第66回臨床検査技師国家試験(AM81~100)の解説です。
第66回臨技国試のAM問81~100の解説です。
難易度は主観で1~10の10段階でつけています。
1:超簡単
2~3:簡単
4~5:普通
6~7:やや難問
8~9:難問
10:超難問
第66回臨技国試についてをまとめたページもありますので,まだ見ていない方はぜひそちらもご参照ください。
問題の出典:厚生労働省ホームページ 第66回臨床検査技師国家試験の問題および正答について 午前問題(https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/topics/dl/tp200414-07a_01.pdf)
臨床免疫学(AM79~89)
AM 問81
オモテ試験 | ウラ試験 | ||
抗A | 抗B | A1血球 | B血球 |
4+ | 0 | 0 | 0 |
解答:4
65am84・65am85でオモテウラ試験と,オモテウラ不一致について解説しています。
ABO血液型を判断すると以下のようになります。
抗B(オモテB):(-)なのでB型でない。
→A型でありB型でないので,オモテ試験はA型となります。
A血球(ウラA):(-)なのでA型である。
B血球(ウラB):(-)なのでB型である。
→A型でありB型でもあるのでウラ試験はAB型となります。
よって,ABO血液型検査では,オモテ試験A型・ウラ試験AB型となります。
=オモテウラ不一致
1)オモテの結果(A型)が正しいとすると……
ウラの凝集(B血球)が起こっていないので偽陰性
(A型であればウラ試験はB血球で凝集がみられるはず)
2)ウラの結果(AB型)が正しいとすると……
オモテの凝集(抗B)が起こっていないので偽陰性
(B型であればオモテ試験は抗Bに凝集がみられるはず)
となり,結果,偽陰性となっていることが示唆されます。
後は,選択肢から偽陰性となる要因を選べばOKです。
1.誤り。亜型自体は偽陰性の原因ではありますが,A亜型であれば抗Aの凝集が弱くなるはずなので不適切です。
2.誤り。キメラとは複数の血液型を持つ赤血球を有すること(例えばA型+O型)を言います。キメラも偽陰性の原因ではありますが,その場合は抗Aの凝集が弱くなるはずなので不適切です。
3.誤り。後天性Bは偽陽性の原因です。(抗Bに凝集が見られるようになる)
4.正しい。偽陰性の原因であり,結果からも矛盾しません。新生児は抗体価が低いため,A型の場合はB血球での凝集が起こらなくなります。
5.誤り。汎血球凝集反応は偽陽性の原因です。
AM 問82
解答:5
65am81でHLA(MHC)について解説してあります。この問題は簡単なので必ず正解したいところ。
1~4.誤り。
5.正しい。
AM 問83
解答:1・2
65pm79で各種サイトカインを産生する細胞についてまとめてあります。こちらも65回の国試を対策していれば正解できますね。
68am62でもサイトカインについて解説してあります。こちらは各サイトカイン毎に表でまとめてあります。
AM 問84
解答:3・5
なかなかな難問。
【概要】
輸血前に行う検査であり,輸血製剤を使用できるかを確認する検査法である。
主試験と副試験があり,両者で適合(=凝集陰性)となったときにはじめて輸血が可能となる。
なお,交差適合試験も,不規則抗体検査と同じく,生理食塩液法・ブロメリン法・アルブミン法(PEG・LISS法含む)・IAT(間接抗グロブリン試験)の4つがある。
- 主試験:受血者(患者)の血清と供血者(輸血製剤)の血球を反応させる。
- 副試験:受血者(患者)の血球と供血者(輸血製剤)の血清を反応させる。
【ABO血液型の違いによる主試験・副試験の適合・不適合】
※抗原はアルファベット小文字・抗体はアルファベット大文字で表現。
Ex1.受血者A型・供血者A型(=血液型一致)の場合
主試験:a抗原と抗B抗体は反応しないため凝集[-]→適合
副試験:主試験と同じく凝集[-]→適合
Ex2.受血者A型・供血者O型の場合
主試験:O型はa・b抗原を持ち合わせていないため凝集[-]→適合
副試験:a抗原と抗A抗体が反応するため凝集[+]→不適合
Ex3.受血者B型・供血者AB型の場合
主試験:a抗原と抗A抗体が反応するため凝集[+]→不適合
副試験:AB型はA・B抗体を持ち合わせていないため凝集[-]→適合
【解釈】
<主試験>
交差適合試験を行う場合は必ず実施。
- 凝集[+]の場合
どんな場合でも輸血× - 凝集[-]の場合
基本的に輸血○。ただし,副試験が[+]の場合は積極的に選択すべきではなく,他に輸血の余地がない場合のみ。
<副試験>
主試験と違って省略可能。
- 凝集[+]の場合
主試験が[-]なら輸血○。ただし,積極的に選択すべきではなく,他に輸血の余地がない場合のみ。 - 凝集[-]の場合
主試験が[-]なら輸血○。
1.誤り。生理食塩液法での主試験凝集陽性の原因です。
2.誤り。
3・5.正しい。
4.誤り。副試験凝集陽性の原因です。
AM 問85
解答:3
こちらも難問。
標識物質については65am82でまとめてあります。
蛍光ということから,蛍光標識物質を選べばいいことになります。FITCがあれば簡単だったのですが,それがないので消去法で解かざるを得ません。
1.誤り。
2.誤り。CLEIA(化学発光酵素免疫測定法)で用いられる標識物質です。蛍光を発するわけではないので蛍光顕微鏡の観察には不適です。
3.正しい。FITCのほかに,ローダミンも蛍光標識物質です。が,消去法で解くほうが無難でしょう。
4.誤り。BLEIA(生物発光免疫測定法)で用いられる標識物質です。蛍光を発するわけではないので蛍光顕微鏡の観察には不適です。
5.誤り。ECLIA(電気化学発光免疫測定法)で用いられる標識物質です。蛍光を発するわけではないので蛍光顕微鏡の観察には不適です。
AM 問86
解答:5
過去にも同一の問題(54am85・57am86・62pm85)が出題されているため,そちらを対策していれば簡単です。
【基本事項】
C1~C9の各補体の総活性を数値化したもの。
ヒツジ赤血球を50%溶血させるのに必要な補体量を1U(1単位)として,これが血清中にどれくらいあるかを表す。
古典経路を活性化させるため,測定にはCaイオンとMgイオンが必要。
血清は分離後-70℃以下で保存する。
【血清補体価が増減する疾患】
【CH50が低下する疾患のC3・C4】
別名,血清血漿間補体価乖離現象。血清だと補体価が減少するのに対し,血漿だと補体価が減少しない現象。
血清を冷蔵(4℃)で保存すると,補体の活性化が起こり,CH50が低値を示す。なお,C3・C4濃度に変化は見られないため,この点で鑑別可能。
原因はクリオグロブリンと呼ばれる蛋白。
※クリオグロブリンは0~4℃で白色沈殿またはゲル化し,37℃に加温すると再溶解する可逆性変化を示す蛋白。
cold activationは以下のような疾患で認められる。
- 原発性クリオグロブリン血症
- 多発性骨髄腫
- 原発性マクログロブリン血症
- C型肝炎
- 膠原病
EDTAを使用した場合,cold activationは起こらない。
そのため,cold activationが認められた場合はEDTA血漿で再検する。
また,クリオグロブリンは37℃で溶解するため,クリオグロブリンの検査や,cold activationによるCH50の再検査では血清を37℃にして使用する。
1.誤り。37℃で血清分離します。
2.誤り。56℃30分の処理とは補体の不活化(非働化)のこと。CH50測定や免疫電気泳動など,補体が必要な検査では不活化は行いません。
3.誤り。上記の解説の通り。
4.誤り。
5.正しい。上記の解説の通り。
AM 問87
解答:3
65pm86に同様の問題が出題されていますので,こちらで対策していれば簡単な問題でした。
1・2・4・5.誤り。
3.正しい。
AM 問88
解答:2
65pm83で抗核抗体の染色パターンに関連する抗体,および関連疾患についてまとめてあります。
1・3~5.正しい。
2.誤り。Sjögren症候群で出現する自己抗体(抗SS-A・SS-B抗体)はspeckled型(斑紋型)です。
AM 問89
解答:4・5
類似問題が過去にも出題されており(55am84・59am83),対策していれば容易です。
65pm70で肝炎ウイルスについてまとめてありますのでそちらも参照してください。
1・2.誤り。肝炎ウイルスの中でDNAウイルスなのはHBVだけです。
3.誤り。中和抗体になりうるのはHAV抗体とHBs抗体です。
4・5.正しい。
公衆衛生学(AM90~94)
AM 問90
解答:5
超難問。
過去問で出題されている「水道法による水質基準で検出されてはならないもの」とは違う点に注意!
対策する必要性はあまりないでしょう。
1・2.誤り。0.01mg/L以下です。
3.誤り。0.8mg/L以下です。
4.誤り。利用目的に応じて基準値は異なりますが,検出されないこととは規定されていません。
5.正しい。他に全シアンやPCBがあります。
AM 問91
解答:3
食中毒の『発生件数』ではカンピロバクターが最多(319件)ですが,『患者数』ではノロウイルスが最多(256件)になります。
カンピロバクター:319件・1995人
ノロウイルス:256件・8475人
1.誤り。
2.誤り。
3.正しい。
4.誤り
5.誤り。発生件数では最多です。
AM 問92
解答:3・5
新生児マススクリーニング対象疾患のうち,主な6疾患だけを押さえておきましょう。これら以外がタンデムマス法が導入されて追加された疾患になります。
「クリーニングしてくれた服とガラクタが増えるとは面白い」
クリーニング:新生児マススクリーニング
くれた:クレチン症(先天性甲状腺機能低下症)
服:副腎過形成症
ガラクタ:ガラクトース血症
増える:フェニルケトン尿症
面(オモ→ホモ):ホモシスチン尿症
白い:メープル“シロ”ップ尿症
1・2・4.誤り。
3・5.正しい。
AM 問93
解答:4
過去問でも同様の問題が56pm94・57pm94・58am94・63pm94の計4回出題されています。
基本的には医療にかかわる言葉(保健・健康・疾病・感染症・医薬品)が入っている選択肢を選べばOKです。難しく考える必要はありません。
AM 問94
解答:1・3
今年度の公衆衛生分野の中でも対策しやすい問題です。
1・3.正しい。
2.誤り。3年毎です。
4.誤り。全国の医療施設を利用する患者を対象とします。
5.誤り。
医用工学概論(AM95~100)
AM 問95
解答:5
難問。
吸収係数(減衰係数)とは,超音波がその媒質を進んでいくときにどれだけ超音波が吸収される+散乱するか(=減衰するか)を表した値です。大きいほどより吸収されやすい+散乱しやすい(=減衰しやすい)となります。
1.誤り。約1.3です。線維と直角方向になると約3.3になります。
2.誤り。約12です。空気がある肺などは超音波が散乱して全く見えないことを考えれば最も大きいと考えるのは簡単です。
3.誤り。約0.18です。液体系は減衰しにくいですが,水と比べると血液には蛋白などが含まれているため,若干減衰しやすいと言えます。
4.誤り。約0.63です。
5.正しい。約0.002です。水は最も超音波が減衰しにくい媒質といえます。
AM 問96
解答:2
過去問でもよく出題されているホイートストンブリッジです。
医療工学の解説ページにて解説してありますので,計算方法等についてはそちらもご参照ください。
直列・並列に接続された抵抗の合成抵抗の求め方↓
ホイートストンブリッジ↓
この回路では斜めにかけ合わせた値が同じため,真ん中の抵抗はないものと考えることができます。
次に直列の合成抵抗を求めます。
これは,抵抗値をそのまま足し合わせればOKです。
最後に,平行に接続された抵抗の合成抵抗を求めればOKです。今回は抵抗が2つなので和分の積を用いてもいいですが,今回はもっと簡単に求めます。
平行に接続された2つの抵抗が同値である場合,その2つの合成抵抗はそれらの抵抗の半分となります。
よって,40/2=20kΩが正解となります。
1・3~5.誤り。
2.正しい。
AM 問97
解答:3
やや難しい問題です。インピーダンス(≒抵抗)と電圧の関係について知っておかないと解けません。
入力インピーダンスはできる限り大きく,出力インピーダンスは記録装置のインピーダンスに近い値とすることだけ覚えておけばいいでしょう。
$$V=\frac{1}{\frac{Zs}{Zi}+1}E$$
となります。この式より,入力インピーダンスが小さい($Zs\gg Zi$)と,$\frac{1}{\frac{Zs}{Zi}+1}\approx 0$となり,$V\approx 0$となります。
逆に,入力インピーダンスが大きい($Zs\ll Zi$)と,$\frac{Zs}{Zi}\approx 0$となり,$V\approx E$となります。
したがって,入力インピーダンスはできる限り大きいほうがいいということになります。
1.正しい。増幅させるのが目的ですから当然ですね。
2.正しい。同相信号(不要な信号)はできる限り小さくしたいところです。
3.誤り。出力インピーダンスは記録装置のインピーダンスに近い値にします。大きければいいというものではありません。
4.正しい。上述の通り。
5.正しい。
AM 問98
解答:1
超難問。余裕のある人以外は対策不要でしょう。
1.正しい。
2~5.誤り。
AM 問99
解答:3
論理演算のベン図問題です。ANDとORさえわかっていればNAND(ANDで塗られていない部分)とNOR(ORで塗られていない部分)は簡単に求められます。
1・2・4・5.誤り。
3.正しい。
AM 問100
解答:2・4
難問。59pm30でも類似問題が出題されています。
余裕のある人はゲル濾過とSDS-PAGEの2つを覚えておきましょう。余裕がなければスルーで。
1・3・5.誤り。
2・4.正しい。
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