国家試験で出題される特殊染色のうち,「多糖類」を対象とした染色について解説します!染色は覚えることが多いから大変(^-^;)
【更新履歴】
2021.9.11
・練習問題を追加しました。
2023.11.9
・問17の解答を修正しました。
各見出しの重要度は,過去の臨床検査技師国家試験(第52回~最新回まで)の出題率や覚えやすさなどを考慮して主観で表記しています。国家試験を受ける学生以外の方は無視してかまいません。
このページで紹介する染色法
- PAS染色
- Alcian blue染色
- toluidine blue染色
- mucicarmine染色
多糖類の種類(重要度:★★☆☆☆)
PAS染色・ジアスターゼ消化試験(重要度:★★★★★)
基本事項
以下の7つを主な対象とした染色です。
- 真菌(Pneumocystis jiroveciiを除く)
- 赤痢アメーバ(Entamoeba histolytica)
- グリコーゲン
- 糸球体基底膜
- 粘液(特に印環細胞癌がよく出題!)
- リポフスチン顆粒
- アミロイド
- azan染色(青色)
- Masson trichrome染色(青色)
- PAS染色(赤紫色)
- PAM染色(黒色)
- Masson-Fontana染色
- PAS染色
- Schmorl反応
染色原理
多糖類の1,2-グリコール水酸基を過ヨウ素酸で酸化し,生じたアルデヒド基にSchiff試薬が結合することによって染色されます。
なお,schiff試薬がメセナミン銀錯体に代わったものがPAM染色です。
染色対象・染色液・染色結果
染色対象
単多糖 | 酸多糖 (ヒア) | 酸多糖 (コン+ヘパ) | 酸粘 (シアロ) | 酸粘 (スルフォ) | 中粘 |
○ | × | × | ○ | ○ | ○ |
※酸性粘液多糖類以外の多糖類を染める。
※単多糖:単純多糖類 酸多糖:酸性粘液多糖類
酸粘:酸性粘液 中粘:中性粘液
ヒア:ヒアルロン酸 コン:コンドロイチン硫酸 ヘパ:ヘパリン
シアロ:シアロムチン スルフォ:スルフォムチン
染色液
- 過ヨウ素酸水溶液
- Schiff試薬(塩基性フクシン)
- 亜硫酸水
※亜硫酸水素ナトリウム(重亜硫酸ナトリウム)含有。 - Mayerのhematoxylin
<酸性フクシン>
- Masson trichrome染色
- elastica van Gieson染色
<塩基性フクシン>
- PAS染色
- Feulgen反応
- Ziehl-Neelsen染色
染色結果
- グリコーゲン
- 糖蛋白(酸性・中性粘液)
- 真菌
- 赤痢アメーバ
- リポフスチン
- 糸球体基底膜
- アミロイド
=赤紫色(Schiff試薬) - 線維素や膠原線維など=ピンク色(PAS陰性)
- 核=青紫色(hematoxylin)
↑PAS染色(腎臓)
↑PAS染色(大腸-赤痢アメーバ)
ジアスターゼ消化試験
基本事項
PAS染色陽性物質がグリコーゲンであるかどうかを確認する試験です。
グリコーゲンだった場合,ジアスターゼによって加水分解されるためPAS染色が陰性となります。
染色結果
Alcian blue染色(重要度:★★★★☆)
基本事項
酸性粘液多糖類と酸性粘液を対象とした染色法です。
PAS染色を用いて重染色をすることもあります。
(その場合はAlcian blueから染色します)
染色原理
染色液=pH2.5
Alcian blueが酸性粘液多糖類・酸性粘液のカルボキシル基と硫酸基に結合して青色を呈します。
染色液=pH1.0
Alcian blueが酸性粘液多糖類・酸性粘液の硫酸基にのみ結合して青色を呈します。
染色対象・染色結果
染色対象
pH2.5 ver
単多糖 | 酸多糖 (ヒア) | 酸多糖 (コン+ヘパ) | 酸粘 (シアロ) | 酸粘 (スルフォ) | 中粘 |
× | ○ | ○ | ○ | ○ | × |
※酸性~~を染める。
※単多糖:単純多糖類 酸多糖:酸性粘液多糖類
酸粘:酸性粘液 中粘:中性粘液
ヒア:ヒアルロン酸 コン:コンドロイチン硫酸 ヘパ:ヘパリン
シアロ:シアロムチン スルフォ:スルフォムチン
pH1.0 ver
単多糖 | 酸多糖 (ヒア) | 酸多糖 (コン+ヘパ) | 酸粘 (シアロ) | 酸粘 (スルフォ) | 中粘 |
× | × | ○ | × | ○ | × |
※酸性~~のうち,硫酸基を持つコンドロイチン硫酸・ヘパリン・スルフォムチンを染める。
※単多糖:単純多糖類 酸多糖:酸性粘液多糖類
酸粘:酸性粘液 中粘:中性粘液
ヒア:ヒアルロン酸 コン:コンドロイチン硫酸 ヘパ:ヘパリン
シアロ:シアロムチン スルフォ:スルフォムチン
染色結果
- 酸性粘液多糖類・酸性粘液=青色(Alcian blue)
toluidine blue染色(重要度:★★★☆☆)
基本事項
以下の5つを主な対象とした染色です。
- Pneumocystis jirovecii
- 酸性粘液多糖類(軟骨基質やマスト細胞など)
- 酸性粘液
- アミロイド
- Nissl小体
なお,軟骨基質・マスト細胞・アミロイドはメタクロマジー(異染性)を示す代表的な物質として覚えておきましょう。
染色対象・染色結果
染色対象
単多糖 | 酸多糖 (ヒア) | 酸多糖 (コン+ヘパ) | 酸粘 (シアロ) | 酸粘 (スルフォ) | 中粘 |
× | ○ | ○ | ○ | ○ | × |
※酸性~~を染める。
※単多糖:単純多糖類 酸多糖:酸性粘液多糖類
酸粘:酸性粘液 中粘:中性粘液
ヒア:ヒアルロン酸 コン:コンドロイチン硫酸 ヘパ:ヘパリン
シアロ:シアロムチン スルフォ:スルフォムチン
染色結果
- 酸性粘液多糖類・酸性粘液・アミロイド=赤紫色(toluidine blue・メタクロマジー)
mucicarmine染色(重要度:★★☆☆☆)
基本事項
酸性粘液とCryptococcusを対象とした染色法です。
染色対象・染色結果
染色対象
単多糖 | 酸多糖 (ヒア) | 酸多糖 (コン+ヘパ) | 酸粘 (シアロ) | 酸粘 (スルフォ) | 中粘 |
× | × | × | ○ | ○ | × |
※酸性粘液を染める。
※単多糖:単純多糖類 酸多糖:酸性粘液多糖類
酸粘:酸性粘液 中粘:中性粘液
ヒア:ヒアルロン酸 コン:コンドロイチン硫酸 ヘパ:ヘパリン
シアロ:シアロムチン スルフォ:スルフォムチン
染色結果
- 酸性粘液・Cryptococcus=赤色(mucicarmine)
多糖類染色まとめ(重要度:★★★★☆)
練習問題
問1 塩基性フクシンを用いるのはどれか。2つ選べ。(第52回臨床検査技師国家試験pm27)
1.Ziehl-Neelsen染色
2.Masson trichrome染色
3.van Gieson染色
4.PAS染色
5.PTAH染色
- 解答を見る
解答:1・4
塩基性フクシンを用いる染色法は以下の3つです。
・PAS染色
・Feulgen反応
・Ziehl-Neelsen染色
1.正しい。
2.誤り。
3.誤り。
4.正しい。
5.誤り。
問2 心筋のH-E染色標本を示す。心筋細胞内の顆粒(矢印)が陽性を示す染色法はどれか。2つ選べ。(第52回臨床検査技師国家試験pm31,一部改変)
1.azan染色
2.Alcian blue染色
3.Kossa反応
4.Masson-Fontana染色
5.PAS染色
- 解答を見る
解答:4・5
心筋の顆粒といえばリポフスチン顆粒です。
リポフスチン顆粒を対象とする染色法は以下の3つです。
・Masson-Fontana染色
・PAS染色
・Schmorl反応
1.誤り。
2.誤り。
3.誤り。
4.正しい。
5.正しい。
問3 染色原理で正しいのはどれか。(第54回臨床検査技師国家試験pm52)
1.Feulgen反応はRNAの検出に用いられる。
2.過ヨウ素酸は水酸基をカルボキシル基に変える。
3.DNAを塩素で加水分解するとメチル基が生じる。
4.hematoxylin液中の色素は陽性荷電の核酸に結合する。
5.Alcian blue(pH1.0)は硫酸基を有する酸性基質を染める。
- 解答を見る
解答:5
1.誤り。DNAの検出です。
2.誤り。アルデヒド基です。
3.誤り。アルデヒド基です。
4.誤り。核酸は陰性荷電です。
5.正しい。
問4 病原体と染色法の組み合わせで正しいのはどれか。2つ選べ。(第54回臨床検査技師国家試験pm53)
1.Aspergillus spp.=mucicarmine染色
2.Candida spp.=Grocott染色
3.結核菌=orcein染色
4.Cryptococcus spp.=Victoria blue染色
5.赤痢アメーバ=PAS染色
- 解答を見る
解答:2・5
1.誤り。mucicarmine染色はCryptococcusを対象とします。
2.正しい。
3.誤り。orcein染色は弾性線維とHBs抗原を対象とします。
4.誤り。Victoria blue染色は弾性線維とHBs抗原を対象とします。
5.正しい。
問5 肝臓の特殊染色標本を示す。陽性物質で正しいのはどれか。(第55回臨床検査技師国家試験pm55)
1.偏光顕微鏡で緑色偏光を呈する。
2.mucicarmine染色で赤色に染まる。
3.Alcian blue染色で青色に染まる。
4.ジアスターゼ消化試験で消失する。
5.toluidine blue染色で異染色性を示す。
- 解答を見る
解答:4
肝臓の特殊染色で赤紫色といえばPAS染色であり,肝臓でPAS陽性物質といえばグリコーゲンです。グリコーゲンはジアスターゼ消化試験でPAS染色が陰性化するので4が正解です。
1.誤り。
2.誤り。
3.誤り。
4.正しい。
5.誤り。
問6 卵巣腫瘍のH-E染色標本を示す。病変の同定に有用なのはどれか。(第56回臨床検査技師国家試験am54)
1.PAS染色
2.PTAH染色
3.Kossa反応
4.SudanⅢ染色
5.Schmorl反応
- 解答を見る
解答:1
卵巣で粘液を含む腫瘍細胞が認められることから,Krukenberg腫瘍が考えられます。Krukenberg腫瘍は胃の印環細胞癌が卵巣に転移したものであり,この腫瘍同定には粘液を染色するPAS染色が有用です。
1.正しい。
2.誤り。
3.誤り。
4.誤り。
5.誤り。
問7 PAS染色が同定に有用な微生物はどれか。2つ選べ。(第56回臨床検査技師国家試験am55)
1.cytomegalovirus
2.Treponema pallidum
3.Aspergillus fumigatus
4.Entamoeba histolytica
5.Mycobacterium tuberculosis
- 解答を見る
解答:3・4
PAS染色が有用なのは真菌(Pneumocystis jirovecii除く)と赤痢アメーバ(Entamoeba histolytica)です。
1.誤り。
2.誤り。
3.正しい。
4.正しい。
5.誤り。
問8 特殊染色標本を示す。臓器は何か。(第57回臨床検査技師国家試験pm53)
1.心臓
2.肝臓
3.膵臓
4.脾臓
5.腎臓
- 解答を見る
解答:5
もはや解説不要の問題ですね。糸球体が見えていることから腎臓が考えられます。
1.誤り。
2.誤り。
3.誤り。
4.誤り。
5.正しい。
問9 特殊染色標本を示す。染色法はどれか。(第57回臨床検査技師国家試験pm54)
1.PAM染色
2.PAS染色
3.azan染色
4.PTAH染色
5.Bodian染色
- 解答を見る
解答:2
腎糸球体基底膜を見たら,取り敢えず4つの染色法を思い出しましょう。
→azan染色・Masson trichrome染色・PAS染色・PAM染色
後は,基底膜の色で判断しましょう。今回は赤紫色に染まっているため,PAS染色が考えられます。
1.誤り。PAM染色であれば黒色に染まります。
2.正しい。
3.誤り。azan染色であれば青色に染まります。
4.誤り。糸球体基底膜の染色には用いられません。
5.誤り。糸球体基底膜の染色には用いられません。
問10 PAS染色で使用しないのはどれか。(第58回臨床検査技師国家試験am53)
1.塩酸
2.アニリン
3.過ヨウ素酸
4.塩基性フクシン
5.重亜硫酸ナトリウム
- 解答を見る
解答:2
難問。余裕があれば勉強する程度で十分です。
1.誤り。
2.正しい。
3.誤り。
4.誤り。
5.誤り。
問11 真菌の染色法はどれか。2つ選べ。(第59回臨床検査技師国家試験pm54)
1.Grocott染色
2.orcein染色
3.PAS染色
4.Warthin-Starry染色
5.Ziehl-Neelsen染色
- 解答を見る
解答:1・3
1.正しい。
2.誤り。弾性線維やHBs抗原を対象とした染色です。
3.正しい。
4.誤り。スピロヘータやHelicobacter pyloriを対象とした染色です。
5.誤り。抗酸菌を対象とした染色です。
問12 胃組織のH-E染色標本を示す。診断に有用な染色法はどれか。(第62回臨床検査技師国家試験am52)
1.PAS染色
2.azan染色
3.Grocott染色
4.SudanⅢ染色
5.Klüver-Barrera染色
- 解答を見る
解答:1
胃で粘液を含む腫瘍細胞が認められることから,印環細胞癌が考えられます。この腫瘍同定には粘液を染色するPAS染色が有用です。
1.正しい。
2.誤り。
3.誤り。
4.誤り。
5.誤り。
問13 大腸病変部の染色標本を示す。染色法はどれか。(第62回臨床検査技師国家試験pm53)
1.PAS染色
2.Gram染色
3.orcein染色
4.Grocott染色
5.Ziehl-Neelsen染色
- 解答を見る
解答:1
画像には赤痢アメーバ(Entamoeba histolytica)が確認できます。赤痢アメーバの染色法はPAS染色です。
1.正しい。
2.誤り。
3.誤り。
4.誤り。
5.誤り。
問14 胃癌摘出時の郭清リンパ節標本を示す。染色法はどれか。(第63回臨床検査技師国家試験pm54)
1.PAS染色
2.Berlin blue染色
3.Alcian blue染色
4.mucicarmine染色
5.toluidine blue染色
- 解答を見る
解答:3
深く考えずとも,染色の色合い(青色)から判断できる問題です。
1.誤り。赤紫色でないので否定できます。
2.誤り。Berlin blue染色も青色ですが,対象が3価鉄であることから否定できます。
3.正しい。色合いと染色対象(酸性粘液)から最も考えられる染色法です。
4.誤り。赤色でないので否定できます。
5.誤り。赤紫色でないので否定できます。
問15 軟骨組織の特殊染色標本を示す。染色法はどれか。(第64回臨床検査技師国家試験am52)
1.azan染色
2.Berlin blue染色
3.Alcian blue染色
4.mucicarmine染色
5.toluidine blue染色
- 解答を見る
解答:3
染色対象が軟骨組織(=酸性粘液多糖類)であることから,考えられる染色法はAlcian blue染色とtoluidine blue染色の2つです。後は色合いで判断です。
1.誤り。
2.誤り。
3.正しい。
4.誤り。mucicarmine染色では酸性粘液多糖類は染まりません。
5.誤り。toluidine blue染色であればメタクロマジーにより軟骨組織は赤紫色に染まります。
問16 toluidine blue染色で異染性を示すのはどれか。(第60回臨床検査技師国家試験pm55)
1.脂肪
2.メラニン
3.軟骨基質
4.胆汁色素
5.ヘモジデリン
- 解答を見る
解答:3
軟骨基質・マスト細胞・アミロイドはメタクロマジー(異染性)を示す代表的な物質です。
1.誤り。
2.誤り。
3.正しい。
4.誤り。
5.誤り。
問17 toluidine blue染色で異染性を示すのはどれか。(第62回臨床検査技師国家試験am53)
1.好中球
2.赤血球
3.組織球
4.形質細胞
5.肥満細胞
- 解答を見る
解答:5
軟骨基質・マスト細胞・アミロイドはメタクロマジー(異染性)を示す代表的な物質です。
1.誤り。
2.誤り。
3.誤り。
4.誤り。
5.正しい。
問18 toluidine blue染色で異染性を示すのはどれか。(第64回臨床検査技師国家試験pm52)
1.膠原線維
2.脂肪細胞
3.心筋線維
4.神経線維
5.軟骨基質
- 解答を見る
解答:5
軟骨基質・マスト細胞・アミロイドはメタクロマジー(異染性)を示す代表的な物質です。
1.誤り。
2.誤り。
3.誤り。
4.誤り。
5.正しい。
コメント
突然コメント失礼します。
最後の練習問題の所の問17 toluidine blue染色で異染性を示すのはどれか。(第62回臨床検査技師国家試験am53)の答えが4の形質細胞になっていますが、5の肥満細胞の間違えではないですか?
コメントありがとうございます。該当箇所を修正しました。
修正ありがとうございます。
とても分かりやすく、いつも参考にさせて頂いてます。ありがとうございます。これからも参考にさせて頂きます
次回の臨床検査技師国家試験を受ける者です。いつも参考にさせていただいてます。ありがとうございます。黒本で勉強しているのですが、こちらのサイトは表のまとめ方がとても分かりやすいです。ゴロの暗記などもとても参考になります。これからも宜しくお願いしますm(__)m
コメントありがとうございます!
多くの人が勉強しやすいよう,表・図・ゴロを多く掲載してわかりやすさ重視でまとめています。(その分,情報量は少ないですが・・・)
更新はスローペースですが,今後も少しずつ充実させていこうと思います。勉強頑張ってください!