第65回臨床検査技師国家試験(PM61~80)の解説です。
【更新履歴】
2023.2.4
・問71の解説画像を更新しました。
第65回臨技国試のPM問61~80の解説です。
難易度は主観で1~10の10段階でつけています。
1:超簡単
2~3:簡単
4~5:普通
6~7:やや難問
8~9:難問
10:超難問
第65回臨技国試についてをまとめたページもありますので,まだ見ていない方はぜひそちらもご参照ください。
問題の出典:厚生労働省ホームページ 第65回臨床検査技師国家試験の問題および正答について 午後問題(https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/topics/dl/tp190415-07b_01.pdf)
臨床血液学(PM59~67)
PM 問61
解答:1・5
<赤血球の構造異常・その他の異常>
名称 | 説明 | 主な疾患 | 普通染色観察 | 超生体染色観察 |
Howell-Jolly小体 | 核遺残物 | 摘脾後 悪性貧血 | ○ | ○ |
Pappenheimer小体 | 鉄顆粒 | 摘脾後 鉄芽球性貧血 | ○ | ○ |
Heinz小体 | 変性Hb凝集 | G6PD欠乏症 | × | ○ |
好塩基性斑点 | リボソーム凝集変性 | 鉛中毒 悪性貧血 | ○ | ○ |
Cabot環 | 紡錘糸遺残物 | 悪性貧血 | ○ | × |
連銭形成 | 抗体による凝集 | 多発性骨髄腫 | - | - |
赤血球凝集 (寒冷凝集) | 寒冷凝集素症 マイコプラズマ肺炎 | - | - | |
Schüffner斑点 | マラリア | 三日熱マラリア | - | - |
↑連銭形成
※他の異常の画像については著作権の問題で掲載できないため,各自で検索してください。
1・5.正しい。どちらも赤血球の異常です。
2.誤り。Auer小体は白血球の異常です。AMLの診断価値が高い異常です。
3.誤り。Döhle小体は好中球の異常です。重症感染症などで出現します。
4.誤り。Russell小体は形質細胞の異常です。多発性骨髄腫などで出現します。
PM 問62
解答:1
54am63・59pm63にも同様の問題が出題されており,過去問を対策していれば難なく解ける問題です。
細胞表面抗原については午前の問題で既に解説しているので,そちらをご確認ください。
1.誤り。造血幹細胞はCD34陽性です。
2~5.正しい。
PM 問63
解答:4
画像では中心にfaggot細胞(Auer小体集合細胞)が出現していることから,すぐに急性前骨髄球性白血病(M3・APL)と断定できます。
faggot細胞の画像は55am66・57am66・58am66と,過去に3回出題されており,こちらも過去問を対策していれば簡単な問題です。
PM 問64
解答:5
白血球の形態異常の問題も出題頻度が高いため対策必須です。
【出典】
Auer小体:厚生労働省ホームページ 第54回臨床検査技師国家試験の問題および正答について 午後問題別冊(https://www.mhlw.go.jp/topics/2008/04/dl/tp0418-5d.pdf)
faggot細胞:厚生労働省ホームページ 第65回臨床検査技師国家試験の問題および正答について 午後問題別冊
(https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/topics/dl/tp170425-07a_02.pdf)
中毒性顆粒:厚生労働省ホームページ 第62回臨床検査技師国家試験の問題および正答について 午前問題別冊
(https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/topics/dl/tp160411-05am_02_01.pdf)
低顆粒好中球:厚生労働省ホームページ 第57回臨床検査技師国家試験の問題および正答について 午後問題別冊
(https://www.mhlw.go.jp/topics/2011/04/dl/tp_siken_57_rinken_04.pdf)
過分葉好中球:厚生労働省ホームページ 第54回臨床検査技師国家試験の問題および正答について 午後問題別冊
(https://www.mhlw.go.jp/topics/2008/04/dl/tp0418-5c.pdf)
偽Pelger異常:厚生労働省ホームページ 第52回臨床検査技師国家試験の問題および正答について 午後問題別冊
(https://www.mhlw.go.jp/topics/2006/04/dl/tp0419-5pm-betu.pdf)
flower細胞:厚生労働省ホームページ 第53回臨床検査技師国家試験の問題および正答について 午後問題別冊
(https://www.mhlw.go.jp/topics/2007/04/dl/tp0427-1d.pdf)
写真では右上と左下に過分葉好中球(6分葉)が出現しています。故に,巨赤芽球性貧血が考えられます。
1~4.誤り。
5.正しい。
PM 問65
解答:3
今年の血液分野の中ではやや難問。画像を見てどう考えるか,が全てです。応用力が試される問題です。
画像では芽球が多数出現していることから,(この問題にはありませんが,実際は検査所見と併せて)白血病を疑います。
次に,骨髄系なのか,それともリンパ系なのかを調べる必要があります。これは,AMLとALLの治療方針が全く違うためです。そのため,MPO染色は外せません。そして,AMLだった時,この画像からわかることは単球系であるということです(細胞質が広く,色が薄い芽球が多数認められるから)。
単球系と考えた場合,鑑別すべきはM4とM5。これはエステラーゼ二重染色で鑑別可能です。よって,エステラーゼ染色も必要と考えられるため,3が正解です。
1.誤り。鉄芽球性貧血やMDSを疑った場合に有用です(環状鉄芽球の検索)。
2.誤り。急性赤白血病(M6)やALLの補助診断に有用ですが,画像から赤芽球系の細胞は認められず,積極的に選ぶ選択肢ではありません。
3.正しい。上記の通り。
4.誤り。リンパ性白血病の補助診断に用いられます。が,覚えるは特に必要ありません。
5.誤り。CMLやMDSの補助診断,類白血病反応との鑑別で用いられることはありますが,画像からCML・MDS・類白血病反応を示唆する像はなく,実施する必要性は低いといえます。
PM 問66
解答:2
検査所見(CBC)で貧血であることがわかったら,必ずすべきことは赤血球恒数の計算です。国家試験ではこれだけで答えがほぼ出せます。
(1)平均赤血球容積(MCV)
・赤血球1個当たりの大きさを表します。
・基準値は81~100fL。≦80で小球性・≧101で大球性となります。
$$\,\mathrm{MCV}=\frac{\,\mathrm{Ht}}{\,\mathrm{RBC} \,\mathrm{[10^{6}/μL]}}\times 10$$
(2)平均赤血球ヘモグロビン濃度(MCHC)
・赤血球1個に含まれるHbが,赤血球中の何%に相当するかを表します。
・基準値は31~35%。<31で低色素性となります。
$$\,\mathrm{MCHC}=\frac{\,\mathrm{Hb}}{\,\mathrm{Ht}}\times 100$$
(3)平均赤血球ヘモグロビン量(MCH)
・赤血球1個当たりのヘモグロビン量を表します。
・基準値は28~32pg。<28で低色素性となります。
$$\,\mathrm{MCH}=\frac{\,\mathrm{Hb}}{\,\mathrm{RBC} \,\mathrm{[10^{6}/μL]}}\times 10$$
MCV=18/2.5×10=72.0fL
MCHC=5.0/18×100=27.8%
より,小球性低色素性貧血であることがわかります。よって,考えられるのは2となります。
1.誤り。正球性貧血です。
2.正しい。
3.誤り。正球性~大球性貧血です。また,汎血球減少をきたします。
4.誤り。正球性貧血です。
5.誤り。大球性貧血です。また,汎血球減少をきたします。
PM 問67
解答:4・5
- プロトロンビン(Ⅱ)
- 凝固第Ⅶ因子
- 凝固第Ⅸ因子
- 凝固第Ⅹ因子
- プロテインC
- プロテインS
「肉納豆のプロテイン」 ※有名なゴロです。
・に:Ⅱ(プロトロンビン)
・く:Ⅸ
・な:Ⅶ
・とう:Ⅹ
・プロテイン:プロテインC/S
1~3.誤り。異常は見られません。
4.正しい。プロテインC・SはビタミンK依存性因子であるため,ビタミンK欠乏で異常を示します。
5.正しい。ビタミンK依存性凝固因子であるプロトロンビン・Ⅶ・Ⅸ・Xの産生が低下するため,PT・APTTいずれも延長します。
臨床微生物学(PM68~78)
PM 問68
解答:1・5
<覚えておきたい抗菌薬の系統>
蛋白合成阻害の抗菌薬は,「静菌作用の抗菌薬+アミノグリコシド系」と覚えておけば簡単です。
(アミノグリコシド系は「アミノ」=「アミノ酸」=「蛋白」と考えればOK!)
「黒いリネンを静かにまくって」
黒:クロラムフェニコール
リネン:リネゾリド
静かに:静菌
まく:マクロライド系
て:テトラサイクリン系
1.正しい。ABPCはペニシリン系なので細胞壁合成阻害作用を示します。
2.誤り。GMはアミノグリコシド系なので蛋白合成阻害作用を示します。
3.誤り。MINOはテトラサイクリン系なので蛋白合成阻害作用を示します。
4.誤り。CPFXはキノロン系なので核酸合成阻害作用を示します。
5.正しい。VCMはグリコペプチド系なので細胞壁合成阻害作用を示します。
PM 問69
解答:2
蚊が媒介する疾患は多いのでやや難しいですが,代表的なものだけを覚えておけば大丈夫です。衛生動物(マダニやシラミなど)が媒介する疾患は以下を参照してください。
<蚊が媒介する疾患>
疾患 | 媒介する代表的な蚊 |
マラリア | ハマダラカ |
Bancroft糸状虫症 | ハマダラカ・アカイエカ |
デング熱 | ヒトスジシマカ・ネッタイシマカ |
黄熱 | ネッタイシマカ |
日本脳炎 | アカイエカ |
1.誤り。媒介動物は特にありません。
2.正しい。
3.誤り。シラミです。
4・5.誤り。マダニです。
PM 問70
解答:1・5
Hepatitis virusの問題は免疫の分野でもよく出題されます。必ず対策しておきましょう。
<肝炎ウイルス>
型 | A | B | C | D | E |
核酸 | RNA | DNA | RNA | RNA | RNA |
感染経路 | 経口 | 血液 | 血液 | 血液 | 経口 |
中和抗体 (ワクチン) | ○ | ○ | × | × | × |
抗原抗体検査項目 (★は中和抗体) | ★HAV抗体 IgM-HA抗体 | HBs抗原 ★HBs抗体 HBe抗原 HBe抗体 IgG-HBc抗体 IgM-HBc抗体 HBV-DNA | HCV抗体 HCV-RNA | ||
備考 | 肝硬変の最も 主要な原因 | 欠損ウイルス (感染には HBVが必要) | 糞便中に検出 |
※表はスクロールできます。
PM 問71
解答:2・4
培地の問題と比べて出題頻度はやや低めですが,それでも2年に1問程度は出題されているので対策は必須。
※芽胞・莢膜・抗酸菌(蛍光染色除く)など,染まりにくそうなものが加温必要。
1.誤り。墨汁染色はCryptococcusを対象とします。
2.正しい。
3.誤り。Corynebacterium spp.は芽胞を形成しないので芽胞染色は不適切です。
4.正しい。
5.誤り。Clostridioides difficileは異染小体を形成しないのでNeisser染色は不適切です。
PM 問72
解答:4
やや脱色不良で紫色が強めではありますが,画像にはGram陰性球菌が見られます。血寒・チョコ寒のいずれにも発育していることも考慮すれば,Moraxella catarrhalisが最も考えられるでしょう。
1・3・5.誤り。これらはいずれもGram陰性桿菌です。
2.誤り。Haemophilus influenzaeはヒツジ血寒には発育しません。
4.正しい。
PM 問73
解答:3
まずは文章から判断します。
好気培養発育[-]であることから,偏性嫌気性菌と考えられます。これより,残るのはActinomyces spp.とClostridium spp.の2つです。
後はGram染色像を確認します。画像ではGram陽性桿菌が確認でき,画像の矢印は菌体の一部が白く抜けている=Gram染色で染まらない→芽胞であることが推測できます。となれば,Actinomyces spp.とClostridium spp.のうち,芽胞を持つものはClostridium spp.であるため,3が正解となります。
1.誤り。偏性嫌気性Gram陽性桿菌ですが,芽胞は形成しません。
2.誤り。通性嫌気性/偏性好気性Gram陽性桿菌です。
3.正しい。
4・5.誤り。偏性好気性Gram陽性桿菌です。また,カタラーゼは陽性です。
PM 問74
解答:1・2
1・2.正しい。
3.誤り。ポリオウイルスはポリオ(急性灰白髄炎)の原因ウイルスです。
4.誤り。コロナウイルスはSARS・MERS・COVID-19の原因ウイルスです。流行性角結膜炎の原因ウイルスはアデノウイルスです。
5.誤り。パルボウイルスは伝染性紅斑の原因ウイルスです。手足口病はコクサッキーウイルスです。
PM 問75
解答:4
遺伝子の伝達形式のうち,プラスミドが他の細菌に組み込まれる方法は接合とトランスフォーメーション(形質転換)のみ。このうち,Rプラスミド(薬剤耐性に関与するプラスミド)が他の細菌に伝播するのは接合です。
PM 問76
解答:4
<Mycobacterium>
菌名 | Runyon分類 | 着色 | ナイアシン | 硝酸塩還元 | 発育 | ||
暗 | 光 | 28℃ | 37℃ | ||||
M. tuberculosis | - | - | - | + | + | × | ○ |
M. bovis | - | - | - | - | × | ○ | |
M. kansasii | Ⅰ (光発色) | - | 黄 | - | + | ○ | ○ |
M. marinum | - | 黄 | - | - | ○ | △ | |
M. scrofulaceum | Ⅱ (暗発色) | 橙 | 橙 | - | - | ○ | ○ |
M. avium | Ⅲ (光非発色) | - | - | - | - | ○ | ○ |
M. intracellulare | - | - | - | - | ○ | ○ | |
M. fortuitum | Ⅳ (迅速発育) | - | - | - | + | ○ | ○ |
M. chelonae | - | - | ± | - | ○ | ○ | |
M. abscessus | - | - | - | - | ○ | ○ | |
M. leprae | - |
1・3.誤り。Ⅳ群です。
2.誤り。Ⅲ群です。
4.正しい。Ⅰ群です。
5.誤り。
PM 問77
解答:1・2
インフルエンザ患者からのくしゃみ・咳等による飛沫感染と,ドアノブ等に触れて手についたウイルスを目や鼻,口などに無意識にもっていくことにより,粘膜からウイルスが侵入する接触感染が主な感染経路です。
※空気感染ではない点に注意!空気感染するのは結核・麻疹・水痘。
PM 問78
解答:5
【基礎編】
・Gram染色:Gram陰性
・酸素要求性:偏性好気性
・形態:桿菌
・莢膜:[-]
・芽胞:[-]
・鞭毛(運動性):[+](単毛)
・普通寒天培地発育:[+]
・オキシダーゼ:[+]
【応用編】
・アルギニン加水分解:[+]
・アシルアミダーゼ:[+]
・色素産生:[+](ピオ~~)
1.誤り。低温発育が可能なのはYersinia spp.とListeria spp.の2菌種です。
2.誤り。周毛性鞭毛の代表例は有芽胞菌と腸内細菌です。
3.誤り。偏性好気性菌であり,ブドウ糖の嫌気的分解はできません。
4.誤り。オキシダーゼ陽性です。
5.正しい。他にピオベルジンやピオルビンなどを産生します。
臨床免疫学(PM79~89)
PM 問79
解答:4
<各種細胞が産生する主なサイトカイン>
Th1 | ・IL-2 ・IFN-γ |
Th2 | ・IL-4 ・IL-5 ・IL-6 ・IL-10 ・IL-13 |
Mφ | ・IL-1 ・IL-6 ・IL-8 ・IL-12 ・TNF-α ・IFN-α |
炎症性サイトカイン | ・IL-1 ・IL-6 ・TNF-α |
抗炎症性サイトカイン | ・IL-10 ・TGF-β |
IFN-γを産生する主な細胞はTh1とNK細胞であり,Th1はヘルパーT細胞の1種であるため,4が正解です。
PM 問80
解答:2
※AFP:alpha fetoprotein
PIVKA:protein induced by vitamin K absence or antagonist
CEA:carcinoembryonic antigen
CA:carbohydrate antigen
SCC:squamous cell carcinoma
CYFRA:cytokeratin 19 fragment
NSE:neuron specific enolase
ProGRP:pro gastrin releasing peptide
SLX:sialyl Lewis-x-i antigen
hCG:human chorionic gonadotropin
1・3~5.正しい。
2.誤り。大腸癌は腺癌であるため,SCCは対象となりません。(CEAなどが対象です)
コメント
芽胞染色についてですが、Wirtz法はマラカイトグリーンとサフラニン、Moller法は石炭酸フクシンとメチレンブルーだと思いますが違いますでしょうか?
くるみさん,コメントありがとうございます。
確認したところ,染色キットによっても異なるようですが,現在ではその染色液もあるようです。解説画像を更新しておきましたのでご確認ください。
ただ,国試の過去問を分析する限り,染色液の名称まで問われることはほとんどないため解説画像も優先度を下げておきます。(赤字→黒字)
ご指摘ありがとうございました。