国家試験で出題される半導体・ダイオード・トランジスタについて解説します!フィルタと違って出題自体は稀なので後回しでOK?
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各見出しの重要度は,過去の臨床検査技師国家試験(第52回~最新回まで)の出題率や覚えやすさなどを考慮して主観で表記しています。国家試験を受ける学生以外の方は無視してかまいません。
半導体(重要度:★☆☆☆☆)
半導体とは?
半導体とは,電気抵抗率の低い(=電気を通しやすい)導体と,電気抵抗率の高い(=電気を通しにくい)絶縁体の中間的な抵抗率を持つ物質のことです。シリコン(ケイ素)やゲルマニウムを材料として作られます。
※厳密には,電気抵抗率ρが10−6〜107Ω・m程度の範囲にあるものを半導体といいます。
半導体の電気抵抗率(電気の通しにくさ)は温度に反比例するため,温度が低いときは電気抵抗率が高い=電気を通しにくく,逆に温度が高いときは電気抵抗率が低い=電気を通しやすくなります。
半導体は,後述するダイオードやトランジスタといった電子部品に応用されています。
半導体の種類
半導体には半導体を構成するシリコンやゲルマニウム以外に不純物を一切含まない真性半導体というものがあります。しかしこれでは使いづらいので,基本的には真性半導体に不純物を加えた半導体が使われています。この半導体には添加物の違いによって2種類あります。難しく考えず,表の内容をある程度覚えておけばOKです。
半導体名 | 半導体に添加するもの | キャリア |
n型半導体 | リン・ヒ素など | 電子 |
p型半導体 | ホウ素・アルミニウムなど | 正孔 |
※キャリアとは,電荷(物質が持っている電気量)を運ぶ役割を担っているもののことです。
ダイオード(重要度:★☆☆☆☆)
ダイオードとは?
ダイオードとは,電流を一定方向にしか流さない作用=整流作用を持つ電子部品です。n型半導体とp型半導体を接合して作られます。
p型半導体側をアノード,n型半導体側をカソードといいます。
ダイオードには
- p(アノード)→n(カソード)方向(順方向)=電流が流れる
- n(カソード)→p(アノード)方向(逆方向)=ほとんど電流が流れない
という特性があります。これが整流作用です。
ただし,逆方向の電圧がある一定値を超えると,急激に逆方向電流が流れるようになります。この時の電圧を降伏電圧といいます。
ダイオードの種類
ダイオードにはいろいろな種類があります。
- シリコンダイオード…一般的なダイオード。整流作用を利用します。
- フォトダイオード…光が入射すると起電力や電流が生じます。(起電力が生じる現象を光起電力効果,電流が生じる現象を光導電効果といいます)
※詳細は「医療工学解説-トランスデューサ」を参照。
- 発光ダイオード(LED)…フォトダイオードの逆で,電流が流れると光が生じます。
- ツェナーダイオード(定電圧ダイオード)…一般的なダイオードと違って,逆方向に接続して使用します。一定の電圧を得るために用いられます。
これ以外にも様々な種類のダイオードがあります。気になる方は調べてみてください。
トランジスタ(重要度:★★☆☆☆)
トランジスタとは?
トランジスタとは,増幅作用とスイッチング作用(ON/OFF)を持つ電子部品です。ダイオードと同様,n型半導体とp型半導体を接合して作られます。
トランジスタには3つの端子があります。
- エミッタ(E)…キャリアを放出
- ベース(B)…電流制御による増幅作用・スイッチング作用に関与
- コレクタ(C)…キャリアを貯留
トランジスタの種類
トランジスタにはいろいろな種類がありますが,国家試験に出題されるのはバイポーラトランジスタと電界効果トランジスタ(field effect transistor:FET)の2つです。
バイポーラトランジスタ
p型半導体とn型半導体を合計3つ接合したトランジスタです。
一般的にトランジスタといえばこのバイポーラトランジスタを指し,上図もバイポーラトランジスタです。
p型をn型で挟んだnpn型トランジスタと,n型をp型で挟んだpnp型トランジスタがあります。
B(ベース)→E(エミッタ)に流れる電流を変化させることで,C(コレクタ)→E(エミッタ)の電流を制御できます。
キャリアに電子と正孔の2つを利用するため,バイポーラ(正(=正孔)・負(=電子)両極のキャリアをもつ)と呼ばれます。
電界効果トランジスタ(FET)
バイポーラトランジスタと違って,やや複雑な構造を取るトランジスタです。
主に接合型FETとMOSFETの2種類があります。
バイポーラトランジスタと違う点は端子名・制御方法・キャリアの種類です。
FETには3つの端子があります。
- ソース(S)…エミッタに相当
- ゲート(G)…ベースに相当(電圧制御)
- ドレイン(D)…コレクタに相当
バイポーラトランジスタが,Bに流れる電流を変化させることでC→Eの電流を制御する電流制御形であったのに対し,FETはG(ゲート)にかかる電圧を変化させることでD(ドレイン)→S(ソース)の電流を制御できるため,電圧制御形であるといえます。
FETはキャリアに電子か正孔のどちらか1つしか利用しないため,ユニポーラ(正(=正孔)・負(=電子)単極のキャリアをもつ)と呼ばれます。
まとめ
名称 | バイポーラトランジスタ | 電界効果トランジスタ(FET) | |
接合形 | MOS | ||
キャリア | 電子+正孔(バイポーラ) | 電子or正孔(ユニポーラ) | |
動作制御 | 電流制御形 | 電圧制御形 | |
端子 | エミッタ(E) ベース(B) コレクタ(C) | ソース(S) ゲート(G) ドレイン(D) | |
入力インピーダンス | 低い (10kΩ以下) | 高い (100M~100GΩ) | かなり高い (1G~1TΩ) |
周囲の温度影響 | 受ける |
練習問題
問1 入力インピーダンスが最も高いのはどれか。(第54回臨床検査技師国家試験pm95)
1.真空管
2.接合形FET
3.MOS形FET
4.NPN形トランジスタ
5.PNP形トランジスタ
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解答:3
トランジスタの中では,MOSFETが最も入力インピーダンスが高いです。
問2 バイポーラトランジスタで正しいのはどれか。2つ選べ。(第59回臨床検査技師国家試験pm95)
1.電圧制御形である。
2.周囲温度の影響を受けない。
3.入力抵抗は数MΩ以上である。
4.電子と正孔のキャリアを利用して動作する。
5.エミッタ,ベース,コレクタの3端子を持つ。
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解答:3
1.誤り。バイポーラトランジスタは電流制御形です。電圧制御形はFETです。
2.誤り。周囲温度の影響を受けます。
3.誤り。入力抵抗は数kΩ程度です。
4.正しい。バイポーラの名の通り,電子と正孔の2つのキャリアを利用して動作します。
5.正しい。バイポーラトランジスタはエミッタ(E)・ベース(B)・コレクタ(C)の3端子を持ちます。
問3 電界効果トランジスタ(FET)について誤っているのはどれか。(第32回臨床工学技士国家試験am52)
a.MOS-FETは金属-酸化膜-半導体の構造を持つ。
b.FETはユニポーラトランジスタである。
c.FETのn形チャネルのキャリアは正孔である。
d.FETではゲート電流でドレイン電流を制御する。
e.FETは高入力インピーダンス素子である。
1.a・b
2.a・e
3.b・c
4.c・d
5.d・e
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解答:4
難しそうに見えますが,消去法で解けます。
まず,FETは電圧制御形であるため,dは確実に間違いといえます。よって,dを含む選択肢である4or5となります。
後は,cとeのどちらが誤りなのかが分かればOKで,eは正しい選択肢なので,知識がなくてもcが誤りといえます。
よって,c・dである4が正解となります。
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