第67回臨床検査技師国家試験(AM61~80)の解説です。
第67回臨技国試のAM問61~80の解説です。
難易度は主観で1~10の10段階でつけています。
1:超簡単
2~3:簡単
4~5:普通
6~7:やや難問
8~9:難問
10:超難問
第67回臨技国試についてをまとめたページもありますので,まだ見ていない方はぜひそちらもご参照ください。
問題の出典:厚生労働省ホームページ 第67回臨床検査技師国家試験の問題および正答について 午前問題(https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/topics/dl/tp210416-07a_01.pdf)
臨床血液学(AM59~67)
AM 問61
解答:3
66回(66am65)でも血漿鉄消失時間の問題が出題されていたため,ここで対策していれば正解するのは容易です。
画像では長時間経過後でも血漿鉄が多い=血漿鉄が消失していないことから,血漿鉄消失時間延長となります。選択肢の中で血漿鉄消失時間が延長する疾患は再生不良性貧血のみですので,3が正解です。
AM 問62
解答:2
最低でも抗凝固剤と検査の種類を覚えておけば正解できます。余裕があれば凝集能検査についても覚えておくといいでしょう。
(1)基本事項
・血小板の3大機能である「粘着能」「凝集能」「放出能」の3種類を検査する。
・添加する血小板活性化物質によって4種類に大別される。
- ADP惹起血小板凝集能
- エピネフリン惹起血小板凝集能
- コラーゲン惹起血小板凝集能
- リストセチン惹起血小板凝集能
ADPとエピネフリンの場合,添加によって血小板が凝集塊を形成する。このときの初期の凝集塊形成過程を一次凝集という。
さらに,活性化によって血小板放出反応が起こって血小板から顆粒内容物が放出される。この顆粒内に含まれている血小板活性化物質(ADP,セロトニンなど)によって血小板凝集反応が増幅される。このときの凝集塊形成過程を二次凝集という。
※コラーゲンの場合は一次凝集と二次凝集が同時に起こるため明確な区別は出来ない。
(2)結果解釈
【ADPおよびエピネフリン】
・一次凝集=凝集能を反映
・二次凝集=凝集能・放出能を反映
血小板無力症や無フィブリノゲン血症では一次・二次凝集低下。
storage pool病やアスピリン服用では二次凝集のみ低下。
【コラーゲン】
・凝集能・放出能を反映
血小板無力症や無フィブリノゲン血症,storage pool病,アスピリン服用では凝集低下。
【リストセチン】
・粘着能を反映
von Willebrand病やBernard-Soulier症候群では凝集低下。
1.正しい。透過光の変化をとらえるため,乳糜等の影響を少なからず受けます。その影響を少なくするために空腹時に採血します。
2.誤り。凝固系検査ではクエン酸ナトリウム(1:9)を用います。これは常識ですので必ず覚えましょう。
3~5.正しい。
AM 問63
解答:1
過去問頻出の問題です。65am60でCD抗原について解説してありますので,こちらをご参照ください。
1.誤り。形質細胞はB細胞系に属するため,T細胞系のマーカーであるCD2は陰性です。
2~5.正しい。
AM 問64
解答:1
1.誤り。核小体は基本的に未熟な細胞(骨髄芽球や前骨髄球など)に見られます。末梢血で通常見られる血球には認められません。
2.正しい。好中球に見られる細い糸状の物質をdrumstickといいます。これは不活性なX染色体によるものです。
3.正しい。特に好中球や好酸球は陽性~強陽性です。好塩基球や単球は弱陽性となります。
4.正しい。形質細胞が増加する疾患である多発性骨髄腫の染色像は国家試験頻出ですので必ず覚えておきましょう。
5.正しい。N/C比は未熟な細胞ほど高くなります。
AM 問65
解答:2・3
AM 問66
解答:1
(1)基本事項
・PTまたはAPTTが延長した時,その原因が
1)凝固因子の欠損
2)凝固因子のインヒビター or ループスアンチコアグラント
のどちらかであるのかを鑑別する。
・特に,APTTが延長しているときに行う。
(以下はAPTTのクロスミキシング試験について述べる)
(2)方法
・被検血漿と正常血漿をそれぞれ『10:0』『8:2』『5:5』『2:8』『0:10』の組み合わせで5種類作製する。これを2set作製する。
(1set目は混和後直ちに測定するもの,2set目は37℃で一定時間加温してから測定するもの)
・以降はAPTTの測定方法に準じる。
(3)結果解釈
縦軸にAPTT・横軸に正常血漿添加率を取る。
・グラフが下に凸→凝固因子の活性低下
(少量の正常血漿中の凝固因子の添加で補正されたということになるため)
・グラフが上に凸→インヒビターの存在
(多量の正常血漿中の凝固因子の添加でも補正されないということになるため)
【下に凸】
・凝固因子の活性低下
・凝固因子の欠損
(血友病A/B・von Willebrand病など)
【上に凸】
・凝固因子のインヒビターの存在
・ループスアンチコアグラント
(後天性血友病・抗リン脂質抗体症候群(APS)など)
クロスミキシング試験は上に凸か下に凸かで結果が異なるので,まずはグラフを書きましょう。
すると,混和直後でも若干上に凸,2時間インキュベート後は明瞭な上に凸を示していますので,後天性血友病が考えられます。
1.正しい。
2・3・5.誤り。いずれも凝固因子の欠損・活性低下によるAPTT延長を示しますので,下に凸のグラフとなります。
4.誤り。アレルギー性紫斑病はAPTT正常です。
AM 問67
解答:2
(1)基本事項
・長鎖のエステルを分解する特異的エステラーゼと,短鎖のエステルを分解する非特異的エステラーゼを染色する方法。
・非特異的エステラーゼ陽性=単球系
・特異的エステラーゼ陽性=顆粒球系
主にM4(顆粒球系+単球系)とM5(単球系)の鑑別に用いられる。
M4:急性骨髄単球性白血病
M5:急性単球性白血病
なお,非特異的エステラーゼは,フッ化ナトリウム(NaF)の添加により陽性反応が抑制される。
(2)試薬・染色結果
・非特異的エステラーゼ染色
α-ナフチルブチレート:赤褐色~茶褐色
・特異的エステラーゼ染色
ナフトールAS-Dクロロアセテート:青色
画像では細胞質の広い単球系の芽球が出現しており,エステラーゼ二重染色では非特異的エステラーゼのみ陽性となっていますので,急性単球性白血病が考えられます。
臨床微生物学(AM68~78)
AM 問68
解答:3
1・2・4.誤り。
3.正しい。
5.誤り。細胞壁はペプチドグリカンから構成されます。
AM 問69
解答:1・3
培地については以下の記事で解説してあります。
1・3.正しい。
2・4・5.誤り。
AM 問70
解答:3
抗菌薬の問題はほぼ毎年出題されます。特に作用機序は必ず覚えておきましょう。
1.誤り。ポリペプチド系抗菌薬であり,作用機序は細胞膜合成阻害です。
2.誤り。アミノグリコシド系抗菌薬であり,作用機序は蛋白合成阻害です。
3.正しい。グリコペプチド系抗菌薬であり,作用機序は細胞壁合成阻害です。
4.誤り。キノロン系抗菌薬であり,作用機序は核酸合成阻害です。
5.誤り。クロラムフェニコール系抗菌薬であり,作用機序は蛋白合成阻害です。
AM 問71
解答:2
超基礎的問題。必ず正解したいところです。
- Bacillus spp.
- Clostridium spp.
Clostridioides spp.
1・3~5.誤り。
2.正しい。
AM 問72
解答:2
抗菌薬のうち,アミノグリコシド系抗菌薬とグリコペプチド系抗菌薬はTDM(血中薬物濃度モニタリング)が必要になります。こちらも過去に出題されたことがあるので覚えておきましょう。
AM 問73
解答:1・3
消毒薬については65am69で解説してあります。
今回はアルコールについてです。
消毒用エタノールは芽胞・エンベロープを持たないウイルスに対しては無力ですので,1と3が正解になります。
- パルボウイルス
- パピローマウイルス
- エンテロウイルス
- ポリオウイルス
- アデノウイルス
- A型肝炎ウイルス
- コクサッキーウイルス
- ノロウイルス
- ロタウイルス
「パパが遠方であのA型のコックを呪った」
パパ:パルボウイルス・パピローマウイルス
遠:エンテロウイルス
方:ポリオウイルス
であの:アデノウイルス
A型:A型肝炎ウイルス
コック:コクサッキーウイルス
呪った:ノロウイルス・ロタウイルス
AM 問74
解答:3
定期接種に指定されているワクチンの種類を覚えておけば消去法で解けます。
- 水痘・帯状疱疹
- 麻疹
- 風疹
- ジフテリア
- 破傷風
- 日本脳炎
- 百日咳
- ポリオ
- 結核
- HPV
- HBV
- インフルエンザ(高齢者)
- Hib(インフルエンザ菌b型)
- 肺炎球菌
「PV用に,定期と水筒持って,日本の富士は100万歩で行け!」
PV:HPV
定期:定期接種
水筒:水痘・帯状疱疹
日本:日本脳炎
富:風疹
士:ジフテリア
は:破傷風/肺炎球菌
100:百日咳
万:麻疹
歩:ポリオ
行:インフルエンザ/Hib
け:結核
+HBV
1・2・4・5.誤り。
3.正しい。
AM 問75
解答:4
染色については65pm71で解説してあります。
また,Nocardia spp.については66pm75で解説してあります。ここでしっかり対策していれば正解するのは容易です。
1.誤り。Bacillus anthracisは莢膜を持つためHiss法は有用ですが,それ以外のBacillus spp.に関しては莢膜を持たないためHiss法は不適です。
2.誤り。Cryptococcus spp.は鞭毛を持たないため不適です。
3.誤り。Klebsiella spp.は芽胞を持たないため不適です。
4.正しい。Nocardia spp.のGram染色像・Kinyoun染色像も必ず覚えておきましょう。
5.誤り。Neisser染色はCorynebacterium diphtheriaeの異染小体を染める染色法です。
AM 問76
解答:1・5
- ★イソニアジド(別名:イソニコチン酸ヒドラジド INH)
- ★リファンピシン(RFP)
- ピラジナミド(PZA)
- エタンブトール(EB)
- ストレプトマイシン(SM)
上記のうち,INHとRFPに耐性の結核菌のことを多剤耐性結核菌(MDR-TB)という。
「エリちゃんピース(ピイス)」
エ:エタンブトール
リ:リファンピシン
ピ:ピラジナミド
イ:イソニアジド
ス:ストレプトマイシン
1・5.正しい。
2~4.誤り。
AM 問77
解答:2
まずは培地から性状を確認します。
【TSI培地】
・ブドウ糖発酵:+
・乳糖or/and白糖分解:+
・硫化水素産生:-
・ガス産生:+
【SIM培地】
・硫化水素産生:-
・インドール産生:+
・運動性:+
・IPA反応:-
運動性(+)でShigella spp.とKlebsiella spp.は除外。
IPA反応(-)でProteus spp.を除外。
後はいりゅくりじんVで性状を評価します。
・Citrobacter freundii:「しとろばくたー-とろ」
インドール(-)
硫化水素(+)
クエン酸塩利用能(+)
リジン脱炭酸反応(-)
VP反応(-)
・Escherichia coli:「えしぇりきあ-えき」
インドール(+)
硫化水素(-)
クエン酸塩利用能(-)
リジン脱炭酸反応(+)
VP反応(-)
よって,性状と合致するのはEscherichia coliになります。
AM 問78
解答:5
プラスミドを含む微生物の遺伝子問題は過去でもよく出題されています。(52pm62,54am69,56am70,57pm70,59am73,60am76,62am71,63pm71)
確実に正解できるようになっておきたいところです。
(1)基本事項
・染色体から独立したDNAのこと。
・プラスミドは環状の2本鎖DNAであり,染色体と同様,細胞質内にあり,ここで複製可能である。
・プラスミドには2種類ある。
- Fプラスミド
性決定に関与。 - Rプラスミド
薬剤耐性に関与。
(2)遺伝形質の伝達
臨床免疫学(AM79~89)
AM 問79
解答:4
昨年でも問われたABO血液型の基礎的問題。
1.誤り。H抗原がないのはBombay型(Oh型)です。
2.誤り。ABO血液型のA抗原・B抗原は赤血球に限らず,臓器や血小板にも発現し,組織適合性抗原として働きます。
3.誤り。先天的な抗原変異もあります。
4.正しい。
5.誤り。新生児の抗原発現量は成人と比べて弱く,数年で成人レベルとなります。
AM 問80
解答:5
65am84・65am85でオモテウラ試験と,オモテウラ不一致について解説しています。
オモテウラ不一致を考えてみます。
1)オモテの結果(B型)が正しいとすると……
ウラの凝集(B血球)が起こっているので偽陽性
(B型であればウラ試験はB血球で凝集がみられないはず)
2)ウラの結果(O型)が正しいとすると……
オモテの凝集(抗B)が起こっているので偽陽性
(O型であればオモテ試験は抗Bに凝集がみられないはず)
となり,結果,偽陽性となっていることが示唆されます。
後は,選択肢から偽陽性となる要因を選べばOKです。
1.誤り。亜型は偽陰性の原因です。
2.誤り。
3.誤り。やや迷う選択肢ですが,後天性BはA型に起こる変化なので,ウラ試験はA型です。
4.誤り。白血病は偽陰性の原因です。
5.正しい。
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