第70回臨床検査技師国家試験の問題を解いてみました!果たして結果は?
第70回臨床検査技師国家試験の問題・正答公開
2024年2月14日(水)に行われた第69回臨床検査技師国家試験の問題および正答が厚生労働省HPで公開されました。
もう今年(2025年)の国家試験が行われたというのに,今更昨年(2024年)の解説を始めます。
言い訳にはなりますが,仕事とプライベートで時間に追われ,やっとの思いで記事公開にたどり着きました。70回は以前までの国家試験と比べてどうだったのか?結果や感想について報告したいと思います!
※難易度の傾向は個人的な主観であり,正式に発表されたものではありません。
これまでの国家試験の傾向等についてはこちらの記事をどうぞ!
実際に解いた結果と総評
まずは私が解いた結果について。


※65回の臨床化学は1問採点除外となったため,問題数-1。
比較できるように64~69回までの国家試験結果と,4年生の時に受けた全国国試模試の平均点数も同時に掲載しています。
例年通り,難しい問題は必ず出題されます。しかしながら,過去問そのままや類似問題も多く出題されているのもまた事実です。10年前も今も過去問が重要ということは変わらないですし,それは今後も変わらないと思います。


過去問対策は最重要項目!!!


分野別だと,今回は(点数は抜きにして)生理・血液・免疫あたりが難しく感じました。特に血液が難しくなることはほぼないため,過去の傾向からいくと異例と言えるでしょう。
分野別難易度・出題数評価
はじめに
※68回と同じことを書いていますが,大事なことなので割愛しません。
68回の記事を見ていて頭に入っている方は飛ばしてもらって大丈夫です。
「彼(敵)を知り己を知れば百戦殆うからず」
(Know yourself as well as your enemy)
有名な孫子の言葉です。「敵と自分自身のことをきちんと知っておけば負けることはない」という意味です。
なぜ急にこの言葉を持ってきたのかというと,これは国家試験でも通用する考え方だからです。
国家試験における「敵」とは,周りの受験生ではなく,「国家試験」そのものです!
つまり,自分の実力を知るだけでなく,国家試験において
- どのような問題が出題されているのか
- 出題される問題に偏りがあるのか
- どれくらいの難易度なのか
- 絶対に正解しておきたい問題はどれか,逆に解けなくても大丈夫な問題はどれか
こういったことを知っておくことで,国家試験相手でも全くひるむことなく立ち向かうことができます。
今年受験生の人や,来年以降受験する予定の方々の中には,「解説だけ見ておきたい!」という人もいると思いますが,そういった人にこそこのページを見てもらいたいのです!




国家試験の傾向や,絶対に落としてはいけない問題,その他ポイント等をきっちり押さえておいてから各解説ページを読むことで,解説の吸収量が段違いになります。
時間は多少かかりますが,まずはこのページをしっかり読むことから始めましょう。


難易度設定について
難易度は主観で1~10の10段階でそれぞれの問題に対して設定しています。
1:超簡単
2~3:簡単
4~5:普通
6~7:やや難問
8~9:難問
10:超難問
また,平均難易度で各分野の難しさを表しています。なお,「~割取れる」は,難易度5までの問題を落とさない程度の実力を持っているときの目安です。
~3.7:簡単(8割余裕)
3.8~4.5:やや簡単(7~8割は取れる)
4.6~5.2:普通(6~7割は取れる)
5.3~5.9:やや難しい(5~6割は取れる)
6.0~:難しい(5割取れればいいほう)
※これ以降は65回の総評ページと同じことを書いています。大事なことなのでこちらも割愛しません。
以下のことが頭に入っている方は飛ばしてもらって大丈夫です。
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基本的に難易度5以下の問題を回収できれば国家試験は合格できるようになっています。
(こんな拙い解説を書いている私でも,全く歯が立たない問題や,勘に頼らざるを得ない問題もたくさんあります)
つまり,重要なのは,一部の上位者しか解けないような高難度の問題を正解するような知識ではなく,受験生の大半が正解するような,一般的な難易度の問題をどれだけ落とさずにしっかり回収できるかということになります。(これは何も臨床検査技師国家試験に限ったことではなく,最近の医師国家試験でも同様の傾向が見られます)
点数が低い人ほど,簡単な問題も難しい問題もごっちゃにしてやみくもに勉強しがちですが,それだと案外点数は伸びません。(さらにそういう人ほどきれいなノートを時間をかけて作ろうとするため,費やした時間に対して,吸収できる知識量が伴ってないことも多い……)
下手に色気を出して難しい問題を時間をかけてノートにまとめるのではなく,過去問で何度も出題されているような問題を確実に回収できるような知識および,その問題に関連した知識を身に着けられる勉強法を確立させましょう。
そのために必要なのは過去問対策と,その問題の必要性を吟味することです。
難易度はそれぞれの問題に対して設定しているため,これを参考にして自分がいま勉強すべき問題なのかどうかを見極めてください。間違っても高難度の問題を時間をかけて復習しようとしないこと。(そう言う問題は国試9割以上を目指す人にでも任せておきましょう)
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全体
各分野毎の難易度傾向。
この表を見る限り,病理や血液,免疫あたりは難しく,逆に総論系や臨床化学,微生物は基本的な難易度と言えます。
一番右列は難易度1~5までの問題数であり,5までを確実に解ける実力があるときの最低ラインになります。
まずはこの点数を目標にしていきたいところです。
先程の表をグラフにしたものです。難易度5までを確実に正解できる実力があれば合格は固いですね。
因みに昨年(69回)のグラフも載せておきます。こうしてみると,難易度別の割合的にもほとんど変わらないことがわかります。参考までにどうぞ。
↑昨年度(69回)の難易度割合


なお,昨年では難易度4までに限定すると点数が足りなかったのですが(第69回:113点,第68回:115点分),第70回はなんと121点分あります!
難易度4まででも十分合格できると考えると,第70回は易化したといってもいいでしょう。
※上述していますが,難易度は主観です!
臨床検査総論
今年度(70回)は難しい問題が多めに出題された影響で難易度up。ただ取れる問題は多いため,その分は確実に取りたいところ。6割(12点)あればまずまず,7割(14点)取れていれば上出来です。
- 検査管理(2):am1・am2
平均難易度:2.0 - 精度管理(2):am3・am8
平均難易度:6.0 - 検査値(1):pm4
平均難易度:4.0 - 尿検査(3):am10・pm6・pm10
平均難易度:4.0 - 脳脊髄液検査(1):pm7
平均難易度:4.0 - 糞便検査(2):am4・am9
平均難易度:3.0 - 遺伝子・染色体検査(2):pm8・pm9
平均難易度:9.5 - 医動物(5):am6・am7・pm1~3
平均難易度:4.0 - その他検査(2):am5・pm5
平均難易度:5.5
「遺伝子染色体検査」は近年と比較すると(64~69回で約3.7問/年)出題数は半分に。2問とも難問だったものの,出題数が減ったおかげで大きなダメージにはならなさそうです。それ以外はほぼ平均レベルの出題でした。
難しい問題が数問出題された影響で難易度自体は昨年より少し高めに。ただ全体的に見れば基本的な問題が多いですね。
臨床検査医学総論
今年度はどの分野も基本的な問題が出題。
- 検査総論分野(0):該当なし
平均難易度:– - 生理分野(3):該当なし
平均難易度:– - 臨床化学分野(4):am12・am15・pm12・pm14
平均難易度:2.8 - 病理分野(1):am11
平均難易度:4.0 - 血液分野(1):am14
平均難易度:1.0 - 微生物分野(2):am13・pm15
平均難易度:2.5 - 免疫分野(1):pm13
平均難易度:4.0 - 公衆衛生分野(0):該当なし
平均難易度:– - その他(1):pm11
平均難易度:2.0
今年度は臨床化学の問題が多く出題。
平均難易度:2.7(簡単)
(69回と比較して↓0.8)
今年度は昨年よりもさらに難易度が低下し,平均3を切るレベルに。各分野の基礎ができていれば余裕で満点が取れます。
臨床生理学
簡単な問題,普通の問題,難しい問題がバランスよく出題。すべての生理検査において確実な知識が求められる出題構成となりました。
- 心電図検査(5):am16~18・pm16・pm17
平均難易度:4.4 - 心音図・脈波検査(0):該当なし
平均難易度:– - 呼吸機能検査(5):am19・am20・pm18~20
平均難易度:4.0 - 脳波検査(4):am23・am28・pm23・pm24
平均難易度:3.0 - 超音波検査(7):am24~27・pm25~27
平均難易度:5.4 - 筋電図検査(3):am22・pm21・pm22
平均難易度:4.3 - その他生理検査(2):am21・pm28
平均難易度:9.5
「呼吸機能」が少なめに,「超音波」・「筋電図」がやや多めに出題されましたが,総合的には過去の国家試験と傾向はさほど変わらずといったところ。
前述した通り,簡単・普通・難しい問題がバランスよく出題されています。取れる問題を確実に取れる実力があれば6割(15~16点)は固いでしょう。
臨床化学
異例の易化で,昨年までの難しいという感覚が完全に覆される状況に。ここまで難易度が下がるとは思いませんでした。今年は臨床化学で点数が取れているかどうかがキモになってくるでしょう。
- 細胞内小器官(0):該当なし
平均難易度:– - 糖質(5):am35・am40・am41・pm32・pm44
平均難易度:4.8 - 蛋白質(2):am42・pm34
平均難易度:5.5 - 非蛋白性窒素(3):am32・pm35・pm39
平均難易度:4.0 - 脂質(2):am31・pm33
平均難易度:3.5 - 酵素(6):am33・am36・am37・pm30・pm40・pm41
平均難易度:5.8 - 生体色素・ビタミン(2):pm29・pm37
平均難易度:4.0 - 電解質・微量元素(2):am30・am44
平均難易度:2.5 - ホルモン(2):am38・pm31
平均難易度:3.0 - 機能検査(2):pm42・pm43
平均難易度:3.5 - マーカー(1):am34
平均難易度:3.0 - 遺伝子(0):該当なし
平均難易度:– - 計算問題(2):am29・am43
平均難易度:2.5 - その他(3):am39・pm36・pm38
平均難易度:5.3
脂質と酵素の問題が多く出題されているので,ここが苦手な人は涙目。その他は割と例年通り。
平均難易度:4.3(やや簡単)
(69回と比較して↓0.7)
昨年から一気に易化し,6割どころか7割まで狙えるレベルに。こういった取れるときに点数を取れないと合格は厳しいです。特にこの分野は配点が大きいので,できる限り基礎問題での失点を抑えたいところ。
病理組織細胞学
ほぼ例年通りの構成。ただ極端に難しい問題があるため,数値以上に難しく感じます。
- 組織学・解剖学・病理学(12):am52~57・pm45・pm47・pm53・pm54・pm56・pm57
平均難易度:5.2 - 固定・脱灰・包埋・薄切(3):am45・am46・pm48
平均難易度:4.0 - 染色(8):am47~49・am58・pm49~51・pm58
平均難易度:4.0 - 電子顕微鏡・細胞診(4):am50・am51・pm46・pm52
平均難易度:7.5 - 病理解剖・病理業務(1):pm55
平均難易度:4.0
難問が多めに出題されたため,下手すると6割も難しいかもしれません。ただそれでも6割は目標にしたいところです。
臨床血液学
以前の傾向とは打って変わって,今回はかなり難化しました。臨床化学が簡単になった反動でしょうか。
- 血液基礎(3):am60・am66・pm61
平均難易度:5.3 - 染色体・遺伝子・細胞表面マーカー検査(3):am67・pm59・pm66
平均難易度:5.7 - 赤血球系(3):am62・am64・pm60
平均難易度:3.3 - 白血球系(1):pm65
平均難易度:4.0 - 血小板・凝固線溶系(4):am66・pm59・pm66
平均難易度:6.8 - 血液検査(4):am63・am65・pm64・pm67
平均難易度:6.3
「白血球系」の出題が極端に少ない代わりに,その分の問題数が他の問題にシフトした感じでしょうか。
昨年よりも大幅難化。6割取れていれば上出来でしょう。幸い血液分野はもともとの出題数が少ないため,多少落としてもダメージを受けにくいのが救いでしょうか。
臨床微生物学
今年も基本的な問題が多く出題されているので,少しでも得点に繋げたいところです。
- 微生物基礎(3):am68・am78・pm71
平均難易度:4.0 - 滅菌・消毒薬(1):pm78
平均難易度:2.0 - 抗菌薬・抗真菌薬・抗ウイルス薬・薬剤耐性菌(3):am69・am73・pm68
平均難易度:3.7 - ワクチン・毒素・食中毒(1):pm73
平均難易度:5.0 - 感染症法・感染経路・再興/新興感染症(1):am70
平均難易度:1.0 - 常在菌・微生物検査材料(2):am72・pm77
平均難易度:4.5 - 培地・染色(2):am77・pm72
平均難易度:4.0 - 細菌各論(4):am71・am74・pm70・pm74
平均難易度:4.0 - 真菌各論(1):pm69
平均難易度:4.0 - ウイルス・プリオン(2):am76・pm75
平均難易度:4.0 - その他(2):am75・pm76
平均難易度:6.5
平均難易度:4.0(やや簡単)
(69回と比較して↓0.5)
難問という難問は殆どなく,基礎さえできていれば労せずして7~8割は取れる難易度構成です。覚えることは膨大ではありますが,逆に言えば覚えてしまうべきところをしっかり押さえておけば貴重な得点源になるでしょう。
臨床免疫学
今年も血液型検査および輸血関連検査・移植の問題が多く出題。
70回・・・血液型検査:5問,輸血関連検査:5問
52~63回・・・血液型検査:平均2.5問/年,輸血関連検査:3.5問/年
64~69回・・・血液型検査:平均3.8問/年,輸血関連検査:5.8問/年
- 免疫系の仕組み(3):am79・am80・pm79
平均難易度:3.0 - 抗体・補体(3):am81・am84・am85
平均難易度:3.3 - 抗原・電気泳動・蛋白(2):am82・am87
平均難易度:7.0 - アレルギー(1):am88
平均難易度:3.0 - 自己免疫疾患・抗核抗体・免疫不全症・腫瘍マーカー(1):pm86
平均難易度:4.0 - 各種検査(2):am83・pm89
平均難易度:5.0 - ABO/Rh血液型検査(5):am86・am89・pm80・pm81・pm85
平均難易度:5.0 - 輸血関連検査・移植(5):pm82~84・pm87・pm88
平均難易度:7.2 - その他(0):該当なし
平均難易度:–
近年のトレンド通り,「血液型検査」・「輸血関連検査」が多く出題。その分「自己免疫疾患・腫瘍マーカー」の出題数が減少している点以外は例年通りでしょうか。
「輸血関連検査」の問題の難易度が高めであり,ここで点数を取るのはなかなか厳しいです。ただそれ以外は比較的易しめであるため,そちらでリカバリーしたいところ。
公衆衛生学
最近超難問しか出題されていなかったのですが,ここにきてようやく以前のレベルに戻った印象。これが『普通』です。
- 環境衛生(1):am93
平均難易度:4.0 - 医療統計(1):am92
平均難易度:4.0 - 疫学研究(0):該当なし
平均難易度:– - 医療保険・介護保険・医療費(2):am90・pm91
平均難易度:4.5 - 保健所の業務(0):該当なし
平均難易度:– - 学校保健・母子保健・精神保健・他保健(1):am94
平均難易度:9.0 - 予防医学・健康の定義(1):pm94
平均難易度:4.0 - 特定健診 特定保健指導 ・メタボリックシンドローム診断基準(0):該当なし
- 医療倫理・関係法規(2):pm92・pm93
平均難易度:5.5 - WHOの活動(0):該当なし
- その他(2):am91・pm90
平均難易度:4.5
今回は割と偏りなく出題されました。
昨年までの難易度が嘘のように一気に易化。このレベルであれば,過去問でも十分太刀打ちできます。
医用工学概論
簡単な問題自体は少ないですが,難易度が極端に高い問題はそこまで出題されないため,ある程度安定して点数を取れるようになりたいところです。
- 単位・計算(2):am96・pm97
平均難易度:7.5 - 増幅器・雑音・フィルタ(1):am97
平均難易度:5.0 - 半導体・ダイオード・トランジスタ・変調(0):該当なし
- 論理回路・AD変換(1):pm99
平均難易度:3.0 - ショック・クラス別分類・医用機器関連図記号・病院電気設備(2):am98・pm98
平均難易度:4.5 - コンピューター(0):該当なし
平均難易度:– - 略号・拡張子(0):該当なし
平均難易度:– - トランスデューサ(0):該当なし
平均難易度:– - 生体物性(2):am95・pm96
平均難易度:8.0 - 各種装置(2):pm95・pm100
平均難易度:3.5 - 医療情報システム(1):am100
平均難易度:6.0 - その他(0):該当なし
平均難易度:–
出題数が少ないのである程度偏りが出るのは致し方ないところですが,概ね例年通りといったところでしょうか。来年度は今回出題されていない部分が出題されると思います。
高難易度の問題が2問出題された影響で平均難易度は増加。ただそこを除けば6割は十分狙えるレベルと言えます。
簡単な解説
時間の都合上,まだ解説が完成していません!
完成まで今しばらくお待ちください。
それぞれの問題については別ページで簡単に解説していますので,ぜひ参考にしてください。












終わりに
第70回臨床検査技師国家試験についての総評及び難易度を主観でまとめてみましたがいかがでしたでしょうか。
今回で6回目の解説です。過去問参照で終わらせられる問題がどんどん増えている=過去問対策が重要という何よりの証拠です。
最重要なのはやはり過去問です。こればかりは今後も変わらないと思うので,直前で焦ることの無いよう,早めから少しずつ対策をしていきましょう。そうすれば合格点は間違いなく取れます。


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