第68回臨床検査技師国家試験の問題を解いてみました!果たして結果は?
第68回臨床検査技師国家試験の問題・正答公開
2022年2月16日(水)に行われた第68回臨床検査技師国家試験の問題および正答が厚生労働省HPで公開されました。
ようやく待ちに待った第68回国家試験の解説です!
(えっ,待ってない?)
昨年同様なかなか解く時間が確保できず,ようやくの記事公開となりますが,68回は以前までの国家試験と比べてどうだったのか?結果や感想について報告したいと思います!
※難易度の傾向は個人的な主観であり,正式に発表されたものではありません。
これまでの国家試験の傾向等についてはこちらの記事をどうぞ!
実際に解いた結果と総評
まずは私が解いた結果について。
※65回の臨床化学は1問採点除外となったため,問題数-1。
比較対照として64~67回の国家試験結果と,4年生の時に受けた全国国試模試の平均点数も同時に掲載しています。
今回も例年通り,過去問そのままや類似問題が多くありました。恐らく今後もずっとそうですが,過去問対策は最重要項目といえますね。
分野別だと,今回は(点数は抜きにして)生理・臨床化学・病理あたりが難しく感じました。
あと,公衆衛生は激ムズ。全く点数を取れませんでした。今回の公衆衛生で8点以上取れる人がいるなら合計9割も余裕なレベルだと思います。(もしくは公衆衛生特化?)
分野別難易度・出題数評価
はじめに
「彼(敵)を知り己を知れば百戦殆うからず」
(Know yourself as well as your enemy)
有名な孫子の言葉です。「敵と自分自身のことをきちんと知っておけば負けることはない」という意味です。
なぜ急にこの言葉を持ってきたのかというと,これは国家試験でも通用する考え方だからです。
国家試験における「敵」とは,周りの受験生ではなく,「国家試験」そのものです!
つまり,自分の実力を知るだけでなく,国家試験において
- どのような問題が出題されているのか
- 出題される問題に偏りがあるのか
- どれくらいの難易度なのか
- 絶対に正解しておきたい問題はどれか,逆に解けなくても大丈夫な問題はどれか
こういったことを知っておくことで,国家試験相手でも全くひるむことなく立ち向かうことができます。
今年受験生の人や,来年以降受験する予定の方々の中には,「解説だけ見ておきたい!」という人もいると思いますが,そういった人にこそこのページを見てもらいたいのです!
国家試験の傾向や,絶対に落としてはいけない問題,その他ポイント等をきっちり押さえておいてから各解説ページを読むことで,解説の吸収量が段違いになります。
時間は多少かかりますが,まずはこのページをしっかり読むことから始めましょう。
難易度設定について
難易度は主観で1~10の10段階でそれぞれの問題に対して設定しています。
1:超簡単
2~3:簡単
4~5:普通
6~7:やや難問
8~9:難問
10:超難問
また,平均難易度で各分野の難しさを表しています。なお,「~割取れる」は,難易度5までの問題を落とさない程度の実力を持っているときの目安です。
~3.7:簡単(8割余裕)
3.8~4.5:やや簡単(7~8割は取れる)
4.6~5.2:普通(6~7割は取れる)
5.3~5.9:やや難しい(5~6割は取れる)
6.0~:難しい(5割取れればいいほう)
これ以降は65回の総評ページと同じことを書いています。
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基本的に難易度5以下の問題を回収できれば国家試験は合格できるようになっています。
(こんな拙い解説を書いている私でも,全く歯が立たない問題や,勘に頼らざるを得ない問題もたくさんあります)
つまり,重要なのは,一部の上位者しか解けないような高難度の問題を正解するような知識ではなく,受験生の大半が正解するような,一般的な難易度の問題をどれだけ落とさずにしっかり回収できるかということになります。(これは何も臨床検査技師国家試験に限ったことではなく,最近の医師国家試験でも同様の傾向が見られます)
点数が低い人ほど,簡単な問題も難しい問題もごっちゃにしてやみくもに勉強しがちですが,それだと案外点数は伸びません。(さらにそういう人ほどきれいなノートを時間をかけて作ろうとするため,費やした時間に対して,吸収できる知識量が伴ってないことも多い……)
下手に色気を出して難しい問題を時間をかけてノートにまとめるのではなく,過去問で何度も出題されているような問題を確実に回収できるような知識および,その問題に関連した知識を身に着けられる勉強法を確立させましょう。
そのために必要なのは過去問対策と,その問題の必要性を吟味することです。
難易度はそれぞれの問題に対して設定しているため,これを参考にして自分がいま勉強すべき問題なのかどうかを見極めてください。間違っても高難度の問題を時間をかけて復習しようとしないこと。(そう言う問題は国試9割以上を目指す人にでも任せておきましょう)
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全体
今年度から始めた全体の難易度解析です。
表だけだとわかりにくいので,グラフにして全体をまとめてみました。
こうしてみると,やはり難易度5までを確実に正解できる実力があれば合格は固いですね。
難しい問題もかなり出題されていますが,合格に直接影響を与えるレベルではないため,基礎を確実にしておきたいところです。
なお,難易度4までに限定すると,第68回は115点分しかないため,やはり難易度5までは解けるようにしておきたいですね。
※上述していますが,難易度は主観です!
臨床検査総論
今年度(68回)は前年度(67回)とほぼ同等の難易度構成。
- 検査管理(1):am2
平均難易度:10 - 精度管理(1):pm1
平均難易度:4.0 - 検査値(1):am3
平均難易度:1.0 - 尿検査(2):am4・pm3
平均難易度:3.5 - 脳脊髄液検査(1):am6
平均難易度:4.0 - 糞便検査(1):pm4
平均難易度:3.0 - 遺伝子・染色体検査(5):am9・am10・pm8~10
平均難易度:6.0 - 医動物(4):am7・am8・pm6・pm7
平均難易度:4.0 - その他検査(4):am1・am5・pm2・pm5
平均難易度:5.0
今年も近年の傾向通り,「遺伝子染色体検査」の問題は過去と比較して多めに出題。「遺伝子染色体検査」の問題は難問が多いため,ここが苦手な人は厳しい戦いを強いられます。
「医動物」の問題は,「遺伝子染色体検査」の問題が多くなった影響で近年は問題数少なめ。ただ,今年はどれも基礎さえできていれば取れる問題ばかり。「医動物」は対策を怠らずに!
難易度割合は,昨年と比べると8を超える難しい問題が多めに出題されたため,平均的には少し難易度が上昇。ただ,4以下の問題も増えたため,点数自体は取りやすくなりました。
今年度も12点(6割)目標。12点取れていない人は,5以下の問題が解けるように基礎をしっかり押さえていきましょう。基礎さえ押さえておけば6割どころか7割取れる問題構成です。
臨床検査医学総論
今年度は癖のある問題も出題されたため前年度より難化。
- 検査総論分野(1):pm13
平均難易度:4.0 - 生理分野(1):pm11
平均難易度:10 - 臨床化学分野(2):am14・am15
平均難易度:3.0 - 病理分野(3):am13・pm12・pm15
平均難易度:5.0 - 血液分野(0):該当なし
- 微生物分野(0):該当なし
- 免疫分野(2):am12・pm14
平均難易度:5.0 - 公衆衛生分野(0):該当なし
- その他(1):am11
平均難易度:3.0
今年度も昨年とほぼ同様の分野構成でびっくりしました。「臨床化学」・「病理」・「免疫」の問題が多めに出題。
平均難易度:4.8(普通)
(67回と比較して↑1.7)
今年度は難易度の高い問題に影響されて平均難易度がかなり増加。ただ,基礎問題も出題されているため,最低でも6割は欲しいですね。
臨床生理学
傾向は一部を除いて過去問と同様ですが,難しい問題が多く出題されました。特に「超音波」と「筋電図」は難問ばかりなので,ここは思うように点数を取れないかも。
対して,「心電図」・「呼吸機能」・「脳波」は(一部問題を除いて)基礎的な問題が多く出題されたため,ここである程度リカバリーできる実力は欲しいところ。
- 心電図検査(4):am16・pm16~18
平均難易度:4.5 - 心音図・脈波検査(0):該当なし
- 呼吸機能検査(5):am17~19・pm19・pm20
平均難易度:4.8 - 脳波検査(3):am23・am24・pm22
平均難易度:3.7 - 超音波検査(6):am25~27・pm24~26
平均難易度:6.7 - 筋電図検査(4):am20・am22・pm21・pm23
平均難易度:6.5 - その他生理検査(4):am21・am28・pm27・pm28
平均難易度:5.8
今年度は珍しく「筋電図」の問題が多く出題(何と52回からの国試で過去最多!)。さらに筋電図の問題はどれもなかなか難しく,点を取るのに苦労すると感じました。
その点を除けば過去の国家試験と傾向はさほど変わらず。
ただ,「超音波」の問題はどれも難問ばかり!こちらも生半可な知識では歯が立たない……。
今回は超音波・筋電図の問題が難問揃いだったため,そこにつられて平均難易度も1近く増加。今年度は6割取れていれば実力は十分だと思います。
生理の点数が5割満たなかった場合は,難易度5以下の問題に絞って対策していきましょう。
臨床化学
かなり難しい問題が出題された影響で難しく感じましたが,分析してみると意外にも易しめの問題が多く出題されていることがわかりました。今年度は易化したといってもいいでしょう。
- 細胞内小器官(1):am41
平均難易度:7.0 - 糖質(2):am29・am30
平均難易度:3.0 - 蛋白質(2):am36・pm38
平均難易度:3.0 - 非蛋白性窒素(2):am37・pm36
平均難易度:2.5 - 脂質(2):pm37・pm44
平均難易度:4.0 - 酵素(4):pm34・pm35・pm39・pm42
平均難易度:5.3 - 生体色素・ビタミン(3):am33・pm29・pm33
平均難易度:4.3 - 電解質・微量元素(3):am34・am35・am39
平均難易度:6.3 - ホルモン(2):am43・pm41
平均難易度:4.0 - 機能検査(1):am42
平均難易度:4.0 - マーカー(1):pm30
平均難易度:4.0 - 遺伝子(0):該当なし
- 計算問題(3):am40・am44・pm43
平均難易度:3.7 - その他(6):am31・am32・am38・pm31・pm32・pm40
平均難易度:7.8
項目別では「その他」の問題以外はまんべんなく出題。
ほぼ例年通りの問題構成といったところです。
昨年・一昨年と比べると,基礎的な問題が多く出題されました。「その他」の問題がかなり難しかったせいで結構難しく感じますが,過去問をしっかり対策していれば楽に6割(19~20点)取れると思います。
6割ない人はまず基礎をしっかり身に着けていきましょう。臨床化学で6割取れるとかなり有利です!
病理組織細胞学
問題構成に若干の偏りがあったものの,例年通りといった印象。
- 組織学・解剖学・病理学(14):am45・am49~51・am53~55・pm48・pm49・pm51・pm52・pm54・pm57・pm58
平均難易度:5.4 - 固定・脱灰・包埋・薄切(3):am46・am52・pm56
平均難易度:4.0 - 染色(4):am47・am56・pm45・pm46
平均難易度:4.3 - 電子顕微鏡・細胞診(5):am48・am58・pm47・pm53・pm55
平均難易度:4.6 - 病理解剖・病理業務(2):am57・pm50
平均難易度:6.0
「組織学・解剖学・病理学」の項目が多く出題された代わりに,「染色」の問題が少なめに。
「染色」は取れる問題が多い分,ここの出題数が少なくなったのは厳しいですね。
難易度自体は昨年度とほぼ同じ。
病理は年ごとの難易度が大きく変わらない分野なので,基礎がしっかりできていれば安定して6割は取れると思います。ただ,病理は出題数が多いため,7割取れるようになるとかなり大きいです。できれば7割目標に頑張っていきましょう。
臨床血液学
簡単な問題が多い分,難しい問題も数問出題されたため,例年よりは少し点数が取りにくいかもしれません。全体的に見れば例年通りといったところ。
- 血液基礎(1):am62
平均難易度:4.0 - 染色体・遺伝子・細胞表面マーカー検査(2):am60・am67
平均難易度:3.0 - 赤血球系(4):am59・am65・pm60・pm64
平均難易度:3.5 - 白血球系(4):am64・am67・pm59・pm66
平均難易度:3.0 - 血小板・凝固線溶系(5):am63・am66・pm60・pm63・pm65
平均難易度:6.0 - 血液検査(2):am61・pm62
平均難易度:5.5
難易度の低い問題が多かった影響で平均難易度は低めですが,難問も数問出題されているため基礎を対策していてもギリギリ8割届かないくらいになりそうと感じました。
血液が得意なら8割も楽勝です。
臨床微生物学
一部の問題を除いて基礎的な問題ばかりが出題。基礎さえしっかりできていれば安定して8割取れると思います。
- 微生物基礎(3):am68・am72・pm75
平均難易度:2.7 - 滅菌・消毒薬(1):pm73
平均難易度:2.0 - 抗菌薬・抗真菌薬・抗ウイルス薬・薬剤耐性菌(2):am70・pm74
平均難易度:3.0 - ワクチン・毒素・食中毒(0):該当なし
- 感染症法・感染経路・再興/新興感染症(1):am71
平均難易度:1.0 - 常在菌・微生物検査材料(3):am73・am74・pm70
平均難易度:4.0 - 培地・染色(3):am69・am76・pm77
平均難易度:4.0 - 細菌各論(6):am75・am78・pm68・pm71・pm72・pm78
平均難易度:4.5 - 真菌各論(1):pm76
平均難易度:10 - ウイルス・プリオン(2):am77・pm69
平均難易度:3.5 - その他(0):該当なし
今年は「常在菌・微生物検査材料」の問題が多めに出題。それ以外は例年通りですね。
今年度も難易度は控えめで,難易度5以下を正解できるだけで8割後半取れる問題構成でした。覚えることが多いため微生物は敬遠されがちですが,出題される問題はほとんどが基礎的な問題のため必ず点数を取れるようになっておきましょう。
臨床免疫学
今年も近年のトレンド通り血液型検査・輸血関連検査・移植の問題が多く出題。
68回・・・血液型検査:4問,輸血関連検査:6問
52~63回・・・血液型検査:平均2.5問/年,輸血関連検査:3.8問/年
64~67回・・・血液型検査:平均3.8問/年,輸血関連検査:6.0問/年
- 免疫系の仕組み(2):am82・am83
平均難易度:4.5 - 抗体・補体(3):am79・am80・am87
平均難易度:4.0 - 抗原・電気泳動・蛋白(1):am81
平均難易度:2.0 - アレルギー(0):該当なし
- 自己免疫疾患・抗核抗体・免疫不全症・腫瘍マーカー(3):pm79・pm80・pm83
平均難易度:3.3 - 各種検査(3):pm81・pm82・pm84
平均難易度:5.7 - ABO/Rh血液型検査(4):am86・pm85・pm86・pm89
平均難易度:4.8 - 輸血関連検査・移植(6):am84・am85・am88・am89・pm87・pm88
平均難易度:5.2 - その他(0):該当なし
今年度も血液型検査・輸血関連検査・移植に関する問題が多く出題されていました(10問)。難問以外は確実に点を取りたいところです。
それ以外はおおむね例年通り?
今回は65・66回と比べると易しめの問題が多く出題されたため難易度もその分抑えられた感じです。
難問には手を付けず,基礎を確実にして点数を取れるようにしておきたいところです。
公衆衛生学
今年度は過去最高難度の問題構成。点数が取れなくとも全く気にする必要はありません。
- 環境衛生(0):該当なし
- 医療統計(2):am92・pm90
平均難易度:5.0 - 疫学研究(1):pm91
平均難易度:9.0 - 医療保険・介護保険・医療費(0):該当なし
- 保健所の業務(0):該当なし
- 学校保健(1):am93
平均難易度:9.0 - 母子保健(0):該当なし
- 精神保健(0):該当なし
- 予防医学・健康の定義(0):該当なし
- 特定健診 特定保健指導 ・メタボリックシンドローム診断基準(0):該当なし
- 医療倫理・関係法規(2):pm93・pm94
平均難易度:9.5 - WHOの活動(0):該当なし
- その他(4):am90・am91・am94・pm92
平均難易度:8.3
今年度も出題傾向に偏りあり。「医療倫理・関係法規」と「その他」の問題で半数以上を占めていますね。
これはさすがに酷い。点数を取らせる気が全くないですね。まあ,幸い最も点数配分が少ないので,点数を取れなかったとしても全く問題ありませんが。
医用工学概論
今年度は例年通りの難易度に落ち着き,過去問を対策しておけば6~7割も余裕でした。
今後もこのレベルの問題が出題されると助かるのですが……。
- 単位・計算(3):am100・pm95・pm99
平均難易度:4.3 - 増幅器・雑音・フィルタ(1):am96
平均難易度:4.0 - 半導体・ダイオード・トランジスタ・変調(0):該当なし
- 論理回路・AD変換(1):am97
平均難易度:5.0 - ショック・クラス別分類・医用機器関連図記号・病院電気設備(0):該当なし
- コンピューター(0):該当なし
- 略号・拡張子(1):am98
平均難易度:4.0 - トランスデューサ(1):pm98
平均難易度:1.0 - 生体物性(1):am95
平均難易度:5.0 - 各種装置(2):pm100
平均難易度:4.0 - 医療情報システム(1):pm96
平均難易度:6.0 - その他(2):am99・pm97
平均難易度:5.0
計算問題が多めに出題された以外には各項目まんべんなく出題。
そのため,幅広く基礎を覚えておかないと満足に点数は取れませんが,その分難易度が控えめなので,基礎さえしっかりできていればどの項目も点数を取れると思います。
昨年と比べて大幅に難易度が低下し,ほぼ例年通りの難易度に。
このレベルであれば過去問で対策可能なので,最低でも6割,できれば7割は取れるようにしたいです。
簡単な解説
それぞれの問題については別ページで簡単に解説していますので,ぜひ参考にしてください。
終わりに
第68回臨床検査技師国家試験についての総評及び難易度を主観でまとめてみましたがいかがでしたでしょうか。
今まで65~67回の国試解説を作ってきましたが,全体的にはあまり難易度に変化はなく,合格点(120点)を取ること自体は決して難しくないです。
国家試験ということもあり,過去問で複数回出題されているような問題をおさえておけば合格点(120点)は余裕で取れるようになります。今年もそのような問題が結構出題されていました。
まだ6割に満たないという方も,焦らずにじっくりと過去問を勉強していってください。時間があればあるほど過去問をより多く,そして何度も解けるためかなり有利になります。「まだ早いのでは?」と思う人も,直前で焦ることのないように,早めに国試対策を始めましょう。
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