第65回臨床検査技師国家試験(AM21~40)の解説です。
【更新履歴】
2022.5.24
・問34の解説を追記。
2024.8.12
・問23の解説を追記。
第65回臨技国試のAM問21~40の解説です。
難易度は主観で1~10の10段階でつけています。
1:超簡単
2~3:簡単
4~5:普通
6~7:やや難問
8~9:難問
10:超難問
第65回臨技国試についてをまとめたページもありますので,まだ見ていない方はぜひそちらもご参照ください。
問題の出典:厚生労働省ホームページ 第65回臨床検査技師国家試験の問題および正答について 午前問題(https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/topics/dl/tp190415-07a_01.pdf)
臨床生理学(AM16~28)
AM 問21
解答:1・4
CaO2は以下の式で算出されます。(式自体を覚える必要はありません)
※スマホから閲覧している場合,数式をスクロールできます。
よって,CaO2の算出に必要な項目はヘモグロビン濃度(Hb)・動脈血酸素飽和度(SaO2)・動脈血酸素分圧(PaO2)の3項目なので,1・4が正解となります。
※SpO2ではなくSaO2である点に注意!
AM 問22
解答:4
アシドーシス・アルカローシスの検査所見の問題は頻出ですので必ず覚えたいところです。
状態 | pH (7.35~7.45) | PaCO2 (35~45Torr) | HCO3- (22~26mEq/L) | 代償 |
呼吸性アシドーシス (急性) (慢性) | ↓ ↓ ↓~→ | ↑ ↑ ↑ | ↑ → ↑ | ー × 〇(腎性) |
代謝性アシドーシス (急性) (慢性) | ↓ ↓ ↓~→ | ↓ → ↓ | ↓ ↓ ↓ | ー × 〇(呼吸性) |
呼吸性アルカローシス (急性) (慢性) | ↑ ↑ ↑~→ | ↓ ↓ ↓ | ↓ → ↓ | ー × 〇(腎性) |
代謝性アルカローシス (急性) (慢性) | ↑ ↑ ↑~→ | ↑ → ↑ | ↑ ↑ ↑ | ー × 〇(呼吸性) |
※表はスクロールできます。
・アシドーシスは基本的にpH↓
・アルカローシスは基本的にpH↑
・呼吸性ならpH以外の項目(PaCO2・HCO3-)はpHの変化と逆の変化
(pH↑ならPaCO2・HCO3-↓,pH↓ならPaCO2・HCO3-↑)
・代謝性ならpH以外の項目(PaCO2・HCO3-)はpHの変化と同じ変化
(pH↑ならPaCO2・HCO3-↑,pH↓ならPaCO2・HCO3-↓)
と覚えておけば迷うことはありません。
1.誤り。pH↑・PaCO2↓・HCO3-→より,(急性)呼吸性アルカローシスです。
2.誤り。pH↑・PaCO2↑・HCO3-↑より,(慢性)代謝性アルカローシスです。
3.誤り。pH→・PaCO2→・HCO3-→より,正常です。
4.正しい。pH↓・PaCO2↑・HCO3-↑より,(慢性)呼吸性アシドーシスです。
5.誤り。pH↓・PaCO2↓・HCO3-↓より,(慢性)代謝性アシドーシスです。
AM 問23
解答:4
音響陰影とは,結石や空気,骨といった超音波を強く反射するもの(厳密には組織との音響インピーダンス差が大きなもの)が存在すると,その物質よりも後方に超音波が届かずに,結果,黒い影が映りだしてしまう現象のことを言います。
↑ 「→」で示された部分が音響陰影です。
1.正しい。音響陰影の説明通りです。
2.正しい。音響陰影の説明通りです。
3.正しい。結石は音響陰影がみられる最もメジャーなものです。
4.誤り。嚢胞の後方にみられるのは後方エコー増強です。これは音響陰影とは逆で,超音波の減衰が少ないために嚢胞より後方が白く映りだされる現象です。
5.正しい。肺が超音波で描出できないのは,肺の中に空気があり,超音波が反射してしまうためです。
AM 問24
解答:5
国家試験でよく出てくる簡易ベルヌーイ式を覚えておけば難なく解けます。
ΔP=4V2
ΔP:圧較差[mmHg]
V:圧較差の生じる部分の血流最高速度[m/s]
本問では,最高流速が4m/sのときの圧較差を問うているため,簡易ベルヌーイ式より,
ΔP=4×42=43=64mmHgが答えとなります。
AM 問25
解答:1
以下に示す脳波所見はすべて覚えておく必要があります。
- 欠神発作=3Hz棘徐波複合
- ミオクロニーてんかん=多棘徐波複合
- West症候群=ヒプスアリスミア
- Lennox(Lennox-Gastaut)症候群=1.5~2.5Hz鋭徐波複合
- Creutzfeldt-Jakob病(変異型除く)=周期性同期性放電
- 肝性昏睡(肝性脳症)=3相(性)波
- 脳血管障害や単純ヘルペス脳炎=周期性一側性てんかん型放電
- もやもや病=re-build up
- ナルコレプシー=開閉眼によるα波出現
- 慢性硬膜下血腫や脳腫瘍(大脳皮質の直接侵襲)=lazy activity
- 亜急性硬化性全脳炎(SSPE)=周期性同期性高振幅徐波結合
- 脳幹障害=α昏睡(α coma)
- 自律神経発作=6Hz&14Hz陽性棘波
1.正しい。亜急性硬化性全脳炎(SSPE)では周期性同期性高振幅徐波結合を認めます。
2.誤り。3相(性)波を認めます。
3.誤り。3Hz棘徐波複合を認めます。
4.誤り。広汎性α波(diffuse α pattern)を認めます。が,覚える必要はありません。
5.誤り。re-build upを認めます。
AM 問26
解答:5
超高難易度問題。正解できる必要はないですし,無理に覚える必要もないです。
以下,脳磁図についての説明です。
脳磁図(MEG)(のうじず、英: Magnetoencephalography)は脳の電気的な活動によって生じる磁場を超伝導量子干渉計(SQUIDs)と呼ばれる非常に感度の高いデバイスを用いて計測するイメージング技術である。この計測法は研究面、医療面の両方に利用される。例えば、脳外科手術の際に病変の位置を決定したり、脳科学研究の際に脳や神経フィードバックや他の様々な部分の機能を決定するのに用いられる。
引用:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%84%B3%E7%A3%81%E5%9B%B3)
脳磁図検査は,脳波検査と異なり,脳の中の電流の発生源を正確に推定することが可能です。
1.必要。推定された磁場源の位置は磁気共鳴画像法(MRI)による画像と結合され,磁場源の画像が作り出されます。
2.必要。脳から放出される磁場のオーダーは数フェムトテスラ(1fT)と非常に小さいため,地磁気を含めた外部由来の磁場をシールドすることが必要となります。
3.時に必要。体性感覚(触覚・痛覚など)の活動に伴って脳内でどのような変化が生じているのか調べるときには必要となります。
4.必要。上記の脳磁図の説明にある通り,脳の電気的な活動によって生じる磁場を超伝導量子干渉計(SQUID)と呼ばれる非常に感度の高いデバイスを用いて計測します。
5.不要。
AM 問27
解答:4
ABRの波の起源はよく出題されるので覚えておきましょう。
- Ⅰ波=蝸牛神経
- Ⅱ波=蝸牛神経核
- Ⅲ波=上オリーブ核
- Ⅳ波=外側毛帯
- Ⅴ波=下丘
- Ⅵ波=内側膝状体
1.誤り。蝸牛神経が起源です。
2.誤り。蝸牛神経核が起源です。
3.誤り。上オリーブ核が起源です。
4.正しい。外側毛帯が起源です。
5.誤り。下丘が起源です。
AM 問28
解答:3
1.誤り。室温と伝導速度の関係は比例関係です。
2.誤り。A線維は直径にα>β>γ>δの関係があり,直径が大きいほど伝導速度も上がります。
3.正しい。神経の伝導は両方向性ですが,シナプスの伝導は一方向性です。(混同しないように!)
4.誤り。有髄神経のほうが速度が速いです。
5.誤り。神経筋接合部の伝達物質はアセチルコリンです。
- 直径↑=速度↑
直径:A線維>B線維>C線維
A線維の直径:Aα>Aβ>Aγ>Aδ - 髄鞘あり=速度↑(有髄>無髄)
- 温度(皮膚温)↑=速度↑
- 年齢↑=速度↑
(成人以降ほぼ一定)
臨床化学(AM29~44)
AM 問29
解答:3
TOF-MSなんて知っているほうが普通なのでしょうか?少なくとも私は聞いたことがあるくらいで選択肢のことは全く分からなかったです。(MALDI-TOF-MSはどこかで聞いたことがあったので5は正しいとわかりましたが……)
取り敢えずこの問題は捨てて大丈夫でしょう。(余裕のある人は適宜勉強してください)
3.誤り。イオンはサンプルスライドと接地グラウンドの間にある電位差によって引き出されます。
AM 問30
解答:2
計算問題です。解き方がわからないと手も足も出ないですが,ブランク補正を知っておけば解くことができます。
まずは図を見てみましょう。すると,波長400nmの時点で,200mg/dLグルコース標準液(以降Glu St)は吸光度(以降Abs)0であるのに対し,患者血清(以降S)はAbs=0.25となっています。
したがって,Sにはグルコースでない非特異的なものがAbs0.25分含まれているということがわかります。なので,この吸光度分だけ,340nmでの実際のAbsの値から引いてあげる必要があります。
こうすることで,グルコースだけの吸光度変化を見ることができます。
SのAbsを補正すると,340nmの波長でのAbsは0.60となります。
後は,Glu StのAbsとの比を求めればグルコース濃度が算出できます。
S Abs(補正後):Glu St Abs=S グルコース濃度:Glu St濃度より,
0.60:0.75=x:200 x=120/0.75=160mg/dLとなります。
AM 問31
解答:3
問題文の電解質検査結果より,Naは基準範囲内(基準:135~145mEq/L),Clが高値(基準:98~108mEq/L)を示しています。
1.誤り。嘔吐では胃酸(HCl)が失われるため,pH↑(H+↓)・Cl↓。(代謝性アルカローシスを引き起こします)
2.誤り。尿崩症では体内水分量が減少するため,Naが濃縮されてNa↑。また,Clに異常は見られません。
3.正しい。臭素BrはClと同様にハロゲン元素です。イオン選択電極法では,ハロゲン元素があるとClが正常であっても偽高値を示してしまいます。今回の選択肢の中では最も考えられます。
4.誤り。コルチゾールはアルドステロン様作用を有し,Naの再吸収とKの排泄を促進します。Addison病ではコルチゾール↓により,Na↓・K↑となります。
5.誤り。Cushing症候群ではコルチゾール↑により,Na↑・K↓となります。
AM 問32
解答:2・3
LDの各アイソザイムの起源となる組織・細胞を知っておけば簡単です。
- LD1・LD2=心筋・赤血球など
- LD3=癌細胞など
- LD4・LD5=骨格筋・肝臓など
本問ではLD1・LD2が強く染色されているため,これらが起源となる心筋・赤血球の疾患が答えとなります。
1.誤り。急性肝炎ではLD4・LD5優位となります。
2.正しい。心筋梗塞ではLD1・LD2優位となります。
3.正しい。溶血性貧血ではLD1・LD2優位となります。
4.誤り。横紋筋融解症ではLD4・LD5優位となります。
5.誤り。急性リンパ性白血病ではLD3優位となります。
- ピルビン酸+NADH→乳酸+NADの反応を触媒。
- H(heart)とM(muscle)の2種類のサブユニットがあり,これらの4量体によって構成。
- HとMの組み合わせによって,5種類のアイソザイムが存在。
アイソザイム | LD1 | LD2 | LD3 | LD4 | LD5 |
サブユニット | H4 | H3M1 | H2M2 | H1M3 | M4 |
半減期 | 長い | ← | ― | → | 短い |
電気泳動 | 陽極(+) | ← | ― | → | 陰極(-) |
冷蔵保存 | 安定 | ← | ― | → | 不安定 |
増加する疾患 | 心筋梗塞(特にLD1優位) 溶血性貧血 | 悪性腫瘍 | 筋疾患(特にLD5優位) 肝炎(特にLD5優位) |
AM 問33
解答:2
2問目の計算問題です。
この計算問題は,Lambert-Beerの法則を覚えていないと解けません。
I0:入射光強度
I1:透過光強度
ε:モル吸光係数[Lmol-1cm-1]
c:モル濃度[mol/L]
l:光路長[cm]
※I1/I0に100を掛けたものを透過率T[%]という。
$T=\frac{I_1}{I_0}\times 100$
※logXはlog10Xと同義(常用対数)
上記のLambert-Beerの法則を使って解いてみましょう。
まずは,吸光度がわかっているので,これを代入します。
次に,0.903をlog表記にします。ここで,問にあるlog2=0.301が役に立ちます。
最後に,(1)に(2)を代入しましょう。
$$8=\frac{100}{T}$$
$$T=12.5\%$$
AM 問34
解答:4
酸性アミノ酸と塩基性アミノ酸を覚えておけば消去法で解けます。
「風呂場椅子独り占め」
・風:フェニルアラニン
・呂:ロイシン
・場:バリン
・椅:イソロイシン
・子:スレオニン(トレオニン)
・ひ:ヒスチジン
・と:トリプトファン
・り占:リジン
・め:メチオニン
「磯のロバ」
・磯:イソロイシン
・ロ:ロイシン
・バ:バリン
「香りフェチなインドの鳥」
・香り:芳香族アミノ酸
・フェ:フェニルアラニン
・チ:チロシン
・インド:インドール核を有する
・鳥:トリプトファン
「“酸”の付くアミノ酸」
「リアルヒステリー」
・リ:リジン
・アル:アルギニン
・ヒステリー:ヒスチジン
1~3.誤り。これらは塩基性アミノ酸です。
4.正しい。中性アミノ酸です。
5.誤り。酸性アミノ酸です。
AM 問35
解答:2
ビウレット法の詳細を知っておかないと解けない問題です。
ただ,以前に国家試験で出題されたことがあるので(62回午後問36を参照),そこでしっかり復習していれば解けます。
- 総蛋白の測定法の1つ。
- ペプチドがアルカリ溶液中で銅イオンに配位し,青色から青紫色(赤紫色)に呈色することを利用。
- ペプチド結合の数が多いほど,呈色↑
1.誤り。総蛋白の測定法です。
2.正しい。
3.誤り。アルカリ性下で行います。
4.誤り。硫酸銅が含まれているので青色を示します。
5.誤り。ペプチド結合の数に比例します。
AM 問36
解答:4・5
きちんと各酵素の反応系を覚えていないとまず解けない問題です。
解けなくても特に影響はないのでこれは後回しでもいいでしょう。
1~3.誤り。試薬中に酵素は含まれません。
4.正しい。α-グルコシダーゼなどの共役酵素を用います。
5.正しい。コリンオキシダーゼを用います。
AM 問37
解答:5
超難問。今までに亜鉛が増減する疾患については52回以降の国家試験で出題されていなかったので,追加で勉強でもしていない限り勘で解かざるを得ない問題です。
増加:甲状腺機能亢進症・Addison病・溶血性貧血・赤血球増多症など
減少:妊娠・肝硬変・低栄養・味覚障害・成長障害など
1~4.誤り。これらの疾患では低値を示します。
5.正しい。高値を示します。
AM 問38
解答:3
HPLC法によるHbA1c低値の原因はよく出題されるので覚えておきましょう。
- 輸血(グルコースが結合したHbが相対的に低下するため)
- 出血(グルコースが結合したHbが失われて,新しい赤血球が生成されるため)
- 脾機能亢進(グルコースが結合したHbが失われて,新しい赤血球が生成されるため)
- 溶血(グルコースが結合したHbが失われて,新しい赤血球が生成されるため)
- 異常Hb症(高値を示すこともある)
1.誤り。尿毒症では高値を示します。
2.誤り。乳び血症では高値を示します。
3.正しい。
4.誤り。
5.誤り。
AM 問39
解答:1・4
1.正しい。循環血液量↓により,クレアチニンが濃縮されるため↑。
2.誤り。糸球体濾過率↑により,クレアチニン排泄量↑=クレアチニン濃度↓
3.誤り。クレアチニン排泄量↑=クレアチニン濃度↓
4.正しい。心拍出量↓,腎血流量↓。それによりクレアチニン排泄量↓=クレアチニン濃度↑
5.誤り。筋低下により,筋でのクレアチン←→クレアチンリン酸→クレアチニンの変換が起こらなくなるため,クレアチニン濃度↓。
AM 問40
解答:1
グルカゴンの主な作用は覚えておきましょう。
- 血糖値上昇
- グリコーゲンの分解促進(合成抑制)
- 糖新生促進
1.正しい。血糖値(グルコース)を上げるために糖新生が促進します。
2.誤り。糖新生では乳酸やピルビン酸からグルコースが作られるため,乳酸はむしろ減少します。
3.誤り。これはインスリンの作用です。
4.誤り。グルカゴンはグリコーゲンを分解してグルコースとします。グリコーゲン合成を促進するのはインスリンの作用です。
5.誤り。グルカゴンは脂肪分解を促進して遊離脂肪酸を増加させます。遊離脂肪酸を減少させる(取り込みする)のはインスリンの作用です。
他の問題の解説を見る
コメント