第68回臨床検査技師国家試験解説(AM1~20)

第68回臨床検査技師国家試験(AM1~20)の解説です。

【更新履歴】
2023.1.10 
・問5の解説を更新しました。
2024.2.3
・問18の解説を更新しました。

第68回臨技国試のAM問1~20の解説です。
難易度は主観で1~10の10段階でつけています。
1:超簡単
2~3:簡単
4~5:普通
6~7:やや難問
8~9:難問
10:超難問

第68回臨技国試についてをまとめたページもありますので,まだ見ていない方はぜひそちらもご参照ください。

では,解説をどうぞ!
おるてぃ
おるてぃ

問題の出典:厚生労働省ホームページ 第68回臨床検査技師国家試験の問題および正答について 午前問題(https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/topics/dl/tp220421-07a_01.pdf)

 

臨床検査総論(AM1~10)

AM 問1 

臨床検査室の品質と能力に関する国際規格はどれか。(難易度:4/10)
1.ISO9001
2.ISO13485
3.ISO15189
4.ISO17025
5.ISO22870

解答:3

毎年初手から超難問がくるのが定番でしたが,今年は意外にも拍子抜けの問題。
実際に働いていれば常識中の常識の超簡単問題ですが,学生だとそういうわけにもいかないだろうと思い,難易度は標準に設定しました。

1.誤り。品質マネジメントシステムに関する国際規格です。
2.誤り。医療機器産業に特化した品質マネジメントシステムに関する国際規格です。
3.正しい。
4.誤り。試験所及び校正機関の能力に関する一般要求事項の国際標準規格です。
5.誤り。POCTに関する国際規格です。

 

AM 問2 

分析前プロセスの品質管理はどれか。(難易度:10/10)
1.検体量の確認
2.精度管理試料の測定
3.精度管理成績の保存
4.分析装置導入前の性能評価
5.検体採取から測定開始までの時間の確認

解答:1・5

超難問。2・3はそれぞれ分析時・分析後とわかるため否定できますが,それ以外の3択から2つ選ばなければいけません。運よく正解できたらラッキーくらいの気持ちで。

1・5.正しい。
2~4.誤り。

 

AM 問3 

採血した全血検体をそのまま室温で一晩放置した。値の低下が予想されるのはどれか。(難易度:1/10)
1.カリウム
2.無機リン
3.アンモニア
4.グルコース
5.クレアチニン

解答:4

過去問頻出問題であり,対策も容易。必ず正解したいところです。

1・3.誤り。全血放置により溶血するため,これらの値は増加します。
2・5.誤り。これらの値はあまり変動しません。
4.正しい。全血放置により,血糖が赤血球の代謝に使われるため,血糖値(グルコース)は低下します。これを防ぐために,血糖測定ではNaFを加えます(NaFは解糖系酵素のエノラーゼを失活)。

 

AM 問4 

尿沈渣の無染色標本を示す。この構造物の成分はどれか。(難易度:3/10)
68am4

出典:厚生労働省ホームページ 第68回臨床検査技師国家試験の問題および正答について 午前問題別冊(https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/topics/dl/tp220421-07a_02.pdf)

1.尿酸
2.シスチン
3.ビリルビン
4.リン酸カルシウム
5.シュウ酸カルシウム

解答:5

尿沈渣の問題。今回の画像は典型例なので確実に正解しておきたいところです。
この問題に限らず,結晶の問題は結構出題されるので対策は怠らないようにしましょう。(昨年も出題されていました)

解説は66am3に掲載してあります。

1~4.誤り。
5.正しい。

 

AM 問5 

Miller & Jones(喀痰の肉眼的品質評価)分類で,膿性部分が1/2の痰の分類はどれか。(難易度:3/10)
1.M1
2.M2
3.P1
4.P2
5.P3

解答:4

微生物分野の問題ですが,問題自体は過去出題されている(53pm40・60pm78)うえ,対策も容易なのでこちらも確実に解きたいところです。

<Miller & Jonesの分類・Gecklerの分類>
Miller & Jonesの分類・Gecklerの分類

1~3・5.誤り。
4.正しい。

 

AM 問6 

化膿性髄膜炎を疑う髄液所見として誤っているのはどれか。(難易度:4/10)
1.混濁
2.LDの上昇
3.蛋白濃度の上昇
4.多形核球比率の上昇
5.髄液糖/血糖比の上昇

解答:5

疾患と髄液性状の変化は66am9で解説してあります。

また,髄液の各項目の基準値も必ず覚えておきましょう。

問題では化膿性髄膜炎と書いてありますが,=細菌性髄膜炎です。

1~4.正しい。
5.誤り糖(髄液糖)は消費されて低下するため,必然的に髄液糖/血糖比も低下します。

 

AM 問7 

幼虫移行症をきたすのはどれか。(難易度:4/10)
1.小形条虫
2.無鉤条虫
3.日本海裂頭条虫
4.マンソン裂頭条虫
5.クジラ複殖門条虫(大複殖門条虫)

解答:4

幼虫移行症を起こす寄生虫は数が多いですが,主に次の6つを覚えておけば問題ありません。

幼虫移行症を起こす主な寄生虫
  • 広東住血線虫
  • 顎口虫全般
  • アニサキス
  • マンソン孤虫(=マンソン裂頭条虫の幼虫)
  • 有鉤条虫
  • 単包・多包条虫

1~3・5.誤り。
4.正しい。

 

AM 問8 

マラリア患者の血液塗抹標本のGiemsa染色に適するバッファーのpHはどれか。(難易度:4/10)
1.6.2
2.6.8
3.7.4
4.8.0
5.8.6

解答:3

Giemsa染色のpHは通常6.4ですが,マラリア検出を目的とする場合は7.2~7.4に調整します。そうするとマラリア原虫や斑点の検出・鑑別が容易になります。

1・2・4・5.誤り。
3.正しい。

 

AM 問9 

慢性骨髄性白血病で高頻度に見られる染色体の構造異常はどれか。(難易度:3/10)
1.逆位
2.欠失
3.挿入
4.重複
5.転座

解答:5

66am11の表(国試でよく出る造血器腫瘍の染色体/遺伝子異常)を覚えておけば楽勝でしょう。なお,選択肢では全部日本語になっていますので,ちゃんと英語も覚えておく必要があります。

日本語と英語,両方必ず覚えておくように!
おるてぃ
おるてぃ
  • 逆位=inv:inversion
  • 欠失=del:deletion
  • 挿入=ins:insertion
  • 重複=dup:duplication
  • 転座=t:translocation

CMLではt(9;22)が認められるので,転座が正解です。

1~4.誤り。
5.正しい。

 

AM 問10 

遺伝性乳癌卵巣癌症候群(HBOC)の原因遺伝子はどれか。(難易度:4/10)
1.APC
2.RB1
3.MEN1
4.MSH2
5.BRCA1/2

解答:5

直近でも65pm54・67pm2で類似問題が出題されており,きっちり対策していればこちらも正解は容易ですね。

なお,解説では家族性乳癌と書いていますが,このうち,遺伝子が原因で発症する代表的なものが遺伝性乳癌卵巣癌症候群(HBOC)です。

1~4.誤り。
5.正しい。

 

 

臨床検査医学総論(AM11~15)

AM 問11 

一次救命措置において,胸骨圧迫前に行うべきこととして誤っているのはどれか。(難易度:3/10)
1.119番通報
2.安全の確認
3.意識の確認
4.呼吸の確認
5.対光反射の確認

解答:5

昨年も出題されましたが,BLSの問題はこの分野定番の問題です。大体3年に1回は出題されるので,出題された時に確実に正解できるように対策しておきたいところです。

ただ,難しく考えずとも,医療関係者でない人(一般人)でもできるようなもの=BLSと覚えておけば問題ありません。

今回はBLSの手順について問われていますので,以下に簡単なフローを示しますが,これを知らなくても正解はできます。なお,詳細は各自で検索してみてください。

  1. 安全の確認
  2. 意識の確認
  3. 119番通報・AED準備
  4. 呼吸の確認
  5. 胸骨圧迫・人工呼吸

1~4.正しい。
5.誤り。対光反射の確認はBLSには含まれません。

 

AM 問12 

B型急性肝炎におけるHBs抗原・HBs抗体・HBe抗原・HBe抗体・HBc抗体の推移を示す。HBc抗体はどれか。(難易度:6/10)
68am12

出典:厚生労働省ホームページ 第68回臨床検査技師国家試験の問題および正答について 午前問題別冊(https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/topics/dl/tp220421-07a_02.pdf)

1.A
2.B
3.C
4.D
5.E

解答:3

なかなか難しい問題です。1つ1つ意義も含めてしっかり考えていかないと正解にたどり着くのは大変です。

5種類ありますが,HBe抗原・抗体はどちらか片方しか基本的には血中に出現しません。
HBe抗原→HBe抗体と出現が変化することをseroconversionセロコンバージョンといいます。5つのグラフのうち,ちょうど「陽性←→陰性」がタイミングよく変化しているものはBとDです。なので,この2つがHBe抗原・HBe抗体となります。

68am12解説1

出典:厚生労働省ホームページ 第68回臨床検査技師国家試験の問題および正答について 午前問題別冊(https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/topics/dl/tp220421-07a_02.pdf)を加工して作成

後はHBs抗原・HBs抗体・HBc抗体の3つです。このうち,HBs抗原は感染を表すもので,抗原は抗体よりも早期に出現するため,おのずと選択肢はAとなります。

68am12解説2

出典:厚生労働省ホームページ 第68回臨床検査技師国家試験の問題および正答について 午前問題別冊(https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/topics/dl/tp220421-07a_02.pdf)を加工して作成

最後にHBs抗体とHBc抗体ですが,HBs抗体は中和抗体であり,感染既往や治療を表すため,必然的に出現は最も遅いと考えられます。
逆にHBc抗体は,HBVの感染を表すため,HBs抗体よりも早期に出現します。

よって,HBs抗体はE・HBc抗体はCとなります。

68am12解説3

出典:厚生労働省ホームページ 第68回臨床検査技師国家試験の問題および正答について 午前問題別冊(https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/topics/dl/tp220421-07a_02.pdf)を加工して作成

1.誤り。HBs抗原です。
2.誤り。HBe抗原です。
3.正しい。
4.誤り。HBe抗体です。
5.誤り。HBs抗体です。

 

AM 問13 

腎前性急性腎不全の原因になるのはどれか。(難易度:6/10)
1.敗血症
2.尿管結石
3.前立腺肥大
4.急速進行性糸球体腎炎
5.全身性エリテマトーデス(SLE)

解答:1

見た目難しそうに見えますが,1つずつ考えていけば正解にたどり着けると思います。

1.正しい。消去法で。
2.誤り。尿管は腎臓の後なので腎後性となります。
3.誤り。前立腺は腎臓の後なので腎後性となります。
4.誤り。糸球体は腎臓内に存在するため腎性となります。
5.誤り。SLEに併発するループス腎炎は糸球体に異常が出るため腎性となります。

 

AM 問14 

サルコイドーシスの診断に最も有用なのはどれか。(難易度:4/10)
1.アンギオテンシン変換酵素(ACE)
2.CRP
3.IL-6
4.KL-6
5.SP-D

解答:1

疾患マーカーは頻出ですので必ず覚えておきましょう。

1.正しい。
2~5.誤り。

 

AM 問15 

ビタミン欠乏症について正しいのはどれか。(難易度:2/10)
1.ビタミンA欠乏で白内障になる。
2.ビタミンB12欠乏で巨赤芽球性貧血になる。
3.ビタミンC欠乏で溶血性貧血になる。
4.ビタミンD欠乏で尿管結石になる。
5.ビタミンE欠乏でWernicke脳症になる。

解答:2

ビタミンについてはほぼ毎年頻出です!
難問以外は絶対に点を取っておきたいところです。詳細な解説は65pm38にありますので,そちらを参照。

1.誤り。夜盲症です。
2.正しい。
3.誤り。壊血病です。
4.誤り。くる病や骨軟化症・骨粗鬆症です。
5.誤り。溶血性貧血です。

 

 

臨床生理学(AM16~28)

AM 問16 

心電図を示す。正しいのはどれか。(難易度:4/10)
68am16

出典:厚生労働省ホームページ 第68回臨床検査技師国家試験の問題および正答について 午前問題別冊(https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/topics/dl/tp220421-07a_02.pdf)

1.下壁梗塞
2.側壁梗塞
3.前壁中隔梗塞
4.Brugada症候群
5.四肢電極の付け間違い

解答:1

心電図を読み解く問題です。この問題は毎年確実に出題されるので,まずは正常洞調律の心電図がどのようなものかを確実に知っておく必要があります。

それを踏まえて今回の心電図を見てみると,Ⅱ・Ⅲ・aVFでST上昇および冠性T波を認めています。よって下壁梗塞が最も考えられます。

なお,心筋梗塞の各梗塞部位と異常が見られる誘導については65pm17で解説しています。

1.正しい。
2~5.誤り。

 

AM 問17 

肺活量2.00L,1回換気量0.50L,予備呼気量0.80L,最大吸気量1.20L,機能的残気量1.90Lであった。残気量[L]はどれか。(難易度:2/10)
1.0.70
2.1.10
3.1.40
4.2.40
5.3.10

解答:2

肺気量分画の問題は頻出。図は必ず描けるようになっておきましょう。図さえ描ければ後は簡単な計算で解けます。

肺気量分画は65am20で解説してあります。

今回の問題をもとに図を描くと以下のようになります。

68am17解説

残気量(RV)を求めるには,機能的残気量(FRC)から予備呼気量(ERV)を引けばよいため,

RV=1.9-0.8=1.1Lとなります。

なお,余談ですが,予備呼気量(IRV)は1.2-0.5=0.7L
全肺気量(TLC)は1.2+1.9=3.1Lとなります。

1・3~5.誤り。
2.正しい。

 

AM 問18 

クロージングボリューム測定における単一窒素呼出曲線を示す。クロージングボリュームはどれか。(難易度:3/10)
68am18

出典:厚生労働省ホームページ 第68回臨床検査技師国家試験の問題および正答について 午前問題別冊(https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/topics/dl/tp220421-07a_02.pdf)

1.①
2.②
3.③
4.④
5.⑤

解答:3

クロージングボリュームの曲線はたまに出題されるので,測定法も含めて覚えておきたいところです。

68am18解説

出典:厚生労働省ホームページ 第68回臨床検査技師国家試験の問題および正答について 午前問題別冊(https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/topics/dl/tp220421-07a_02.pdf)を加工して作成

CV:クロージングボリューム
CC:クロージングキャパシティ
画像ではVC=④となっていますが,正しくは④+③となります。

クロージングボリュームは③の部分です。

1・2・4・5.誤り。
3.正しい。

 

AM 問19 

1回呼吸法による肺拡散能力測定で濃度を測定するのはどれか。2つ選べ。(難易度:4/10)
1.CO
2.CO2
3.He
4.N2
5.O2

解答:1・3

1回呼吸法による肺拡散能(DLCO)測定については66pm21で解説してあります。

1・3.正しい。Heを測定することで,混合ガスの希釈率を求めることができます。
2・4・5.誤り。

 

AM 問20 

自律神経の線維はどれか。2つ選べ。(難易度:6/10)
1.Aα線維
2.Aβ線維
3.Aδ線維
4.B線維
5.C線維

解答:4・5

やや難しめの問題ですが,昨年の問題(67pm27)をきっちり対策していれば点数を取れる問題でした。過去問対策は怠らないように!

1~3.誤り。
4・5.正しい。

 

 

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コメント

  1. ありんこ より:

    いつもおるてぃさんの記事や解説で助けられています!
    問18にて、解説のために加工した画像内で、VCと示されている部分が異なっているように思うのですが……

  2. ゆず より:

    AM問9の解答が5のところ3と書かれています。

    • おるてぃ より:

      コメントありがとうございます。
      該当箇所およびそれ以外の部分の誤記を修正しました。ご指摘ありがとうございます。