第65回臨床検査技師国家試験の問題を解いてみました!果たして結果は?(2020.3 大幅更新!)
第65回臨床検査技師国家試験の問題・正答公開
2019年2月20日(水)に行われた第65回臨床検査技師国家試験の問題および正答が厚生労働省HPで公開されました。
毎年少しずつ難化していく傾向のある臨床検査技師国家試験ですが,果たして65回の国家試験はどうだったのか?結果や解いた感触等について報告したいと思います!
※難易度の傾向は個人的な主観であり,正式に発表されたものではありません。
これまでの国家試験の傾向等についてはこちらの記事をどうぞ!
実際に解いた結果と総評
まずは私が解いた結果について。
※臨床化学は1問採点除外となったため,問題数-1。
国家試験の点数だけではわからないため,比較対照として私が受けた64回の国家試験の点数と,4年生の時に受けた全国国試模試の平均点数も同時に掲載しています。
私が受けた印象だと,簡単な問題(過去問対策をしていれば余裕で取れる問題)が多い分,過去問対策をしていてもなかなか取れないような難問もあって,両極端な感じでした。ただ,きちんと過去問対策をしておけば合格自体は確実にできると思います。
分野別だと,総論・生理・臨床化学あたりが難しく感じました。(特に臨床化学は過去の国試と比較しても難しかったです)
なお,「これどうして間違えたんだ?」という問題も数問あり,ケアレスミスがなければもう2~3点は取れてた気がします。
分野別難易度・出題数評価
はじめに
難易度は主観で1~10の10段階でそれぞれの問題に対して設定しています。
1:超簡単
2~3:簡単
4~5:普通
6~7:やや難問
8~9:難問
10:超難問
基本的に難易度5以下の問題を回収できれば国家試験は合格できるようになっています。
(こんな拙い解説を書いている私でも,全く歯が立たない問題や,勘に頼らざるを得ない問題もたくさんあります)
つまり,重要なのは,一部の上位者しか解けないような高難度の問題を正解するような知識ではなく,受験生の大半が正解するような,一般的な難易度の問題をどれだけ落とさずにしっかり回収できるかということになります。(これは何も臨床検査技師国家試験に限ったことではなく,最近の医師国家試験でも同様の傾向が見られます)
点数が低い人ほど,簡単な問題も難しい問題もごっちゃにしてやみくもに勉強しがちですが,それだと案外点数は伸びません。(さらにそういう人ほどきれいなノートを時間をかけて作ろうとするため,費やした時間に対して,吸収できる知識量が伴ってないことも多い……)
下手に色気を出して難しい問題を時間をかけてノートにまとめるのではなく,過去問で何度も出題されているような問題を確実に回収できるような知識および,その問題に関連した知識を身に着けられる勉強法を確立させましょう。
そのために必要なのは過去問対策と,その問題の必要性を吟味することです。
難易度はそれぞれの問題に対して設定しているため,これを参考にして自分がいま勉強すべき問題なのかどうかを見極めてください。間違っても高難度の問題を時間をかけて復習しようとしないこと。(そう言う問題は国試9割以上を目指す人にでも任せておきましょう)
臨床検査総論
過去問を解いていれば難なく解ける問題(am3/6・pm1/2/5/7)と,ほぼ初見問題(am9/10・pm4/6/8/9/10)が同じくらいの割合で出題されていました。
- 検査管理(1):pm1
- 精度管理(1):am2
- 検査値(0):該当なし
- 尿検査(3):am3・am4・pm2
- 脳脊髄液検査(1):pm6
- 糞便検査(1):pm8
- 遺伝子・染色体検査(4):am9・am10・pm9・pm10
- 医動物(6):am5~8・pm3・pm5
- その他検査(3):am1・pm4・pm7
遺伝子・染色体検査の問題配分が平均と比べてかなり増えてますね。今後もここの問題は多く出題されそうです。
難易度は,高難度の問題が散見される一方,簡単な問題もあり,難易度5までを確実に正解できれば5割は固いです。したがって,勘ではなく,実力で5割(10点)取れていれば基礎は十分あると言えます。その調子で勉強を続けていれば余裕です。
5割に満たないという人は,難しい問題には手を出さず,難易度5以下の問題だけをまずはしっかり対策しましょう。焦らずとも十分間に合います。
臨床検査医学総論
やや難しい問題(am11/13・pm11)が数問あったものの,全体的には簡単な問題が多く,例年通り点数の稼げる分野ですね。
- 検査総論分野(0):該当なし
- 生理分野(1):am14
- 臨床化学分野(4):am11・am12・am15・pm12
- 病理分野(2):pm11・pm14
- 血液分野(2):am13・pm13
- 微生物分野(0):該当なし
- 免疫分野(1):pm15
- 公衆衛生分野(0):該当なし
- その他(0):該当なし
今回は臨床化学と血液に出題が偏っていたようですね。特に血液が多く出たのは意外でした。
それぞれの分野の基本的知識を押さえておけば8割(8点)程度は取れます。
点数が低かった場合,どの分野の問題を間違えたのかを再度確認し,その分野を重点的に復習するように努めましょう。
臨床生理学
難易度自体はほぼ例年通り。ただ難しい問題もやや多く出題され,また少しひねった問題も出題されたので,基本をしっかり抑えていないとなかなか得点を稼ぐというのは難しいですね。
逆に基礎がしっかりできていれば6割(15~16点)は取れるので,基礎知識定着の確認としては良問だったと思います。
- 心電図検査(6):am16~18・pm16~18
- 心音図・脈波検査(1):pm19
- 呼吸機能検査(6):am19~22・pm20・pm21
- 脳波検査(2):am25・am27
- 超音波検査(7):am23・am24・pm22~26
- 筋電図検査(2):am28・pm28
- その他生理検査(2):am26・pm27
それぞれの出題項目は過去問の平均程度出題されており,偏りはほぼないようです。脳波は過去平均の半分程度しか出題されなかったのですが,その分超音波が多めに出題されたということでしょうか。
やはり心電図・呼吸機能(動脈血ガス含む)・超音波・脳波の4大項目は多めに出題されるので手を抜かないようにしたいところです。
難問に目が行きがちですが,数値としてまとめてみると,全体の65%(17点)が難易度5以下に収まっているので,まずはこの点数を目標にしたいところ。
総論と同様,5割に満たないという人は,難しい問題には手を出さず,難易度5以下の問題だけをまずはしっかり対策しましょう。
臨床化学
すべての分野の中で最も難しかったです。簡単な問題はもちろんありましたが(am32/33/34/38/40/41/42/43/44・pm30/33/34/36/37/38/40),それ以外の問題はなかなか難しく,20点を超えるにはそれなりの勉強が必要と再認識させられました。過去の国家試験と比較しても65回は難しい部類でしょう。
- 細胞内小器官(0):該当なし
- 糖質(2):am38・am43
- 蛋白質(3):am34・am35・pm33
- 非蛋白性窒素(3):am39・pm36・pm39
- 脂質(4):am42・pm29~31
- 酵素(3):am32・am36・pm37
- 生体色素・ビタミン(1):pm38
- 電解質・微量元素(2):am31・am37
- ホルモン(5):am40・pm41~44
- 機能検査(0):該当なし
- マーカー(1):pm40
- 遺伝子(0):該当なし
- 計算問題(4):am30・am33・pm32・pm34
- その他(4):am29・am41・am44・pm35
項目別では,ホルモンの出題数が多いことがわかります。
ホルモンはその働きと,分泌臓器といった基礎的なことを覚えておけばほぼ確実に解けるので対策は怠らないように。
難易度をグラフにまとめてみると,意外にも難易度4~5の問題が半分を占めていることがわかりました。
難易度3以下の問題が12%(4問)しかなく,逆に難易度6以上の問題が38%(12問)あったため,体感的に難しく感じましたが,きっちり基礎を固めていれば5~6割は確実に取れると言えるでしょう。
臨床化学は覚えることが多いので,時間に余裕があれば後回しでも大丈夫ですが,本格的に勉強する場合は難易度5以下の問題だけをまとめていきましょう。
(過去問を見ていけば同様の問題が面白いほど見つかるはずです)
病理組織細胞学
組織学・解剖学・病理学の問題はいつも通りの難しさでしたが,それ以外は特に難しいという問題はあまりなく(2個選べのうち1個がわからないという問題が何問かありましたが…),きちんと覚えるべきことを覚えていれば20点は取れそうですね。
- 組織学・解剖学・病理学(12):am50~58・pm49・pm54・pm56
- 固定・脱灰・包埋・薄切(4):am45・am46・pm48・pm53
- 染色(6):am47・am48・pm45・pm50・pm55・pm57
- 電子顕微鏡・細胞診(5):am49・pm46・pm47・pm51・pm58
- 病理解剖・病理業務(1):pm52
項目別出題数は過去問の平均とほぼ同じでした。
難易度をグラフにまとめてみると,難易度5以下の問題が7割(19~20点)を占めていることがわかりました。病理も臨床化学と同様覚えることが多く,なかなか6~7割取るのは難しいですが,出題されている問題は基本的なことを問う問題が多いため,6割に満たない人は基礎固めを時間をかけてしっかり行っていきましょう。
臨床血液学
若干難しい問題(am59/60・pm65)もありますが,それ以外は基本問題ばかりであり,国試の過去問対策ができていれば容易に高得点が狙えますね。
- 血液基礎(1):am59
- 染色体・遺伝子・細胞表面マーカー検査(2):am66・pm62
- 赤血球系(5):am61・am63・pm61・pm64・pm66
- 白血球系(5):am60・am65・pm59・pm63・pm65
- 血小板・凝固線溶系(4):am62・am67・pm60・pm67
- 血液検査(1):am64
前回(第64回)で血小板凝固線溶系の問題が9問出題された反動か,65回では問題数がやや減少し,代わりに赤血球系と白血球系の問題が1~2問ほど多めに出題されました。
また,基礎や検査の問題も1問ほど減少しましたが,全体的には過去問とほぼ変わらない出題といった感じでしょうか。
血液分野は難易度8以上のいわゆる難問はほとんど出題されません(されても1問程度)。逆に,難易度5以下の基本的な問題が8割(14~15点)を占めているので,基本をしっかり押さえていれば誰でも8割は取れると思います。
総論や臨床化学などが難しい以上,血液などの簡単な分野でできる限り点数を補完したいところです。
臨床微生物学
血液同様に基礎的な問題ばかり出題されており,過去問等で微生物の対策ができていればこちらも十分に高得点が取れる内容ですね。
ただ,血液と異なり,覚えることが多いので対策するのはなかなか大変ですが……。
- 微生物基礎(3):am68・am75・pm75
- 滅菌・消毒薬(2):am69・am73
- 抗菌薬・抗真菌薬・抗ウイルス薬・薬剤耐性菌(2):am77・pm68
- ワクチン・毒素・食中毒(0):該当なし
- 感染症法・感染経路・再興/新興感染症(2):pm70・pm77
- 常在菌・微生物検査材料(0):該当なし
- 培地・染色(2):am76・pm71
- 細菌各論(8):am70~72・am78・pm72・pm73・pm76・pm78
- 真菌各論(1):am74
- ウイルス・プリオン(2):pm69・pm74
- その他(0):該当なし
細菌各論の比率が高く,微生物が苦手な人は吐き気がすると思います。
ただ,問われている内容は決して教科書の隅に書いてあるようなことではなく,過去問でも出題されたor対策ができるようなメジャーな問題が多かったので,しっかりと微生物の基礎ができていれば特に難問といったものはなかったとも言えます。
問われている内容が各項目の基本的なものばかりである以上,難易度もほとんどの問題が5以下に収まっています。
6割(13点)に満たない人は,まず難易度5以下の問題でどの項目を間違えたのかを確認し,その周囲の知識を身に着けるようにしましょう。
臨床免疫学
総論と同様に,過去問を解いていれば問題なく解ける問題(am81/82/84/86/87/89・pm80/82/83/85)と,ほぼ初見問題(am79/83/88・pm81/84/86/88/89)の問題ばかりが出題されており,両極端な印象ですね。ある程度は取れても高得点は難しい気がします。
- 免疫系の仕組み(3):am80・am81・pm79
- 抗体・補体(3):am79・pm84・pm85
- 抗原・電気泳動・蛋白(1):pm86
- アレルギー(0):該当なし
- 自己免疫疾患・抗核抗体・免疫不全症・腫瘍マーカー(3):pm80・pm82・pm83
- 各種検査(2):am82・pm81
- ABO/Rh血液型検査(4):am84~86・pm88
- 輸血関連検査・移植(6):am83・am87~89・pm87・pm89
- その他(0):該当なし
血液型検査・輸血関連検査・移植に関する問題が多く出題されていました。
逆にアレルギーの問題は出題されていなかったので,第66回では出題が予想されます。
今年はやや難しい問題が多く,6割を超えるには基礎だけでなく,応用力も必要とされる内容でした。6割取れていれば実力は十分でしょう。
公衆衛生学
まあ,いつも通りという気がします。直前対策でも普通に6割は取れそうです。
- 環境衛生(1):pm92
- 医療統計(2):pm90・pm91
- 疫学研究(1):am91
- 医療保険・介護保険・医療費(2):am94・pm94
- 保健所の業務(1):am93
- 学校保健(0):該当なし
- 母子保健(0):該当なし
- 精神保健(0):該当なし
- 予防医学・健康の定義(1):am90
- 特定健診 特定保健指導 ・メタボリックシンドローム診断基準(1):pm93
- 医療倫理・関係法規(0):該当なし
- WHOの活動(0):該当なし
- その他(1):am92
目立つのは医療保険・介護保険・医療費の問題と,特定検診の問題です。
特に後者は近年少しずつ出題されてきていて,今後のトレンドになりそうなので,余裕があれば勉強しておきましょう。
特に難しい問題はあまりなく,基本的に過去問対策ができていれば容易に得点できる問題が多く見受けられました。上手くいけば満点も狙えそうです。(まあ,満点を取る必要は全くないのですが……)
医用工学概論
対策していない人にとっては難しい問題である一方,対策をしておけば基礎的な問題ばかり出題されているので楽に9~10点は得点できる感じです。ただ,一部難しい問題も出題されているため,満点はなかなか厳しいです。
- 単位・計算(2):am96・pm97
- 増幅器・雑音・フィルタ(0):該当なし
- 半導体・ダイオード・トランジスタ・変調(1):am97
- 論理回路・AD変換(1):pm95
- ショック・クラス別分類・医用機器関連図記号・病院電気設備(1):am98
- コンピューター(2):am99・pm98
- 略号・拡張子(0):該当なし
- トランスデューサ(1):pm96
- 生体物性(1):am95
- 各種装置(2):am100・pm100
- 医療情報システム(1):pm99
- その他(0):該当なし
出題問題はおおむね過去平均と同じですが,今回はほぼ毎年出題されている増幅器やフィルタの問題が見当たりませんでした。ということは,第66回はこの部分が出題されることが予想されます。
難易度はいつも通りで,対策さえできていれば6割(8点)は固いです。
医療工学の12点は意外とバカにできないので,最低でも8点は拾えるようにしておきたいところ。それ以上は基本必要ないので,6割の壁を越えられた方は別の分野の対策を。
簡単な解説
それぞれの問題については別ページで簡単に解説していますので,ぜひ参考にしてください。
終わりに
第65回臨床検査技師国家試験についての総評及び難易度を主観でまとめてみましたがいかがでしたでしょうか。
過去の国家試験と比べても少し難化した印象ですが,国家試験である以上,合格点を取ること自体は決して難しくないです。
まだ解いていない方は,実力試しにぜひ解いてみてはどうでしょうか?もちろん,復習も忘れずに行ってくださいね。
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