第66回臨床検査技師国家試験(AM21~40)の解説です。
【更新履歴】
2022.10.3
・問21の解説(DLCO)の解説を更新しました。
第66回臨技国試のAM問21~40の解説です。
難易度は主観で1~10の10段階でつけています。
1:超簡単
2~3:簡単
4~5:普通
6~7:やや難問
8~9:難問
10:超難問
第66回臨技国試についてをまとめたページもありますので,まだ見ていない方はぜひそちらもご参照ください。
問題の出典:厚生労働省ホームページ 第66回臨床検査技師国家試験の問題および正答について 午前問題(https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/topics/dl/tp200414-07a_01.pdf)
臨床生理学(AM16~28)
AM 問21
解答:2
DLCOの問題は過去にもいくつか出題されており,かつ出題頻度が高いので対策は必須です。
もしこれらの年の過去問を見ていないという方は,ぜひそちらも見ておきましょう。(過去の国試問題は厚生労働省HPに掲載してあります)
DLCOの問題を解くうえで覚えておきたいことは,混合ガス(割合も)・測定法・基準値・異常を示す疾患の4つです。
<肺拡散能検査(DLCO)>
【4種混合ガス(COとHeは割合も覚える!)】
・CO:0.3%
・He:10%
・O2:20~21%
・N2:残り
【測定での注意点】
・マウスピースとノーズクリップ必須。
・最大呼気位まで呼出 → 4種混合ガスを最大吸気位まで急速吸入
→ 最大吸気位で10秒程度息止め → 急速呼出
・呼気ガスは初めの1L程度(死腔)は採取しない。
・CO濃度とHe濃度を測定し,計算によりDLCOを算出する。
【基準値】
・予測値を用いる。(%DLCO)
基準値は80%以上。
【異常値を示す疾患】
<高値>
・肺胞気酸素分圧の低下(高地居住や高地での測定など)
<低値>
・間質性肺炎
・肺線維症
・COPD
・肺水腫
・肺高血圧症
・貧血
・喫煙
・加齢 など
元々最大呼気位でも残気量分は空気が残っているため,混合ガスはその空気と混ざり,一定割合で希釈される。したがって,呼気のHe濃度を測定することで希釈率が計算できる。
COは希釈されると共に拡散もするため,COの減少分(=希釈分+拡散分)とHeの希釈分から,純粋にCOの拡散分が求められる。
つまり,希釈率を求めるためにHe濃度を測定したというワケ。
1・3~5.誤り。
2.正しい。
AM 問22
解答:1
Cstの問題もDLCOの問題と同様,よく出題されるので対策は必須!
<静肺コンプライアンス(Cst)>
【測定での注意点】
・FRCから0.5L吸気した点で測定。
・ノーズクリップは必須。
・食道バルーンを食道に挿入する。
(食道バルーンは食道内圧を測定するために用いる。食道内圧は胸腔内圧に近似)
【異常値を示す疾患】
<高値>
Cst高値=弾性収縮力が低下し,肺が膨らみやすい状態
・加齢
・COPD(特に肺気腫型)
<低値>
Cst低値=伸展性が低下し,肺が膨らみにくい状態
・拘束性換気障害(間質性肺炎・肺線維症など)
※気管支喘息では異常を示さない!
1.正しい。
2~5.誤り。
AM 問23
解答:5
臨床検査技師が単独で行うことができないのは,基本的に針を使うもの or 患者に薬剤等を投与するものと覚えておきましょう。ただし一部例外もあります。
× 針筋電図検査
× 散瞳薬を用いた眼底写真撮影
× 冷水・温水・電気などの刺激による眼振電図検査
× 気道過敏性試験
△ 心電図負荷試験(医師の個別的・具体的指示が必要)
○ 針電極を用いた脳波検査
○ 採血(検査用のものに限る)
1~4.誤り。
5.正しい。気道過敏性試験は薬剤を投与するため,臨床検査技師は行うことができません。
AM 問24
解答:1
超音波所見は覚えるのがかなり大変ですが,何とか頑張って覚えましょう。
1.正しい。
2.誤り。肝血管腫で見られる所見です。
3.誤り。転移性肝癌で見られる所見です。
4・5.誤り。脂肪肝で見られる所見です。
AM 問25
解答:3
乳腺の嚢胞は単純性嚢胞と実質性嚢胞があり,そのうち,単純性嚢胞は上の表で示す腎嚢胞と特徴は同じです。
- 後方エコー増強
- 内部無エコー
- 嚢胞辺縁の境界明瞭
1・4・5.誤り。
2.誤り。乳癌の硬癌で認めます。
3.正しい。
AM 問26
解答:2・5
かなりの高難易度問題。解けなくても気にする必要はありません。
1.誤り。記憶に関与します。
2.正しい。メラトニン(睡眠作用と生体リズムを調節するホルモン)を産生することで概日リズムを整えます。
3.誤り。呼吸や心拍数を調整する中枢です。
4.誤り。バソプレッシン・オキシトシンを産生しますが,これらのホルモンは概日リズムに関係しません。
5.正しい。概日リズムの中心です。
AM 問27
解答:2
電気味覚検査はほとんど勉強していないので全く分かりませんでした。なので難易度は高めに設定。
1・4・5.誤り。
2.正しい。舌前方2/3は鼓索神経が支配しており,この神経は顔面神経から分岐した神経です。
3.誤り。舌咽神経は舌後方1/3を支配していますが,鼓索神経とは無関係です。
AM 問28
解答:1
難問が連続で出題されてげんなりしますね。
この問題も解ける必要はないでしょう。
1.正しい。FMD測定前の飲水は可能とされています。
2・4・5.誤り。これらは影響を与える可能性があるため,摂取を避ける必要があります。
3.誤り。性周期による影響があるため,月経期は検査を避ける必要があります。
臨床化学(AM29~44)
AM 問29
解答:5
こういう問題はいろいろなことを知っておかないと解けないような問題ですが,最低でも浸透圧は押さえておきましょう。以下のことだけ覚えておけば十分です。詳細に知りたい方は各自検索してください。
<浸透圧>
【血清(血漿)浸透圧】
・主にナトリウムによって規定される。
・血清(血漿)浸透圧[mOsm/kg・H2O]=Na×2+UN/2.8+Glu/18
【膠質浸透圧】
・主にアルブミンによって規定される。
1.誤り。アルカリとしての緩衝作用を示します。
2.誤り。浸透圧により赤血球内の水分が赤血球外に出るため収縮します。
3.誤り。約60%です。
4.誤り。浮腫(むくみ)です。
5.正しい。
AM 問30
解答:1
超難問。解けなくても全く問題ありませんが,余裕があれば知っておくといいかも。ただ,今まで出題がなかったので今後出るかどうかはわかりません。余裕がなければスルーで。
(出題頻度の低い知識を覚えても,使えない可能性が高いので……)
多糖類名称 | グリコシド結合 |
アミロース | α-1,4 |
アミロペクチン グリコーゲン | α-1,4・α-1,6 |
デキストラン | α-1,6 |
セルロース アガロース ヘパリン | β-1,4 |
イヌリン | β-2,1 |
1.正しい。
2~5.誤り。
AM 問31
解答:2・4
またまた難問。それぞれの反応式を確実に覚えていないとまず正解できません。
<酵素反応式>
※反応式中の矢印に酵素が関与。
【尿酸】
尿酸 + 2H2O +O2 → アラントイン + CO2 + H2O2
【尿素】
尿素 + H2O → 2NH3 + CO2
【クレアチン】
クレアチン + H2O → サルコシン + 尿素
【グルタミン酸】
グルタミン酸 + H2O + NAD → 2-オキソグルタル酸 + NH3 + NADH + H+
【アスパラギン酸】
アスパラギン酸 + 2-オキソグルタル酸 → グルタミン酸 + オキサロ酢酸
1・3・5.誤り。
2・4.正しい。
AM 問32
解答:1・5
ようやく一息つける問題が出ましたね。65am43をはじめとした過去問を対策していれば楽勝のはず。
以下の4つのうち,HbA1cとそれ以外が同一日に認められた場合 or 別日で2回基準を満たした場合に糖尿病と診断する。
- 空腹時血糖:≧126mg/dL
- 随時血糖:≧200mg/dL
- 75g経口ブドウ糖負荷試験(75gOGTT)2時間値:≧200mg/dL
- HbA1c:≧6.5%
1・5.正しい。上記の通りです。
2.誤り。随時血糖は200mg/dL以上が基準です。
3.誤り。グリコアルブミンは糖尿病診断基準には入っていません。
4.誤り。1時間値は対象外です。
AM 問33
解答:5
この問題は65回にも出題されたことがあるのできちんと対策していれば2と5の2択までは絞れます。さらに,62pm33も対策していれば簡単に答えが出せます。
↑の解説記事と併せて,腎性貧血もHbA1c偽低値の原因となることを覚えておきましょう。
1~4.誤り。
5.正しい。
AM 問34
解答:3
グルカゴンとインスリンの働きは最低限覚えておきましょう。
<グルカゴンとインスリン>
【グルカゴン】
グリコーゲンから糖を作る側のホルモン。
・血糖値↑
・グリコーゲン分解↑(合成↓)
・糖新生↑(解糖系↓)
【インスリン】
糖からグリコーゲンを作る側のホルモン。
・血糖値↓
・グリコーゲン分解↓(合成↑)
・糖新生↓(解糖系↑)
1・2・4.正しい。
3.誤り。
5.正しい。糖新生は大部分が肝臓で行われますが,一部は腎臓でも行われます。
AM 問35
解答:3・5
難しそうな問題ですが,実は過去問(65am31・65am14・60am39)を解いてきちんと対策していれば意外にも簡単に解けてしまいます。
臨床化学は難しい問題が多いため,この問題のような,過去問対策で解ける問題は確実に回収しておきたいところです。
<アミラーゼ>
【基本事項】
・加水分解酵素の1つ。
・ヒトにはα-アミラーゼのみ存在。多糖類のα-1,4-グリコシド結合を内部からランダムに切断するエンド型の消化酵素。
・大部分が膵臓と唾液腺で産生。
・活性中心=Ca 活性化=Cl
・分子量はアルブミンより小さく糸球体で濾過される。
・P(pancreas:膵臓)型とS(salivary:唾液腺)型のアイソザイムが存在。P型はその名の通り膵臓でのみ産生されるが,S型は唾液腺以外の臓器でも産生される。
【高値を示す疾患】
・P型高値=膵炎
・S型高値=唾液腺炎症,アミラーゼ産生腫瘍(肺癌,卵巣癌など)
・P・S型高値=腎不全
1.誤り。大部分がNaとともに細胞外に存在します。
2.誤り。
3.正しい。65am31で解説してあります。
4.誤り。活性中心に含まれるのはClではなくCaです。
5.正しい。65am14で解説してあります。
AM 問36
解答:5
過去問で出題された「血清蛋白電気泳動で○分画の蛋白質はどれか」の問題の画像問題verです。
蛋白分画さえわかれば簡単な問題です。
各蛋白分画に属する主な蛋白は65pm86で解説しているので,そちらを参考にしてください。
本問ではγ分画が増加しているのでIgGが正解です。
AM 問37
解答:3
ビリルビンの問題は頻出です。1つ前の65回では珍しく出題されませんでしたが,今年は出題されたように,ほぼ毎年出題されるので確実に対策しておきたいところです。
【基本事項】
・ヘムの代謝産物
・直接(Direct)型と間接(Indirect)型が存在する。
・直接ビリルビンのうち,アルブミンと共有結合しているビリルビンをδ-ビリルビンという。
【測定法】
測定法は酵素法と化学酸化法が主に用いられる(他に高速液体クロマトグラフィ:HPLC法もある)。
酵素法・化学酸化法ともに450nmでの吸光度の減少を測定する。
<酵素法>
ビリルビンオキシダーゼと呼ばれる酵素を用いて,ビリルビンをビリベルジンに酸化させて吸光度の減少を測定する。
(酸化)ビリルビン → ビリベルジン
(還元)ビリベルジン → ビリルビン
<化学酸化法>
バナジン酸と呼ばれる酸化剤を作用させて,ビリルビンをビリベルジンに酸化させて吸光度の減少を測定する。
↑のビリルビンの性状は確実に覚えておくとして,今回の問題はさらにその応用問題なので,国家試験の過去問よりやや面倒です。それでも,この問題は2択まで絞れるのでそこまで難しくはありません。
1・4・5.誤り。いずれも直接ビリルビンが増加する疾患です。
2.誤り。溶血による間接ビリルビン増加であり,グルクロン酸抱合に異常は見られません。
3.正しい。
AM 問38
解答:5
過去に似た問題の出題(57am30)があるので,その問題を対策していれば簡単な問題でした……が,そうでない場合はかなりの高難度問題です。解けなくても心配する必要はありません。
1.誤り。ペルオキシダーゼは酸化還元酵素のうち,酸化酵素(~オキシダーゼ)であり,脱水素酵素(~デヒドロゲナーゼ)ではありません。
2・3.誤り。赤色キノン色素による吸光度の増加を505nmで測定します。
4.誤り。
5.正しい。57am30では「検出感度を変更できる。」の選択肢があり,これは正しい内容であったため,この選択肢も正しい選択肢であることがわかります。
AM 問39
解答:5
超難問。この問題は解けなくても大丈夫でしょう。
1~4.正しい。
5.誤り。主波長は測定物質の吸収極大を選択し,副波長は主波長より長波長側の波長を選択します。
AM 問40
解答:5
リポ蛋白の問題もたまに出題されますので,↓の特徴は覚えておきたいところです。
1~4.正しい。
5.誤り。LDLよりもVLDLのほうが陽極側に泳動されます。
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コメント
こんにちは。いつも拝見させていただいております。
AM 問31の選択肢2 尿素の反応式についてですが、
ウレアーゼは、尿素の加水分解酵素なので、
反応式は、尿素 + H2O→ 2NH3 + CO2
ではないでしょうか?
コメントありがとうございます。
H2Oを完全に入れ忘れていましたので修正しました。ご指摘ありがとうございます。