・+・-・-・-]
4.正しい。「さるもねら-るもね」
→[-・+・+・+・-]
5.誤り。「all[-]」
→[-・-・-・-・-]
問4 ブドウ糖発酵でオキシダーゼ陽性の菌はどれか。(第54回臨床検査技師国家試験pm73)
1.Acinetobacter baumannii
2.Burkholderia cepacia
3.Enterobacter cloacae
4.Plesiomonas shigelloides
5.Serratia marcescens
- 解答を見る
解答:4
1.誤り。偏性好気性菌であるためブドウ糖発酵は[-]です。また,オキシダーゼは[-]です。
2.誤り。偏性好気性菌であるためブドウ糖発酵は[-]です。また,オキシダーゼは[+]です。
3.誤り。腸内細菌はブドウ糖発酵[+]・オキシダーゼ[-]です。
4.正しい。Plesiomonas shigelloidesは腸内細菌ですが,オキシダーゼ[+]であるのが他の腸内細菌との最大の違いです。
5.誤り。腸内細菌はブドウ糖発酵[+]・オキシダーゼ[-]です。
問5 腸内細菌科の細菌をTSI培地とSIM培地とに接種して1昼夜培養した結果を示す。考えられる細菌はどれか。(第57回臨床検査技師国家試験am77)
1.Klebsiella pneumoniae
2.Proteus mirabilis
3.Salmonella Enteritidis
4.Serratia marcescens
5.Shigella dysenteriae
- 解答を見る
解答:5
確認培地の見方を知っておかないと解けない問題です。
(1)TSI
高層部黄=ブドウ糖発酵[+]
斜面部赤=乳糖and白糖分解[-]
(2)SIM
黒でない=硫化水素[-]
接種した部分にのみ発育=運動性[-]
1.誤り。乳糖分解[+]です。
2.誤り。運動性[+]です。また硫化水素[+]です。
3.誤り。運動性[+]です。また硫化水素[+]です。
4.誤り。運動性[+]です。また白糖分解[+]です。
5.正しい。運動性[-]かつ乳糖・白糖分解[-]です。
問6 35℃で運動性のあるのはどれか。2つ選べ。(第57回臨床検査技師国家試験pm73)
1.Enterobacter cloacae
2.Klebsiella pneumoniae
3.Serratia marcescens
4.Shigella dysenteriae
5.Yersinia enterocolitica
- 解答を見る
解答:1・3
「動けなくても食えるし」
→Klebsiella・Yersinia・Shigellaが運動性[-]です。
1.正しい。
2.誤り。
3.正しい。
4.誤り。
5.誤り。
問7 腸管出血性大腸菌が産生するのはどれか。(第58回臨床検査技師国家試験am74)
1.志賀毒素(Vero toxin)
2.表皮剥離毒素(exfoliative toxin:ET)
3.耐熱性腸管毒素(heat-stable enterotoxin:ST)
4.易熱性腸管毒素(heat-labile enterotoxin:LT)
5.毒素性ショック症候群毒素(toxic shock syndrome toxin 1:TSST-1)
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解答:1
1.正しい。
2・5.誤り。Staphylococcus aureusが産生する外毒素です。
3・4.誤り。腸管毒素原性大腸菌(ETEC)が産生する外毒素です。
問8 TSI培地とSIM培地にGram陰性桿菌を接種して1日後の写真を示す。陽性の性状はどれか。(第59回臨床検査技師国家試験am68)
1.運動性
2.ガス産生
3.ブドウ糖分解
4.硫化水素産生
5.インドールピルビン酸産生
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解答:3
(1)TSI
高層部黄=ブドウ糖発酵(=嫌気的分解)[+]
斜面部赤=乳糖and白糖分解[-]
(2)SIM
黒でない=硫化水素[-]
接種した部分にのみ発育=運動性[-]
1.誤り。運動性[-]です。
2.誤り。TSIで培地に亀裂がないことから,ガス産生は[-]です。
3.正しい。
4.誤り。TSIやSIMで黒色になっていないことから硫化水素[-]です。
5.誤り。SIM培地で上部が褐色になっていないことからIPA[-]です。
問9 TSI培地とSIM培地にGram陰性桿菌を接種して1日後の写真を示す。結果から考えられる菌種はどれか。(第59回臨床検査技師国家試験am69)
1.Citrobacter freundii
2.Klebsiella pneumoniae
3.Proteus vulgaris
4.Serratia marcescens
5.Shigella dysenteriae
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解答:5
57am77のプール問題なので,そちらを対策していれば簡単です。
乳糖and白糖分解[-]
硫化水素[-]
運動性[-]
1.誤り。運動性[+]です。また乳糖分解・硫化水素[+]です。
2.誤り。乳糖分解[+]です。
3.誤り。運動性[+]です。また硫化水素[+]です。
4.誤り。運動性[+]です。また白糖分解[+]です。
5.正しい。運動性[-]かつ乳糖・白糖分解[-]です。
問10 DHL寒天培地で下痢便を培養したコロニーを示す。矢印のコロニー性状から考えられるのはどれか。(第60回臨床検査技師国家試験am74)
1.Aeromonas hydrophila
2.Escherichia coli
3.Salmonella enterica
4.Shigella sonnei
5.Vibrio parahaemolyticus
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解答:3
DHL寒天培地の見方は以下の記事を参考にしてください。コロニーが黒色であることから硫化水素[+]であることがわかります。あとは硫化水素[+]の選択肢を選べばOKです。
1.誤り。
2.誤り。
3.正しい。
4.誤り。
5.誤り。
問11 腸内細菌科の共通性状はどれか。(第60回臨床検査技師国家試験pm70)
1.運動性陽性
2.偏性好気性
3.ブドウ糖発酵
4.硝酸塩還元テスト陰性
5.オキシダーゼテスト陽性
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解答:3
腸内細菌科細菌の定義は以下の5つです。
・通性嫌気性Gram陰性桿菌である。
・普通寒天培地によく発育する。
・ブドウ糖を発酵して酸or酸とガスを産生する。
・硝酸塩還元試験陽性である。(硝酸塩→亜硝酸塩)
・オキシダーゼ陰性である。
1.誤り。
2.誤り。
3.正しい。
4.誤り。
5.誤り。
問12 腸内細菌科でリジン脱炭酸試験,インドールテストおよび運動性がすべて陽性であった。考えられるのはどれか。(第60回臨床検査技師国家試験pm77)
1.Escherichia coli
2.Klebsiella oxytoca
3.Salmonella Typhi
4.Serratia marcescens
5.Shigella sonnei
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解答:1
1.正しい。運動性[+],「えしぇりきあ-えき」→インドール[+]・リジン脱炭酸酵素[+]
2.誤り。運動性[-],「くれぶしえら-オキくぶしえ」→インドール[+]・リジン脱炭酸酵素[+]
3.誤り。運動性[+],「さるもねら-チるね」→インドール[-]・リジン脱炭酸酵素[+]
4.誤り。運動性[+],「せらちあま-ちあま」→インドール[-]・リジン脱炭酸酵素[+]
5.誤り。運動性[-],「all[-]」→インドール[-]・リジン脱炭酸酵素[-]
問13 Salmonella enterica subsp. enterica serovar Typhiと serovar Paratyphi Aの鑑別に有用な検査はどれか。(第62回臨床検査技師国家試験am75)
1.運動性テスト
2.ONPGテスト
3.インドールテスト
4.クエン酸塩利用能
5.リジン脱炭酸テスト
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解答:5
Salmonella Typhi
「さるもねら-チるね」→硫化水素[+]・リジン脱炭酸酵素[+]
Salmonella Paratyphi A
「all[-]」→硫化水素[-]・リジン脱炭酸酵素[-]
よって,鑑別に有用な検査はリジン脱炭酸テストになります。
1.誤り。Typhi[+]・Paratyphi A[+]
2.誤り。Typhi[-]・Paratyphi A[-]
3.誤り。Typhi[-]・Paratyphi A[-]
4.誤り。Typhi[-]・Paratyphi A[-]
5.誤り。Typhi[+]・Paratyphi A[-]
問14 35℃で運動性がないのはどれか。(第62回臨床検査技師国家試験pm69)
1.Enterobacter cloacae
2.Escherichia coli
3.Morganella morganii
4.Serratia marcescens
5.Yersinia enterocolitica
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解答:5
「動けなくても食えるし」
→Klebsiella・Yersinia・Shigellaが運動性[-]です。
1.誤り。
2.誤り。
3.誤り。
4.誤り。
5.正しい。
問15 膀胱炎患者の中間尿を,5%ヒツジ血液寒天培地(左)と,BTB乳糖加寒天培地(右)の分画培地を35℃・24時間好気培養した写真を示す。推定される菌種はどれか。(第64回臨床検査技師国家試験am77)
1.Enterobacter cloacae
2.Escherichia coli
3.Klebsiella pneumoniae
4.Proteus mirabilis
5.Pseudomonas aeruginosa
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解答:4
培地上でスウォーミングが認められることから,Proteus spp.が正解です。
1.誤り。
2.誤り。
3.誤り。
4.正しい。
5.誤り。
問16 Salmonella entericaについて正しいのはどれか。(第64回臨床検査技師国家試験pm73)
1.S. Typhimuriumは乳糖を分解する。
2.S. TyphiはTSI寒天培地でガスを産生する。
3.S. Enteritidisはリジン脱炭酸反応陽性です。
4.S. enterica subsp. arizonaeはONPGテスト陰性である。
5.S. Paratyphi Aはシモンズのクエン酸塩培地に発育する。
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解答:3
Salmonella Enteritidis
「さるもねら-るもね」→硫化水素[+]・クエン酸塩利用能[+]・リジン脱炭酸酵素[+]
Salmonella Typhi
「さるもねら-チるね」→硫化水素[+]・リジン脱炭酸酵素[+]
Salmonella Paratyphi A
「all[-]」
1.誤り。Salmonella spp.は乳糖分解[-]です。
2.誤り。S. Enteritidis・S. Typhi・S. Paratyphi Aのうち,S. Typhiのみガス産生陰性です。
3.正しい。いりゅくりじんVを覚えておけば簡単な問題です。
4.誤り。S. enterica subsp. arizonaeはONPGテスト陽性です。が,覚える必要はないです。
5.誤り。Paratyphi Aはall[-]なので,クエン酸塩利用能[-]です。
コメント
勉強の仕方について詰まっていたところ、おるてぃさんの記事を見つけ、格段に身についたことを実感しました。特に「いりゅくりじんV」はとても参考になりました。とても大きな手助けになりました。これからも応援しています。
まほ様
コメントありがとうございます。お役に立ったようで何よりです。
そう仰っていただけるととても励みになります!