第67回臨床検査技師国家試験解説(PM1~20)

第67回臨床検査技師国家試験(PM1~20)の解説です。

第67回臨技国試のPM問1~20の解説です。
難易度は主観で1~10の10段階でつけています。
1:超簡単
2~3:簡単
4~5:普通
6~7:やや難問
8~9:難問
10:超難問

第67回臨技国試についてをまとめたページもありますので,まだ見ていない方はぜひそちらもご参照ください。

では,解説をどうぞ!
おるてぃ
おるてぃ

問題の出典:厚生労働省ホームページ 第67回臨床検査技師国家試験の問題および正答について 午後問題(https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/topics/dl/tp210416-07b_01.pdf)

 

臨床検査総論(PM1~10)

PM 問1 

イムノクロマト法による便潜血検査について正しいのはどれか。(難易度:5/10)
1.検体は冷凍で輸送する。
2.食事制限が必要である。
3.IgG感作赤血球を用いる。
4.プロゾーン現象が見られる。
5.上部消化管出血と下部消化管出血の検出感度は同等である。

解答:4

便潜血の問題は過去にも何回か出題されている定番の問題ですが,今年の問題はややひねりのある問題です。

<便潜血検査>

便潜血検査

1.誤り。
2.誤り。食事制限は不要です。
3.誤り。抗ヒトヘモグロビン抗体を利用します。
4.正しい。便の抗原量(Hb量)が多いとプロゾーン現象が起き,偽陰性となることがあります。
5.誤り。上部消化管出血の検出感度はかなり悪いです。

 

PM 問2 

網膜芽細胞腫の原因遺伝子はどれか。(難易度:6/10)
1.ABL1
2.BRCA1
3.EGFR
4.KRAS
5.RB1

解答:5

65pm54でがん抑制遺伝子と,その遺伝子変異が原因となる疾患について解説してあります。ここを対策していれば正解できます。こういった対策をしておけば,類似問題が出題されても自信をもって得点できるはずです。

1・3・4.誤り。
2.誤り。変異すると家族性乳癌の原因となります。
5.正しい。網膜芽腫=網膜芽細胞腫です。

 

PM 問3 

細胞周期の段階のうち,G染色法において染色体を観察するのに適しているのはどれか。(難易度:4/10)
1.間期
2.前期
3.中期
4.後期
5.終期

解答:3

58pm66と同一の問題。過去問を対策していればボーナス問題です。

1・2・4・5.誤り。
3.正しい

 

PM 問4 

夕食にしめ鯖を摂取後,深夜に激烈な腹痛を訴えた。上部消化管の内視鏡像を示す。この寄生虫について正しいのはどれか。(難易度:4/10)
67pm4

出典:厚生労働省ホームページ 第67回臨床検査技師国家試験の問題および正答について 午後問題別冊(https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/topics/dl/tp210416-07b_02.pdf)

1.病変は胃に限局する。
2.生の牛肉でも感染する。
3.ヒトを終宿主としている。
4.-20℃保存で虫体は死滅する。
5.有効な抗寄生虫薬が存在する。

解答:4

しめ鯖の摂取や画像からアニサキスと判断するのは容易。本問はそのアニサキスに関する問題です。

1.誤り。腸にも迷入することがあります。
2.誤り。牛には存在しません。
3.誤り。ヒトは待機宿主です。
4.正しい。アニサキスは低温(-20℃以下)・高温(60℃以上)に弱いです。
5.誤り。内視鏡を用いて外科的に取り除くか,それができない場合は対症療法で菌体が死滅するまで待つしかありません。

 

PM 問5 

検便で診断できるのはどれか。(難易度:3/10)
1.無鉤条虫症
2.剛棘顎口虫症
3.Manson孤虫症
4.広東住血線虫症
5.多包条虫(エキノコックス)症

解答:1

1.正しい。受胎体節が排泄されるため診断可能です。ただし,便からの虫卵の検出はできません。65am7でも無鉤条虫の受胎体節が画像として出題されています。

2~5.誤り。いずれもヒトを終宿主としないため虫卵が排泄されず,便にも虫体が検出されないため,便での診断は不可能です。

 

PM 問6 

漏出性腹水に合致する所見はどれか。(難易度:3/10)
1.混濁
2.pH7.20
3.比重1.026
4.LD480U/L
5.蛋白1.8g/dL

解答:5

65pm7を対策していれば簡単ですね。65pm7の表は必ず覚えておきたいところです。

1.誤り。混濁は滲出性となります。
2.誤り。pHは特に関係ありません。
3.誤り。比重1.018以上は滲出性となります。
4.誤り。LD200以上は滲出性となります。
5.正しい。

 

PM 問7 

塩基置換により終止コドンが生じる遺伝子変異の種類はどれか。(難易度:2/10)
1.サイレント変異
2.ナンセンス変異
3.ミスセンス変異
4.フレームシフト変異
5.ミススプライシング変異

解答:2

遺伝子の問題の中では基礎を問う簡単な問題。ぜひとも正解しておきたいところ。

<コドンと遺伝子変異>

【コドン】
・開始コドン:AUG(ATG)
 メチオニン(Met)をコード
・終止コドン:UAA(TAA)・UAG(TAG)・UGA(TGA)

【変異】
遺伝子変異

コドンは開始コドン1種類と終止コドン3種類を覚えておけば大丈夫!
おるてぃ
おるてぃ

1・3~5.誤り。
2.正しい。

 

PM 問8 

ヒトのテロメアについて誤っているのはどれか。(難易度:9/10)
1.染色体を安定化する。
2.染色体両腕の末端領域を指す。
3.テロメラーゼにより短縮する。
4.体細胞では分裂ごとに短縮する。
5.6塩基の繰り返しDNA配列からなる。

解答:3

かなりの難問。

1・2・4・5.正しい。
3.誤り。テロメラーゼはテロメアを延長させる酵素です。

 

PM 問9 

健常成人の脳脊髄液について正しいのはどれか。(難易度:6/10)
1.色調は黄色である。
2.糖濃度は血漿の約10%である。
3.蛋白濃度は血清の約10%である。
4.細胞成分はリンパ球が主体である。
5.クロール濃度は血清より低値である。

解答:4

髄液の性状は65pm6で解説してありますのでそちらもご参照ください。

1.誤り。色調は無色透明です。
2.誤り。糖濃度は約60~70%程度です。
3.誤り。蛋白濃度は約0.1~0.5%程度です。
4.正しい。
5.誤り。血清より高値です。

 

PM 問10 

x-R管理図法で管理するのはどれか。2つ選べ。(難易度:4/10)
1.施設間差
2.標準液の劣化
3.検体採取の過誤
4.分析機器の異常
5.パニック値の検出

解答:2・4

x-R管理図は管理試料を用いて精密度を管理する内部精度管理の1つです。

1.誤り。施設間差は外部精度管理で評価します。
2・4.正しい。
3.誤り。患者試料を用いて評価します。
5.誤り。

 

 

臨床検査医学総論(PM11~15)

PM 問11 

肝硬変の症候に含まれないのはどれか。(難易度:5/10)
1.脾腫
2.下肢静脈瘤
3.血小板減少
4.ICG15分停滞率上昇
5.コリンエステラーゼ低値

解答:2

肝硬変の問題は昨年にも出題されました。ここできっちり対策していれば問題なく正解できます。

1・3~5.正しい。
2.誤り。

 

PM 問12 

M蛋白が検出されるのはどれか。2つ選べ。(難易度:5/10)
1.骨髄線維症
2.多発性骨髄腫
3.Hodgkinリンパ腫
4.急性リンパ性白血病
5.原発性マクログロブリン血症

解答:2・5

M蛋白は異常な形質細胞が産生する免疫グロブリンのことで,IgG・IgA・IgD・IgEおよび軽鎖(Bence Jones蛋白)のいずれかが増加する多発性骨髄腫と,IgMが増加する原発性マクログロブリン血症があります。

1・3・4.誤り。
2・5.正しい。

 

PM 問13 

Down症候群で認められるのはどれか。(難易度:2/10)
1.t(8;14)
2.t(9;22)
3.13トリソミー
4.21トリソミー
5.Xモノソミー

解答:4

常染色体・性染色体異常については65pm14で,造血器腫瘍の染色体・遺伝子異常については66am11でそれぞれ解説してあります。

1.誤り。Burkittリンパ腫で認められます。
2.誤り。CMLやALLで認められます。
3.誤り。Patau症候群で認められます。
4.正しい。
5.誤りTurner症候群で認められます。

 

PM 問14 

乳癌の腫瘍マーカーはどれか。(難易度:4/10)
1.AFP
2.CA15-3
3.DU-PAN-2
4.PSA
5.SCC

解答:2

腫瘍マーカーについては65pm80で解説してあります。出題頻度は高めなので必ず対策したいところ。

1.誤り。肝細胞癌の腫瘍マーカーです。
2.正しい
3.誤り。膵癌や胆管癌などの腫瘍マーカーです。
4.誤り。前立腺癌の腫瘍マーカーです。
5.誤り。扁平上皮癌の腫瘍マーカーです。

 

PM 問15 

血清コリンエステラーゼ活性が低下するのはどれか。(難易度:1/10)
1.鉛中毒
2.水銀中毒
3.青酸中毒
4.有機リン中毒
5.一酸化炭素中毒

解答:4

過去問でも出題された経験のある超簡単な問題。絶対に正解したいところです。

1~3・5.誤り。
4.正しい

 

 

臨床生理学(PM16~28)

PM 問16 

心電図を示す。正しいのはどれか。(難易度:6/10)
67pm16

出典:厚生労働省ホームページ 第67回臨床検査技師国家試験の問題および正答について 午後問題別冊(https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/topics/dl/tp210416-07b_02.pdf)

1.右脚ブロック
2.左脚ブロック
3.急性前壁中隔梗塞
4.A型WPW症候群
5.B型WPW症候群

解答:4

PQ時間が短縮しており,Q→Rの立ち上がりが緩やかになっていることからWPW症候群を疑いたいところです。

<WPW症候群>

(1)基本事項
・心房→心室間に副伝導路(=Kent束)が存在する疾患。
(副伝導路とは,電気興奮を伝える正常の伝導経路とは別に存在する伝導路のこと)

・Kent束は房室結節と違い,ゆっくり進むという特殊な性質はなく,素通りともいえる速度
で心室に伝導される。したがって,心室の興奮がいつもより早く起こる。
PQ時間↓

・また,Kent束を通った興奮は,心室の興奮開始タイミングこそ早いものの,心室内では
His束および右脚・左脚を通らないため,ゆっくり伝導する。
QRS波の立ち上がりが緩やかになり,QRS波幅↑

発作性上室性頻拍(PSVT)をきたす例があり,注意が必要。

(2)心電図上の変化
PQ時間:↓(<0.12s)
QRS幅:↑(≧0.12s)
Δ(デルタ)波出現

(3)種類
・A型:Kent束の位置が左房→左室間に存在。最も一般的なもの。
・B型:Kent束の位置が右房→右室間に存在。V1のQRS波がrS型となる点で鑑別可能。

67pm16解説

出典:厚生労働省ホームページ 第67回臨床検査技師国家試験の問題および正答について 午後問題別冊(https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/topics/dl/tp210416-07b_02.pdf)を加工して作成

 

今回はWPW症候群であり,V1の波形はQRSとなっているため,A型が正解となります。

1~3.誤り。
4.正しい。
5.誤り。B型であればV1がrS型となります。

 

PM 問17 

血流依存性血管拡張反応(FMD)の測定で誤っているのはどれか。(難易度:5/10)
1.測定する腕とは対側の上腕で血圧を測定する。
2.安静時の上腕動脈の血管径を測定する。
3.前腕部または上腕部を駆血する。
4.駆血圧は収縮期血圧とする。
5.駆血解除後,最大拡張時の血管径を測定する。

解答:4

<血流依存性血管拡張反応(FMD)>

(1)基本事項
・動脈硬化の前段階である血管内皮機能障害の評価方法である。
・FMD値(%FMD)は以下の式で求められる。

FMD

・基準値は6%以上。内皮機能障害や加齢により低下する。

(2)測定法

  1. 超音波装置(プローブ:リニア)を用いて上腕動脈を描出し,安静時の上腕動脈血管径を測定する。
  2. 安静時血管径の測定後,前腕部をカフで5分間駆血する。
    このとき,動脈血流を完全遮断するため,通常は収縮期血圧+50mmHgの圧で加圧・維持する。
  3. 5分駆血後,駆血を解除し,再度血管径を測定する。
    このときに測定する血管径は,最大拡張時の上腕動脈血管径である。
  4. 上記の式より,%FMDを求める。

1~3・5.正しい。
4.誤り。

 

PM 問18 

左室流入血流速波形のE/Aを計測するのはどれか。(難易度:4/10)
1.Bモード
2.Mモード
3.カラードプラ法
4.パルスドプラ法
5.連続波ドプラ法

解答:4

E/Aはパルスドプラ法で測定します。画像は載せられないので各自で調べてみてください。

1~3・5.誤り。
4.正しい。

 

PM 問19 

連続波ドプラ法で三尖弁逆流の最大流速が3.0m/sであった。推定される収縮期肺動脈圧(mmHg)はどれか。ただし,右房圧を5mmHgとする。(難易度:2/10)
1.27
2.31
3.36
4.41
5.45

解答:4

65am24でも出題されていますが,国家試験でよく出てくる簡易ベルヌーイ式を覚えておけば難なく解けます。

肺動脈圧と右房圧の差(肺動脈圧-右房圧)をΔPとすると,

ΔP=4×32=36

よって,肺動脈圧は36+5=41mmHgとなります。
※36-5=31としないように!

1~3・5.誤り。 
4.正しい。

 

PM 問20 

酸素解離曲線のシフトに関与しないのはどれか。(難易度:4/10)
1.pH
2.温度
3.二酸化炭素分圧
4.ヘモグロビン濃度
5.2,3-ジホスホグリセリン酸(2,3-DPG)

解答:4

<酸素解離曲線>

(1)基本事項
・横軸にPaO2(動脈血酸素分圧),縦軸にSaO2(動脈血酸素飽和度)を取ったグラフ。
・HbとO2の親和性を示す曲線。
・組織がO2を必要とする条件では曲線が右方移動する(酸素飽和度50%時のPaO2P50が増加)。

 

酸素解離曲線

(2)右方移動する条件

  • pH↓
  • 体温↑
  • PaCO2
  • 2,3-DPG↑

1~3・5.誤り。 
4.正しい。

 

 

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コメント

  1. 旅人 より:

    おるてぃさんのを見ながら勉強して無事68回国家試験受かりました。ありがとうございました。

    • おるてぃ より:

      コメントありがとうございます。国家試験合格おめでとうございます!
      これからも大変だとは思いますが,頑張ってください!応援しています。