第66回臨床検査技師国家試験(AM61~80)の解説です。
【更新履歴】
2021.7.13
・問70の解説(抗MRSA薬)を更新しました。
2023.5.7
・問63の解説(凝固系/線溶系分子マーカー)を更新しました。
2024.1.6
・問78の解答番号が間違っていたので修正しました。
第66回臨技国試のAM問61~80の解説です。
難易度は主観で1~10の10段階でつけています。
1:超簡単
2~3:簡単
4~5:普通
6~7:やや難問
8~9:難問
10:超難問
第66回臨技国試についてをまとめたページもありますので,まだ見ていない方はぜひそちらもご参照ください。
問題の出典:厚生労働省ホームページ 第66回臨床検査技師国家試験の問題および正答について 午前問題(https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/topics/dl/tp200414-07a_01.pdf)
臨床血液学(AM59~67)
AM 問61
解答:3
まあまあ難しめの問題ではありますが,65am60できっちり対策していれば簡単な問題だったと思います。
CD20が陽性であることから,Bリンパ性なのは間違いありません。あと見るべきはCD5・CD10です。本問ではCD10の所見は記載されていませんが,CD5が陽性であることから答えが出せます。
1.誤り。ATLではCD4・CD25が陽性となります。
2.誤り。
3.正しい。CD19+・CD20+(B細胞のCD抗原+)かつCD5+・CD10-であればCLLを疑います。
4.誤り。急性骨髄性白血病(FAB分類M1~M7)ではリンパ系のCDは陰性です。代わりにCD13やCD33が陽性となります。M7では巨核球系のCD抗原であるCD41・CD61も陽性となります。
5.誤り。CD19+・CD20+(B細胞のCD抗原+)かつCD5-・CD10+であればB-ALLを疑います。
AM 問62
解答:5
凝固線溶系の中でも簡単な問題なので正解しておきたいところ。
【内因系(APTTに関与)】
・第Ⅷ(8)因子
・第Ⅸ(9)因子
・第Ⅺ(11)因子
・第Ⅻ(12)因子
凝固スタート:Ⅻ→Ⅺ→Ⅸ・Ⅷ
この後は共通系に合流する。
【外因系(PTに関与)】
・第Ⅲ(3)因子(組織因子)
・第Ⅶ(7)因子
凝固スタート:Ⅶ→Ⅲ
この後はin vitroであるか,in vivoであるかで経路が異なる。
〔in vivo〕Ⅸ→Ⅷ→共通系へ
〔in vitro〕直接共通系へ
【共通系(APTT・PTに関与)】
・第Ⅰ(1)因子(フィブリノゲン)
・第Ⅱ(2)因子(プロトロンビン)
・第Ⅴ(5)因子
・第Ⅹ(10)因子
Ⅹ・Ⅴ→Ⅱ→Ⅰ
1.誤り。PTに異常を示します。
2・4.誤り。APTTに異常を示します。
3.誤り。APTT・PTともに異常を示します。
5.正しい。第XⅢ因子が欠乏してもAPTT・PTともに異常は示しません。なお,第XⅢ因子が欠乏する疾患にSchönlein-Henoch紫斑病(IgA血管炎やアレルギー性紫斑病とも呼ばれる)があります。
AM 問63
解答:1
1.正しい。
2~5.誤り。
AM 問64
解答:4
セリンプロテアーゼが何かを知っておかなければ手も足も出ない問題です。したがって,難易度は高めに設定しました。
凝固因子の中でセリンプロテアーゼといえば,Ⅱ・Ⅶ・Ⅸ・Ⅹ・Ⅺなどがあります(上述)。
これらを不活化させる凝固抑制因子を選べばOKです。
各凝固抑制因子に関しては66am60で解説しています。
1~3・5.誤り。
4.正しい。アンチトロンビンはセリンプロテアーゼであるⅨa・Ⅹa・トロンビンを不活化させるセリンプロテアーゼインヒビターとして作用します。
AM 問65
解答:4
過去の国試では血漿鉄消失時間は出題されなかったので,血液をしっかり勉強していないと難問です。
(1)基本事項
・放射性同位体で標識した鉄を静注し,その鉄が血漿中から消失するまでにどれくらい時間がかかるかを測定する検査。
・骨髄が鉄を必要としている状態ではPIDT1/2は短縮し,逆に骨髄が鉄を必要としていない状態ではPIDT1/2は延長する。
(2)異常を示す疾患
【短縮】
・鉄欠乏性貧血
・巨赤芽球性貧血
・溶血性貧血
・鉄芽球性貧血
【延長】
・再生不良性貧血
1~3・5.誤り。
4.正しい。
AM 問66
解答:5
画像ではAuer小体が認められます。
Auer小体はアズール顆粒が結晶化したものです。65pm64でも解説してあるので,そちらで対策していれば余裕で解けたと思います。
1~4.誤り。
5.正しい。
AM 問67
解答:1
65am66でも類似問題が出題されていたので対策していれば余裕で正解できますね。
【真性赤血球増加症(真性多血症)】
・造血幹細胞の異常で発症する慢性骨髄増殖性腫瘍。
原因はJAK2遺伝子の変異。
・赤血球数の増加のみならず,白血球数・血小板数も増加する。
・赤血球増加によりnegative feedbackが掛かるため,エリスロポエチンは低値を示す。
【続発性赤血球増加症】
・真性赤血球増加症と異なり,エリスロポエチンの産生増加に反応した結果として赤血球数が増加した状態。
・白血球数・血小板数は基準範囲内である。
1.正しい。
2~5.誤り。
臨床微生物学(AM68~78)
AM 問68
解答:4
Mycobacterium spp.については65pm76でまとめてあります。
Mycobacterium spp.の中で,M. marinumだけは基本的な37℃での培養では発育不良となります。そのため,低温(28~30℃)での培養が必要となります。
1~3・5.誤り。これらは通常の培養条件下でも発育するので低温培養は不要です。
4.正しい。
AM 問69
解答:1・4
(1)基本事項
・レトロウイルス科のウイルスで,逆転写酵素を持つ。
・後天性免疫不全症候群(AIDS:acquired immunodeficiency syndrome)の原因ウイルス。
・HIV感染者の2/3以上がサハラ以南アフリカに集中している。
(2)感染経路
・性的接触による接触感染
・血液感染
・母子感染
(3)病原性
・CD4陽性のT細胞に感染し,細胞を破壊する。
・HIVに感染すると2~8週間で抗体陽性となり,無症候性の感染性を持つキャリアとなる。なお,感染してから抗体陽性となるまでの期間をウィンドウ期という。
(4)検査法
【スクリーニング検査】
・PA(ゼラチン粒子凝集)法=間接凝集法
・イムノクロマトグラフィ
・EIA(酵素免疫測定)法
・ELISA法
・CLEIA(化学発光酵素免疫測定)法
【確認検査】
・ウエスタンブロット法
・RT-PCR(核酸増幅検査)法
・間接蛍光抗体法
1.正しい。レトロウイルス科のHIV・HTLV-1およびヘパドナウイルス科のHBVは逆転写酵素を持ちます。
2.誤り。CD4陽性T細胞に感染します。
3.誤り。イムノクロマトグラフィはスクリーニング検査で用いられます。
4.正しい。
5.誤り。AIDSの治療には逆転写酵素阻害薬やプロテアーゼ阻害薬などを用います。ノイラミニダーゼ阻害薬はインフルエンザの治療に用いられるもので,オセルタミビル(タミフル)・ザナミビル(リレンザ)・ラニナミビル(イナビル)などがあります。
AM 問70
解答:2
この問題のキーワードはカタラーゼ陽性+マンニット(マンニトール)分解。ここでピンと来るかどうかです。
Staphylococcus aureusとCNSの鑑別には,コアグラーゼや,(卵黄加)マンニット食塩寒天培地によるマンニット分解能などを見る。
(1)基本事項
・皮膚化膿性疾患や毒素型食中毒の原因菌。
・ヒツジ血液寒天培地上でβ溶血を示す。
・マンニット(マンニトール)を分解するため,マンニット食塩寒天培地でコロニーとその周囲が黄色を呈する。
※CNSはマンニット(マンニトール)を分解しない!
(2)各種性状
【基礎編】
・Gram染色:Gram陽性
・酸素要求性:通性嫌気性
・形態:球菌
・莢膜:[-]
・芽胞:[-]
・鞭毛(運動性):[-]
・普通寒天培地発育:[+]
・オキシダーゼ:[-]
【応用編】
・カタラーゼ:[+]
・6.5%NaCl加BHIブイヨン発育:[+]
(3)代謝産物
・コアグラーゼ
・エンテロトキシン:耐熱性外毒素
※100℃30minの加熱でも失活しない!
・皮膚剥脱毒素(表皮剥脱毒素)
・毒素性ショック症候群毒素(TSST-1)
・DNase
(4)MSSAとMRSA
・ペニシリン系抗菌薬であるメチシリン(DMPPC)の感受性の違いによりMSSA(メチシリン感受性S. aureus)とMRSA(メチシリン耐性S. aureus)に分類される。
・MRSAはペニシリン系だけでなく,多くの抗菌薬に耐性を示す。
・MRSAはmecA遺伝子を持ち,β-ラクタム系抗菌薬との親和性が低下したPBP(ペニシリン結合蛋白)であるPBP2′を産生する。この産生にはmecA遺伝子がかかわる。
・MRSA判定には以前はメチシリンが用いられていたが,現在ではオキサシリン(MPIPC)とセフォキシチン(CFX)が用いられる。
(5)MRSAの薬剤感受性
【耐性薬剤】
・ペニシリン系
・セフェム系(セファロスポリン系・セファマイシン系・オキサセフェム系)
・カルバペネム系
上記3つは仮に薬剤感受性試験で「感性(S)」判定となっても,必ず「耐性(R)」として報告しなければならない!
その他,キノロン系やアミノグリコシド系にも耐性を示す(多剤耐性)。
【感受性薬剤(抗MRSA薬)】
・バンコマイシン(VCM)
・テイコプラニン(TEIC)
・リネゾリド(LZD)
・アルベカシン(ABK)
・ダプトマイシン(DAP)
・ムピロシン(MUP)
・テジゾリド(TZD)
「定番だって無理あるべ」
定:テイコプラニン(TEIC)
番:バンコマイシン(VCM)
だ:ダプトマイシン(DAP)
て:テジゾリド(TZD)
無:ムピロシン(MUP)
理:リネゾリド(LZD)
あるべ:アルベカシン(ABK)
1.誤り。カタラーゼ陰性です。
2.正しい。
3.誤り。マンニット非分解です。
4.誤り。カタラーゼ陰性です。またBTBには発育しません。
5.誤り。カタラーゼ陰性です。またBTBには発育しません。
AM 問71
解答:1・4
過去にも同一問題が1題(59pm77)・類似問題が1題(56pm78)出題されており,かつ対策が容易なので必ず押さえておきたいところです。
- Propionibacterium spp.
(Propionibacterium acnesなど)
汚染菌頻度:99~100%
- Bacillus spp.
(Bacillus subtilisなど)
汚染菌頻度:92~95%
- Corynebacterium spp.
汚染菌頻度:79~96%
- CNS(coagulase negative staphylococci)
(Staphylococcus epidermidisなど)
汚染菌頻度:58~94%
1.正しい。
2.誤り。
3.誤り。
4.正しい。
5.誤り。
AM 問72
解答:1
(1)基本事項
・ピロリ菌と呼ばれる。
・ウレアーゼを産生する。
(2)各種性状
【基礎編】
・Gram染色:Gram陰性
・酸素要求性:微好気性
・形態:螺旋菌
・莢膜:[-]
・芽胞:[-]
・鞭毛(運動性):[+]
・普通寒天培地発育:[-]
・オキシダーゼ:[+]
【応用編】
・糖分解:[-]
・カタラーゼ:[+]
・硝酸塩還元:[-]
・インドール産生:[-]
・尿素分解試験:[+]
(3)培地での発育
・普通寒天培地には発育しないため,Skirrow培地を用いて4~7日間微好気培養を行う。
(4)病原性
・萎縮性胃炎(慢性胃炎)
・胃潰瘍
・十二指腸潰瘍
・胃癌
・MALTリンパ腫
・ITP(特発性血小板減少性紫斑病)
(5)検査法
①尿素呼気試験(内視鏡不要)
13C-尿素を含んだ検査薬を内服し服用前後で呼気に含まれる13CO2の量を比較する。本菌に感染していると, ウレアーゼによって胃内で尿素がアンモニアと二酸化炭素に分解されて呼気中の二酸化炭素における13Cの含有量が非感染時より大きく増加する。
②血中・尿中抗体検査(内視鏡不要)
③便中抗原検査(内視鏡不要)
④迅速ウレアーゼ試験(内視鏡必要)
⑤組織鏡検法(内視鏡必要)
・H-E染色
・Giemsa染色
・Warthin-Starry染色
⑥培養法(内視鏡必要)
1.誤り。大腸癌ではなく胃癌に関連します。
2~5.正しい。
AM 問73
解答:3
ウイルスと疾患の関連問題は必ずと言っていいほど出題されるので確実に正解できるようにしておきたいところです。
1・2・4・5.誤り。
3.正しい。
AM 問74
解答:2・4
オキシダーゼ陽性菌については65am72で紹介してあります。
まずはここで選択肢を絞りましょう。
さらにそこからグルコース発酵=通性嫌気性菌を選べばOKです。
主な通性嫌気性菌については65am68の解説を参考にしてください。
1.誤り。オキシダーゼ(-)・偏性好気性(発酵×)
2.正しい。オキシダーゼ(+)・通性嫌気性(発酵○)
3.誤り。オキシダーゼ(-)・通性嫌気性(発酵○)
4.正しい。オキシダーゼ(+)・通性嫌気性(発酵○)
5.誤り。オキシダーゼ(+)・偏性好気性(発酵×)
AM 問75
解答:2
Shigella spp.は以下に示すような腸内細菌の鑑別に用いられる性状はすべて陰性です。
- インドール
- H2S
- VP
- IPA・PPA
- クエン酸塩利用能
- リジン脱炭酸酵素
- 尿素分解
- 運動性
また,Shigella sonneiは乳糖と白糖を培養後3日以降に遅れて分解する特徴を有します。乳糖を分解できるためONPGテストは陽性となります。
菌が乳糖を分解するためには以下の2つの条件を満たす必要がある。
①乳糖が菌体内に取り込まれる
②β-ガラクトシダーゼ(乳糖分解酵素)陽性
このうち,②を見る方法がONPGテストである。
②の条件を満たす菌種でも,乳糖を菌体内に取り込む能力のない菌種は,通常の糖分解試験では陰性になる。このような菌種では,基質として乳糖と類似した構造のONPG(オルトニトロフェニル‐β‐D‐ガラクトピラノシド)を用いることで,β-ガラクトシダーゼの存在を知ることができる。
なお,乳糖分解菌は必ずONPG 試験陽性となる(乳糖分解→ONPG試験陽性が成り立つ)。
逆に,ONPG 試験陽性でも,乳糖を取り込めない菌種は乳糖を分解できないため,ONPG 陽性→乳糖分解は成り立たない。
以下の記事も参考にしてください。
1.誤り。
2.正しい。
3.誤り。
4.誤り。
5.誤り。
AM 問76
解答:1
過去にも同様の問題(53pm43)が出題されていたため,この問題を対策していれば簡単だったと思います。
画像を見ると,嫌気条件部分にのみ菌が発育していることから偏性嫌気性菌が考えられます。
1.正しい。偏性嫌気性菌です。
2.誤り。真菌は基本的に偏性好気性菌です。
3.誤り。通性嫌気性菌です。
4.誤り。通性嫌気性菌です。
5.誤り。偏性好気性菌です。
AM 問77
解答:3・5
無菌的材料である血液・髄液から菌が検出された場合,あるいは1~4類感染症の原因菌を検出した場合は直ちに臨床へ連絡する必要があります。
1.誤り。
2.誤り。
3.正しい。
4.誤り。
5.正しい。結核は2類感染症です。
AM 問78
解答:4
いりゅくりじんVを覚えていれば超簡単に解けます。(難易度1でもいいくらい)
各性状の+・-は「い(インドール)・りゅ(硫化水素)・く(クエン酸塩利用能)・りじん(リジン脱炭酸酵素)・V(VP試験)」の並びになっています。黄色が今回の問題で問われている硫化水素とリジン脱炭酸の部分です。
1.誤り。「しとろばくたー-とろ」→「-・+・+・-・-」。リジン脱炭酸酵素[-]なので×。
2.誤り。「えしぇりきあ-えき」→「+・-・-・+・-」。硫化水素[-]なので×。
3.誤り。Proteus spp.はリジン脱炭酸酵素[-]なので×。
4.正しい。「さるもねら-チるね」→「-・+・-・+・-」。両方とも[+]なので○。
5.誤り。「せらちあま-ちあま」→「-・-・+・+・+」。硫化水素[-]なので×。
臨床免疫学(AM79~89)
AM 問79
解答:3
問題で問われているのはABO・Rh血液型の基本的な事柄です。必ず正解できるようになっておきたいところです。
【ABO血液型】
赤血球の表面にある抗原のうち,代表的な抗原であるA抗原・B抗原の存在の有無で決定した血液型のこと。
A抗原・B抗原は赤血球に限らず,臓器や血小板にも発現し,組織適合性抗原として働く。
A抗原・B抗原・抗A抗体・抗B抗体の有無で以下の表のように血液型が決定され,この法則をLandsteinerの法則という。
※抗A抗体・抗B抗体はIgMクラス。
日本人におけるABO血液型の頻度は,A:O:B:AB=4:3:2:1。
ABO血液型抗原は糖鎖抗原であり,その生成過程は以下の通りである。
- 前駆物質にH遺伝子(第19染色体上に存在)の働きで作られた糖転移酵素がL-フコースを付加することによりH抗原が作られる。
※これはA,B,AB,O型のいずれでも見られる。また,H抗原の欠損している血液型をBombay(Oh型)といい,これはO型の変種である。 - このH抗原にさらにA遺伝子(第9染色体長腕上に存在)の働きで作られた糖転移酵素によってN-アセチルガラクトサミンが付加されてA抗原が作られる。
※これはA型とAB型のみ。 - このH抗原にさらにB遺伝子(第9染色体長腕上に存在)の働きで作られた糖転移酵素によってD-ガラクトースが付加されてB抗原が作られる。
※これはB型とAB型のみ。
※H,A,Bの各遺伝子は,H抗原・A抗原・B抗原そのものを作るわけではなく,抗原を決定する糖鎖を作製する糖転移酵素を作る。
【Rh血液型】
Rh血液型には現在50の抗原が公認されているが,その中で臨床上最も重要なのはD抗原であり,D抗原を持っている人をRh陽性(RhD陽性)・D抗原を持っていない人をRh陰性(RhD陰性)という。
日本人において,Rh陽性は99.5%,Rh陰性は0.5%である。
D抗原以外ではC・c・E・eの4種抗原が比較的検査されている。
抗原性(免疫原性)はD抗原が最も強く,残りはE>C・c・e。
また,抗体検出率は抗E抗体が最も高く,残りはc>C>e>D。
Rh抗原は第1染色体短腕上に存在する。
また,両親がRh陽性だとしても,Rh陰性の子供が産まれる可能性がある。
父親 / 母親 | DD(D陽性) | Dd(D陽性) | dd(D陰性) |
DD(D陽性) | DD:100%(D陽性) DD・DD・DD・DD | DD:50%(D陽性) Dd:50%(D陽性) DD・Dd・DD・Dd | Dd:100%(D陽性) Dd・Dd・Dd・Dd |
Dd(D陽性) | DD:50%(D陽性) Dd:50%(D陽性) DD・dD・DD・dD | DD:25%(D陽性) Dd:50%(D陽性) dd:25%(D陰性) DD・Dd・dD・dd | Dd:50%(D陽性) dd:50%(D陰性) Dd・Dd・dd・dd |
dd(D陰性) | Dd:100%(D陽性) dD・dD・dD・dD | Dd:50%(D陽性) dd:50%(D陰性) dD・dd・dD・dd | dd:100%(D陰性) dd・dd・dd・dd |
※D・dのうち,左が父親由来・右が母親由来
1.誤り。ABO血液型は1900年頃に発見されました。
2.誤り。ABO血液型抗原は糖鎖抗原である。
3.正しい。割合は必ず覚えましょう。
4.誤り。Landsteinerの法則が成り立つのはABO血液型です。
5.誤り。抗原性が最も強いのはD抗原です。
AM 問80
解答:5
【基本事項】
Rh陰性の女性がRh陽性の胎児を妊娠した場合に起こる。
両親のRh血液型としては,母親がRh陰性,父親がRh陽性の時に起こりうる。
※両親ともRh陰性の場合は,胎児も100%Rh陰性となるため,Rh不適合妊娠は起こらない
【不適合妊娠が起こる免疫学的機序:1回目】
1回目の妊娠(第1子目)の場合,Rh陽性の胎児の赤血球が母体に移行し,これにより抗D抗体(IgG)がつくられる。このときはまだ作られるだけで実際に胎盤を通過しないため,不適合妊娠は起こらない。
【不適合妊娠が起こる免疫学的機序:2回目以降】
2回目以降の妊娠(第2子目以降)の場合,母親の抗D抗体が胎盤を通過して胎児に移行し,これによりRh不適合妊娠が起こる。
なお,抗D抗体による溶血は血管外溶血である。
【Rh不適合妊娠の検査】
基本的にCoombs試験を行う。
胎児の検査は直接Coombs検査(赤血球側),母親の検査は間接Coombs検査(血清側)である。
【Rh不適合妊娠の予防】
第1子目を妊娠した場合に限る。
D陰性者が妊婦となった場合は抗D抗体の産生がされていないことを確認の上,高力価の抗Dヒト免疫グロブリン製剤を分娩後72時間以内に妊産婦に投与する。
【Rh不適合妊娠の治療】
Rh不適合はABO不適合と比べて重篤で,交換輸血を行わなければならない。
(ABO不適合妊娠の場合はRh不適合と違って交換輸血を行う必要性は皆無に近く,ほとんどの例で光線療法程度の対応で事足りる)
1.誤り。
2.誤り。
3.誤り。
4.誤り。
5.正しい。
他の問題の解説を見る
コメント
リジン脱炭酸試験および硫化水素産生が陽性を示すのはどれか。
の解答が、4のところが1と2になっております。
朝からさん
コメントありがとうございます。該当箇所を修正しました。
とても役立っております!ありがとうございます!
コメントありがとうございます。
お役に立てて光栄です。これからも試験勉強頑張ってください。
81〜の解説も楽しみにしてます♡
コメントありがとうございます。励みになります!
最近忙しくて更新頻度は遅めですが,ぜひ解説記事完成をお待ちいただけたらと思います。