第68回臨床検査技師国家試験(AM81~100)の解説です。
第68回臨技国試のAM問81~100の解説です。
難易度は主観で1~10の10段階でつけています。
1:超簡単
2~3:簡単
4~5:普通
6~7:やや難問
8~9:難問
10:超難問
第68回臨技国試についてをまとめたページもありますので,まだ見ていない方はぜひそちらもご参照ください。
問題の出典:厚生労働省ホームページ 第68回臨床検査技師国家試験の問題および正答について 午前問題(https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/topics/dl/tp220421-07a_01.pdf)
臨床免疫学(AM79~89)
AM 問81
解答:4
特にひねりのない簡単な問題。過去問でも類似問題の出題歴があり,ここは確実に正解しておきたいところ。
(57am87・59pm86・60pm85など)
M蛋白とはモノクローナルな異常免疫グロブリンであり,多発性骨髄腫と原発性マクログロブリン血症で認められます。
なお,多発性骨髄腫については67pm61で解説してあります。こちらも頻出なので要check!!
1~3・5.誤り。
4.正しい。
AM 問82
解答:2
免疫の基本的な問題。
サイトカインについては68am62で解説してあります。
1.誤り。貪食能を持つのは好中球・単球・Mφ(マクロファージ)です。
単球やマクロファージは貪食し,分解した異物を断片化して抗原とし,これをヘルパーT細胞に提示する抗原提示細胞(APC)です。
2.正しい。
3.誤り。遅延型過敏反応(=遅延型アレルギー)に関与するのはT細胞やMφです。
アレルギーについては以下の記事を参照。
4.誤り。ヘルパーT細胞のうちTh1は細胞性免疫に,Th2は体液性免疫に関与します。
5.誤り。MHC classⅡに提示された抗原をT細胞受容体(TCR)を介して認識します。MHC classⅡを発現しているのは抗原提示細胞(B細胞・単球(Mφ)・樹状細胞)です。
AM 問83
解答:3
またまたサイトカインの問題。68am62の表は頑張って覚えましょう。
なお,CRPは炎症で増加する蛋白(=急性相反応蛋白)ですので,炎症に関与するサイトカイン(IL-1・IL-6)が正解です。
1・2・4・5.誤り。
3.正しい。
AM 問84
解答:1
過去に(65am83,66pm84)臨床的意義の低い不規則抗体の問題が出題されており,こちらでも解説してありますので,そちらを覚えておけば解けます。
最初は難問としていましたが,最近急に出題されてきたので,ここは無理してでも覚えておいたほうがよさそうです。
1.正しい。Rh血液型は全て臨床的意義があります。
2~5.誤り。
AM 問85
解答:4
交差適合試験の問題です。焦らずじっくり考えれば答えにはたどり着けます。
交差適合試験の基礎的なことに関しては66am84を参照してください。
表の部分に関しては完璧に覚えていなくても,主試験と副試験でそれぞれ何を用いるかをきっちり覚えておけば正解できます。
1.誤り。患者がA型ですので,血清には抗Bがあります。提供者はO型ですので,血球にはA・Bともに抗原がありません。したがって,これらを混ぜても凝集は起こらないため,主試験は陰性です。
2.誤り。患者がAB型ですので,血清には抗A・Bともにありません。提供者はO型ですので,血球にはA・Bともに抗原がありません。したがって,これらを混ぜても凝集は起こらないため,主試験は陰性です。
3.誤り。直接抗グロブリン試験陽性=血球に抗体が結合していることになります。主試験では患者血球を用いないため,主試験の結果に影響しません。
4.正しい。直接抗グロブリン試験陽性=血球に抗体が結合していることになります。主試験では供血者血球を用いるため,患者の血漿と反応して凝集が起こる可能性があります。よってこれが正解です。
5.誤り。Rhの不適合は検出できません。ここも重要なので忘れないように!
AM 問86
解答:5
カラム凝集法の見方さえわかれば特に苦労することなく解ける問題。ここは確実に正解したいところ。
見方および解釈に関しては65am84でじっくり解説してありますので,この問題が解けない人は時間をかけてしっかり理解しましょう!
1・2.誤り。
3・4.誤り。RhD陰性に関しては,この試験だけで判断できず,別途D陰性確認試験を行う必要があります。
5.正しい。
AM 問87
解答:2
CH50については66am86で解説してあります。特に減少する疾患はよく出題されますので,選択肢を見ただけですぐにわかるくらいになっておきましょう。
1・3~5.誤り。
2.正しい。
AM 問88
解答:3
過去にも出題されたことのある輸血用製剤の保存条件および有効期間の問題。
この問題は過去にも58pm88・64pm89と出題されており,覚えるのもそこまで難しくはないので確実に覚えておきましょう。
1・2・4・5.正しい。
3.誤り。血小板濃厚液は採血後4日間有効です。
AM 問89
解答:5
輸血副反応の問題は一部難しい問題が出題されることもあるのですが,今年度は過去問を対策していれば難なく解ける問題。
65am89で表にまとめていますので,特に赤字で示された部分は全力で覚えましょう!
1~4.誤り。
5.正しい。
公衆衛生学(AM90~94)
AM 問90
解答:3
医療安全を確保する上で大切なことは,
- 正しい知識を持ちインシデントや医療事故を起こさないこと
- インシデントやアクシデントが起きてしまった場合はその原因を究明し,同じ過ちを起こさないよう防止すること
です。当事者を処罰することではありません。
3.誤り。
1・2・4・5.正しい。
AM 問91
解答:1
指針で定めるがん検診を知っているかどうか。ただそれだけの問題ですが,過去にも出題歴はないので超難問。
詳細は厚生労働省のHPを参照してください。
1.正しい。50歳以上です。
2~4.誤り。40歳以上です。
5.誤り。20歳以上です。
AM 問92
解答:2
日本は少子高齢化といわれていることから,出生率や自然増減率は10年前より確実に低くなっているだろうというのは常識的に考えて問題ありません。
また,10年前と比較して医療技術が向上していることから,乳児死亡率も低くなっていることがわかります。
よって,実質2と5の一騎打ちです。
ここは知らないと解けないのですが,高齢化によって死亡数自体は増加しているため粗死亡率は増加しています。対して,年齢構成の影響を除去した死亡率である年齢調整死亡率は減少しています。
よって2が正解です。厚生労働省のHPにある
「都道府県別年齢調整死亡率-主な死因別にみた死亡の状況-」→
結果の概要にある「全死因における死亡の状況」
を見ると,実際にグラフで数値の変化を見ることができます。
2.正しい。
1・3~5.誤り。
AM 問93
解答:2 or 5
超難問。40%の確率で正解できるので,勘で正解できたらラッキーぐらいの気持ちで。解けなくても全く気にする必要はありません!
2・5.含まれない。
1・3・4.含まれる。
AM 問94
解答:1
こちらも超難問。勘で正解できたらラッキーぐらいの気持ちで。解けなくても全く気にする必要はありません!
こちらに関しては厚生労働省HPにあります「業務上疾病発生状況等調査」に詳細な結果があります。
なお,令和2年(2020年)では負傷が最も多かったのですが,令和3年(2021年)では病原体が最も多くなっています。恐らく新型コロナウイルスによるものでしょうが,答えは1になっているため,本年度の国試は2020年の分を参照しているのでしょうか。よくわかりません。
1.正しい。
2.誤り。ただ,最新版では最も多いです。
3~5.誤り。
医用工学概論(AM95~100)
AM 問95
解答:5
超音波は,音響インピーダンスが高い(≒密度が高い)ほど早く移動します。
水や肝臓はほぼ同じであり,脂肪はやや音速が落ち,空気はそれらと比べるとかなり低くなります。
逆に,骨は音響インピーダンスが高いため,音速も速くなります。
こちらに関しては65pm22で解説してありますので,そちらもご参照ください。
1.誤り。約1520m/sです。こちらの値も覚えておきましょう。
2.誤り。約1570m/sです。
3.誤り。約340m/sです。
4.誤り。約1480m/sです。
5.正しい。約3360m/sです。
AM 問96
解答:3
昨年はlog2を覚えておらずに惨敗しましたが,今回はいつもの国家試験のようにlog2を書いてあるので,計算公式だけ覚えておけば余裕です。昨年も同様の問題が出たので,正解したいところです。
増幅度の計算の仕方は別記事にて解説してありますので,公式を知らない方はこちらもご参照ください。
20倍の電圧増幅器を直列に3つ接続してあるので,3つの増幅器を合わせた増幅度Aは
$$A=20^3=2^3\times 10^3$$
これをdB表記すると,
$$A\,\mathrm{[dB]}=20\,\mathrm{log}_{10}(2^3\times 10^3)$$
$$=20(\,\mathrm{log}_{10}2^3+\,\mathrm{log}_{10}10^3)$$
$$=20(3\,\mathrm{log}_{10}2+3\,\mathrm{log}_{10}10)$$
ここで,log2=0.3を使います。
$$=20(3\times 0.3+3)$$
$$=20\times 3.9=78\,\mathrm{dB}$$
よって,3が正解となります。
1・2・4・5.誤り。
3.正しい。
AM 問97
解答:4
AD変換を知っているかどうかを問う問題です。
標本化によって得られた値(最大値・最小値)をもとに値を決定することを量子化といいます。
1~3・5.誤り。
4.正しい。
AM 問98
解答:4
よく出る医学関連用語の略号は66pm99でまとめてあります。なんとなくでいいので,各略号がどのようなことを表しているかはすべて覚えておきましょう!
AM 問99
解答:3
3.正しい。
1・2・4・5.誤り。
AM 問100
解答:4
高校物理の問題。
物理選択なら基礎的な問題なので難易度は2~3程度ですが,生物選択なら下手すると手も足も出ないので難易度は7としました。
電子レンジで水が得たエネルギーEは
$$E=700\,\mathrm{W}\times 60\,\mathrm{s}=42000\,\mathrm{J}$$
200mLの水を1℃上げるのに必要な熱量(J)は
$$4200\,\mathrm{J/kg・℃}\times \frac{0.2 \,\mathrm{kg}}{1\,\mathrm{kg}}=840\,\mathrm{J/℃}$$
よって,42000Jで上昇させることのできる200mLの水の温度Tは
$$T=\frac{42000\,\mathrm{J}}{840\,\mathrm{J/℃}}=50\,\mathrm{℃}$$
元の水の温度T1=20℃であるため,変化後の水の温度T2は
$$T_2=T_1+T=20+50=70\,\mathrm{℃}$$
となります。よって4が正解です。
1~3・5.誤り。
4.正しい。
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