第66回臨床検査技師国家試験(PM61~80)の解説です。
【更新履歴】
2022.6.15
・問63の解説(DICの検査値)を更新しました。
2022.6.23
・問78の解説(β-ラクタマーゼ)の画像を更新しました。
第66回臨技国試のPM問61~80の解説です。
難易度は主観で1~10の10段階でつけています。
1:超簡単
2~3:簡単
4~5:普通
6~7:やや難問
8~9:難問
10:超難問
第66回臨技国試についてをまとめたページもありますので,まだ見ていない方はぜひそちらもご参照ください。
問題の出典:厚生労働省ホームページ 第66回臨床検査技師国家試験の問題および正答について 午後問題(https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/topics/dl/tp200414-07b_01.pdf)
臨床血液学(PM59~67)
PM 問61
解答:3
環状鉄芽球(sideroblast)の定義を確実に知っていないとかなり難しい問題です。
環状鉄芽球の定義は,
①赤芽球の核周囲に鉄顆粒がある。
②鉄顆粒が核周の1/3以上(あるいは核周全域に均等)分布している。
③②を満たす鉄顆粒が5個以上である。
の3つです。これをすべて満たした場合のみ,環状鉄芽球と判定します。
1.誤り。鉄顆粒自体は5個以上(10個)ありますが,核周囲には2個しかなく,環状鉄芽球の定義を満たしていないため誤りです。
2.誤り。鉄顆粒自体は5個以上(8個)ありますが,核周囲には3個しかなく,環状鉄芽球の定義を満たしていないため誤りです。
3.正しい。核周囲に鉄顆粒が10個あり,かつ,核周の1/3以上存在しているため,環状鉄芽球の定義を満たしています。
4.誤り。核周囲に鉄顆粒が5個あることまではいいのですが,核周の1/4程度しか存在しておらず,環状鉄芽球の定義を満たしていないため誤りです。
5.誤り。鉄顆粒自体は5個以上(5個)ありますが,核周囲には4個しかなく,環状鉄芽球の定義を満たしていないため誤りです。
PM 問62
解答:3
65pm64(白血球異常)と65pm38(ビタミン)をそれぞれ対策していれば容易に正解できます。
【白血球異常まとめ】
【ビタミンまとめ】
1・2・4・5.誤り。
3.正しい。過分葉好中球は主に巨赤芽球性貧血(+MDS)で認められます。巨赤芽球性貧血はビタミンB12や葉酸(ビタミンB9)の欠乏によって生じます。
PM 問63
解答:5
画像では中心にfaggot細胞(Auer小体集合細胞)が出現していることから,すぐに急性前骨髄球性白血病(M3・APL)と断定できます。
あとはAPLに併発しやすい病気を知っているかどうかです。APLはDICを併発しやすいので,DICの検査結果も知っておく必要があります。
APL発症からのDIC併発の問題も過去に出題されているので,過去問を対策していればそんなに難しくはありません。(55am67・57am66・58am66・63am66)
※DIC:disseminated intravascular coagulation
【基本事項】
様々な基礎疾患の存在下に,極端な生体内凝固亢進状態をきたし,全身の血管内に微小血栓が多発する疾患。
微小血栓の形成にによって血小板や凝固因子が消費されるため,血小板数や凝固因子活性が低下し,出血傾向をきたす。
また,微小血栓によって赤血球が破壊されるため,溶血を起こし,末梢血に破砕赤血球が出現する。
【基礎疾患】
・敗血症
・急性前骨髄球性白血病(M3・APL)
・悪性腫瘍
・産科疾患(常位胎盤早期剥離や羊水塞栓症など)
・血管壁障害(大動脈瘤など)
【検査値】
<増加・延長>
・出血時間
・PT
・APTT
・凝固系分子マーカー
(F1+2・TAT・フィブリノペプチドA・SFMC)
・線溶系分子マーカー
(PIC・FDP・D-ダイマー)
※F1+2:プロトロンビンフラグメント1+2,PF1+2とも
SFMC:可溶性フィブリンモノマー複合体
<減少・遅延>
・血小板数
・アンチトロンビン
・フィブリノゲン
(敗血症などの炎症性疾患の場合は,急性期蛋白であるフィブリノゲンの産生が増加するため,結果的にフィブリノゲンの消費と産生が相殺されて,検査上は殆ど減少していないこともある。)
・プラスミノゲン
・赤沈
1~4.誤り。
5.正しい。
PM 問64
解答:1
なかなか難しい問題です。解けなくてもいいでしょう。
PM 問65
解答:5
画像を見ると,SSCは小さく,かつCD45陽性ということがわかります。
まずは各血液細胞のFSC(前方散乱光)とSSC(側方散乱光)の関係を覚えておきましょう。
そしてCD45陽性ということは,白血球系細胞ということになります。
SSCが小さく,CD45陽性を満たす細胞はリンパ球になりますので,5が正解です。
1~4.誤り。
5.正しい。
PM 問66
解答:4・5
赤血球の異常は65pm61,白血球の異常は65pm64でそれぞれ解説しています。
【赤血球異常】
【白血球異常】
1・2.誤り。好中球の異常です。
3.誤り。形質細胞の異常です。
4・5.正しい。
PM 問67
解答:4
過去にも62am63で類似問題が出題されており,ここで対策していれば簡単な問題です。
1.誤り。過ヨウ素酸を使うのはPAS染色です。
2.誤り。過酸化水素水を使うのはペルオキシダーゼ染色です。
3.誤り。塩酸溶液を使うのは鉄染色です。
4.正しい。
5.誤り。ナフトールAS-Dクロロアセテートを使うのは特異的エステラーゼ染色です。
臨床微生物学(PM68~78)
PM 問68
解答:1
リポ多糖(LPS)は,Gram陰性菌の細胞壁の外膜に存在します。これは内毒素(エンドトキシン)でもあります。
エンドトキシンはGram陰性菌による敗血症で上昇します。
1.正しい。
2~5.誤り。
PM 問69
解答:5
65pm71でも染色の問題が出題されており,ここで表をしっかり対策していれば簡単な問題です。
1~4.誤り。
5.正しい。他に芽胞染色(Möller法・Wirtz法)やHiss法も加温必須です。
PM 問70
解答:3・5
培地についてしっかり対策していないと難問。
1・2・4.誤り。
3.正しい。バンコマイシン・ポリミキシンB・トリメトプリムが含まれています。
5.正しい。バンコマイシン・コリスチン・ナイスタチンが含まれています。
PM 問71
解答:3・5
Pseudomonas aeruginosaの問題は65pm78でも出題されていました。この問題も,去年の過去問を対策していれば問題なく正解できます。
1.誤り。極単毛です。
2.誤り。
3・5.正しい。
4.誤り。ブドウ糖非発酵菌なので高層部は赤色です。
PM 問72
解答:2
1・3~5.誤り。
2.正しい。
PM 問73
解答:5
この問題も65pm68を対策していれば楽に解ける問題でした。この問題も含め,66回の国試は65回の国試を対策していれば簡単に解ける問題がかなり多い印象でした。
抗菌薬のうち,核酸合成阻害なのはキノロン系です。
1・4.誤り。細胞壁合成阻害です。
2・3.誤り。蛋白合成阻害です。
5.正しい。
PM 問74
解答:1・4
こちらも去年の過去問(65am69)で同様の問題が出題されています。
1・4.正しい。
2.誤り。低水準消毒薬です。
3・5.誤り。中水準消毒薬です。
PM 問75
解答:5
知っていれば簡単ですが,知らないと意外と難問。
Gram染色でフィラメント状のGram陽性桿菌が観察され,弱抗酸染色(Kinyoun染色)で赤く染まっていることから,Nocardia spp.が正解です。
(1)基本事項
・Mycobacterium spp.と同様,酸で容易に脱色されにくい抗酸性の性質を持つ。ただし,抗酸性自体は弱い(=弱抗酸性)。
・抗酸染色としては,Ziehl-Neelsen染色における脱色を0.5~1.0%硫酸に置き換えたKinyoun染色が用いられる。
・Mycobacterium spp.と同様,小川培地に発育するうえ,真菌の分離培地であるSabouraud寒天培地にも発育する。
・発育は遅く,3日~2週間培養でオレンジ~黄色のコロニーを形成する。
(2)各種性状
【基礎編】
・Gram染色:Gram陽性
・酸素要求性:偏性好気性
・形態:桿菌(分岐したフィラメント状)
・莢膜:[-]
・芽胞:[-]
・鞭毛(運動性):[-]
・普通寒天培地発育:[+]
・オキシダーゼ:[-]
【応用編】
・ブドウ糖分解:[+]
・カタラーゼ:[+]
・尿素分解試験:[+]
PM 問76
解答:3
メラニン=黒色。メラニン色素を有する=黒色真菌と結びつけば,解答にたどり着けます。
後は黒色真菌の代表例を知っているかどうかです。
「冷え切った,暗い本」
冷:Phialophora spp.
え切:Exophiala spp.
暗い:Cladophialophora(Cladosporium)spp.
本:Fonsecaea spp.
1・4.誤り。
2.誤り。皮膚糸状菌です。
3.正しい。
5.誤り。接合菌(ムコール症の原因菌)です。
PM 問77
解答:1・2
こちらも昨年の過去問を対策していれば簡単。
ウイルスの問題はほぼ毎年確実に出題されるので,このようなウイルスと疾患の組み合わせは必ず正解できるようになっておきましょう。
1・2.正しい。
3.誤り。伝染性紅斑はパルボウイルス(ヒトパルボウイルスB19)です。
4.誤り。先天性巨細胞封入体症はサイトメガロウイルスです。
5.誤り。咽頭結膜炎はアデノウイルスです。
PM 問78
解答:4
臨床免疫学(PM79~89)
PM 問79
解答:4
難しく聞こえますが,不適合輸血は溶血性の輸血副作用です。つまり,溶血における検査項目の変動を押さえておけば簡単です。
<増加>
・カリウム
・LD
・AST
・I-Bil(間接ビリルビン)
・尿・便のウロビリノゲン
<減少>
・赤血球数
・Hb
(※赤血球内のHbであり,遊離Hbではない)
・Ht
・血清ハプトグロビン
1~3・5.誤り。
4.正しい。
PM 問80
解答:5
超難問。解けなくても全く問題ありません。
1.誤り。胸部X戦では両側の間質影や浸潤影を認めますが,心陰影の拡大はありません。
2.誤り。
3.誤り。抗白血球抗体(抗HLA抗体など)が原因です。
4.誤り。むしろ発生率が低いため優先的に利用されています。
5.正しい。
コメント
いつも勉強に使わせていただいております。
問67ですが、答えは4ではなく5ではないでしょうか?
ご存知でしたら申し訳ありません。
今後も更新待っています。
ゆ様
コメントありがとうございます。
問67の答えは4で合っています。厚生労働省掲載の解答のリンクを貼っておきますのでご確認ください。(「B67」が午後問67の解答です)
https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/topics/dl/tp200414-07seitou.pdf
最近更新が滞っていて申し訳ありません。少しずつ更新するつもりですのでよろしくお願いします。