第65回臨床検査技師国家試験(AM81~100)の解説です。
第65回臨技国試のAM問81~100の解説です。
難易度は主観で1~10の10段階でつけています。
1:超簡単
2~3:簡単
4~5:普通
6~7:やや難問
8~9:難問
10:超難問
第65回臨技国試についてをまとめたページもありますので,まだ見ていない方はぜひそちらもご参照ください。
問題の出典:厚生労働省ホームページ 第65回臨床検査技師国家試験の問題および正答について 午前問題(https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/topics/dl/tp190415-07a_01.pdf)
臨床免疫学(AM79~89)
AM 問81
解答:3・4
MHCについての問題も結構出題されるので,クラスⅠとクラスⅡの違いをしっかり理解しておきましょう!
自己・非自己を認識する分子。糖蛋白で構成されている。
ヒトのMHCのことをHLA(ヒト白血球抗原)という。
MHCをコードする遺伝子は,第6染色体短腕上に位置する。
項目 | MHCクラスⅠ | MHCクラスⅡ |
発現細胞 | 全有核細胞 血小板 | マクロファージ(Mφ) B細胞 樹状細胞 =抗原提示細胞 |
形成 | α鎖+β2ミクログロブリン の非共有結合 | α鎖+β鎖の非共有結合 |
抗原 | HLA-A・B・C | HLA-DR・DQ・DP |
結合抗原 | 内因性 (癌細胞・ウイルス感染細胞など) | 外来性 (細菌・毒素など) |
結合するT細胞 | 細胞障害性T細胞(CD8) | ヘルパーT細胞(CD4) |
検出法 | T細胞利用リンパ球障害性試験 | B細胞利用リンパ球障害性試験 リンパ球混合培養試験 |
1.誤り。クラスⅡの説明です。
2.誤り。クラスⅡの説明です。
3.正しい。上述の通りです。
4.正しい。上述の通りです。
5.誤り。クラスⅠの説明です。
AM 問82
解答:3
免疫測定法の標識物質も頻出です。必ず覚えておきましょう!
<標識免疫測定法と標識物質>
CLIAとCLEIAが間違いやすいので,ゴロを使って覚えておきましょう。
「クリアなアクリル板」
クリア:CLIA
アクリル板:アクリジニウムエステル
<CLEIA>
「ルミちゃんの頭をくれーや」
ルミちゃん:ルミノール
頭:アダマンチル誘導体
くれーや:CLEIA
AM 問83
解答:5
臨床的意義=病的意義があるのは間接Coombs試験で検出可能なIgGクラスの不規則抗体です。
逆に,生理食塩液法で検出可能なIgMクラスの抗体(冷式不規則抗体)は臨床的意義が低いとされます。
※一部のIgM抗体は輸血副作用を起こすため臨床的意義があります。
- MNSs血液型:抗M・抗N
- Lewis血液型:抗Lea・抗Leb
- P血液型:抗P・抗P1・抗PP1Pk
- I血液型:抗I・抗i
このうち,臨床的意義があるのは抗M・抗Lea・抗P・抗PP1Pkの4種類。
- MNSs血液型:抗N
- Lewis血液型:抗Leb
- P血液型:抗P1
- I血液型:抗I・抗i
- Xg血液型:抗Xga
1~3.誤り。間接Coombs試験で検出可能なIgG抗体であり,臨床的意義があります。
4.誤り。IgM抗体ですが,臨床的意義があります。
5.正しい。IgM抗体であり,臨床的意義はありません。
AM 問84
解答:2
<ABO血液型判定>
オモテ試験の場合:凝集すれば(1+以上)その血液型となる。
ウラ試験の場合:凝集しなければ(-)その血液型となる。
<Rh血液型判定>
抗D:凝集すれば(1+以上)Rh(+)
凝集しなければ(-)判定保留。
Rh control:凝集しなければ(-)検査成立。
【オモテ試験】
- 抗A
- 凝集(+)→A型である
- 凝集(-)→A型でない
- 抗B
- 凝集(+)→B型である
- 凝集(-)→B型でない
【ウラ試験】
- A血球
- 凝集(+)→A型でない
- 凝集(-)→A型である
- B血球
- 凝集(+)→B型でない
- 凝集(-)→B型である
画像から1つずつ判断していきます。まずはABO血液型から。
抗B(オモテB):(-)なのでB型でない。
→A型でもB型でもないので,オモテ試験はO型となります。
A血球(ウラA):(4+)なのでA型でない。
B血球(ウラB):(-)なのでB型である。
→A型でなくB型なのでウラ試験はB型となります。
よって,ABO血液型検査では,オモテ試験O型・ウラ試験B型となります。
次にRh血液型です。
Rh control:(-)なので,検査成立。
よって,Rh血液型検査では,Rh陽性となります。
以上より,答えは2となります。
AM 問85
解答:1・4
オモテ・ウラ不一致の原因を押さえておく必要があります。
今回の場合,オモテがO型・ウラがB型なので,
1)オモテの結果(O型)が正しいとすると……
ウラの凝集(A血球)が起こっていないので偽陰性
(O型であればウラ試験はA血球・B血球のいずれも凝集がみられるはず)
2)ウラの結果(B型)が正しいとすると……
オモテの凝集(抗B)が起こっていないので偽陰性
(B型であればオモテ試験は抗Bに凝集がみられるはず)
となり,結果,偽陰性となっていることが示唆されます。
後は,選択肢から偽陰性となる要因を選べばOKです。
1.正しい。亜型であればオモテ試験の凝集が減弱するため,本問のようになることがあります。(もしくは弱い凝集)
2.誤り。連銭形成であればウラ試験の凝集が過剰に起こるはずです……が,もしオモテ試験の結果が正しいとすると,血液型はO型となり,A・B血球双方で凝集があってもそれは普通の反応であるため,このカラム凝集法だけでは判別できません。
3.誤り。これは迷いどころですが,免疫不全患者では抗体価が低くなるため,ウラ試験はA・B血球双方とも凝集しない像を呈するはずです。
4.正しい。上述の表のとおりです。
5.誤り。不規則抗体陽性であればウラ試験の凝集が過剰に起こるはずです……が,もしオモテ試験の結果が正しいとすると,血液型はO型となり,A・B血球双方で凝集があってもそれは普通の反応であるため,このカラム凝集法だけでは判別できません。
AM 問86
解答:2
1・3・4・5.誤り。いずれも血球浮遊液は約3%です(濃くても5%)。
2.正しい。スライド法は10%の血球浮遊液を作製します。(濃くすることで,遠心等を行わずとも凝集反応が目に見えて起こるようになるため)
AM 問87
解答:5
1~4.誤り。インキュベートは不要です。
5.正しい。臨床的意義のある,37℃で反応する抗体を感度よく検出するため,間接抗グロブリン試験では37℃のインキュベートが必須となります。
AM 問88
解答:3・4
適応条件なんて聞いたことないかもしれませんが,自己血輸血が「手術を行う前にすること」とわかっておけば正答自体はたやすいです。
1・2.誤り。年齢・体重の制限はありません。(ここが献血とは違うところです)
3.正しい。全身状態の悪い患者から血液を採って貯血することは難しいと考えれば,この選択肢が妥当だといえます。
4.正しい。緊急手術だと手術予定がわからないので貯血のしようがないと考えれば,この選択肢が妥当だといえます。
5.誤り。貯血式自己血輸血では,Hb値は11g/dL以上を原則とします。10.0g/dLは軽度貧血であり,この患者から大量の血液を採るのはよろしくないといえます。
AM 問89
解答:2・5
輸血副作用の問題もよく出題されるので,それぞれの原因や特徴をしっかり押さえておきましょう!
1.誤り。鉄過剰によって生じます。免疫学的な機序ではありません。
2.正しい。ドナーリンパ球によって起こります。リンパ球が関与するため免疫学的な機序です。
3.誤り。カリウム過剰によって生じます。免疫学的な機序ではありません。
4.誤り。循環負荷が増大することによって起こる心不全です。免疫学的な機序ではありません。
5.正しい。抗白血球抗体(抗HLA抗体など)によって起こります。抗体が関与するため免疫学的な機序です。
公衆衛生学(AM90~94)
AM 問90
解答:5
予防医学の問題は簡単な割に結構出題されるので,きっちり把握して確実に得点したいところです。
(1)一次予防
病気になる前の対処(予防)。
例:食生活改善・生活環境改善・禁煙・予防接種など
(2)二次予防
病気になった時の対処(早期発見・早期治療)。
例:健康診断・人間ドック・新生児マススクリーニングなど。
(3)三次予防
病気になった後の対処(リハビリテーション)。
例:適切な治療・作業療法・理学療法・精神科デイケア・適正配置など。
1.誤り。一次予防に該当します。
2.誤り。二次予防に該当します。
3.誤り。一次予防に該当します。
4.誤り。一次予防に該当します。
5.正しい。
AM 問91
解答:3
1.誤り。カットオフ値はROC曲線で決めます。
2.誤り。感度と特異度はトレードオフの関係。すなわち,どちらかが低くなればもう片方は高くなります。
3.誤り。検査前確率(検査の前にその疾患を有している確率,有病率ともいう)が低いと,偽陽性の数は多くなります。
例えば,検査前確率が50%の1000人を対象に感度90%,特異度90%の検査を行うと,
疾患+ | 疾患- | 合計 | |
検査陽性 | 450 | 50 | 500 |
検査陰性 | 50 | 450 | 500 |
合計 | 500 | 500 | 1000 |
となり,偽陽性の数は50になります。次に,対象を検査前確率が10%の1000人とすると(感度・特異度は同じ)
疾患+ | 疾患- | 合計 | |
検査陽性 | 90 | 90 | 500 |
検査陰性 | 10 | 810 | 500 |
合計 | 100 | 900 | 1000 |
となり,偽陽性の数は90(↑40)となります。(割合でみるとどちらも同じですが……)
4.正しい。特異度とは,疾患がない人のうち,検査が陰性と出た人の割合をいいます。特異度が高いほど偽陽性が低くなるため,確定診断に有用です。
5.誤り。陽性尤度比は$\frac{\mathrm{ 感度 }}{\mathrm{1-特異度 }}$で求めます。陽性尤度比が高い=特異度が高いということになるので,この場合は確定診断に有用となります。
AM 問92
解答:2
定期予防接種の問題はたまに出題されるので,ゴロで覚えておきましょう!
「PV用にビッグな水筒をもって,日本の富士は百万歩で行け!」
PV:HPV(ヒトパピローマウイルス)
ビッグ:HBV(B型肝炎)
水筒:水痘
日本の:日本脳炎
富:風疹
士:ジフテリア
は:破傷風
肺炎球菌感染症
百:百日咳
万:麻疹
歩:ポリオ(急性灰白髄炎)
行:インフルエンザ菌b型(Hib)
インフルエンザ(65歳以上と一部の60~64歳の高齢者)
け:結核(BCG)
※予防接種のうち,一部は混合ワクチンとなっています。
・MR混合:麻疹+風疹
・DPT-IPV4種混合:ジフテリア+百日咳+破傷風+ポリオ
1・3~5.誤り。
2.正しい。A型肝炎は任意接種に指定されています。
AM 問93
解答:5
保健所の業務を覚えるのは骨が折れるので,保健所の業務でないものを覚えておくと楽です。
- 母子健康手帳の交付
- 身体障害者手帳の交付
- 医療保険事業
- ~センターの設置
1~4.誤り。これらはすべて保健所の業務の1つです。
5.正しい。母子健康手帳の交付は市町村の業務です。
AM 問94
解答:4・5
介護保険についての問題は近年増加傾向にあるので,きちんと対策して確実に解けるようにしておきたいところです。
(1)被保険者
第1号被保険者:65歳↑
第2号被保険者:40~64歳
なお,40歳以上は強制加入。
(2)保険者
市町村
保険料は保険者が自由に決められる。(一律でない)
(3)要介護認定
認定を受けたい人が市町村に申請
→訪問調査
→一次判定(コンピュータ)
→二次判定(介護認定審査会)
ケアプランは基本ケアマネージャーが作成するが,本人や家族が作成することも可能。
(4)給付
原則現物(サービス)給付。
予防給付と介護給付がある。
予防給付:要支援に認定された人が対象。
介護給付:要介護に認定された人が対象。
1.誤り。都道府県ではなく市町村です。
2.誤り。40歳以上です。
3.誤り。要支援者に対しては予防給付が支給されます。
4・5.正しい。
医用工学概論(AM95~100)
AM 問95
解答:3
- 異方性
同一組織でも,測定する方向により物性値が異なる。 - 非線形性
反応が比例関係でない。 - 周波数依存性・温度依存性
周波数・温度によって物性値が異なる。 - 経時変化
時間の経過によって物性値が変化する。
1.誤り。組織は非磁性体です。
2.誤り。細胞膜は絶縁体とみなすことができるため,抵抗率が高いといえます。
3.正しい。異方性を知っておけば選択できます。
4.誤り。電流の周波数に依存します。
5.誤り。脂肪は最も導電率が低いです。
AM 問96
解答:3
100Vは実効値を表しています。なので,最大値を求める場合は,1.41($\sqrt{2}$)を実効値に掛けてあげればOKです。
よって,100×1.41=141Vとなるため,3が答えとなります。
1・2・4・5.誤り。
3.正しい。
AM 問97
解答:5
1.誤り。パルス波の振幅の大小で変調する方法です。
2.誤り。パルス波の2進数コードで変調する方法です。
3.誤り。パルス波の間隔の大小で変調する方法です。
4.誤り。パルス波の位置変化で変調する方法です。
5.正しい。パルス波の幅(デューティ比)の大小で変調する方法です。
AM 問98
解答:4
マクロショック・ミクロショックの問題は頻出です!絶対に押さえておきましょう。
1.誤り。患者漏れ電流許容値です。
2.誤り。最小感知電流です。
3.誤り。離脱限界電流です。
4.正しい。
5.誤り。
AM 問99
解答:3
1・2・4・5.適切。
3.不適。パスワードを共有化することで外部への情報漏洩のリスクが高まります。
AM 問100
解答:5
1・3・4.正しい。振動,気流,装置が水平かどうかなどが測定値に影響します。
2.正しい。上皿天秤に用いられる分銅は精密に重さが検定されているものであるため,汚れや錆を生じさせたり,加圧や衝撃などで一部がかけたり削れたりしないよう十分な注意が必要です。
5.誤り。これは電子天秤の測定誤差の原因です。地球上で測定場所が変われば重力加速度が変わるので,標準分銅の測定や校正表による校正(キャリブレーション)が必要となります。
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