第68回臨床検査技師国家試験解説(PM61~80)

第68回臨床検査技師国家試験(PM61~80)の解説です。

第68回臨技国試のPM問61~80の解説です。
難易度は主観で1~10の10段階でつけています。
1:超簡単
2~3:簡単
4~5:普通
6~7:やや難問
8~9:難問
10:超難問

第68回臨技国試についてをまとめたページもありますので,まだ見ていない方はぜひそちらもご参照ください。

では,解説をどうぞ!
おるてぃ
おるてぃ

問題の出典:厚生労働省ホームページ 第68回臨床検査技師国家試験の問題および正答について 午後問題(https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/topics/dl/tp220421-07b_01.pdf)

 

臨床血液学(PM59~67)

臨床血液学の問59~60は第68回臨床検査技師国家試験解説(PM41~60)を参照してね!
おるてぃ
おるてぃ

PM 問61 

鉄欠乏性貧血および慢性炎症に伴う貧血で共通するのはどれか。2つ選べ。(難易度:6/10)
1.小球性貧血である。
2.血清鉄が低値である。
3.鉄の利用障害を認める。
4.血清フェリチンが低値である。
5.総鉄結合能(TIBC)が高値である。

解答:1・2

小球性貧血のそれぞれの検査所見をしっかり覚えていないと解けない問題。

<小球性低色素性貧血>

小球性低色素性貧血1小球性低色素性貧血2小球性低色素性貧血3

1・2.正しい。
3.誤り。鉄欠乏性貧血では鉄の利用障害はありません。
4.誤り。ACDではヘプシジンによりフェリチンが増加します。
5.誤り。ACDでは炎症によりトランスフェリンが低下するため,結果的にTIBCも低下します。

 

PM 問62 

細胞浮遊液の細胞数を算定した。Burker-Turk計算盤を示す。図中に赤字で示す数字は、赤点線で囲った各大区画にある細胞数である。検体は希釈せず使用し,大区画の容積は0.1μLとする。細胞浮遊液の細胞数[/μL]はどれか。(難易度:5/10)
68pm62

出典:厚生労働省ホームページ 第68回臨床検査技師国家試験の問題および正答について 午後問題別冊(https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/topics/dl/tp220421-07b_02.pdf)

1.9
2.36
3.90
4.360
5.900

解答:3

計算方法がわからないと手も足も出ない問題。逆に知っていれば簡単。

計算方法自体は,

  1. 大分画の細胞数を4分画だけ数える。(今回は既に赤字で表記されているため不要)
  2. 4分画の合計を4で割り,1分画の平均を算出する。
  3. 1μLあたりの個数に変換する。希釈されているときはさらに希釈倍率を掛ける。

ととてもシンプル。今回もこの流れに則って計算してみます。

赤点線で囲われた大分画の個数の合計Nは

$$\,\mathrm{N}=10+8+7+11=36$$

これより,1分画の平均nは

$$\,\mathrm{n}=\frac{\,\mathrm{N}}{4}=9$$

これは大分画の容積(0.1μL)分であるため,1μLにするには10を掛ける必要があります。
よって,9×10=90/μLとなり,3が正解です。

1・2・4・5.誤り。
3.正しい。

 

PM 問63 

肝臓で合成されないのはどれか。(難易度:4/10)
1.Dダイマー
2.フィブリノゲン
3.プラスミノゲン
4.アンチトロンビン
5.プラスミンインヒビター

解答:1

凝固・線溶系分子マーカーは血中で合成されます。肝臓では合成されません。

凝固系/線溶系分子マーカーは66am63で解説してあります。

1.合成されない。
2~5.合成される。

 

PM 問64 

末梢血のMay-Giemsa染色標本を示す。認められるのはどれか。(難易度:2/10)
68pm64

出典:厚生労働省ホームページ 第68回臨床検査技師国家試験の問題および正答について 午後問題別冊(https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/topics/dl/tp220421-07b_02.pdf)

1.鎌状赤血球
2.菲薄赤血球
3.標的赤血球
4.有核赤血球
5.涙滴赤血球

解答:5

画像では水滴状の赤血球が出現しており,形さえ把握していれば簡単に正解できます。

68pm64解説

出典:厚生労働省ホームページ 第68回臨床検査技師国家試験の問題および正答について 午後問題別冊(https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/topics/dl/tp220421-07b_02.pdf)を加工して作成

なお,変形赤血球については67pm59でまとめてあります。こちらもあわせて確認しておきましょう!

1~4.誤り。
5.正しい。

 

PM 問65 

リン脂質依存性凝固反応に関与するのはどれか。(難易度:10/10)
1.第Ⅷ因子
2.第Ⅸ因子
3.第Ⅻ因子
4.フィブリノゲン
5.プレカリクレイン

解答:1

今年の血液分野の中では超難問。解けなくても大丈夫です。

1.正しい。
2~5.誤り。

 

PM 問66 

骨髄穿刺液のMay-Giemsa染色標本を示す。矢印の細胞が腫瘍化した疾患はどれか。(難易度:2/10)
68pm66

出典:厚生労働省ホームページ 第68回臨床検査技師国家試験の問題および正答について 午後問題別冊(https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/topics/dl/tp220421-07b_02.pdf)

1.赤白血病
2.多発性骨髄腫
3.Burkittリンパ腫
4.急性骨髄性白血病
5.急性リンパ性白血病

解答:2

過去に何度も出題されたことのある画像。この画像を見ただけですぐに「形質細胞→多発性骨髄腫」と考えられるようになりたいところ。

多発性骨髄腫については67pm61でまとめてあります。

1・3~5.誤り。
2.正しい。

 

PM 問67 

骨髄細胞の染色体核型を示す。矢印の染色体異常に関与するのはどれか。(難易度:3/10)
68pm67

出典:厚生労働省ホームページ 第68回臨床検査技師国家試験の問題および正答について 午後問題別冊(https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/topics/dl/tp220421-07b_02.pdf)

1.BCR-ABL1
2.IGH/BCL2
3.IGH/BCL6
4.IGH/MYC
5.PML-RARA

解答:5

画像では15と17に矢印が付いていることから,恐らく15と17の相互転座であると言いたいのだろうと推測できます。

後は,t(15;17)に関与する遺伝子がわかればOKです。

国試でよく出る造血器腫瘍の染色体/遺伝子異常に関しては66am11でまとめてあります。赤字のところは対策必須です!

1.誤り。t(9;22)です。
2.誤り。t(14;18)です。
3.誤り。t(3;14)です。
4.誤り。t(8;14)です。
5.正しい。

 

 

臨床微生物学(PM68~78)

PM 問68 

髄液のGram染色標本を示す。分離菌はヒツジ血液寒天培地に発育し,グルコースおよびマルトースを分解した。推定されるのはどれか。(難易度:4/10)
68pm68

出典:厚生労働省ホームページ 第68回臨床検査技師国家試験の問題および正答について 午後問題別冊(https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/topics/dl/tp220421-07b_02.pdf)

1.Haemophilus influenzae
2.Moraxella catarrhalis
3.Neisseria meningitidis
4.Neisseria gonorrhoeae
5.Pseudomonas aeruginosa

解答:3

各選択肢の菌の染色性と,髄膜炎原因菌の2つを覚えておけば解けます。生化学的性状もできれば覚えておきたいところ。

選択肢中の菌の染色性は,以下のようになります。

1.Haemophilus influenzae=Gram陰性桿菌
2.Moraxella catarrhalis=Gram陰性球菌(双球菌の形を取る)
3.Neisseria meningitidis=Gram陰性球菌(双球菌の形を取る)
4.Neisseria gonorrhoeae=Gram陰性球菌(双球菌の形を取る)
5.Pseudomonas aeruginosa=Gram陰性桿菌
※双球菌:菌が2つくっついているような形のこと。

画像はピンク色(=Gram陰性)で丸い形をしている+双球菌の形を取っているため,選択肢で考えられるのは2~4となります。

あとは髄膜炎の原因菌を知っていれば答えは3となります。(後の2つは髄液から検出されることは非常に稀。国家試験レベルではまず出題されないと思ってもらって構いません)

髄膜炎の原因菌に関しては68am73でまとめてあります。

<Gram陰性球菌の性状比較>

Gram陰性球菌の性状比較

1・2・4・5.誤り。
3.正しい。

 

PM 問69 

エンベロープを持つのはどれか。(難易度:2/10)
1.ノロウイルス
2.ロタウイルス
3.アデノウイルス
4.ポリオウイルス
5.インフルエンザウイルス

解答:5

67am73でエンベロープのないウイルスをまとめています。これさえ覚えておけば簡単です。

1~4.誤り。
5.正しい。

 

PM 問70 

微生物検査結果について緊急報告が必要でないのはどれか。(難易度:4/10)
1.静脈血からEscherichia coliが検出された場合。
2.髄液からCryptococcus neoformansが検出された場合。
3.皮膚からStaphylococcus epidermidisが検出された場合。
4.喀痰からMycobacterium tuberculosisが検出された場合。
5.胸水からカルバペネム耐性腸内細菌科細菌が検出された場合。

解答:3

常在菌さえ覚えておけば簡単。

1・2.誤り。血液や髄液から菌が検出された場合は敗血症や髄膜炎といった重篤な感染症が疑われるため,緊急報告が必要となります。
3.正しい。皮膚の常在菌であり,検出されることはむしろ普通です。
4・5.誤り。感染拡大を防ぐ(=感染対策が必要)ため,緊急報告が必要となります。

 

PM 問71 

喀痰のGram染色で染まりにくいのはどれか。(難易度:6/10)
1.Haemophilus influenzae
2.Klebsiella pneumoniae
3.Legionella pneumophila
4.Moraxella catarrhalis
5.Streptococcus pneumoniae

解答:3

Legionella pneumophilaはGram陰性桿菌,Mycobacterium spp.はGram陽性桿菌ですが,どちらもGram染色では染まりにくいため特殊染色が必要となります。

特殊染色については65pm71を参照。

1・2・4・5.誤り。
3.正しい。

 

PM 問72 

5%炭酸ガス培養下のヒツジ血液寒天培地に発育するのはどれか。2つ選べ。(難易度:3/10)
1.Fusobacterium nucleatum
2.Haemophilus influenzae
3.Legionella pneumophila
4.Moraxella catarrhalis
5.Streptococcus pneumoniae

解答:4・5

培地については個別記事でまとめてあります。血液寒天培地のところを確認しておきましょう。

1.誤り。Fusobacterium nucleatumは嫌気性菌(偏性嫌気性菌)であるため,炭酸ガス培養では発育できません。
2・3.誤り。個別記事参照。
4・5.正しい。

 

PM 問73 

血液培養の採血時に皮膚の消毒に用いるのはどれか。2つ選べ。(難易度:2/10)
1.過酢酸
2.フタラール
3.ポビドンヨード
4.次亜塩素酸ナトリウム
5.グルコン酸クロルヘキシジンアルコール

解答:3・5

消毒薬に関しては65am69でまとめてあります。

1・2・4.誤り。
3・5.正しい。

 

PM 問74 

多剤耐性緑膿菌(MDRP)の判定に使用される抗菌薬はどれか。(難易度:3/10)
1.イミペネム
2.オキサシリン
3.セフォキシチン
4.テイコプラニン
5.バンコマイシン

解答:1

多剤耐性緑膿菌(MDRP)の判定基準は感染症法で定められており,

  • イミペネム(IPM:16μg/mL以上
    ※カルバペネム系
  • アミカシン(AMK):32μg/mL以上
    ※アミノグリコシド系
  • シプロフロキサシン(CPFX):4μg/mL以上
    ※キノロン系

となります。

※多剤耐性アシネトバクター(MDRA)も同様の判定基準です。

それぞれの薬剤の系統名の先頭を取って「アカキ」と覚えておこう!
おるてぃ
おるてぃ

ちなみに,Pseudomonas aeruginosaは選択肢中イミペネム以外は全て効果がありません(耐性です)。

1.正しい。
2・3.誤り。これらはMRSAの判定基準に用いられます。
4・5.誤り。

 

PM 問75 

偏性細胞内寄生性を有するのはどれか。(難易度:2/10)
1.Cryptococcus neoformans
2.Listeria monocytogenes
3.Mycobacterium tuberculosis
4.Mycoplasma pneumoniae
5.Rickettsia prowazekii

解答:5

マイコプラズマ・リケッチア・クラミジア・ウイルスの特徴は65am75でまとめてあります。この表を覚えておけば解けます。

1~4.誤り。
5.正しいRickettsia prowazekiiはリケッチアです。

 

PM 問76 

スライド培養の顕微鏡写真を示す。大分生子を矢印で示す。考えられるのはどれか。(難易度:10/10)
68pm76

出典:厚生労働省ホームページ 第68回臨床検査技師国家試験の問題および正答について 午後問題別冊(https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/topics/dl/tp220421-07b_02.pdf)

1.Aspergillus fumigatus
2.Epidermophyton floccosum
3.Microsporum canis
4.Sporothrix schenckii
5.Trichophyton rubrum

解答:5

今年の微生物の問題の中では間違いなく超難問。これは解けなくても大丈夫です。最低でもAspergillus fumigatusMicrosporum canisの形態だけ覚えておけばOKです。

5.正しい
1~4.誤り

 

PM 問77 

TSI培地に腸内細菌科細菌を接種して1日後の写真を示す。判定として誤っているのはどれか。(難易度:4/10)
68pm77

出典:厚生労働省ホームページ 第68回臨床検査技師国家試験の問題および正答について 午後問題別冊(https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/topics/dl/tp220421-07b_02.pdf)

1.白糖分解
2.乳糖非分解
3.ブドウ糖発酵
4.硫化水素産生
5.ブドウ糖からのガス産生

解答:1

個別記事のTSI培地の説明を参照。TSIの各色の意味合いについては重要ですので必ず覚えておきましょう!

1.誤り斜面部が赤色であることから乳糖および白糖が非分解であることがわかります。
2.正しい上記の通り。
3.正しい高層部の色が黒色のため赤色なのか黄色なのかが分かりませんが,問題文に腸内細菌科細菌と書いてあるため,腸内細菌の基本性状よりブドウ糖を発酵しているとわかります。
4.正しい高層部の色が黒色のため。
5.正しい高層部に亀裂が生じていることからガス産生もあることがわかります。

 

PM 問78 

Listeria monocytogenesについて誤っているのはどれか。(難易度:5/10)
1.Gram陽性桿菌である。
2.CAMPテスト陽性である。
3.馬尿酸塩加水分解試験陽性である。
4.エスクリン加水分解試験陽性である。
5.ヒツジ血液寒天培地でα溶血を示す。

解答:5

Listeria monocytogenesもたまに出ます。これに限らず,各細菌の基本的な性状はしっかり理解しておきましょう。

Listeria monocytogenes

Listeria monocytogenes

1~4.正しい。
5.誤り。

 

 

臨床免疫学(PM79~89)

※問79・80の問題文は一部改変してあります。

PM 問79 

38歳の女性。発熱を主訴に来院した。間接蛍光抗体法による抗核抗体検査所見を示す。この所見の染色パターンはどれか。(難易度:3/10)
68pm79

出典:厚生労働省ホームページ 第68回臨床検査技師国家試験の問題および正答について 午後問題別冊(https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/topics/dl/tp220421-07b_02.pdf)

1.斑紋型
2.辺縁型
3.核小体型
4.細胞質型
5.散在斑紋型

解答:2

pm79と80は連続問題であり,医師国家試験の臨床問題のような出題形式。ただ,内容自体は基礎的なので正解するのは容易。

抗核抗体の染色パターンについては65pm82で解説してあります。抗核抗体は頻出なので対策は必須!

画像では辺縁が強く染色されているので,peripheral型(辺縁型)が正解です。

1・3~5.誤り。
2.正しい。

 

PM 問80 

問79の所見を示す自己抗体はどれか。(難易度:4/10)
1.抗DNA抗体
2.抗核小体抗体
3.抗ヒストン抗体
4.抗ミトコンドリア抗体
5.抗ENA(可溶性核抗原)抗体

解答:1

pm79からの連続問題。

抗核抗体の染色パターンに関連する主な抗体は65pm83で表にしてまとめてあります。表を覚えるのがやや大変ですが,これと染色パターンさえ覚えておけば抗核抗体の問題はほぼ解けます。

peripheral型に合致する抗核抗体は抗DNA抗体です。

1.正しい。
2~5.誤り。

 

 

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