国家試験で出題される培地について解説します!ほぼ毎年出題されている範囲なだけに,対策なしで挑むのは無謀!?
各見出しの重要度は,過去の臨床検査技師国家試験(第52回~最新回まで)の出題率や覚えやすさなどを考慮して主観で表記しています。国家試験を受ける学生以外の方は無視してかまいません。
- 培地の種類(重要度:★★★★☆)
- 非選択分離培地(重要度:★★★★★)
- 選択分離培地(重要度:★★★★★)
- (卵黄加)マンニット食塩寒天培地
- MacConkey(マッコンキー)寒天培地
- sorbitolMacConkey(ソルビトールマッコンキー)寒天培地
- DHL(deoxycholate hydrogen sulfide lactose)寒天培地
- SS(Salmonella-Shigella)寒天培地
- CIN(cefsulodin irgasan novobiocin)寒天培地
- TCBS(thiosulfate citrate bile salt sucrose)寒天培地
- NAC(nalidixic acid cetrimide)寒天培地
- Skirrow(スキロー)寒天培地
- Thayer-Martin(サイアーマーチン)培地
- BBE(bacteroides bile esculin)寒天培地
- CCFA(cycloserine cefoxitin fructose agar)寒天培地 CCMA(cycloserine cefoxitin mannitol agar)寒天培地
- 小川培地
- PPLO(pleuropneumonia like organism)培地
- 確認培地(重要度:★★★★★)
- 増菌培地(重要度:★★☆☆☆)
- その他の培地(重要度:★★★☆☆)
- 人工培地に発育できない菌種(重要度:★★★★★)
- 練習問題
培地の種類(重要度:★★★★☆)
非選択分離培地
多種の細菌を発育させることができる培地です。
選択分離培地
ある特定の細菌のみを選択的に発育させることができる培地です。
目的以外の菌の発育を抑制するため,選択剤と呼ばれるものが添加されています。
確認培地
菌を増やすための培地ではなく,分離培地上の独立コロニーから得られた細菌について,その菌種を明らかにすること(同定)を目的として用いる培地です。
増菌培地
検査材料中の細菌数が少ないと考えられる場合に,分離培養用に細菌を発育させるときに用いる培地です。
その他
他に,薬剤感受性試験に用いられるものや,検体輸送用に用いられる培地もあります。
非選択分離培地(重要度:★★★★★)
普通寒天培地
対象
・栄養要求条件が厳しくない多くの細菌
備考
以下に示す菌は普通寒天培地に発育できない代表的な菌種です。
- Streptococcus spp.
- Corynebacterium spp.
- Neisseria spp.
- Haemophilus spp.
- Bordetella spp.
- Legionella spp.
- Pasteurella spp.
- Helicobacter spp.
「ヘボなパレード,ヘリのコストがない」と覚えておきましょう。
ヘ:Haemophilus
ボ:Bordetella
パ:Pasteurella
レ:Legionella
ヘリ:Helicobacter
コ:Corynebacterium
スト:Streptococcus
ない:Neisseria
血液寒天培地
対象
・普通寒天培地に発育できないような,栄養要求条件が厳しい細菌
備考
単に血液寒天培地といった場合,ヒツジ血液寒天培地を表します。
以下に示す菌は血液寒天培地に発育できません。
- Haemophilus spp.
ヒツジ赤血球に含まれているV因子分解酵素の影響により,V因子が欠乏するため。
ウマやウサギ血液を用いると発育可能。 - Bordetella spp.
培地中に含まれる発育阻害物質の影響により,発育が阻害されるため。 - Legionella spp.
発育に必要な物質が含まれていないため。
チョコレート寒天培地
対象
・普通寒天培地に発育できないような,栄養要求条件が厳しい細菌
・ヒツジ血液寒天培地に発育できないHaemophilus spp.
(特に後者の目的で用いられます)
備考
チョコレート寒天培地は,培地の色がチョコレートの色に見えるためにその名称がつきました。(チョコレートが実際に添加されているわけではありません)
血液寒天培地に発育できないHaemophilusでも,チョコレート寒天培地にすると,ヒツジ赤血球に含まれるV因子分解酵素を失活させることができるため,培養できるようになります。
以下に示す菌はチョコレート寒天培地に発育できません。
- Bordetella spp.
培地中に含まれる発育阻害物質の影響により,発育が阻害されるため。 - Legionella spp.
発育に必要な物質が含まれていないため。
BTB乳糖加寒天培地
対象
・腸内細菌などのGram陰性桿菌
糖・pH指示薬
・乳糖
・ブロモチモールブルー(BTB)
酸性条件で黄色・中性条件で緑色・アルカリ性条件で青色を示します。
備考
乳糖と,pH指示薬であるBTBが添加されています。
腸内細菌のうち,乳糖を分解するような菌種(Escherichia coliなど)では,乳糖を分解する際に発生する酸の影響で,コロニー周囲がBTBの酸性色調である黄色を示します。
なお,普通寒天と同様,最低限の栄養素しか含まれていないため,普通寒天に発育できない菌種(Streptococcus spp.など)はこの培地にも発育できません。
また,塩化ナトリウムが添加されていないため,好塩性の菌種であるVibrio spp.も発育ができません。
血液加ブルセラ寒天培地・GAM寒天培地
対象
・偏性嫌気性菌
備考
どちらも偏性嫌気性菌の分離に用いられます。
Bordet-Gengou(ボルデージャング)培地
対象
・Bordetella pertussis(百日咳菌)をはじめとするBordetella spp.
※Bordetella spp.以外の菌も発育します。
備考
Bordetella spp.の分離を目的として開発された培地です。
ジャガイモ浸出液を使用しており,これが発育阻害物質を吸着する性質があるため,Bordetella spp.が発育できるようになります。
Löffler(レフレル)培地
対象
・Corynebacterium diphtheriae(ジフテリア菌)
※Corynebacterium diphtheriae以外の菌も発育します。
備考
Corynebacterium diphtheriae(ジフテリア菌)の分離を目的として開発された培地です。
B-CYE(buffered charcoal yeast extract)寒天培地
対象
・Legionella pneumophilaをはじめとするLegionella spp.
※Legionella spp.以外の菌も発育します。
備考
Legionella spp.の分離を目的として開発された培地です。
Legionella spp.の発育に必要な鉄やL-システインを含んでおり,この培地を用いることで,血寒やチョコ寒に発育しないLegionella spp.を増殖させることができます。
ポテト・デキストロース寒天培地 Sabouraud(サブロー)寒天培地
対象
・真菌全般
糖・pH指示薬
・ブドウ糖
選択剤
・クロラムフェニコール
備考
真菌の分離を目的とした培地です。
ポテト・デキストロース寒天培地にはジャガイモ抽出液が,Sabouraud寒天培地にはペプトンが用いられています。
真菌以外の発育を抑制するため,選択剤にはクロラムフェニコールが用いられます。
選択分離培地(重要度:★★★★★)
(卵黄加)マンニット食塩寒天培地
対象
・Staphylococcus spp.
糖・pH指示薬
・マンニット
・PR(フェノールレッド)
酸性条件で黄色・中性条件で橙色・アルカリ性条件で赤色を示します。
選択剤
・7.5%塩化ナトリウム
備考
Staphylococcus spp.の分離を目的とした培地です。
Staphylococcus spp.のうち,マンニットを分解するStaphylococcus aureusでは,マンニットを分解する際に発生する酸の影響で,コロニーとその周囲がPRの酸性色調である黄色を示します。
また,卵黄液が添加されている卵黄加マンニット食塩寒天培地の場合,Staphylococcus aureusのコロニー周囲にレシトビテリン反応(卵黄反応)がみられます。
MacConkey(マッコンキー)寒天培地
対象
・腸内細菌
糖・pH指示薬
・乳糖
・NR(ニュートラルレッド)
酸性条件で赤色・中性条件で橙色・アルカリ性条件で黄色を示します。
選択剤
・胆汁酸塩
・クリスタル紫
備考
腸内細菌の分離と鑑別を目的とした培地です。
腸内細菌はGram陰性であるため,胆汁酸塩やクリスタル紫によってGram陽性菌の発育を抑制します。
腸内細菌のうち,乳糖を分解するような菌種(Escherichia coliなど)では,乳糖を分解する際に発生する酸の影響で,胆汁酸塩が析出し,これにNRが沈着して,コロニーとその周囲がNRの酸性色調である赤色を示します。
sorbitolMacConkey(ソルビトールマッコンキー)寒天培地
対象
・腸管出血性大腸菌(EHEC)O157
糖・pH指示薬
・ソルビトール
・NR(ニュートラルレッド)
酸性条件で赤色・中性条件で橙色・アルカリ性条件で黄色を示します。
選択剤
・胆汁酸塩
・クリスタル紫
備考
腸内細菌,特に腸管出血性大腸菌(EHEC)O157の分離・鑑別を目的とした培地です。
腸内細菌はGram陰性であるため,胆汁酸塩やクリスタル紫によってGram陽性菌の発育を抑制します。
腸内細菌のうち,ソルビトールを分解するような菌種(Escherichia coliなど)では,ソルビトールを分解する際に発生する酸の影響で,胆汁酸塩が析出し,これにNRが沈着して,コロニーとその周囲がNRの酸性色調である赤色を示します。
しかし,EHEC O157はソルビトール非分解,あるいは遅分解であるため,酸が産生されず,コロニー周囲が赤色になりません。この性状から他のEscherichia coliと鑑別できます。
DHL(deoxycholate hydrogen sulfide lactose)寒天培地
対象
・腸内細菌
糖・pH指示薬
・乳糖
・白糖
・NR(ニュートラルレッド)
酸性条件で赤色・中性条件で橙色・アルカリ性条件で黄色を示します。
選択剤
・胆汁酸塩
・チオ硫酸ナトリウム
・クエン酸ナトリウム
備考
MacConkey寒天と同様,腸内細菌の分離と鑑別を目的とした培地です。
MacConkey寒天と異なり,乳糖分解能だけでなく,白糖分解能・硫化水素産生能も同時にみることができます。
腸内細菌はGram陰性であるため,胆汁酸塩によってGram陽性菌の発育を抑制します。
腸内細菌のうち,乳糖または白糖を分解するような菌種(Escherichia coliなど)では,乳糖または白糖を分解する際に発生する酸の影響で,胆汁酸塩が析出し,これにNRが沈着して,コロニーとその周囲がNRの酸性色調である赤色を示します。
また,腸内細菌のうち,チオ硫酸ナトリウムから硫化水素を産生するような菌種(Salmonella Enteritidisなど)では,コロニーが黒色を示します。
SS(Salmonella-Shigella)寒天培地
対象
・Salmonella spp.
・Shigella spp.
※Salmonella spp.・Shigella spp.以外の腸内細菌も発育します。
糖・pH指示薬
・乳糖
・NR(ニュートラルレッド)
酸性条件で赤色・中性条件で橙色・アルカリ性条件で黄色を示します。
選択剤
・胆汁酸塩
・ブリリアント緑
・チオ硫酸ナトリウム
・クエン酸ナトリウム
備考
腸内細菌,特にSalmonella spp.とShigella spp.の分離と鑑別を目的とした培地です。
この2菌種の菌名の頭文字を取って「SS寒天培地」という名称がつけられました。
腸内細菌はGram陰性であるため,胆汁酸塩やブリリアント緑によってGram陽性菌の発育を抑制します。
腸内細菌のうち,乳糖を分解するような菌種(Escherichia coliなど)では,乳糖を分解する際に発生する酸の影響で,胆汁酸塩が析出し,これにNRが沈着して,コロニーとその周囲がNRの酸性色調である赤色を示します。
そのため,乳糖を分解しないSalmonella spp.・Shigella spp.と容易に鑑別できます。
また,腸内細菌のうち,チオ硫酸ナトリウムから硫化水素を産生するような菌種(Salmonella Enteritidisなど)では,生じた硫化水素によって硫化鉄が形成されるため,コロニーが黒色を示します。
CIN(cefsulodin irgasan novobiocin)寒天培地
対象
・Yersinia spp.
糖・pH指示薬
・マンニット
・NR(ニュートラルレッド)
酸性条件で赤色・中性条件で橙色・アルカリ性条件で黄色を示します。
選択剤
・胆汁酸塩
・クリスタル紫
・イルガサン(消毒剤)
・セフスロジン(抗菌薬)
・ノボビオシン(抗菌薬)
備考
Yersinia spp.の分離を目的とした培地です。
培地名である「CIN」は,選択剤として用いられているイルガサン・セフスロジン・ノボビオシンのそれぞれの頭文字を取ったものとなっています。
マンニットを分解するYersinia spp.は,マンニットを分解する際に発生する酸の影響で,胆汁酸塩が析出し,これにNRが沈着して,コロニーとその周囲がNRの酸性色調である赤色を示します。
TCBS(thiosulfate citrate bile salt sucrose)寒天培地
対象
・Vibrio spp.
糖・pH指示薬
・白糖
・BTB(ブロモチモールブルー)
酸性条件で黄色・中性条件で緑色・アルカリ性条件で青色を示します。
・TB(チモールブルー)
酸性・中性条件で黄色・アルカリ性条件で青色を示します。
(pH1.2以下の場合は赤色)
選択剤
・コール酸ナトリウム
・ウシ胆汁
・チオ硫酸ナトリウム
・クエン酸ナトリウム
備考
Vibrio spp.の分離を目的とした培地です。
Vibrio spp.のうち,白糖を分解するVibrio spp.は,白糖を分解する際に発生する酸の影響で,コロニーとその周囲がBTBとTBの酸性色調である黄色を示します。
対して,白糖を分解しないVibrio spp.の場合,コロニーとその周囲が培地と同じ青緑色を示します。
<白糖分解能(+)>
- Vibrio cholerae
- Vibrio alginolyticus
- Vibrio fluvialis
- Vibrio parahaemolyticus
- Vibrio mimicus
- Vibrio vulnificus
「カスなVibrio(カスが菌名中にあるVibrio)は白糖を分解できない!」と覚えておくと簡単です。ただし,Vibrio alginolyticusは,「al(ある)」と菌名についている通り,白糖分解能があるので注意が必要です。
NAC(nalidixic acid cetrimide)寒天培地
対象
・Pseudomonas aeruginosa(緑膿菌)
選択剤
・ナリジスク酸(ナリジキシン酸)
・セトリマイド(界面活性剤)
備考
Pseudomonas aeruginosa(緑膿菌)の分離を目的とした培地です。
Skirrow(スキロー)寒天培地
対象
・Campylobacter spp.
・Helicobacter spp.
選択剤
・バンコマイシン
・ポリミキシンB
・トリメトプリム
備考
Campylobacter spp.とHelicobacter spp.の分離を目的とした培地です。
培養時,必ず微好気培養を行います。
(↑2つの細菌が微好気性菌であるため)
Thayer-Martin(サイアーマーチン)培地
対象
・Neisseria gonorrhoeae(淋菌)
・Neisseria meningitidis(髄膜炎菌)
選択剤
・バンコマイシン
・コリスチン
・ナイスタチン
備考
Neisseria spp.のうち,病原性であるNeisseria gonorrhoeae(淋菌)とNeisseria meningitidis(髄膜炎菌)の分離を目的とした培地です。
なお,上2つのNeisseriaは炭酸ガス培養が必須です。
BBE(bacteroides bile esculin)寒天培地
対象
・Bacteroides fragilis group
選択剤
・ゲンタマイシン
・ウシ胆汁(20%)
備考
Bacteroides fragilis groupの分離を目的とした培地です。
選択剤であるゲンタマイシンとウシ胆汁により,Bacteroides fragilis以外のほとんどの菌の発育を抑制します。
また,エスクリンを加水分解するBacteroides fragilisのコロニー周囲では,生じたエスクレチンが鉄イオンと結合して暗褐色を呈します。
CCFA(cycloserine cefoxitin fructose agar)寒天培地 CCMA(cycloserine cefoxitin mannitol agar)寒天培地
対象
・Clostridioides difficile (Clostridium difficile)
糖・pH指示薬
・フルクトース(CCFA寒天)
・マンニット(CCMA寒天)
選択剤
・サイクロセリン(抗菌薬)
・セフォキシチン(抗菌薬)
備考
Clostridioides difficile (旧名:Clostridium difficile)の分離を目的とした培地です。
選択剤であるサイクロセリンとセフォキシチンにより,Clostridioides difficile以外のほとんどの菌の発育を抑制します。
国家試験には糖としてフルクトースが用いられるCCFA寒天がよく出題されます。臨床では,CCFA寒天だけでなく,フルクトースの代わりにマンニットを用いたCCMA寒天も用いられます。
小川培地
対象
・Mycobacterium spp.
選択剤
・マラカイト緑
備考
Mycobacterium spp.の分離を目的とした培地です。
PPLO(pleuropneumonia like organism)培地
対象
・Mycoplasma spp.
選択剤
・酢酸タリウム
・ペニシリン
備考
Mycoplasma spp.の分離を目的とした培地です。
確認培地(重要度:★★★★★)
胆汁エスクリン培地
対象
・Enterococcus spp.
備考
胆汁存在下での発育と,エスクリン加水分解酵素の有無の確認培地です。
Enterococcus spp.はこの培地に発育し,エスクリンをエスクレチンに分解します。また,コロニーとその周囲が暗褐色となります。
TSI(triple sugar iron)寒天培地
対象
・腸内細菌
糖・pH指示薬
・ブドウ糖
・乳糖
・白糖
・PR(フェノールレッド)
酸性条件で黄色・中性条件で橙色・アルカリ性条件で赤色を示します。
選択剤
・チオ硫酸ナトリウム
備考
ブドウ糖の発酵能・乳糖/白糖の分解能・硫化水素産生能・ガス産生の有無を同時にみることができる半斜面培地です。
※ここでいう発酵とは,嫌気的なブドウ糖の分解を指します。
腸内細菌の鑑別に用いられます。
なお,TSI寒天から白糖を除いたものをクリグラー鉄寒天培地といいます。
TSI寒天で見るべきところは高層部と斜面部です。
<ブドウ糖発酵能>
高層部(培地下側)をみる。
▶赤色…ブドウ糖発酵能(-)
▶黄色…ブドウ糖発酵能(+)
<乳糖・白糖分解能>
斜面部(培地上側)をみる。
▶赤色…乳糖and白糖分解能(-)
▶黄色…乳糖or白糖分解能(+)
<硫化水素産生能>
高層部(培地下側)をみる。
▶黒色…硫化水素産生能(+)
<ガス産生能>
培地全体を見る。
▶培地に亀裂あり…ガス産生能(+)
SIM(sulfide indole motility)培地
対象
・腸内細菌
備考
硫化水素産生能(S)・インドール産生能(I)・運動能(M)を同時にみることができる培地です。さらに,インドールピルビン酸(IPA)産生能も見ることができます。
腸内細菌の鑑別に用いられます。
シモンズ・クエン酸塩培地培地
対象
・腸内細菌
備考
クエン酸塩利用能をみることができる培地です。
腸内細菌の鑑別に用いられます。
VP(Voges-Proskauer)半流動培地
対象
・腸内細菌
備考
VP反応をみることができる培地です。
VP反応とは,ブドウ糖→ピルビン酸→アセチルメチルカルビノール(アセトイン)の糖分解反応を指します。
腸内細菌の鑑別に用いられます。
DNA寒天培地
対象
・DNA分解酵素(DNase)を持つ菌
備考
DNaseの有無をみることができる培地です。
- Staphylococcus aureus(黄色ブドウ球菌)
- Streptococcus pyogenes(化膿レンサ球菌)
- Moraxella catarrhalis
- Serratia marcescens
- Stenotrophomonas maltophilia
コーンミール寒天培地
対象
・Candida spp.
備考
真菌の一種であるCandida spp.の仮性菌糸と,Candida albicansの厚膜胞子形成をみることができる培地です。
増菌培地(重要度:★★☆☆☆)
セレナイト培地 ラパポート培地
対象
・Salmonella spp.
備考
Salmonella spp.の増菌を目的とした培地です。
パイク培地
対象
・Streptococcus pyogenes
備考
Streptococcus pyogenesの増菌を目的とした培地です。
アルカリペプトン水
対象
・Vibrio cholerae
・Vibrio parahaemolyticus
備考
Vibrio cholerae・Vibrio parahaemolyticusの増菌を目的とした培地です。
その他の培地(重要度:★★★☆☆)
Mueller-Hinton(ミューラーヒントン)寒天培地
対象
・培地に発育できるすべての菌種
備考
薬剤感受性試験を行うときに用いられる培地です。
キャリーブレア培地
対象
・培地に発育できる菌種
備考
輸送培地の1つです。糞便を輸送する際に用いられます。
人工培地に発育できない菌種(重要度:★★★★★)
細菌の中には,人工培地に発育できないものもいます。
国家試験では,その代表的な3菌種を覚えておけばOKです。
- Mycobacterium leprae
- Chlamydia trachomatis
- Treponema pallidum
練習問題
問1 選択培地で正しい組合せはどれか。2つ選べ。(第53回臨床検査技師国家試験pm47)
1.Bacteroides fragilis group=BBE寒天培地
2.Enterococcus属=セレナイトブロス
3.Pseudomonas属=CCFA寒天培地
4.Salmonella属=PPLO培地
5.Vibrio属=アルカリペプトン水
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解答:1・5
1.正しい。
2.セレナイトブロスはSalmonella spp.の増菌培地です。
3.CCFA寒天培地はClostridioides difficile の選択培地です。
4.PPLO培地はMycoplasma spp.の選択培地です。
5.正しい。
問2 正しい組み合わせはどれか。(第54回臨床検査技師国家試験am77)
1.Bordetella pertussis=Bordet-Gengou培地
2.Corynebacterium diphtheriae=TCBS寒天培地
3.Legionella pneumophila=Thayer-Martin培地
4.Neisseria gonorrhoeae=BTB乳糖加寒天培地
5.Vibrio parahaemolyticus=DHL寒天培地
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解答:1
1.正しい。
2.TCBS寒天培地はVibrio spp.の選択培地です。
3.Thayer-Martin培地はNeisseria gonorrhoeae ・Neisseria meningitidisの選択培地です。
4.Neisseria gonorrhoeae は栄養要求が厳しいため,BTB乳糖加寒天培地に発育できません。
5.Vibrio parahaemolyticus は腸内細菌ではないため,DHL寒天培地に発育できません。
問3 組み合わせで正しいのはどれか。(第56回臨床検査技師国家試験pm69)
1.スキロー培地=Yersinia enterocolitica
2.レフレル培地=Cryptococcus neoformans
3.マンニット食塩培地=Pseudomonas aeruginosa
4.Bordet-Gengou培地=Corynebacterium diphtheriae
5.Thayer-Martin培地=Neisseria meningitidis
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解答:5
1.Skirrow寒天培地はCampylobacter spp.・Helicobacter spp.の選択培地です。
2.Löffler培地はCorynebacterium diphtheriaeの分離用培地です。
3.マンニット食塩寒天培地はStaphylococcus spp.の選択培地です。
4.Bordet-Gengou培地はBordetella spp.の分離用培地です。
5.正しい。
問4 正しい組み合わせはどれか。(第57回臨床検査技師国家試験pm69)
1.GC寒天培地=Clostridium difficile
2.GAM寒天培地=Staphylococcus aureus
3.B-CYE寒天培地=Legionella pneumophila
4.Mueller-Hinton寒天培地=Haemophilus influenzae
5.ポテト・デキストロース寒天培地=Bordetella pertussis
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解答:3
1.GC寒天培地はNeisseria gonorrhoeaeの分離用培地です。
2.GAM寒天培地は偏性嫌気性菌の分離用培地です。Staphylococcus aureusは通性嫌気性菌です。
3.正しい。
4.Mueller-Hinton寒天培地は薬剤感受性試験用培地です。
5.ポテト・デキストロース寒天培地は真菌の分離用培地です。
問5 Giménez染色標本を示す。分離培養に用いるのはどれか。(第60回臨床検査技師国家試験am71)
1.B-CYE寒天培地
2.Bordet-Gengou寒天培地
3.Sabouraud寒天培地
4.SS寒天培地
5.TCBS寒天培地
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解答:1
Giménez染色=Legionella spp.。
よって,正解は1となります。
問6 培地成分を示す。この培地を用いるのはどれか。(第61回臨床検査技師国家試験am70)
ペプトン | 10g |
ブドウ糖 | 40g |
クロラムフェニコール | 0.05g |
寒天 | 15g |
精製水 | 1,000mL |
1.Candida albicans
2.Legionella pneumophila
3.Mycobacterium tuberculosis
4.Streptococcus pyogenes
5.Vibrio parahaemolyticus
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解答:1
この問題はなかなか難問ですが,選択剤にクロラムフェニコールが使われていることに気が付ければ正解にたどり着けます。クロラムフェニコールを使うのは,真菌分離用培地であるSabouraud寒天培地やポテト・デキストロース寒天培地(本問ではペプトンが使われているのでSabouraud寒天培地)なので,答えは真菌の1種であるCandida albicansが正解になります。
問7 膿のGram染色標本を示す。この起因菌の分離培地はどれか。(第61回臨床検査技師国家試験am74)
1.小川培地
2.荒川培地
3.CCFA培地
4.Sabouraud培地
5.マンニット食塩培地
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解答:5
画像にはGram陽性球菌(ブドウ球菌)が認められます。選択肢の中でGram陽性球菌を対象とするのはマンニット食塩寒天培地(Staphylococcus spp.の選択培地)なので,5が正解です。
問8 培地と使用目的の組み合わせで正しいのはどれか。(第61回臨床検査技師国家試験pm70)
1.GC寒天培地=検体輸送
2.LIM培地=選択増菌
3.PPLO寒天培地=検体保存
4.SS寒天培地=性状確認
5.TCBS寒天培地=選択分離
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解答:5
1.GC寒天培地は非選択分離培地です。
2.LIM培地は確認培地です。
3.PPLO培地は選択分離培地です。
4.SS寒天培地は選択分離培地です。
5.正しい。
問9 嫌気性菌用分離培地として用いられるのはどれか。(第62回臨床検査技師国家試験am70)
1.GC寒天培地
2.B-CYE寒天培地
3.Löffler(レフレル)培地
4.血液加ブルセラ寒天培地
5.Sabouraud(サブロー)寒天培地
- 解答を見る
解答:4
1.GC寒天培地はNeisseria gonorrhoeaeの分離用培地です。
2.B-CYE寒天培地はLegionella pneumophilaの選択培地です。
3.Löffler培地はCorynebacterium diphtheriaeの分離用培地です。
4.正しい。
5.Sabouraud寒天培地は真菌の分離用培地です。
問10 細菌と選択培地の組合せで正しいのはどれか。2つ選べ。(第63回臨床検査技師国家試験am70)
1.Bacteroides fragilis=CW寒天培地
2.Clostridium difficile=CCFA寒天培地
3.Enterococcus faecalis=Thayer-Martin培地
4.Pseudomonas aeruginosa=NAC寒天培地
5.Salmonella Enteritidis=CIN寒天培地
- 解答を見る
解答:2・4
1.CW寒天培地はClostridium perfringensの選択培地です。
2.正しい。
3.Thayer-Martin培地はNeisseria gonorrhoeae ・Neisseria meningitidisの選択培地です。
4.正しい。
5.CIN寒天培地はYersinia spp.の選択培地です。
問11 人工培地に発育しないのはどれか。(第56回臨床検査技師国家試験am69)
1.Bordetella pertussis
2.Helicobacter pylori
3.Listeria monocytogenes
4.Mycobacterium leprae
5.Mycoplasma pneumoniae
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解答:4
Mycobacterium spp.のうち,Mycobacterium leprae (らい菌)だけは人工培地に発育できません。
コメント
大学3年です!!
微生物を自分なりに勉強してますがこのサイトを見て、めちゃめちゃ参考になりました!!
特に腸内細菌は結構すきですね笑
違う菌のまとめも見てみたいです!作るのは大変だと思いますが、できるの楽しみに待ってます^^
コメントありがとうございます!
更新頻度は少なめですが,今後も,少しでも皆さんのお役に立てるような解説記事を書いていくつもりですのでよろしくお願いします!
(微生物は特に難しいので,他の菌種についてもまとめていきたいところですが・・・)
そうですね、微生物はとても範囲が広いので様々な分野のポイントを教えていただけるととても助かります!!
お忙しいとは思いますが、解説記事楽しみに待ってます。^^
ありがとうございます。
微生物はわかるようになるとかなり点が取れるようになります!(経験談)
なかなか更新できなくて申し訳ありませんが,すこしずつ微生物の解説も作っていくつもりですのでよろしくお願いします。