第67回臨床検査技師国家試験(AM41~60)の解説です。
【更新履歴】
2022.12.18
・問50の解説を追記しました。
第67回臨技国試のAM問41~60の解説です。
難易度は主観で1~10の10段階でつけています。
1:超簡単
2~3:簡単
4~5:普通
6~7:やや難問
8~9:難問
10:超難問
第67回臨技国試についてをまとめたページもありますので,まだ見ていない方はぜひそちらもご参照ください。
問題の出典:厚生労働省ホームページ 第67回臨床検査技師国家試験の問題および正答について 午前問題(https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/topics/dl/tp210416-07a_01.pdf)
臨床化学(AM29~44)
AM 問41
解答:5
超難問。解けなくても大丈夫です。
1~4.誤り。
5.正しい。
AM 問42
解答:5
逸脱酵素とは簡単に言えば,臓器や組織が損傷を受けた際に血中に放出される酵素のことを指します。
例えば以下のようなものがあります。以下で示す疾患で増加する酵素は必ず覚えておきましょう!
- 肝炎=AST・ALT など
- 心筋梗塞=AST・CK・LD など
- 肝胆道系疾患=ALP・γ-GT など
- 膵炎=AMY・リパーゼ など
1~4.正しい。
5.誤り。
AM 問43
解答:2
難問。ビタミンDの肝臓と腎臓でのそれぞれの代謝を覚えていないとまず解けません。
みーさんのブログ「みーの医学」でビタミンDの活性化のゴロが紹介されているのでこちらを覚えておくと解けます。
プロビタミンD → ビタミンD3 → 25(OH)D3 → 1,25(OH)D3
1・3・5.誤り。
2.正しい。
4.誤り。腎臓ではビタミンDの1位を水酸化します。
AM 問44
解答:5
高校化学の計算問題。
質量→モル濃度変換と,当量(Eq/L)の定義さえ知っておけば解ける問題です。
1L中の質量/分子量(MW)=モル濃度(mol/L)
Eq/L=mol/L×イオン価数
後は計算するだけです。
カルシウムイオンが50mg/dLより,1L換算すると500mg/L。
これより,モル濃度は
$\frac{500}{40}$=12.5mmol/L
カルシウムイオンの価数は2であるため,これに2を掛けると25.0mEq/L。
よって答えは5となります。
1~4.誤り。
5.正しい。上述の通り。
病理組織細胞学(AM45~58)
AM 問45
解答:1
伸展の特徴を知っているかどうかを問う難問。
1.正しい。伸展させることで切片のしわを伸ばし,また気泡の発生を防ぐ効果があります。気泡が生じると凹凸のある標本となります。
2.誤り。濡れたままスライドグラスを伸展器上に載せます。
3.誤り。
4.誤り。切片の大きさに関わらず伸展操作は必要です。
5.誤り。パラフィンの融点よりも10~15℃ほど低めに設定します。
AM 問46
解答:2・4
銀液の種類ではなく,単に銀液を使う染色を問うている問題。基礎中の基礎のため必ず対策して正解したいです。勿論,過去問では「○○銀を用いる染色はどれか」の問題も出題されるため,この問題の染色で用いられる銀液も答えられるようになっておきたいところ。
1・3・5.誤り。
2.正しい。硝酸銀を用います。
4.正しい。アンモニア銀を用います。
AM 問47
解答:1
染色像を見ると,赤と青があり,青が肝臓の膠原線維を染めていることから,選択肢は1か5になります。あとは核を見るのですが,核は赤色に染まっていることから,答えは1となります。
(Masson trichrome染色では核はWeigertの鉄hematoxylinで黒褐色になります)
1.正しい。
2.誤り。oil red O染色は脂肪染色の1つで,肝臓では脂肪変性の有無を見るために使います。ただ,本問では色合いが異なるため誤りです。
3.誤り。Victoria blue染色は弾性線維染色やHBs抗原染色の1つで,肝臓ではHBs抗原を染めるために使います。ただ,HBs抗原は画像のような線状に染まらないため誤りです。
4.誤り。toluidine blue染色は多糖類染色の1つですが,肝臓で用いられることは(アミロイドの染色を除いて)あまりありません。また,色合いはメタクロマジーによって赤紫色を示すため誤りです。
5.誤り。上述の通りです。
AM 問48
解答:2
酵素抗体法の基本を問う問題。
1.誤り。むしろ凍結切片であれば酵素や抗原の失活を抑えられるのでより適していると言えます。
2.正しい。感度は直接法<間接法<ABC(アビジン・ビオチン・酵素複合体)法<LSAB(標識ストレプトアビジン・ビオチン)法<ポリマー法なので,ポリマー法はかなり感度が高いです。
3.誤り。加熱処理後に急速冷却すると,抗原の染色性が減弱することがあるため,自然冷却させる必要があります。
4.誤り。一次抗体で反応させた後,洗浄を挟んで二次抗体を反応させます。
5.誤り。発色させた後に行うと除去させる意味がないため,先に内因性ペルオキシダーゼブロッキングを行います。なお,この時に用いられる試薬は過酸化水素加メタノールや過ヨウ素酸水です。65am48でもこの問題が出題されていますので,そちらも参考にしてください。
AM 問49
解答:3
H-E染色でベタっとした染色性の物質が見え,その周りに細胞が囲っている像が見て取れます。これは甲状腺のコロイド+濾胞上皮細胞で,すごく特徴的な像になりますので覚えておきましょう。
この問題に限らず,各組織・臓器のH-E染色画像の問題はよく出ますので,教科書やネットの画像で勉強しておきましょう。(著作権の都合上,このサイトでは掲載できないので・・・)
1・2・4・5.誤り。特に膵臓は過去問頻出の臓器ですのでH-E染色像は必ず覚えておきたいところです。
3.正しい。
AM 問50
解答:4
主に3つの種類がある。
また,これ以外に,リポフスチンが沈着する萎縮を褐色萎縮という。
褐色萎縮は,心臓や肝臓に起こりやすい。
・生理的萎縮
・廃用委縮(無為萎縮)
・圧迫萎縮
(1)生理的萎縮
老化とともに必ず起こる萎縮。
代表例は思春期以降の胸腺の萎縮。
(2)廃用委縮(無為萎縮)
長期間使われなくなった臓器や組織に起こる萎縮。
代表例はギプスにより運動を制限された筋肉などの萎縮。
(3)圧迫萎縮
長期間臓器や組織が圧迫されたために起こる萎縮。
代表例は水頭症や水腎症など。
1.誤り。
2.誤り。生理的萎縮です。
3.誤り。廃用委縮です。
4.正しい。
5.誤り。
AM 問51
解答:3
難問。余裕のある人は合併症を覚えておくといいかも。
1.適切。直接ビリルビンを処理できなくなるため血中ビリルビン濃度が増加し,黄疸を呈します。
2.適切。肝機能低下による低アルブミン血症により浸透圧が変化し,さらに門脈圧亢進のため腹腔に水分が移動して腹水を呈します。
3.不適切。肝臓は委縮します。
4.適切。門脈圧亢進により食道静脈側へ側副循環が生じ,そこに門脈血が流入することで静脈瘤を形成します。
5.適切。地雷選択肢。一見肝硬変と全く関係なさそうに見えますが,肝機能低下により女性ホルモンの分解が抑制されるため,女性化乳房が見られることがあります。
AM 問52
解答:1
過去問でも数回出題された問題。対策しておけば確実に1点取れる問題です。
2.正しい。他に軟骨基質や肥満細胞(マスト細胞)が異染性(メタクロマジー)を示す代表的な物質なので必ず覚えておきましょう。
2~5.誤り。
AM 問53
解答:5
66pm56でも類似問題が出題されていますが,肉芽腫の形成=肉芽腫性炎。
これさえわかっていれば,後は肉芽腫性炎の代表疾患を覚えておけば簡単に正解できます。過去問を対策していれば容易に得点できる問題でした。
肉芽腫性炎は65pm56で解説しています。
66pm56はこちらから(類似問題の確認ができます)
65pm56はこちらから(肉芽腫性炎の確認です)
AM 問54
解答:4
脱灰の問題でも比較的基礎的な問題。過去問を解けるだけの知識があれば正解は容易です。
(1)脱灰前処置
脱灰前に十分に固定および脱脂する。
※順番は脱灰問題の選択肢で必ずと言っていいほど出てくるので必ず覚える!
(2)脱灰液の量と濃度
組織片体積の100倍以上,1日に1~2回交換。
脱灰液の濃度は不変。
(3)脱灰液の温度
・温度〔高〕:脱灰速度↑・組織障害低減↓・染色性↓
・温度〔低〕:脱灰速度↓・組織障害低減↑・染色性↑
※組織障害低減…↑は組織の障害を抑えられる,↓は組織の障害が強くなる
・酸による脱灰法では15℃,EDTAでは30℃で行う。
※酸による脱灰で染色性や抗原保存性を考慮する場合は4℃。
(4)注意事項
・脱灰は糸で吊り下げて行う。(溶出したカルシウムが下層で沈殿し,その付近の脱灰効果が低下するため)
・酸を用いた脱灰法の場合,炭酸ガスが発生するため容器は密閉しない。
・振盪や撹拌,超音波を使うと脱灰時間↓
(6)脱灰後処理
1.誤り。脱灰は脱脂後に行います。
2.誤り。炭酸ガスが発生するのは酸による脱灰法です。
3.誤り。EDTAは脱灰力が弱いものの,染色性や組織の障害低減が非常に高い脱灰法です。
4.正しい。
5.誤り。酸による脱灰法は基本的に15℃で行います。
AM 問55
解答:4
画像ではN/C比(核/細胞質比)の非常に高い細胞(=裸核状細胞)が出現しており,それぞれの細胞が押し合っている像(核の相互圧排像)が見られることから小細胞癌が考えられます。
1.誤り。
2.誤り。
3.誤り。国家試験で腺癌であればもう少し大きめの異型細胞が出現します。
4.正しい。
5.誤り。国家試験で扁平上皮癌であればオレンジ色の角化した異型細胞が出現します。
AM 問56
解答:1
過去(54pm49)にも出題されたことのある問題です。対策が容易なため,出題頻度は低くとも必ず押さえておきたいところです。忘れたときに出題されます。
- 発赤
- 発熱
- 腫脹
- 疼痛
これに機能障害を加えて5徴候とすることもある。
「透析の延期を熱心に主張」
透:疼痛
析:発赤
延:炎症
期:機能障害
熱:発熱
主張:腫脹
1.誤り。
2~5.正しい。
AM 問57
解答:5
病理分野の超難問。解けなくても大丈夫です。
日本ではDLBCL(びまん性大細胞型B細胞リンパ腫)が最も多く,次いで濾胞性リンパ腫が多いです。
1~4.誤り。
5.正しい。
AM 問58
解答:4
前問が難しすぎましたが,この問題は基礎的な問題。必ず正解しておきたいところです。
1.正しい。神経原線維の染色法です。
2.正しい。Nissl小体や髄鞘の染色法です。
3.正しい。Klüver-Barrera染色のcresyl violet染色のみのような感じで,Nissl小体の染色法です。
4.誤り。弾性線維やHBs抗原の染色法です。神経組織の染色には用いません。
5.正しい。神経膠線維やフィブリン,横紋の染色法です。
臨床血液学(AM59~67)
AM 問59
解答:1・4
もはや解説不要の問題ではありますが,赤血球数(RBC)・ヘモグロビン(Hb)・ヘマトクリット(Ht)は男性のほうが多い(高い)です。
AM 問60
解答:5
PNHの問題もよく出ます。この問題はその中で特に常識的な知識を問う問題。
※PNH:paroxysmal nocturnal hemoglobinuria
【基本事項】
グリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)アンカー蛋白の合成に必要な遺伝子であるPIG-A遺伝子が造血幹細胞において後天的に変異する。
その結果,赤血球上のGPIアンカー型補体制御因子であるCD55(DAF)やCD59が欠損することで補体感受性が亢進し,血管内溶血を生じる疾患。
GPIアンカー蛋白はCD55やCD59だけでなく,ALPやアセチルコリンエステラーゼの固定も行っているため,必然的にこれらの活性も低下する。
遺伝子変異は赤血球のみならず,白血球や血小板にも起こるため,汎血球減少をきたす。
【検査値】
<特殊>
・Ham試験陽性
・砂糖水試験(蔗糖溶血試験)陽性
・CD55・CD59(-)
<増加>
・網赤血球数
<減少>
・赤血球
・白血球
・血小板
・NAPスコア(ALP活性低下のため)
1~4.誤り。
5.正しい。
コメント
今年受験生になりました!大学四年生です!
解説、凄いためになります…!
働きながらもサイトでまとめて、忙しいのにも関わらず後輩のために解説してくださる姿に、私も気持ちを振るい立てられます。
3年と違って4年になってからは様々なことを経験し、よりいっそう国試に合格したい気持ちが強まりました。
おるてぃさんの解説を参考に、国試取得できるよう頑張ります!
これからもお体に気をつけて頑張ってください。
微力ながらも応援しています!
コメントありがとうございます。そう仰っていただけると本当に励みになります!
67回の国家試験の解説も合間を縫ってぼちぼち作っていこうと思います。
さくさくさんも国試勉強大変だとは思いますが,頑張ってください!陰ながら応援しております!
本当に助かっています。ありがとうございます。
これからも頑張って下さい!
コメントありがとうございます!そう仰っていただけると大変励みになります!
現在リアルのほうが忙しくてなかなか更新できていない状況ですが,頑張って少しずつ更新していこうと思います。ゆいさんも頑張ってください!