第65回臨床検査技師国家試験(PM1~20)の解説です。
【更新履歴】
2023.2.12
・問18の解説画像を更新しました。
第65回臨技国試のPM問1~20の解説です。
難易度は主観で1~10の10段階でつけています。
1:超簡単
2~3:簡単
4~5:普通
6~7:やや難問
8~9:難問
10:超難問
第65回臨技国試についてをまとめたページもありますので,まだ見ていない方はぜひそちらもご参照ください。
問題の出典:厚生労働省ホームページ 第65回臨床検査技師国家試験の問題および正答について 午後問題(https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/topics/dl/tp190415-07b_01.pdf)
臨床検査総論(PM1~10)
PM 問1
解答:5
全血放置で増加・減少する主な項目は超重要です。
必ず覚えておきたいところです。
【増加】
- LD
- AST
- カリウム
- アンモニア
- PaCO2
【減少】
- グルコース
- pH
- PaO2
1・2・4.誤り。全血放置により赤血球が溶血するため,これらの値は増加します。
3.誤り。
5.正しい。全血放置により,血糖が赤血球の代謝に使われるため,血糖値(グルコース)は低下します。これを防ぐために,血糖測定ではNaFを加えます(NaFは解糖系酵素のエノラーゼを失活)。
PM 問2
解答:3
尿蛋白はネフローゼ症候群のような腎・糸球体性疾患だけでなく,健常人でも見られることがあります。
もちろん,それをすべて覚えているに越したことはないですが,今の段階で無理に覚える必要はありません。むしろ,この問題は,蛋白尿の原因をすべて覚えているかどうかではなく,尿蛋白試験紙法の原理を問うているに過ぎません。なので,原理さえきちんと知っていれば簡単に解くことができます。
(1)測定原理
pH指示薬(テトラブロモフェノールブルー:TBPB)の蛋白誤差反応
尿蛋白の濃度によってpH指示薬の色が変化するため,蛋白濃度を半定量的に把握できる。
(2)基準値
陰性(-)
なお,JSCCにより,陽性(1+)は30mg/dL以上と規定されている。
(3)陽性の時考えられる疾患
糸球体腎炎やネフローゼ症候群,糖尿病性腎症など。
健常人でも運動後などに認められる。
(4)偽陽性の原因
・尿pHが8以上(アルカリ性尿)
・第4級アンモニウム塩(逆性石鹸など)
(5)偽陰性の原因
・尿pHが3以下(酸性尿)
・アルブミン以外の蛋白
※Bence Jones蛋白は試験紙法では検出不可!
1・2・4・5.正しい。
3.誤り。強酸尿では尿蛋白は偽陰性を示します。
PM 問3
解答:3
媒介動物(ベクター)を覚えていれば簡単です。
逆に言えば,これらのベクターは覚えていなければならないということです。
1.誤り。ハマダラカによって媒介されます。
2.誤り。カによって媒介されます。
3.正しい。接触感染します。昆虫は媒介しません。
4.誤り。ツェツェバエ(ガンビアトリパノソーマ・ローデシアトリパノソーマ)やサシガメ(クルーズトリパノソーマ)によって媒介されます。
5.誤り。サシチョウバエによって媒介されます。
PM 問4
解答:3
午後最初の超難問です。初見問題であり,過去問で対策できない以上,普通の勉強法ではまずこの問題は解けません。
<原核生物と真核生物のリボソーム>
生物 | リボソーム | リボソームサブユニット | rRNA |
原核生物 | 70S | 30S | 16S |
50S | 5S・23S | ||
真核生物 | 80S | 40S | 18S |
60S | 5S・5.8S・28S |
PM 問5
解答:1
過去問でもおなじみのヒゼンダニです。
過去問対策をしていれば特に問題なく正解できますね。
1.正しい。
2.誤り。ペスト(1類感染症)はYersinia pestisに感染すると発症する疾患で,ノミによって媒介されます。
3.誤り。発疹チフスはRickettsia prowazekiiに感染すると発症する疾患で,コロモジラミによって媒介されます。
4.誤り。ツツガムシ病はOrientia tsutsugamushiに感染すると発症する疾患で,ツツガムシによって媒介されます。
5.誤り。SFTSはSFTSウイルスに感染すると発症する疾患で,マダニによって媒介されます。
PM 問6
解答:3 or 4
こちらも超難問。これまで新生児の髄液所見を問う問題は出題されていなかったので,過去問で対策できない問題になります。余裕のある人は,新生児・乳児の髄液所見も覚えておきましょう。(余裕のない人でも,健常人の髄液所見は必須なので必ず覚えましょう!)
「東郷平八郎,最後に担当した」
・東(糖)郷(50)平八(80)郎:糖=50~80mg/dL
・最(細)後(5)に:細胞数= ≦5/μL
・担(蛋白)当(10)し(40)た:蛋白=10~40mg/dL
1・2・5.誤り。
3・4.正しい。ただ,実力で正解するには相当の知識が必要です。
PM 問7
解答:4
滲出液・漏出液の鑑別問題はよく出るので,下の表を覚えておきましょう。
(楽に覚えられるゴロ等はありません。気合で覚えましょう!)
1.誤り。LD<200U/Lより,漏出液の所見です。
2.誤り。比重≦1.015より,漏出液の所見です。
3.誤り。細胞数<1,000/μLより,漏出液の所見です。
4.正しい。蛋白濃度≧4.0g/dLより,滲出液の所見です。
5.誤り。中皮細胞主体より,漏出液の所見です。
PM 問8
解答:5
難問中の難問。超が10個つくほどの超難問です。勿論解ける必要はありません。この問題が正答できなくても6割は取れます。たまにこういう問題が出題されるので,「解けなくてもいいや~」と割り切れる心が必要です。
1.誤り。
2・4.誤り。大腸癌など,腸管内での出血があると陽性を示します。
3.誤り。炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎・Crohn病など)マーカーの1つであり,これらの疾患で高値を示します。
5.正しい。先天性肺気腫や肝硬変,蛋白漏出性胃腸症,ネフローゼ症候群で低値を示します。
PM 問9
解答:5
PCRについての勉強をしていないと解けない問題ですが,今後も遺伝子の問題は多く出題されると予想されるので,遺伝子検査法についてはよく対策をしておきましょう。
1~4.誤り。これらはいずれも増幅産物が確認されないときに実施すべき対策法です。
5.正しい。
PM 問10
解答:2
高校で生物を履修していれば簡単なのでしょうが,生物を取っておらず,減数分裂の勉強もしていない人にとっては難問です。調べてもよくわからなかったので,解説は簡単に……。
1.誤り。第1分裂終期にあたります。
2.正しい。第1分裂前期(接合期)にあたります。
3.誤り。恐らく第1分裂後期にあたります。
4.誤り。第1分裂中期にあたります。
5.誤り。
臨床検査医学総論(PM11~15)
PM 問11
解答:2
1.誤り。偽痛風とは,発作の症状が痛風の発作に似ていることから付けられた病名です。痛風は尿酸結晶による関節炎が見られますが,尿酸以外の結晶誘発(主なものはピロリン酸カルシウム)による関節炎を偽痛風といいます。両者の関連性はありません。
2.正しい。尿酸結晶は尿管結石の原因の1つです。
3.誤り。男性のほうが多いです。(女性は女性ホルモンの働きで腎臓からの尿酸の排泄を促すため)
4.誤り。診断基準は7.0mg/dLです。(これは絶対に覚えましょう!)
5.誤り。尿酸産生過剰型が約20%,尿酸排泄低下型が約60%,両者の混合型が約20%を占めるといわれています。
PM 問12
解答:5
心筋梗塞マーカーは絶対に覚えておきましょう!
- ミオグロビン
- 心臓型脂肪酸結合蛋白(H-FABP)
- トロポニンT
- CK-MB
- ミオシン軽鎖
「見張っとく気,ある?」
・見:ミオグロビン
・張っ:白血球・H-FABP
・と:トロポニンT
・く気:CK-MB
・あ:AST
・る:LD
1~4.正しい。いずれも心筋梗塞のマーカーです。
5.誤り。BNPは心不全のマーカーです。
PM 問13
解答:5
血液分野の問題ですが,問うていることは基礎的なものばかりで,血液の勉強をしていれば難なく解けるはずです。
1.誤り。自己免疫性溶血性貧血(AIHA)や遺伝性球状赤血球症(HS)で見られる所見です。
2.誤り。AIHAで見られる所見です。
3.誤り。サラセミアで見られる所見です。
4.誤り。腎性貧血や真性赤血球増加症で見られる所見です。
5.正しい。他にPNHではCD59欠損・汎血球減少・Ham試験陽性・蔗糖溶血試験陽性などを覚えておきましょう。
PM 問14
解答:4・5
1・2.誤り。常染色体の質的異常です。
3.誤り。常染色体の数的異常です。
4・5.正しい。性染色体の数的異常です。
PM 問15
解答:4
それぞれの疾患に対して自己抗体を思い浮かべ,自己抗体があるものはすべて自己免疫疾患となります。よって,自己免疫疾患で出現する自己抗体は確実に覚えておきましょう。
1.正しい。抗内因子抗体が出現する自己免疫疾患です。
2.正しい。抗Jo-1抗体が出現する自己免疫疾患です。
3.正しい。抗アセチルコリン受容体抗体(抗AchR抗体)が出現する自己免疫疾患です。
4.誤り。免疫不全症の1つであり,自己免疫疾患ではありません。
5.正しい。抗サイログロブリン抗体(TgAb)や抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体・抗甲状腺マイクロゾーム抗体が出現する自己免疫疾患です。
臨床生理学(PM16~28)
PM 問16
解答:3
心電図波形の基礎の基礎です。特にP~T波については確実に覚えておきましょう。
1.誤り。心房の脱分極を表します。
2.誤り。心室の脱分極を表します。
3.正しい。心室の再分極を表します。
4.誤り。心房・心室(房室)の伝導時間を表します。
5.誤り。心室の脱分極開始から再分極終了(活動電位持続時間)を表します。
PM 問17
解答:3
心筋梗塞の所見は頻出です。下表は確実に覚えましょう!
<ST上昇・異常Q波の見られる誘導とその梗塞部位>
梗塞部位 | ST上昇・異常Q波の見られる誘導 |
前壁 | V3・V4 |
前壁中隔 | V1~V4 |
側壁 | Ⅰ・aVL・V5・V6 |
高位側壁 | Ⅰ・aVL |
広範囲前壁 | 前壁中隔+側壁 |
下壁 | Ⅱ・Ⅲ・aVF |
後壁 | V1・V2でR波増高 |
本問の画像では,I誘導・aVL誘導といった左側に関係する誘導でST上昇が認められていることから,側壁が最も考えられます。
PM 問18
解答:3・5
1.誤り。Holter心電図の誘導でよく用いられるNASA誘導やCM5誘導では,胸骨上に電極を装着します。
2.誤り。上の絵の通り,どの誘導も双極誘導です。
3.正しい。逆にCM5誘導やCC5誘導はST低下を検出しやすいです。
4.誤り。体位の変化によりSTは変化します。
5.正しい。運動負荷心電図検査では発見しづらい異形狭心症や,起こるタイミングが一定でない期外収縮などの診断に有用です。
PM 問19
解答:4
出題頻度が高くない分,対策がしづらい難問です。解けなくてもそこまで気を落とす必要はありません。
1.誤り。年齢が上がるほどPWV値は高値になります。
2.誤り。血圧の上昇により血管壁張力が増し,血管としての弾力性はなくなりPWVは高値になります。
3.誤り。男性>女性です。ただし,閉経後には男女差はなくなるといわれています。
4.正しい。四肢(両上肢と両足首)に巻く血圧測定カフの脈波からPWVを測定します。
5.誤り。高値であるほど動脈が硬い=動脈硬化が進行していることを示します。
PM 問20
解答:3・5
呼吸機能検査の基礎的問題です。各検査法について必ず頭に入れておく必要があります。
<呼吸機能検査の種類>
検査法 | 検査項目 |
スパイロメトリ | ★残気量を除く肺気量分画 (1回換気量・予備呼気量・予備吸気量・最大吸気量・肺活量) ★努力肺活量・1秒量・1秒率・最大呼気中間流量・空気とらえ込み指数 |
フローボリューム曲線 | ピークフロー・V25・V50・V75 (現在のスパイロメーターには努力呼気曲線から自動的にフローボリューム曲線を描くことができる機能がある) |
ガス希釈法・体プレスチモグラフ法 | ★機能的残気量(FRC) |
1回呼吸法 | ★肺拡散能(DLCO) |
N2を用いた単一呼吸法 | ★クロージングボリューム(CV) |
※表はスクロールできます。
1.誤り。スパイロメトリでは残気量を含む肺気量分画は測定できません!
2.誤り。1回呼吸法は肺拡散能(DLCO)の基本的な測定法です。
3.正しい。
4.誤り。ガス希釈法は機能的残気量(FRC)の基本的な測定法です
5.正しい。
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